
離婚調停では、婚姻生活の経緯や離婚を求める理由、親権・養育費・財産分与などの希望を調停委員に伝えるため、陳述書を提出することがあります。ただし、何をどのように書けばよいのか、どこまで詳しく記載すべきか迷うこともあるかもしれません。
本記事では、離婚調停における陳述書の役割や書き方、作成時の注意点を解説します。あわせて、ケース別の例文も紹介します。
この記事でわかること
●離婚調停における陳述書の役割と提出したほうがよいケース
●陳述書の基本的な書き方と記載するべき内容
●陳述書の作成時にはどのような点に注意するべきか

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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離婚調停における陳述書とは
離婚調停における陳述書とは、当事者が経験した婚姻生活や別居に至るまでの経緯、離婚を求める理由、自分の主張や希望する条件などを文章にまとめた書面です。調停委員が夫婦間の事情や争点を把握するための資料として扱われます。
離婚調停は当事者の話を聞きながら進められますが、限られた時間のなかで複雑な経緯や希望をすべて口頭で説明するのは容易ではありません。陳述書を提出することで、事実関係や伝えたい内容を調停委員に共有しやすくなります。
陳述書の提出は必須か
離婚調停において、陳述書は法律上の必須書類ではありません。申立書や事情説明書など、手続きに必要な書類がそろっていれば、陳述書を提出しなくても調停は進められます。
ただし、親権や監護状況が争点となる場合や婚姻生活の経緯が複雑な場合は裁判所から陳述書の提出を求められるケースがあります。口頭だけでは事情や主張を十分に伝えにくいときは、弁護士から陳述書の作成を勧められることも少なくありません。
陳述書を提出したほうがよいケースとは
陳述書を提出したほうがよいのは、夫婦関係の悪化から離婚調停に至るまでの経緯が複雑で、口頭だけでは説明しにくいケースです。親権や面会交流、養育費、財産分与など複数の争点がある場合も、事実関係と希望する条件を整理して示すことで、調停委員が全体像を把握しやすくなるでしょう。
DVやモラハラのように継続的な言動を説明する必要がある場合は、発生時期や具体的な内容を時系列でまとめておくと、事情を伝えやすくなります。「緊張によって十分に話せない」「伝えるべき内容が抜ける不安がある」といった場合にも、陳述書の提出が選択されることがあります。
丸の内ソレイユ法律事務所陳述書は、調停委員にご自身の経緯や離婚を求める理由を正確に伝えるための大切な書面です。実務では、感情的な表現を重ねるよりも、いつ・どこで・何があったかを時系列で具体的に示したほうが、事情が伝わりやすい傾向があります。一方で、相手方に開示されることによる影響、後の離婚裁判での扱いにも配慮が必要です。書き方や記載する範囲に迷う場合は、早めに弁護士へご相談いただくと、ご自身に不利益が生じにくい形に整えやすくなります。
離婚調停に提出する陳述書の書き方


離婚調停における陳述書は、調停委員が婚姻生活の経緯や離婚を求める理由、希望する条件を把握できるように作成します。内容を伝わりやすくするには、書面の体裁を整えたうえで、事実と希望を項目ごとに分けて記載することが大切です。
ここでは、陳述書の基本的な書式と、記載するべき内容を解説します。
書式や用紙サイズ
陳述書には、法律で定められた書式や用紙サイズはありません。一般的には、A4用紙を縦向きに使用し、横書きで作成します。
パソコンで作成すると、読みやすく、内容の修正や追加もしやすいでしょう。手書きでも提出できますが、基本的に黒のボールペンなど消えにくい筆記具を使い、丁寧な楷書で記載します。複数枚になる場合はページ番号を付け、書面の順序がわかるようにしておきましょう。
陳述書に記載するべき内容
離婚調停の陳述書には、結婚に至る経緯や婚姻期間中の生活状況、別居に至るまでの経緯や問題となった出来事、離婚を求める理由やこれまでの話し合いの経過などを網羅的に記載するのが一般的です。
子どもがいる場合は、これまでの養育状況や今後の親権・面会交流・養育費に関する希望も盛り込みましょう。財産分与や慰謝料、年金分割などを求めるときは、希望する内容とその根拠となる事情を分けて記載すると、争点を把握しやすくなります。
以下で詳しく見ていきましょう。
表題・宛名・作成日・氏名
