モラハラ夫に無視し返すのは逆効果?
モラハラ夫の嫌がらせには、過剰な叱責や十分な生活費を渡さないなどいくつかのパターンがありますが、無視もモラハラに特徴的な嫌がらせです。無視された妻の中には「自分も無視して、夫の言うことには無反応を決め込もう」と考える人もいますが、実は逆効果になることがあります。
軽度のモラハラ夫には効果的な場合もあるが、逆効果になることも
無視をし返す妻はおそらく「自分が無視されたら、無視された人がどんな気分になるかわかるはずだ。そうすれば旦那も自分が間違っていることに気付くだろう」と思っていることでしょう。確かにモラハラが軽度な夫であれば「大人げないことをしてしまった」と反省してくれるかもしれません。しかし、多くのモラハラ夫はそうではありません。
なぜなら、モラハラ夫は自分は常に正しいと思っていて、無視することは「妻の間違いを正すため」「妻を導くため」の手段だと信じているからです。そのため、妻が無視をすると「もっと厳しくして、わからせる必要がある」と考えてしまい、かえってモラハラがひどくなることがあるのです。
モラハラ夫に無視し返すとどうなる?
モラハラ夫の言動に妻が関心を示さず無視をすると、夫はどうするのでしょうか。自分の言動を顧みることができない重度のモラハラ夫によく見られる4つの反応を紹介します。
無視される期間が長引く
モラハラ夫は自分より立場が下の人の話には耳を傾けず、絶対に自分からは歩み寄らない傾向があります。ですから、妻に無視されると「そっちがその気なら」とムキになりがちです。絶対に、妻には屈服したくないのです。
夫は「折れるのは妻のほうだ」と信じていますから、決して自分から謝ったり態度を改めたりしようとはしません。その結果、互いに歩み寄る機会を逃し長期間無視し合うことにもなりかねません。
別の方法で嫌がらせをされる
モラハラ夫は「常に自分が正しく、妻は間違っている」「妻は自分の言うことにさえ従っていればいい」と考えています。このため、妻に無視されると「なぜ、自分の指示やアドバイスに従わないのだ」と怒りを募らせます。
そして「無視をしても言うことを聞かないのなら、別の方法で分からせてやろう」と考えるようになります。相手の些細なミスを執拗に追及する、必要以上に怒鳴り声を上げて叱責する、十分な生活費を渡さないなど、モラハラ夫の嫌がらせにはさまざまな方法があります。
嫌がらせがエスカレートする
モラハラ夫が無視をするのは、単に口を利きたくないだけでなく、自分の機嫌の悪さや怒りを妻に悟らせ、「自分が何か悪いことをしただろうか」という気持ちにさせるのが目的です。このため、妻が自分の言動に無反応で、無視までし始めると「もっと、強い方法で分からせなければならない」と思い始めます。
また、モラハラ夫はプライドが高く、傷つきやすいのも特徴です。このため、無視されるとバカにされたような気になり、妻への憎しみが増していくこともあります。そうなると、妻を屈服させ、自分の優位性を明確にしようと、よりモラハラがエスカレートしていくかもしれません。
逆にモラハラだと訴えられる
モラハラ夫は自分の言動がモラハラに当たるとは、全く自覚していません。なぜなら「自分は絶対に正しい。厳しい態度をとるのも妻のためだ」と信じているからです。ですから、妻が無視をすると「なぜ、妻は俺の言うことを聞き入れない」と感じ、自分の言うことを聞きたくないので嫌がらせをしているのではないかと考え始めます。
妻から見れば、全くあべこべなのですが、モラハラ夫は物事を自分に都合よく解釈します。このため、正しいことを言っているのに、妻に理不尽に無視される被害者だというストーリーがモラハラ夫の中でできあがります。妻は「モラハラはやめろ」と言われたり、周囲に「モラハラ被害を受けている」と言いふらされたりして面食らうことになるでしょう。
モラハラ夫が無視をしてくる心理は?
