「旦那が借金を隠していた」と悩む妻がいます。ほとんどの場合、借金が膨らんでどうしようもなくなってから発覚するので、目の前が真っ暗になり、離婚を考える妻もいるでしょう。「旦那が隠していた借金をどうすればいい」と悩んだときに、しなければならないことを解説します。
旦那が借金を隠してた…
ある日突然、夫の借金が発覚して、途方に暮れる妻がいます。裏切られた気持ちから、どうしても許せず、「こんな旦那とは別れたい」と思う妻もいるでしょう。中には何度も借金を繰り返す夫もいて、妻は絶望感を覚えることもあります。
借金を隠していた夫、離婚すべきかどうか、迷っています。
数年前にも借金が判明し、親族の協力を得て、当時は解決できた、と思っていました。親族の気持ち、子どもがいること、他にはないという本人の言葉を信じ、やり直す決心をした、のが間違いだったのでしょうか。隠していた数百万円の返済に、私が必死で貯めたお金を勝手に解約し、利息の返済に充てていました。ちっとも総額は減ってません。昔と変わらず、目先のことだけしか見えておらず、借金返済を後延ばしにするため、節約して貯めたお金を無断で使ってました。お金は2人で働いて貯めたものなので、夫は自分のものと思ったのでしょうが、こそこそ隠れて騙し通そうとしたこと、数年間、私たちを裏切ってきたこと、とても許せません。
夫32歳、私30歳、共働き子供なし、結婚して3年です。
ずっと言えなかったんだけど、借金がある、と言われました。500万。
私がお金の管理をしており、お小遣い制です。結婚する際、借金が少しあることは聞いていましたが、月のお小遣いでなんとかできるという話だったので気にしていませんでした。
その後もカードローンで借り入れし、3年で500万まで膨れ上がったそうです。どうにもならなくなってついに口にした、といった感じです。
使い道はパチンコ。全く知りませんでした。
夫はもう借金はしないし離婚はしたくない、お義母さんからも泣きながらその借金はなんとかするから離婚はもう少し考えてほしい、と言われています。
正直今、一番信頼していた夫に裏切られた気持ちがいっぱいで、どうしたらよいのかわかりません。反省はしてるようですが、平気でこの金額の借金を作ってしまう夫への絶望感で困惑しています。
夫が多額の借金を隠していたことがわかった場合、どうすればいいのでしょうか。問題解決に向けて、まずしなければならないことや、離婚を考えたときのポイントなどを解説します。
旦那が借金を隠していた場合に確認すること
「旦那が多額の借金を隠していた」という場合、妻はどのように対応しなければならないのでしょうか。とにかく、うろたえていても仕方がないので、借金の実態を調べる必要があります。夫への問い詰め方を含めて、確認しなければならないことを説明します。
借金の理由は何か
夫の隠していた借金が発覚した場合、まずは何が理由でできた借金なのかを尋ねてください。借金の理由によっては、妻にも返済義務が生じることがありますし、離婚の理由にもなり得ます。たとえば、結婚後にできた借金の一因が、妻の浪費だったような場合、妻にも責任の一端があると言えます。
ギャンブルで散財したのであれば、ギャンブル依存の可能性があり、治療を受けることも必要です。浮気や風俗店の利用が原因であれば、同情の余地はなく、離婚を視野に入れて夫には償いをしてもらわなければなりません。仮に、会社のお金を使い込んでいたということになれば、一大事です。とにかく、借金の理由を聞かなければ、その後の方針が立てられません。
借金の総額や金利、借入先
借金の理由を確認したら、次は借金の額がいくらあるのか、借入先はどこか、金利、滞納状況を確認しなければなりません。どのように借金が発覚したのかにもよりますが、夫は「バレていない分は黙っていよう」と考えていることがあります。後から、ほかにも隠していた借金が出てくることのないよう、しっかり聞き出しましょう。確認すべき項目は次の通りです。
・借入額
・債務残高
・借入先
・金利
・滞納が発生していないか
金利が比較的安い銀行のローンと、消費者金融では金利が大きく異なりますし、多重債務で普通の金融機関から借りられなくて、闇金融からお金を借りてしまう人もいます。また、滞納が発生していると、遅延損害金を支払うよう求められたり、残金を一括で支払うよう求められたりする恐れがあります。
保証人はいるのか
借金の保証人となっている人がいるのかを確認することも大切です。保証人とは、お金を借りた本人が返済できなくなったとき、代わりに借金を返済する義務を負う人のことです。ときには、無断で妻を保証人にしていることがあります。また、自己破産したときには、免除された借金の額が保証人に一括請求されるので、注意が必要です。
夫が隠れて借金をしていたときは、無断で自分や親族などを保証人にしていないかどうか、誰か保証人がいて、借金を法的整理したときに迷惑をかける人がいないかどうかを確認しておくことが大切です。
担保付きの借金はあるのか
借金の中に担保付のものがあるかどうかもチェックするポイントです。担保とは、借金が返済できなくなった場合、借金の代わりに債権者へ譲り渡す財産のことです。住宅ローンを組む際などは、土地や建物を担保にするのが一般的です。住宅ローン以外でも、土地を担保にしてお金を借りる場合があります。
担保付きの借金は利率が比較的低く、多額のお金を借りられます。しかし、お金を返せないと、家を譲り渡さなくてはなりません。自宅が担保になっている場合、最悪の場合、家を出なければならなくなります。
旦那が借金を隠してた場合の対処法