陳述書には、書面の種類がわかるように「陳述書」と表題を付けます。あわせて、「〇〇家庭裁判所〇〇支部 御中」などの宛名、作成年月日、作成者の氏名を記載し、署名・押印するのが一般的です。作成日や署名・押印は本文の前後どちらに置いても差し支えありません。
本文は「夫婦関係について」「今後の希望」などの項目に分け、見出しや番号を付けると内容を確認しやすくなります。住所や事件番号などを記載する場合は、家庭裁判所の書式や案内に従って整えます。
結婚から離婚調停に至るまでの経緯
結婚に至ったきっかけや、同居を始めた時期、子どもの出生など、婚姻生活における主な出来事を時系列で記載します。そのうえで、夫婦関係が悪化したきっかけや問題となった出来事、別居を開始した時期と理由、離婚について話し合った経過を事実に即して記載しましょう。
別居後に離婚の話し合いを申し入れた時期や、相手方がどのように対応したかも、調停に至るまでの経緯を示す要素です。すべての出来事を並べるのではなく、現在の争点や離婚を求める理由につながる事実を中心にまとめます。
離婚を求める理由
離婚を求める理由については、「性格が合わない」「モラハラがあった」などの結論だけでなく、そう判断するに至った具体的な出来事を詳細に記載します。いつ、どこで、相手方がどのような言動を取り、その後どのような状況になったのかまで具体的に記載すると、調停委員にも経緯が伝わりやすくなります。
性格の不一致や価値観の違いなどは、抽象的な表現だけでは夫婦間で一般的に起こり得る意見の相違と受け取られる可能性があります。金銭感覚や子育ての方針、家事分担など、意見の違いが具体的に表れた出来事と、その後に夫婦関係がどのように悪化したかを積み重ねて示すことが大切です。
子どもに関することや財産分与など希望する条件
子どもがいる場合は、年齢や通園・通学先などの基本情報に加え、現在の生活状況やこれまでの監護実績を記載します。そのうえで、親権を希望する理由、面会交流の頻度や方法、養育費の希望金額や支払期間など、調停で求める条件を記載するのが一般的です。
財産分与については、預貯金・不動産・自動車・保険の解約返戻金・退職金など、対象と考える財産の概要と希望する分け方も記載します。慰謝料や年金分割を求める場合も、希望する内容だけでなくその根拠となる事情をあわせて示すと、調停委員が争点を把握しやすくなるでしょう。
離婚調停における陳述書の例文


陳述書では、離婚を求める理由を抽象的に記載するのではなく、問題となった出来事の時期や内容、その後の夫婦関係への影響が伝わるようにまとめるのがポイントです。同じ離婚理由でも、実際の経緯や置かれている状況によって記載内容は異なります。
ここでは、性格の不一致・不貞行為・モラハラ・DVを理由とする場合の記載例を紹介します。例文はそのまま使用するのではなく、自身が経験した事実に置き換え、実際の経緯と一致する内容に整えることが大切です。
性格・価値観の不一致について
性格や価値観の不一致を理由とする場合は、単に「合わない」とするのではなく、価値観の違いが具体的に表れた出来事や、話し合いを重ねても改善しなかった経緯を記載します。
【例文】
令和〇年頃から、夫との間で金銭感覚や子どもの教育方針について意見が合わないことが増えました。私は「家計の状況を踏まえて支出を抑えたい」と考えていましたが、夫は相談なく高額な買い物を繰り返し、話し合いを求めても「自分で稼いだ金をどう使ってもよい」と取り合いませんでした。
子どもの進学や習い事についても意見が対立し、夫婦で話し合おうとしても、夫が会話を打ち切る状態が続きました。関係の改善を図りましたが状況は変わらず、令和〇年〇月から別居しています。今後、夫婦として生活を続けることは困難であると考え、離婚を希望します。
不貞行為について
不貞行為を理由とする場合は、相手方と第三者との関係を知った時期や経緯、その後の話し合い、夫婦関係への影響を具体的に記載します。推測だけで断定せず、確認できた事実に沿ってまとめることが大切です。
【例文】
令和〇年〇月頃、夫のスマートフォンに女性との親密なメッセージが表示されているのを見つけました。その後、夫が令和〇年〇月から同じ勤務先の女性と交際し、複数回にわたり宿泊を伴う外出をしていたことがわかりました。
私が事実関係を確認したところ、夫は当初否定していましたが、後日、女性との関係を認めました。私は、関係を解消して夫婦関係を修復するよう求めましたが、夫は表面上その旨に従うそぶりをしながらも隠れて連絡を取り、関係を継続していることが判明しました。
