モラハラ夫のハネムーン期とは?
「モラハラ夫」と聞くと、いつも妻に嫌味を言ったり嫌がらせをしたりしていると思われがちですが、実は妻に対し優しい一面を見せることがあります。ときには、一定期間優しい時期が続くこともあるのですが、これは「ハネムーン期」と言ってモラハラのサイクルの1つに過ぎません。
放っておけば、また嫌がらせなどが始まりますが、ハネムーン期の夫の優しさを覚えている妻は「本当は悪い人ではないのだから」としだいにモラハラを受け入れるようになってしまいます。夫からのモラハラに適切に対処するためにも、ハネムーン期についてしっかり理解しておきましょう。
モラハラ周期の1つでモラハラが治った訳ではない
モラハラには一定のサイクルがあると言われます。夫が一時的に優しくなるハネムーン期もその一つで、要するに夫の機嫌が良いだけです。妻への不満のほか、家庭や職場でのストレスを発散できたので、妻をつなぎとめておくため優しくしているだけなのです。
決して心からこれまでの言動を反省して優しくなったわけではありません。中には「愛している」などと言う夫もいて、離婚を考えていた妻も思わず「これまでのことは水に流そう」と思ってしまうかもしれませんが、油断は禁物です。しばらくすると、またモラハラが始まります。
期間は人それぞれだが、一時的
ハネムーン期がどれくらいの期間になるのかは、モラハラ夫の性格や周囲の環境によってさまざま。一晩で終わることもあれば、数ヶ月続くこともあります。そもそも自分勝手で、不満やストレスを人や物に八つ当たりしないと済まない性格ですから、ハネムーン期の期間もそのときの感情次第。いずれにせよ一時的なもので、いつ終わってもおかしくはありません。
モラハラ夫は心の底では妻に依存しています。ですから、ストレスや不満が解消すると一時的に優しくなるのです。そして、妻も「本当は優しい人なのだから」と夫を支えるとともに、頼りにしていこうという気持ちになっていきます。こうして、互いに依存する関係を共依存といいます。共依存はモラハラ問題を抱える夫婦の間でよく見られます。
モラハラ夫のハネムーン期の特徴
ハネムーン期の夫はどのような言動をするのでしょうか。特徴的な言葉や行動を紹介します。夫が突然優しくなるという方は、ぜひチェックしてみてください。思い当たる節があれば、気が付いていなかっただけで、既にモラハラ被害を受けているのかもしれません。
急に優しくなる
ハネムーン期のモラハラ夫は、急に優しい態度を取り始めます。2人で外出したときに、いろいろと気遣ってくれたり家事を手伝ってくれたり、子供を連れて遊びに出かけてくれたりと、良き夫、良き父親の姿を見せます。普段は仏頂面なのに、突然明るく振る舞い、妻にプレゼントを贈る夫もいます。
日頃の感謝を伝える
「いつも家事をしてくれて助かるよ」「君にはいつも感謝しているよ」などと感謝の言葉を口にして、日ごろの家事や育児をねぎらってくれるタイプのモラハラ夫もいます。感謝されるとうれしくなるものですが、それでモラハラ夫がこれまでの言動を反省しているかどうかは別の問題です。
モラハラ言動を謝罪する
多くのモラハラ夫はプライドが高く、自分の過ちを認めたり言動を反省したりしないものですが、中にはモラハラを謝罪する夫もいます。中には涙を流し、妻を抱きしめる人もいるようです。しかし、それでモラハラが改善されると考えるのは時期尚早です。
妻が離婚や別居を考えていることを察知し、とりあえず妻を引き止めるため一時的に反省の態度を示す夫も中にはいます。また、本当にモラハラを反省している夫でも、モラハラ気質は簡単に治りません。感情的になるとモラハラ言動をやめられないという人もいます。
モラハラ夫のハネムーン期のきっかけは?