夫が多額の借金を隠していた場合、どのように対応すればいいのでしょうか。借金の内容や返済状況によって、対応を変える必要もありますが、一般的に考えられる対処法について説明します。
借金の返済方法を検討する
夫が隠していた多額の借金が発覚したときは、借入額や借入先を確認したうえで、すぐに借金の返済方法を検討することが大切です。返済するときは妻や親族が肩代わりする方法もありますが、まずは夫に返済させることが大切です。安易に助け舟を出すと、反省もなく再び借金をしてしまう可能性があります。
夫に返済させると言っても、すぐにお金は用意できないでしょうから、「債務整理」という方法を用いるといいでしょう。債務整理は話し合いや法律などに基づいて、借金を減額、免除してもらう手段です。債務整理をすると、その後5年間ほどは新たな借り入れができなくなるため、借金も止められます。債務整理については、後ほど説明します。
妻が家計を管理する
夫の借金問題を解決するには、家計管理を見直す必要もあります。これまで夫の自由になるお金があった場合は、妻がすべての収入を把握して管理しましょう。サラリーマンであれば、給与明細で収入を把握することができますが、個人事業主や経営者だと収入を把握しづらいことがあります。しかし、なんとか夫に協力させ、妻が管理しなければ、問題は解決しません。
夫は収入のすべてを明らかにすることを拒むかもしれませんが、しっかり話し合って、家計管理をすべて妻に委ねることを了承させる必要があります。自分で自由に使えるお金ほしさに、また借金をしないよう、必要であれば誓約書などを書いてもらうことも考えましょう。
親族に相談する
借金が多額に上る場合、夫の両親や兄弟姉妹など親族に相談することも効果的です。夫は抵抗するかもしれませんが、借金の整理で迷惑をかけることがあるかもしれません。また、親族に借金を頼み込んだりしないよう、未然に防ぐ意味もあります。
場合によっては、親族から金銭的に援助してもらえるかもしれませんし、保証人になってもらえる可能性もあります。親や兄弟を巻き込むことで、夫も心から反省してくれるかもしれません。
弁護士に相談する
借金が多額で借入先も複数ある場合は、借金問題に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法です。借金を整理するにはいくつか方法がありますから、弁護士にメリットとデメリットを説明してもらえば、よく比較検討して後悔しない方法を選択できます。また、消費者金融やクレジットカード会社、銀行などとの交渉や法的手続きも代行してもらえます。
個人で交渉や法的手続きを進めようと思っても、法的知識が乏しくスムーズに手続きを進められなかったり、交渉で不利になることもあります。弁護士への報酬は必要になりますが、状況に応じて弁護士への相談や依頼も検討しましょう。
借金を整理する3つの方法
借金を減額してもらったり免除してもらうことを「債務整理」といいます。どうしても借金が払えなくなった場合、債務整理を行えば、返済が楽になったり、免除されたりする可能性があります。しかし、今後当面の間、キャッシングやローンができなくなり、財産の一部を没収されるといったデメリットもあります。
こうした債務整理には主に次の3つの方法があります。
・任意整理
・個人再生
・自己破産
それぞれの方法について説明します。
任意整理
任意整理は、消費者金融やクレジットカード会社などと直接交渉して、借金を無理なく返済できるよう、返済方法を見直してもらうことを言います。具体的には、利息をカットしてもらい、元金を3年から5年程度で返済できるようにします。払い過ぎた利息を返還してもらえることもあります。
借金をした本人が直接相手と交渉することもできますが、あくまでも任意の話し合いなので、相手に合意してもらう必要があります。弁護士に依頼すると、着手金や解決報酬として数万円ずつ、さらに借金の減額分に応じた報酬を支払う必要はありますが、自分で交渉するよりスムーズに手続きを進められる可能性があります。
個人再生
個人再生は、裁判所に申し立てをして、無理なく返済できるよう借金を大幅減額してもらう手続きです。裁判所で手続きをしなければならないため、手続きには時間や費用がかかりますが、その分、借金を5分の1から最大で10分の1程度にまで減額することも可能です。返済は原則として3年間で行い、事情によっては5年間への延長も認められます。
個人再生の場合は、自宅を手放す必要はなく、そのまま自宅に住み続けることができます。ただし、個人再生が認められるには、3年間で減額後の借金を返済できるだけの収入見込みがなければなりません。また、保証人がいる場合は、保証人に対して減額分が一括請求されます。
自己破産
自己破産は、裁判所に借金全額の免除を申し立てる方法です。裁判所に破産が認められれば、借金を支払う必要はなくなります。裁判所での手続きが必要なため、時間や費用がかかるのは個人再生と同じです。借金が免除される一方で、家や車などの財産、現金などの多くは没収されます。手元にどれくらいの財産が残るかは、裁判所の判断によって異なります。
自己破産の手続きを自分で行うことも可能ですが、必要な書類の作成や手続きが煩雑で、最悪の場合、弁護士に依頼するより費用が掛かってしまう場合もあります。破産手続きをするのなら、弁護士に依頼したほうが、手続きがスムーズに進み、後悔することも少ないでしょう。保証人がいた場合、破産すると、免除された借金の総額が保証人に一括請求されます。
旦那が借金を隠していたことを理由に離婚できる?