この出来事によって夫への信頼を失い、同居を続けることが難しくなったため、令和〇年〇月から別居しています。婚姻関係の修復は困難であると考え、離婚を希望します。
モラハラについて
モラハラを理由とする場合は、相手方から受けた言動の内容や頻度、それによって生じた精神的・生活上の影響を記載します。単に「モラハラを受けた」とまとめるのではなく、実際の発言や状況を示すことが大切です。電話やメッセージの履歴などがある場合は、陳述書の内容を裏付ける資料としてあわせて提出する方法もあります。
【例文】
令和〇年頃から、夫は私に対して「お前には何もできない」「誰のおかげで生活できていると思っているのか」などと繰り返し発言するようになりました。家事や育児について意見を伝えるとそのたびに大声で責められ、数時間にわたって無視されることもありました。
このような言動は週に数回程度続き、次第に夫と会話すること自体に強い不安を感じるようになりました。令和〇年〇月頃から不眠や動悸の症状が現れ、医療機関を受診したところ、〇〇と診断されました。
夫婦関係の改善を求めて話し合いましたが、夫は自身の言動を認めず、状況は変わりませんでした。そのため、令和〇年〇月から子どもとともに別居しています。今後、婚姻生活を続けることは困難であると考え、離婚を希望します。
DVについて
DVを理由とする場合は、暴力があった時期や場所、具体的な行為、けがの程度、その後の対応を記載します。継続的に暴力を受けていた場合は、主な出来事を時系列で記載すると状況が伝わりやすくなります。
診断書やけがの写真、警察・配偶者暴力相談支援センターへの相談記録などがある場合は、陳述書の内容を裏付ける資料として提出することも検討しましょう。
【例文】
令和〇年〇月頃、夫婦で生活費について話し合っていた際、夫が突然大声を出し、私の腕を強くつかんで床に押し倒しました。私は右腕と腰を負傷し、翌日に医療機関を受診したところ、全治〇週間の打撲と診断されました。
その後も、夫は口論になると物を投げたり、私の肩を押したりするようになりました。令和〇年〇月には、子どもの前で私の顔を平手でたたき、「逆らうなら家から出ていけ」と発言しました。私は身の危険を感じ、同月、子どもとともに自宅を離れました。
別居後も夫から威圧的な連絡が続いており、同居を再開することは困難です。婚姻関係の修復はできないと考え、離婚を希望します。
陳述書を作成するときの注意点


陳述書は、事実関係や自分の考えを調停委員へ伝えるための書面です。内容に誤りや矛盾があると、事情を正確に把握してもらいにくくなるため、記憶だけに頼らず、メッセージの履歴や写真、診断書などの資料と照らし合わせながら作成します。
相手方への非難を並べるのではなく、具体的な出来事を時系列で示すことも重要です。ここでは、陳述書を作成する際に注意したい5つのポイントを解説します。
事実は時系列で書き、日付の誤りに注意する
陳述書に記載する出来事は、結婚・夫婦関係の悪化・別居・離婚の話し合い……といった流れに沿って時系列で記載します。順序が前後していると、調停委員が経緯を把握しにくくなり、出来事同士の関係も伝わりにくくなるためです。
特に、別居を始めた日や不貞行為を知った時期、DV・モラハラがあった日などは、証拠資料と食い違わないよう注意しましょう。メッセージの履歴・写真・診断書・手帳などと照らし合わせ、正確な日付がわからない場合は、推測で断定せず「令和〇年〇月頃」と記載します。
5W1Hを意識して具体的に書く
陳述書は「いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何をした(What)・なぜ(Why)・どのように(How)」という、5W1Hを意識して具体的に記載することを心掛けましょう。
抽象的な評価や感情の表現だけではなく、客観的な事実の記載を積み重ねることで、出来事の経緯や自身の主張を調停委員に正確に伝えやすくなります。
感情的な表現ばかりにしない
陳述書では自身の気持ちを伝えることも大切ですが、相手方への悪口や罵倒、感情的な非難ばかりになると、かえって信用性を損ねるおそれが否定できません。
感情的な表現はできるだけ避け、事実経過や具体的な出来事を中心に記載することで、読み手にとって理解しやすく、冷静で信頼性が高い内容になります。
記載した内容を口頭でも説明できるようにしておく
陳述書に記載した内容は、調停期日に調停委員から質問されることが多いため、自分で読み返して要点を把握し、口頭でも矛盾なく説明できるよう準備しておくことが大切です。
