【体験談】「3000万払えば離婚してやる」DV・モラハラ夫に依存していた私が離婚するまで

更新日: 2023年05月08日

「とにかくモラハラのオンパレードでした。それなのに離婚を考えられなくて」そう話すのはメディア関係の仕事を営むUさん(34)。警察を呼ぶほどのDVを受け、「お前には何の価値もない」といった暴言を浴びせられていた。さらに夫は約1000万円にも及ぶ借金を抱え、一部Uさんが肩代わりしていたにも関わらず、Uさんは元パートナーに精神的に依存している状態だったという。彼女はどのようにして離婚を決意することができたのか。Uさんに話を聞いた。

月収5万円でもデートに3万円「彼の誇大性を見抜けなかった」

――Uさんはタレント活動をしていたのですよね。

大学院生の時にストリーミング配信をするなどの、タレント活動をしていた時期があったんです。新卒で東京にある大手企業に就職をしたのですが、副業禁止だったためタレント活動は一旦休止しました。

――元パートナーとの出会いについて教えてください。

タレント活動をしていたのでファンの方からSNSでコメントやダイレクトメールをいただくことはあったのですが、その中の一人からダイレクトメールで「ぜひお会いしてお仕事を紹介したいです」といったことを言われて。

同時に職務経歴書が送られてきて、SNSのアカウントに顔写真が載っていたこともあり、信用してしまったんですよね。当時はオフ会などもありましたから、インターネット上で知り合った人と実際に顔を合わせることに、そこまで抵抗はありませんでした。

会ってみると、6つ年上の彼は食事代など全て負担してくれました。何よりも私の活動について褒めてくれることが嬉しかったです。その頃は社会人一年目で会社にうまく馴染むことができず人生のつまずきを感じ、自己肯定感が一時的に低下していたタイミングでもありました。

そんな中、かねてよりの夢だったタレント活動を後押しするような言葉をかけてくれる彼に徐々に依存してしまって。「Uには才能がある。Uのことをプロデュースしたい」という甘い言葉に誘われ、お付き合いをすることになりました。
Uさん

――どのような経緯で結婚に至ったのでしょう。

お付き合いをすることになってから、彼からメンタルの病について打ち明けられました。「今はもう治りかけている」というニュアンスで話していましたが、メンタルの薬を大量に飲んで不安定なことも……。彼が私の家に遊びに来たある時、大家さんに突っかかる言動をしてしまい、私は退居処分となってしまったんです。

会社と家の距離が近かったこともあり、私の彼が問題を起こしたことは社内に知れ渡り、居づらくなって私は会社を退職しました。そうして責任を感じた彼と、住む場所と職を失った私の同棲生活が始まりました。

そうしてお付き合いをしてから約一年、なし崩し的に結婚するに至ったのです。唯一、父だけは結婚に反対していましたが、私と母は彼のことを性善説で見ていたのでしょう。彼の本性を見抜くことができなかったんです。

彼は私と知り合うより以前、大手IT企業に勤めていましたが独立するために退職したと話していました。しかし私と出会った頃には、既に借金を抱えて実家に住む無職の状態。結婚した時には、時々知識のない方にちょっとした情報を提供してコンサル料として数万円いただくといった、少し怪しいこともしていたようですが、彼の経済状況を知ったのは入籍後でした。

――なぜ本性を見抜くことができなかったのでしょうか?

彼はとにかく見栄を張る性質で、小さな実績を大きく見せることに長けていました。今思えば、彼は自己愛性パーソナリティ障害(※)を抱えていたのだと思います。
※自分の能力を過大評価し、自分の業績を誇張し、他者の能力を過小評価する特徴のある人格障害の一種

そう思う理由の一つにお金の使い方があって。私と出かければお金は全て彼が出しますし、ブランド物もよく買っていました。私は倹約をするタイプなので身の丈に合った生活をしたかったんです。

彼にそう伝えると「それはおかしい。自分を大切に思うのなら良いものを買わないと」と言って、洋服は百貨店で買っていましたし、ゴルフクラブも高価なものを使っていました。その当時の彼は月に5万円ほどしか収入がなかったのに、一回のデート代だけで3万円ほど使っていて……どう考えても借金になりますよね。

それでも私は全く見抜くことができず、彼の借金を知ったのは結婚してからです。全ての借金を把握していたわけではありませんが、中古の高級車のローンが300万円ほど、私が肩代わりしていた借金が100万円ほど。さらに彼の父親への借金もあったようなので、合わせるとおそらく1000万円ほどの借金があったのではないかと思います。

彼はIT系のベンチャー企業で月50万円の業務委託のお仕事をしていた時期もありましたが、2カ月ほどで辞めてしまったので、それを切り崩しながら生活していました。私の失業保険で生活をしていた時期もありますし、段々と私の持ち出しが多くなって。

