モラハラは本当に治らない?
夫からのモラルハラスメント(モラハラ)に悩んでいる妻の多くは、モラハラやDVを治してほしいと考えているのではないでしょうか。しかし、調べてみると「モラハラは治らない」と書かれていることがあります。本当にモラハラは治らないのでしょうか。
自覚がされず、難しいことが多い
モラハラは「治すのが難しい」と言われることが多い理由は、モラハラ加害者が「モラハラをしている」という自覚がないからです。「本人に自覚がなければ、モラハラは治らない」と考えていいでしょう。
また、モラハラは「自己愛性人格障害」が原因だとも言われます。自己愛性人格障害は生まれつきの脳の働きなどが原因で起こる精神疾患の1つで、自分は特別な存在だと思い込み、他人に共感することが難しく、他人の気持ちを考えずに行動する傾向があります。自己愛性人格障害は治療が困難で、人格障害によるモラハラも治りにくいとされます。
【体験談】モラハラが治るタイプ・治らないタイプの違いはある?
モラハラ夫には共通した言動がありますが、その原因は人格障害などの精神疾患や生まれつきの性格、成育環境、妻との関係性など人それぞれです。原因によって、治りにくいケースがあれば、比較的治る可能性が高いケースもあると言えるでしょう。果たしてモラハラ夫に「治るタイプ」「治らないタイプ」があるのか、体験談を通じて考えてみましょう。
モラハラ改善の為に《カウンセリング》を試した人の【体験談】
モラハラはカウンセリングによって改善が見込めるかもしれません。実際、カウンセリングでモラハラが改善したという体験談もあります。カウンセラーという第三者とやり取りをすることで、モラハラ夫が「自分に問題があるのではないか」と自覚する可能性があるからでしょう。
夫婦でカウンセリングを受けるのが一番ですが、無理な場合は被害者の妻だけでカウンセリングを受けることも可能です。実際にモラハラを克服するためにカウンセリングを受けた人の体験談を紹介します
モラハラが治った人の体験談
カウンセリングを受けてモラハラが治った人には、次のような特徴があるようです。
・二面性がある
・自己肯定感が低い
・ストレスで追い込まれている
・第三者から否定されることに敏感である
モラハラ夫が家の外では自分の感情を自制できるのに妻の前ではできない場合、夫には二面性があります。二面性がある場合は、モラハラをしていることよりも、妻へ甘えているという自覚をさせるのも有効でしょう。
第三者から否定されることに敏感な夫は、カウンセラーの意見に耳を傾ける可能性が高いと言えそうです。夫婦の間に入ったカウンセラーから客観的な意見を聞くことで、夫婦それぞれの改善点を見出すこともできます。
妻同席でカウンセリングに通い、モラハラを自覚しました。カウンセリングで先生と話しながら自分の状況を整理してみると、自分は妻へ甘えていることを自覚しました。会社ではグッと気持ちを抑えられるのに、家ではストレスで感情が爆発してしまっていたのです。
夫婦関係の修復のため妻への配慮を意識したり、仕事で溜まったストレスを発散したりして、モラハラを克服しました。
モラハラ加害者向けのカウンセリングをみつけ、モラハラ夫のことを相談しました。まずは相談員の方がモラハラ夫に「自分が妻へモラハラやDVをしている」ことの自覚を促すように諭してくれました。夫は外面がいい小心者の性格なので、第三者からの注意なら受け止めたようです。
カウンセリングに何度も根気強く夫婦で通ったことで、夫は相談員の方の意見を少しずつですが受け入れるようになりました。長い道のりでしたが、夫はモラハラを克服しました。
夫が同席を拒んだため、私だけでカウンセリングを受けました。カウンセラーの方に話を聞いてもらえたことは、自分の状況を整理するきっかけになりました。対処法を実践して経過を報告することを続けたことで、夫のモラハラは改善されました。
モラハラが治らなかった人の体験談
カウンセリングを受けたにもかかわらず、モラハラが治らなかった人には、次のような特徴があるようです。
・モラハラをしている自覚がない
・危機感や改善の意志がない
モラハラをする夫に「このままではだめだ」という危機感や「自分を変えたい」という意志がなければ、カウンセリングでの改善は難しいと考えた方がいいかもしれません。しかし、モラハラをしていることをうまく自覚させられれば、状況は変わるはずです。
夫がモラハラだと気付き、自治体の相談窓口や心療内科などで相談したりカウンセリングを受けたりしました。離婚は考えていなかったため、対処法を教えてもらい、自分でも本を読んで勉強して、夫のモラハラ改善を目指して努力をしていました。
しかし、自覚のない夫には相当なストレスがかかったようで結局モラハラは治らず、数ヶ月別居した後に離婚を決断するという結果となりました。
モラハラ改善の為に《別居》を試みた人の【体験談】
モラハラ被害に遭っている妻の中には、夫と別居すべきか悩んでいる人もいるでしょう。モラハラ改善のために、別居を試みた人の体験談を紹介します。
モラハラが治った人の体験談
別居をしてモラハラが治った人には、次のような特徴があるようです。
・妻に依存していた
・モラハラをしていた原因に気づいた
・モラハラを自覚して罪悪感をもった
モラハラをする夫は、自分のやっていることがモラハラだということを自覚していません。妻と別居し、離れることで、ようやく自分のやっていたことはモラハラだったと気付くことがあります。
また、モラハラ夫は妻に依存しています。「妻の存在のありがたさ」をモラハラ夫に感じさせるという意味でも、別居は有効な方法の一つでしょう。モラハラ期間が長い場合は、妻も正常な判断ができなくなっている可能性があるので、自分の状況を整理するという意味でも夫から離れるのは効果的な対処法です。