陳述書と調停期日での発言内容に食い違いが生じると、発言全体の信用性が疑われるおそれもあるでしょう。事実関係と自分の主張を一貫させることが求められます。
調停に提出する書類は、原則として相手方にも提出する
調停に提出する書類は、原則として相手方にも提出することになります。非開示の申し出の手続というものがありますが、非開示になるのは住所等に限られますので、陳述書を調停委員に対してのみ提出することは原則としてできません。
離婚調停の陳述書作成に迷ったときの相談先


陳述書に何をどこまで書くべきか判断が難しい場合は、離婚問題を扱う弁護士や法テラス、弁護士会の法律相談などを利用する方法があります。法的な主張や、記載内容が不利益につながるおそれがないかを確認したい場合に、専門家の助言が役立つでしょう。
家庭裁判所へ申し立てる前に、相手方との話し合いの進め方や離婚の条件を整理したい場合は、法務大臣の認証を受けた民間ADRを利用する方法もあります。ADRは、裁判によらず、中立的な第三者を交えて当事者間の合意を目指す手続きです。「リコ活調停」のような離婚ADRであれば、裁判所へ出向かずに話し合いを進められます。
陳述書の作成そのものに迷っているのか、離婚条件や話し合いの進め方を確認したいのかによって、適した相談先は異なります。現在の状況と目的に応じて選ぶことが大切です。
「弁護士に相談する」
離婚調停の陳述書に関するよくある質問
Q1.陳述書の枚数はどの程度が適切ですか?
陳述書の枚数についての明確な制限はありませんが、離婚調停の陳述書としてはA4用紙で5枚程度に収めることが一つの目安です。
長くなりすぎると要点が伝わりにくくなるため、離婚を求める理由や現在の争点に関係する事実を中心に、重要な内容を取りこぼさない範囲で簡潔にまとめてください。調停委員が、限られた時間で読み切れる量に調整することが望ましいでしょう。
Q2.陳述書は手書きでも問題ありませんか?
陳述書はパソコンで作成しても、手書きでもどちらでも問題ありません。ただし、読みやすさや修正のしやすさの観点から、パソコンでA4用紙に収まる形式で作成する方法が推奨されることが多いでしょう。
手書きで作成する場合でも、行間を適切に取って文字を丁寧に書き、第三者が読みやすい体裁にすることが大切です。
Q3.陳述書はいつ提出すればよいですか?
陳述書の提出時期について、明確な決まりはありません。申立て時に提出するほか、調停が進んでから必要に応じて提出することもできます。
ただし、調停委員が事前に内容を確認できるよう、提出する場合は期日の直前を避け、ある程度の余裕を持たせることが望ましいでしょう。家庭裁判所から提出を求められ、期限が指定された場合は、その期限までに提出します。
Q4.離婚裁判に進んだ場合、同じ陳述書が使えますか?
調停が不成立となって離婚裁判に移行した場合、調停で提出した陳述書が自動的に裁判へ引き継がれるわけではありません。裁判でも同じ陳述書を使用したい場合は、改めて証拠として提出する必要があります。
ただし、裁判では法的な争点や証拠との関係を踏まえる必要があるため、調停時の陳述書をそのまま使わず、新たに作成するケースが一般的です。裁判で使用する陳述書は、弁護士が内容を確認し、訴訟方針に沿って作成することが多いです。
Q5.相手方の陳述書に嘘がある場合はどうすればよいですか?
相手方の陳述書に事実と異なる記載があると考える場合には、自身の陳述書や別紙で「どの部分がどのような理由で誤っているのか」を具体的に指摘し、反論を記載することになります。その際、単に「嘘をついている」と主張するだけではなく、日付や場所、関係者、当時のやり取りなどを示しながら、正しい事実関係を説明することが大切です。
メッセージの履歴や写真、通帳、診断書など、反論を裏付ける資料がある場合は、必要に応じてあわせて提出します。客観的な証拠を示すことで、自分の主張の信用性を高められるよう意識しましょう。
離婚調停の陳述書は調停委員に伝わる内容にすることが大切


陳述書は、事実関係や希望する条件が調停委員に伝わるよう、具体的かつ簡潔にまとめることが大切です。記載内容に迷う場合は、弁護士をはじめとする専門家へ相談する方法もあります。
家庭裁判所での調停に進む前に、相手方との話し合い方や希望条件を見直したい場合は、離婚ADRの活用も選択肢になります。リコ活を活用しながら、自分の状況に合った解決方法を検討してみましょう。