モラハラ夫の対応を間違えると、怒りを増幅させ、嫌がらせをエスカレートさせてしまう可能性があります。適切に対応するにはモラハラ夫の心理状態を理解することも大切です。なぜ、モラハラ夫は妻を無視するのか。考えられる理由を説明します。
無言の怒りで相手をコントロールしようとする
モラハラ夫が無視をするのはただ、話をしたくないだけではありません。無視することで怒りを表現し、妻を威圧しようとしているのです。これによって、妻が常に自分の機嫌を気にするように仕向けようとしています。
妻が夫の機嫌を気にするようになれば、夫の機嫌を損ねないよう言動に気を配るようになります。そうやって妻を自分の意のままにコントロールしようというのが、モラハラ夫の狙いです。
妻の謝罪を待っている
モラハラ夫は自分の言っていることが常に正しいと思っています。モラハラ夫が妻を無視するのは、妻に自分の正しさを認めさせ、謝ってもらうためです。それによって自尊心を満たそうとしています。
これは妻に甘えているだけなのですが、モラハラ夫はそのことに気付きません。誰かに甘えを指摘されても決して認めようとはしないでしょう。
意地を張っている
モラハラ夫は自分の間違いを指摘されたり考えを否定されたりすると、深く傷つきます。そして、自分の正しさを証明しようとムキになり、決して引きません。このため、機嫌が悪くなって口を利かなくなることがあります。
こうしたときのモラハラ夫は、妻が自分の正しさを認めるまで決して口を利こうとしません。結局、自分の弱さを認められないだけなのです。
言葉を発する余裕がない
モラハラ夫は自分の気持ちや怒りを上手にコントロールできません。このため、感情のおもむくままに相手を無視することがあります。
また、中にはまれに自分がひどいことをしている、モラハラをしているという自覚のある夫もいます。こうした夫は後悔や自責の念、感情をコントロールできない後ろめたさから何も言えなくなってしまいます。この場合は、自分の感情を抑え、冷静になるために口を利かない可能性があります。
モラハラ夫から無視された時の対処法
モラハラ夫に無視されたときは、どのように対処すればいいのでしょうか。モラハラ夫の心理を踏まえ、効果的な対処法を紹介します。
自分が悪いと思い込まない
モラハラ夫が妻を無視するのは、妻に自分の機嫌の悪さを考えさせるためです。ここで「自分が悪かったのかもしれない。とりあえず謝ろう」と考えてしまうと、優位性を保とうとする相手の思うつぼです。夫は「ほら、俺の言った通りだろう」と満足し、無視をすれば妻は自分の言うことを聞くと思いこみます。
間違ったことをしていなければ、自分を責める必要はありませんし、謝る必要もありません。妻のほうがいつも謝っていると、それが普通になり、いつの間にかモラハラが深刻化してしまうことがあります。
話し合いの場を持つ
夫が自分の正しさを主張するため、ムキになって無視をしているのなら、一度冷静に話し合いを試みてみましょう。モラハラ夫は謝罪を求めるかもしれませんが、それには応じる必要はありません。あくまでも話し合いです。
目的は、夫の言動がモラハラに当たること、そしてそれによって自分が深く傷ついているのを伝えることです。素直に耳を傾けてくれるのなら、夫には改善の余地があります。モラハラを治すのは簡単ではありませんが、モラハラを克服するために必要なことについて話し合いましょう。
手紙を書く
夫が話し合いに応じない場合、手紙が効果的なこともあります。モラハラ夫はどうしても感情的になりがちなので、冷静な話し合いを求めても、無反応で無関心を装うことも少なくありません。その点、手紙であれば冷静に言いたいことを伝えられますし、読む側も冷静に受け止められるかもしれません。
ただ、モラハラ夫は自分の欠点や過ちをなかなか受け入れられない傾向があります。文面から妻の真意を正しく受け取れるかどうかは分かりません。
実家に帰る
話し合いや手紙でも効果がない場合、一度冷却期間を置くことを考えてもいいでしょう。可能であれば、実家に帰るのが最も効果的です。実家の両親に夫のモラハラのことを話せば、いい解決策が見つかるかもしれません。
モラハラ夫は世間体を気にするところが弱点ですから、妻が実家に帰ると相当ショックを受けて、慌てるかもしれません。そうすれば、冷静に話し合うチャンスも生まれるでしょう。
別居や離婚を検討する
モラハラも進行すると、夫の側ではすでに妻を追い出す気になっていることがあります。そうでなくても、モラハラの改善は容易ではなく、妻は長く苦しい思いをしがちです。もう結婚生活の継続は難しいかもしれないと感じたら、別居や離婚も検討しましょう。
離婚や別居を切り出すと、夫が一時的に優しくなることもあります。しかし、それで夫を許してしまうと「別居や離婚なんて本気ではないのだろう」と思わせてしまう可能性が高いでしょう。最終的に離婚するかどうかは別にして、夫には徹底的に真摯な反省を求める強い態度で臨む必要があります。
モラハラ夫に無視されても仕返しは避けよう
相手を無視することで自分の正しさや優位性を示そうとするモラハラ夫に対して無視し返すのは、かえって夫を刺激し、モラハラをエスカレートさせることがあります。無視をする夫の心理状態を理解し、冷静に対応しましょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。