夫は別居したことで、自身の加害性を自覚してくれました。すぐに別居を解消すると「戻ってきた=今までしてきた程度のモラハラは許される」と思うだろうと考え、それは嫌なので、夫の態度が変わっても別居は続けました。
はじめ夫は別居に至った理由を理解できなかったようでしたが、別居期間が長引くにつれて自己改善のための努力をしだしてくれました。
ある日突然、妻に今までの自分の言動を録音したものを聞かされて「あなたのしていることはモラハラ・DVだ、モラハラが治るまでは離れて暮らしたい」と言われました。私はそれまで自分がしていることがモラハラだとは思いもしませんでした。
別居が続くにつれて、仕事によるストレスで妻に強く当たってしまっていたことに気づきました。そして妻への罪悪感も生まれ、どうにか自分を変えたい、モラハラ体質を克服したいと思うようになりました。長い道のりでしたが、妻が自分の変わった姿を認めてくれ、別居を解消できました。
モラハラが治らなかった人の体験談
別居をしたけれどモラハラが治らなかった人には、次のような特徴があります。
・共感能力が低い
モラハラをする人の中には「自己愛性人格障害」の人もいるとされます。自己愛性人格障害の人は、共感能力が低く、自分の能力を過大評価し、自分への賞賛を求める傾向にあるとされます。
妻が夫にモラハラを自覚してもらうために別居を試みても、夫の共感能力が低い場合は、妻の気持ちを理解することは難しいでしょう。また、自分の能力を過大評価している人は、「自分が正当に評価されていない」「不当におとしめられた」と受け止め反発するかもしれません。
夫に自分はモラハラをしているという自覚や罪悪感を感じてほしくて、私は実家へ帰りました。私が実家に帰ってからは「お前がいないと生きていけない」「反省しているから帰ってきてほしい」という連絡が毎日きました。
連絡をくれる夫に対して、私はモラハラを自覚して改善の努力をしてくれるのだろうと思い、別居を解消しました。しかし、夫が優しかったのは家に戻って数日だけで、結果的にモラハラは治りませんでした。
モラハラ夫を改善させる方法
モラハラに悩む妻は夫のモラハラを治すために、どのように対処すればいいのでしょうか。カウンセリングや別居という具体例を紹介しましたが、そこからモラハラ夫を改善させるためのヒントが見えてきます。モラハラ夫の心理状態や弱点を突く効果的な方法を3つ紹介します。
自覚させる
モラハラをしている本人は、自分の言動がモラハラにあたると自覚していない可能性があります。なぜなら、自分は常に正しく、すべては相手のためにしていると思い込んでいるからです。まずは、自分のしていることがモラハラであることを自覚しないと、モラハラ気質は治らないでしょう。
カウンセリングで第三者の意見を聞くことや、別居で夫を一人にすることで、モラハラの加害者であることを自覚させられる可能性があります。
危機感を持たせる
「別居や離婚をしたい」などと夫に伝え、危機感を持たせることも効果的です。夫は妻を失うかもしれないという危機感から、自分の日頃の言動を振り返ってくれるかもしれません。なぜなら、夫は妻にモラハラをしていても、心の中では妻が自分から離れてしまうことを恐れているからです。そうすれば、モラハラを自覚してくれる可能性があります。
カウンセリングで、このままでは夫婦関係が破綻するかもしれないと告げられると、さすがのモラハラ夫も危機感を抱くかもしれません。
第三者に説得してもらう
モラハラ夫は妻に対して高圧的な態度を取るものの、会社の上司や目上の人には頭が上がらない傾向があります。それは、上司や目上に人に評価されることで自己肯定感が高まるからです。ですから、自分より立場が上の人や専門家の意見には耳を傾ける可能性があります。
体験談の中でカウンセリングがうまくいったケースは、夫が専門家であるカウンセラーの話に素直に耳を傾けたからです。必ずしも、全てのモラハラ夫がカウンセラーの話を聞くわけではありませんが、上司や共通の目上の知人らに間に入ってもらうことで、モラハラ改善のきっかけになることがあります。
モラハラ夫が優しくなった場合は一時的なこともあるので注意
カウンセリングや別居などでモラハラ夫が優しくなっても、それは一時的なことかもしれません。モラハラには一定のサイクルがあると言われています。ストレスを溜め込む「蓄積期」、蓄積期で募らせた不満やストレスによって感情を爆発させる「爆発期」、そしてストレス発散をして優しくなる「ハネムーン期」です。
ハネムーン期であれば、あくまでも一時的な優しさです。モラハラのサイクルを知って、本当にモラハラが治ったのかを見極めることが大切です。
出典: リコ活MEDIA
モラハラが治るかは夫の精神的な問題を解決できるかどうか
モラハラの原因には、生まれつきの脳の働きや成育環境、家庭や職場でのストレスなどさまざまな要因が複雑に関係しているため、一概に「治る」「治らない」と判断はできないようです。しかし、体験談から本人が自覚し、モラハラを改善しようと努力すれば治る可能性があることもわかりました。
結局は、夫本人が自分の性格の弱さや考え方の誤りを認めて、自分が抱える精神的な問題に立ち向かい、解決できるかどうかにかかっているようです。しかし、それは夫一人の力では難しいかもしれません。カウンセラーや医師の助けはもちろん、妻の支えや協力も必要になることでしょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。