テンプレ通りに外界との繋がりを絶つモラハラ夫

――結婚後、状況は変わったのでしょうか。

自己愛性パーソナリティ障害など元々の彼の性質のせいか、借金や仕事への不安のせいか、一緒に暮らし始めた頃からモラハラが始まり、精神安定剤を飲んで暴れることが増えてきました。

土下座を強要されたり、胸ぐらを掴まれたり、飲んでいたビールをコップごと壁に投げつけたり。「なぜ俺の気持ちがわからないんだ!」と、昼夜逆転していた彼に朝まで叱責されることも日常茶飯事でした。

それでも、その頃の私は「もうこの人しかいない」と思っていて。絆が強く共依存のような感じでした。母に宛てた当時の手紙を読み返すと「彼は本当に良い方で、心から私のことを気にかけてくれている」と書いていたんですね。洗脳されていたというか、モラハラを受けている意識は全くなかったんです。

けれど、徐々に私も精神面に不調をきたし、胸が重くなって起き上がることすらできなくなる日がでてくるようになり、元夫が飲んでいる薬を私にくれたりして。心身共にボロボロの状態で、結婚後体重が30キロ代にまで落ちてしまいました。

私は仕事を辞めてから芸能活動を始めたばかりで、まだまだ軌道に乗っていない常態。彼は働いていませんでしたし、生活が立ち行かなくなってきて。見かねた私の父が迎えに来て、私を実家に連れ戻したのです。
※写真はイメージ(iStock/cyano66)

――では、ご実家で離婚の手続きを進められたのですか?

いいえ、実家に戻っても私は全く離婚する気がありませんでした。私が何とか頑張ればいいんだ、と思っていて。

別居生活が一年近く続く中で、実家の近くでアルバイトをしながらコツコツとSNSなどでの発信を続けていたのですが、あるときメディアで注目されて。多くの方に名前を知っていただきタレント活動が軌道に乗ったことで、ありがたいことにまとまった収入を得ることができたんです。

また東京に戻りたいと私から申し出て、再同居することになりました。彼の収入がないことはわかっていたので、金銭的な負担は全て私持ちでした。

――再同居後、元パートナーからUさんへの接し方に変化はありましたか?

約一年ぶりに彼との生活を再開したのですが、私へのモラハラやDVが止むことはありませんでした。彼が薬を飲んで暴れている時に、身の危険を感じて警察を呼んだこともあるのですが、「妻は精神的におかしいので、彼女の言うことは聞かないでください」と言われ、警察の方も戸惑っていた様子で。一晩だけでも泊めてもらいたいとお願いして、その日は保護していただきました。

今振り返れば、モラハラをする男性にはテンプレートがあって、「俺の言うことだけを聞いていればいい」と女性の周りの人間関係を貧しくするのですよね。元夫には「お前みたいなクズは俺しか面倒を見切れない」といったことを何度も言われていたので、この人と別れてしまったら私は人間としての価値を失ってしまう……そんな風に思っていたんです。

結婚してからというもの、友人や周りの人に話せないことばかりだったので相談することもほとんどありませんでしたし、たとえ何かアドバイスをもらったとしても、あの頃の私の耳には届かなかったのだと思います。

依存症などで言われていることと同じように、底つきを体験(※)をしなければ、そこから抜け出そうとすら思えない。第三者のアドバイスを聞けるようになった時点で洗脳が薄れている状態なのではないでしょうか。
※アディクションを絶つきっかけとなる強烈な体験のこと

「3000万払えば離婚してやる」話し合いでは解決せず弁護士に相談

――Uさんの場合はどのようにして元パートナーからの洗脳が解けたのでしょう。

仕事でテレビ番組のロケに行った際、共演者の方に「Uさんは彼氏いるの?」と聞かれて。結婚をしていることもお話していなかったので、その場にいた方々は驚いたようでしたが、日常生活のことを淡々とお話したところ、さらに驚かれた様子でした。

「それって大丈夫なの?もし何かあればうちの事務所にいつでも来てくださいね」と声をかけていただいたことで、もしかして私は心配されるような状況にいるのかもしれない、と気付き始めました。

レギュラー番組に出演し、毎週のように共演者の方と顔を合わせるようになってからというもの、彼との閉じた関係しか持てていなかった私に、少しずつ他の人との人間関係が形成されていきました。この結婚生活の不自然さに、ようやく客観的な視点を取り入れることができたのです。そうして離婚を決意することができたので、当時の共演者の方には今でもとても感謝しています。
Uさん

――すぐに離婚できましたか?

