【体験談①】母に突然告げられた離婚と転居、兄妹で私だけが気付いていた母の浮気

更新日: 2023年02月03日

小学6年生の卒業を控えたある日、母親から「父には内緒で家を出て東京に引っ越す」と告げられ3人の兄妹とともに新潟県を発った中沢美夢さん(23歳・仮名)。父親の金銭トラブルに端を発し、母親が離婚を決意する中で、当時中沢さんだけが気付いていた母の秘密とは何だったのでしょう。前編では、両親の離婚時の状況、離婚後の生活、実の父親と正反対だという再婚相手への想いについて聞きました。

卒業間近の1月、夜逃げ同然で東京へ

――子どもの頃のことから教えてください。

父親は経営者でしたが、仕事が忙しかったため自宅兼オフィスで過ごすことが多く、新潟市内にあった自宅にはあまり帰ってきませんでした。母親はずっと専業主婦だったので、父が家事や育児をすることはなく、行事にもあまり参加しませんでしたし、家族で出かけた思い出や、叱られた記憶もほとんどありません。

大人になってから父親らしいことを一切してもらえなかったと気付きましたが、当時は“たまに家にいる男の人”という感覚で。両親の仲がいいという印象もなかったですね。

――離婚の原因は何だったのですか?

一番の原因はお金だったと聞いています。

田舎なので、経営者の父にいろいろな人が寄ってきて商売の話を持ちかけたようです。よくも悪くも断り切れない性格が転じて、不動産関係の事業に手を出したのですが、うまくいかず借金を抱え込むようになったんです。

私を含めて兄妹が4人いるのですが、一番上の兄の大学進学費用の話が出てきた頃から両親がもめるようになりました。ヒステリックになって食器を割るなど、DVの一歩手前くらいまでのことが家の中で起こり始めたんですよね。

家庭が日に日に崩れていく中、小学6年生のある日、母から突然長文のメールが届いたんです。
※写真はイメージ(photoAC)

――一緒に暮らしていたのに、口頭では伝えにくい内容だったのでしょうか。

面と向かって話すことができなかったのだと思いますが、離婚をすること、来月から東京で暮らすこと、父は離婚に賛成していないこと、こっそり家を出るから誰にも話してはいけないこと……そういった内容を手紙で知らされたという感じです。

なんとなくうちはこのまま続かないだろうと思っていたので、離婚すると聞かされても、そこまで驚くことはなかったんですよね。ただ、東京に行くことは聞いていないぞと。離婚よりも居住地が変わってしまう衝撃の方が大きかったです。

夜逃げ同然で東京に引越すまでのスピード感はすごかったのですが、一方で母は離婚するために必要な証拠を写真に残すなどして前々から集めていたようです。

――小学6年生というと卒業間近ですよね。ご友人にも別れを告げることはできなかったのですか。

本当に仲のいい友だち一人か二人だけには伝えましたが、他のクラスメイトは“突然姿を消した人”という認識だと思います……。

引越しをしたのは1月だったので、中学3年生だった二番目の兄は受験の前月に東京行きが決まったという状況でした。お金がなかったので「ここの都立高校だけ受験しなさい」と言われていたので特に大変だったと思います。

一番上の兄は高校を卒業する年でしたが、大学進学はせず就職することになりました。一番下の弟はまだ5歳だったので、弟には実の父の記憶自体がほとんどないんですよね。


慣れない都会、それでも母親が東京を選んだ理由

――東京に引っ越してからの暮らしはどうでしたか。

一軒家からアパートに引っ越したので、母と兄妹4人が住むには、すごく小さな家になってしまいました。

学校は……毎日すごく怖かったです。田舎者という扱いを受けたり、身長が高いことが目立ってしまったようで軽いいじめも受けました。相談できる人もいなかったですし、半年くらいは全く馴染めず「東京の人は嫌い」と感じる毎日でした。

最初は片親であることがコンプレックスで、親が離婚していることを誰にも話すことができなかったのですが、東京だと離婚はそんなに珍しいことではないので、中学生、高校生と年齢を重ねるごとに軽く話せるようになりましたね。

田舎ではすぐに噂が広まってしまうけれど、東京では誰も気にしない。母はそれもあって東京を選んだと言っていました。

それから、ずっと専業主婦だった母も医療事務の仕事をすることになって。地元では仕事がなかったこともあり、東京を選んだとも話していました。

――利点の多い東京に引っ越すために、母親は準備を進めていたのですね。

お付き合いしている男性が東京に住んでいたことも決め手の一つだったのかもしれません。

帰りが遅くなる母親に対して反抗はしましたが、それでもやはり母親なので好きなんですよね。母親がこれまで苦労してきたことを知っているので、それくらい黙認しなければと。