夫が多額の借金を隠していたことを理由に離婚できるのでしょうか。離婚できるケースや、離婚を検討する際のポイントなどを紹介します。
夫と合意できれば離婚も可能
多額の借金を隠していた夫と離婚したいと思ったとき、話し合いの結果、夫も離婚に同意してくれれば離婚は可能です。夫も、多額の借金を抱えてしまった以上、離婚も仕方がないと思っているかもしれません。このように話し合いで離婚することを協議離婚といいます。離婚で最も多いのが協議離婚で、離婚の理由を問われることもありません。
ただ、夫が「離婚はしたくない。借金はどうにかするので別れたくない」などと言った場合は、すぐには離婚できません。また、離婚には応じるものの、財産分与などの条件をめぐって話し合いがつかないこともあります。そのときは離婚を求めて話し合いを続けるか、法的な手続きに基づいて離婚を求めていくしかありません。
離婚の合意を得られないときは調停という手も
夫が離婚に反対したり、離婚には同意してもらえても条件で折り合えなかったりした場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。調停とは裁判所の調停委員を介した話し合いで、調停委員が双方の意見を聞き、言い分を整理して合意を目指します。しかし、合意できる見込みがないときは調停不調として打ち切られてしまいます。
調停が打ち切られると、再び夫との間で協議離婚を目指して話し合うか、離婚裁判を起こして裁判所に離婚を求めることになります。裁判で認められれば、相手の合意がなくても離婚が可能です。
借金の理由によっては離婚できることも
離婚裁判を起こすには条件があり、離婚調停の後にしか起こせません。また、民法で定められた「離婚事由」がなければ、裁判をしても離婚は認められません。離婚事由とは、次の5つの事情です。
・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の不払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある
ただ、「旦那が多額の借金を隠していた」と言う理由だけでは、離婚事由には当てはまりません。借金の理由によっては、離婚が認められる可能性がありますが、生活費や子供の学費を払えずに借金をしてしまったという場合であれば、夫だけの責任とも言い切れない部分があり、離婚が認められない可能性もあります。
もちろん、借金の理由が浮気だったという場合や、遊興費にお金を注ぎ込んで多額の借金を抱えたうえで生活費を家にほとんど入れないという場合であれば、「不貞行為」や「悪意の遺棄」、「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」に当てはまる可能性があります。それによって夫婦関係が修復困難だと判断されれば離婚も認められるでしょう。
旦那が隠していた借金が発覚して困ったときは弁護士に相談を
夫が多額の借金を隠していた場合、多くの妻は「許せない」と怒り、その後の生活を考えて、途方に暮れてしまうことでしょう。しかし、目の前の借金を何とかしないことには、生活の再建はできません。離婚するにしても、夫の借金額や資産がいくらあるのかを把握しておくことは重要です。
まずは、夫と話し合うことが大切ですが、夫がなかなか正直に話さない場合や、よい解決法が見つからない場合は、弁護士に相談することも必要でしょう。生活再建に向けて、適切なアドバイスが受けられるはずです。
塚本 亜里沙/東京山手法律事務所(第一東京弁護士会所属)
20年以上の経験を持つ弁護士。
弁護士が行うリーガルカウンセリングもカウンセリングの一種であり、カウンセリング能力の向上は不可欠であると考え、日本メンタルヘルス協会基礎心理カウンセラー・(一財)日本能力開発推進協会家族療法カウンセラー・アンガーコントロールスペシャリスト取得。
夫婦関係・離婚のお悩みに真摯に向き合い、幸せな離婚に向けた解決をモットーに全力を尽くしている。