モラハラを繰り返していた夫が突然優しくなるハネムーン期に入るとき、どのようなきっかけがあるのでしょうか。主なきっかけを3つ紹介します。
ストレス発散ができたとき
モラハラ行為をした後に、急に優しくなる夫がいます。これはモラハラによって不満やストレスが解消されたからです。モラハラをして気分が晴れた夫は「俺のいう事を聞いていれば間違いはないから」「お前のためを思って言っているんだ」などと自分の言動を正当化しようとします。
これは不満やストレスの解消で気持ちが落ち着いただけでなく、優しい一面を見せることで自分のモラハラを正当化し、妻に対する支配を強めようとしています。
機嫌がいいとき
モラハラ夫は自分勝手で気ままですから、気分次第で妻に対する態度も変わります。このため、機嫌が良いと一時的に優しくなり、ハネムーン期に入ることがあります。ときには、自分の言うことに妻が素直に従ったのを喜び、機嫌が良くなる場合もあります。
こうした場合は要注意で、妻が夫のモラハラを受け入れ、自分が被害者であることに気付いていない可能性があります。このような状況が続くと、妻は知らず知らずのうちに疲弊し、夫に完全に支配されてしまいます。
別居や離婚の話を持ち出されたとき
モラハラ夫はプライドが高い一方で、妻に依存しているという特徴があります。こうした夫にとって最悪の事態は別居や離婚で、世間体が悪いうえ、妻にも依存できなくなってしまいます。このため、妻が別居や離婚を決意した途端、夫が優しくなることがあります。
中には、別居や離婚の話を持ち出されると、プライドもかなぐり捨てて泣きながら謝罪する夫もいるようです。しかし、反省しているように見えるのは一時的なことが多く、妻が別居や離婚を撤回すると、多くの場合、元のモラハラ夫に戻ってしまいます。
ただし、モラハラ夫が優しくなったからと言って、情にほだされて以前と変わらない生活を送っていると、「婚姻関係が破綻している」と認められにくくなり、離婚をすると決めたときに不利になることがあります。別居や離婚の意思が固まらないうちは、安易に別居や離婚の話は持ち出さないほうがいいでしょう。
モラハラ夫はハネムーン期の後はどうなる?
モラハラ夫が優しくなるハネムーン期は、モラハラのサイクルの1つです。では、どのようなサイクルでモラハラは進んでいくのでしょうか。ハネムーン期を終えた夫が、どのような段階を踏んでモラハラをし、再びハネムーン期を迎えるのか、夫の言動や心理も交えて説明しましょう。
ストレスを溜め込む『蓄積期』
ハネムーン期で一度優しくなった夫は、その後しばらくしてストレスや不満を溜め始めます。この時期を「蓄積期」と呼びます。この時期の夫は、神経過敏でちょっとしたことでも不機嫌になり、「掃除もできないのか」「いつも家にいる癖に」などと妻に嫌味を言ったり露骨に不快な態度を取ったりするため、妻は心理的に気が休まりません。
この時期に夫が暴力を振るったり、怒鳴ったりすることはあまりありませんが、いつもイライラして緊張感を漂わせます。蓄積期はモラハラのサイクルの中で最も長く、妻は夫の機嫌を損ねないようにと緊張した日々を強いられます。
モラハラ言動の激しい『爆発期』
蓄積期で募らせたストレスや不満が限界を超え、感情を爆発させるのが「爆発期」です。妻を激しい言葉でののしり、「お前はダメな奴だ」などと言って人格までも否定します。ときには、妻だけでなく妻の家族や友人についても「お前の周りにはろくな人間がいない」などと暴言を吐くことがあります。
爆発期は突然訪れ、夫自身も感情をコントロールできません。感情をむき出しにして、妻に対する優位性を誇示し、とことん妻を心理的に追い詰めます。いつまで続くかは夫の感情次第です。
優しくなる『ハネムーン期』へ
また、冷静になることで爆発期での言動を振り返って反省する夫もいます。贖罪からか、謝罪したり妻をいたわったりすることもありますが、しばらくすると再び蓄積期に突入します。こうしたサイクルを繰り返しながら、モラハラはしだいにエスカレートしていきます。
モラハラ夫のハネムーン期は一時的なので要注意
モラハラのハネムーン期で夫は、非常に優しい顔を見せます。このため「この人は本当は悪い人ではないんだ」「やはり自分が悪かったんだ」と思い込んでしまう妻も少なくありません。しかし、これがモラハラの怖いところで、蓄積期、爆発期、ハネムーン期とサイクルを繰り返すことで、夫婦間の共依存の関係がしだいに強くなっていきます。
モラハラ夫のハネムーン期はあくまでも一時的。モラハラのサイクルを知って適切に対応することが大切です。時期によって変わる夫の態度に「これはモラハラでは」と疑念を抱いたら、弁護士やカウンセラーら専門家に相談することをお勧めします。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。