実は、父の金銭トラブルから家庭が荒れていく中、母親に父親以外の男性ができたことに新潟に住んでいた頃からなんとなく気付いていたんです。当時、私のことをまだ子どもだと思って、母親が目の前で電話をしていたのですが、母親の電話相手が男性だということは雰囲気でわかるんですよね。

だから私は、自分が親になったら子どものことを子ども扱いするのはやめようと思います(笑)。でも、後から二人の兄たちに聞いたところ、兄たちは母にそういう相手がいたことを全然知らなかったと言っていました。

結局、ほどなくして母はその男性と再婚することになりました。

実の父と「正反対」な再婚相手

――母親の再婚相手はどんな人でしたか。

4人の子どもを育てる母を受け入れてくれた人なので、すごく責任感がある人なのだと思います。

ただ、中学二年生だった私は思春期かつ反抗期だったこともあり、厳しい父親に反発して「大学生になったら絶対に家を出てやる」と思いながら過ごしていました。ずっと仲良くはなかったですね。実の父の干渉がなかった分、正反対というか。

――再婚後、養子に入ったのですか。

養子に入ったのは一番下の弟だけです。そのため、私たち兄妹3人は実の父の名字で、弟だけが再婚相手の名字なんですよね。

弟は5歳から義理の父親と生活を共にしているので、兄妹の中では一番父子の感覚があるのではないかと思います。
取材中の中沢さん

――中沢さんのお兄さんたちと再婚相手の関係はどうでしたか。

兄に関しては今も他人のような感じで、親子関係を築くのはもう難しいでしょうね。それでも感謝の気持ちはあるのではないでしょうか。

大きな家に住んで何不自由ない生活を送ることができましたし、旅行にもたくさん連れて行ってもらいましたし。一度は進学を諦めた一番上の兄も含めて、4人全員大学に行かせてもらうこともできました。

――4人の子どもたちを大学に進学させるとなると、相当な費用がかかりますよね。実のお父さんから養育費をもらっていたかどうかわかりますか。

最低金額を受け取っていたと聞いています。ただ、再婚相手も離婚経験があり、子どもが一人いるそうです。再婚相手が前妻に支払っていた金額と、実の父からもらっていた養育費は同額くらいだと聞いていますが、本当のところはよくわかりません。

―離婚のきっかけと過程―

父親の金銭トラブルがきっかけとなり家庭が荒れていく中で、離婚を決意した中沢さんの母親には懇意にしていた別の男性がいたといいます。当時小学生の中沢さんは、その秘密を知りながらも胸に秘めていました。

そして現在23歳になった彼女は「母にお付き合いする男性ができたのは“離婚までの流れ”の一部でしかないんです」と続けます。

仮に離婚のきっかけが夫にあり、その過程の中で妻が浮気をしていることが明るみに出てしまった場合「有責配偶者」となるのはどちらでしょう。その定義についてAuthense法律事務所の安部直子弁護士に解説していただきました。

【安部弁護士監修】どちらが「有責配偶者」となるか

まず、夫婦のどちらが「有責配偶者」になるかですが、今回の事案である夫が事業で失敗したという金銭トラブルと、妻の不貞行為であれば、不貞行為を行った妻側が有責配偶者となると思います。

また、今回のケースでは、夫から妻へのDVの要素もあると思われますが、DVといっても、夫婦喧嘩の際にお皿を割るという比較的程度の軽いものだと思いますので、いずれにしろ、不貞行為を行った妻側が有責配偶者となると思います。

なお、裁判官によっては、元々、夫婦仲が悪化していたという事情を、慰謝料額の判断材料として考慮することはあります。

今回のケースの事案とは少し離れますが、DVやモラハラの証拠が、写真や、診断書、メールやLINEのやり取りなどで証拠として残っている場合、DVやモラハラの程度や、夫婦間で離婚協議が行われた時期によっては、夫側が有責配偶者になる場合もあります。

また、どちらにも婚姻関係破綻の原因があり、両方の破綻原因が相まって離婚に至ったと裁判所が判断した場合、離婚は認めるものの、どちらにも慰謝料支払義務なしという判断が出る場合もあります。

次に、妻に別の男性がいるということを夫に知られなければ問題ないのかという点については、夫に知られなければ、調停においても、裁判においても、離婚原因にもならず、慰謝料請求原因にもなりません。そのため、倫理的な話や道義的な話を抜きにすれば、知られなければ問題ないという回答になります。


後編:【体験談②】親権が争われた離婚裁判、別居親である父の元に家出をした娘の想い
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弁護士: 第二東京弁護士会

安部 直子

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