それ以前に夫から脅しのように「もう離婚する」と言われたことはあったのですが、その度に私が「離婚しないでください」と頭を下げていた状況がありました。そんな私が突然離婚を切り出したので元夫は衝撃を受けた様子でした。

実際に仕事のギャラ交渉などを担ってくれた部分はあるのですが、「日割りで計算すると、お前に対するコンサル料は3000万円だ。これを払えば離婚してやる」と言われたり、一カ月ほど話し合いを重ねていたのですが全くらちが明かず。私では手に負えないと思い弁護士に相談しました。

弁護士という権威が間に入ったことで、私が本気で別れたがっていることを感じ取ったのか、内容証明を送った途端に元夫は大人しくなりました。結果的に話を切り出してから2カ月弱で離婚することができたんです。

元夫に支払い能力がないことはわかっていたので慰謝料等はゼロ。彼に貸していた200から300万円ほどのお金は返してほしかったので裁判を検討したのですが、母や弁護士に裁判で精神的苦痛を長引かせるよりも迅速に離れる方が良いと勧められて諦めました。

――モラハラを受けているとアドバイスが耳に入らないとのことでしたが、今モラハラで悩んでいる方に向けて伝えられることがあるとしたらどんなことでしょう。

副業でもアルバイトでも、本当に何でもいいのでお金を貯めること。お金があればひとまずホテルに逃げることができますし、10日、30日と猶予期間が長いほど本格的に逃げる準備を進められます。

それに、お金を得る過程で必ず外の世界と関わりが持てるはずです。私自身、仕事を通して第三者との繋がりが生まれたことでいい方に向かうことができました。自尊感情をすり減らされ、家の外に出られない状況での離婚はなかなか難しい。とにかく一歩踏み出して、働くことが大切なのだと思います。

ーDV・モラハラ夫から逃れるためにー

聡明で凛とした姿が美しいUさんは、最後に「もっと早く離婚すれば良かったと思いますし、そもそも彼と結婚したことが間違いでした」と語った。

Uさんは結果的にDV・モラハラ被害を訴えることはなかったが、裁判を起こした場合、どのような保証を得ることができたのだろう。DV、そして証拠が残りにくく立証するのが難しいとされるモラハラについての対処法をCSP法律会計事務所・池田 佳謙弁護士に聞いた。

【池田 佳謙弁護士監修】モラハラ・DV被害を受けた時の対応

現在の裁判実務におけるモラハラの慰謝料相場は、10万~300万円程度の金額です。相場とはいえ大きな金額差がありますが、案件ごとにモラハラの程度、期間、被害結果、加害者の社会的立場や年収などの要素によって金額が決定されます。

DV案件についても、行為の程度、期間、加害者の社会的立場や年収などの要素によって金額が決定されますが、DVの場合は暴力行為によって甚大な被害結果が生じる場合がありますので、怪我の程度によって金額が大きく変動することが多く、案件によっては300万円以上の慰謝料(損害賠償)を請求すべきものもあります。あなたがお悩みの件ではどのくらいの慰謝料請求が見込めるのか、詳細は弁護士にご相談ください。

次に、相手の支払能力と回収可能性についてご説明します。相手に収入があれば、その収入を差し押さえることで権利を確保できますので、回収可能性が高いといえます。他方、相手に収入がない場合ですと回収可能性はほとんど0と言わざるを得ないです。もっとも、相手に収入がなくとも、相手名義の資産があれば、その資産を差し押さえることで回収することは可能です。相手の資産とは、解約返戻金のある保険契約や、退職金、預貯金、不動産、高級自動車などです。あなたがお悩みの件では権利の実現が見込めるのか、債権回収可能性がどのくらいか、詳細は弁護士にご相談ください。

証拠として写真撮影する方が多くいらっしゃいますが、証拠として不十分であることが多いです。第三者がその写真を見て、誰が、何をしたかを理解できるか否かを検討してみてください。

次に、日記やメモに記録している方も多くいらっしゃいますが、こちらも注意が必要です。日記やメモは、実際にそのような事実が無くても作成することができる証拠なので、証拠としての力を低く評価されることが多いです。そのため、日記やメモを準備する場合は、補助的な証拠として考えた方が良いです。

さらに、診断書を証拠として残している方も多くいらっしゃいますが、こちらも注意が必要です。診断書の中で、医師が説明を記載してくれることがあるのですが、その説明はあくまで被害者側の一方的な説明に基づいて記載されたものですから、実際にそのような事実があったか否かとは無関係だからです。そのため、診断書も補助的な証拠と考えた方が良いです。

証拠として有効なのは、ボイスメモ(録音データ)、動画、行為前後のメッセージ履歴、警察への通報履歴や警察が作成する調書などです。どのような証拠が揃っているかは、その後の交渉や裁判の帰趨を大きく左右しますので、早い段階で弁護士に相談することを強くお勧めします。
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弁護士: 東京弁護士会

池田 佳謙

CSP法律会計事務所

〒160-0004 東京都新宿区四谷1-20-4中村ビル別館1階

平日:10:00〜21:00 土曜:12:00〜21:00

初回無料

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