【体験談①】妊娠報告に「なんで今?」親の反対を受けたモラハラ夫との離婚
更新日: 2023年05月22日
結婚してすぐに離婚したかった――。その矢先に妊娠が発覚、夫から「なんで今妊娠するの?」と衝撃の発言を受けた小口佳菜さん(37歳・仮名)。モラハラ夫との離婚に反対したのは小口さんの母親でした。前編では、離婚準備を進めるため一日のうちに1都2県を往復した日々までの話をお届けします。
「なんで今妊娠するの?」モラハラ夫の許せない発言
――元パートナーとの結婚生活から教えてください。
出会いは会社の先輩の結婚式。二次会で仲良くなり、一年ほど付き合って結婚しました。本当は結婚する前に同棲したかったのですが、うちの親がちょっと古いというか「同棲するなら結婚を」という考え方だったんですよね。
いざ一緒に生活してみると、全面的に合わなかったんです。掃除や片付けができないことも嫌だったのですが、段々とモラハラを感じるようになって。
旦那は7歳年上だったこともあり、付き合っているときは私のことを「年下でかわいいね、ヨシヨシ」といった感じで接していたのですが、結婚して家の購入の話がでた時に、お互いの収入が明らかになったんですね。
それで向こうより私の方が結構稼いでいることがわかったんです。プライドが傷ついたのか、そこから何をするにも私にマウントを取るようになり、当たりもきつくなってきました。
法人営業職だった私は契約を取れば帰れましたが、システムエンジニアの旦那は残業代で稼ぐ感じだったんですよね。「喋ってるだけでお金もらえていいよね」「仕事のことが全然わかっていない」と言われたこともありました。
――元パートナーの帰宅が遅いとなると、食事なども小口さんが作っていたのでしょうか。
私は辛い食べ物が好きなので豚キムチを作ったのですが「何考えてるの?辛いの入ってるじゃん。全部キムチ抜いてくれる?」と言われたり。魚を出しても「俺は嫌いなのに」と、食事に対する文句もすごかったですね。
結婚して割と早い段階で「もうダメだな、離婚したいな」と思っていたのですが、その矢先に子どもができていることがわかったんですよ。
これをきっかけに、旦那が変わってくれればという期待もあり旦那に妊娠を告げたところ、「なんで今妊娠するの。仕事できなくなったら家買えないじゃん。どうするの?」と言われて。もうその時点で、私の気持ち的にアウトなんですよね。
でも、子どもができたから離婚はダメだと私の親に反対され、どうにかしたいのにどうにもできずにいて、強いストレスを感じたせいか切迫流産になってしまったんです。
安静に過ごさなければならなかったのですが、(すでに仕事は辞めていたものの)仕事でもプライベートでも外に出て人と喋ることが好きな私にとっては、家にこもりっきりの生活は結構つらかったんですよね。
それでポロッと「寝ているだけってしんどいな」と弱音を吐いたら、「外で働くことと家でずっと寝ていられるの、どっちがラクだと思ってるの?」と言われました。
――切迫流産で心身共に憔悴する中、その言葉はつらいですね……。
そんな中、金曜の夜に出血があったので翌日病院に行かなくてはならなくて。千葉市に住んでいたのですが、通院していた病院が遠方だったことに加え、絶対安静なので電車ではなく、車で病院に来るようお医者さんに言われました。
旦那に付き添いを頼んだのですが、その日は友人との大事な約束があるから無理だと断られ……。
その時、タイミングよく実家から電話がかかってきたので、出血のことや旦那に付き添いを断られたことを話すと、「そんな人には任せられない。実家に帰ってきなさい」とうちの親が怒って、翌日病院に付き添ってくれたんです。そのまま病院で紹介状を書いてもらい、転院して地元で里帰り出産をしました。
家庭内別居状態で2人目を妊娠
――旦那さんの反応はどうでしたか。
うちの親に怒られたこともあり、その時は謝ってくれましたが、その後もいろいろ嫌なことがたくさんあってうまくいかず、家庭内別居のような状態になったんですよ。向こうが会社に行ってから娘と起きて、帰ってくる頃には部屋に入るというような感じです。
でも、私は絶対に娘に兄妹が欲しかったんです。この人とは無理だと思いましたが、いろいろ考えた末、子どもを一人っ子にしない選択をして。運よくすぐに2人目を妊娠しました。
――2人目を妊娠、出産後も家庭内別居の状態が続いていたのですか。
そうですね。でも休日に向こうが家にいて、手が欲しいときにはやってもらったりしたこともありました。
子どもが階段を登ろうとしてたので「ちょっと見てて」と頼んだら、本当に見てるだけで子どもが転んでしまったんです。それ、見てるって言わないんだよね……と思い、掃除や洗い物などの家事を頼むことにしました。
――平日はほとんど子どもと顔を合わすことがない状況だと思うのですが、旦那さんから積極的に子どもに関わりたいという様子は感じませんでしたか?
自分から何かやろうみたいなことはありませんでした。文句を言いながら、言われたことはやるという感じでしたね。
――ワンオペで小さなお子さんを育てるのは大変ではありませんでしたか。
特にお風呂が大変でしたけれど、どちらかといえば楽しかったんですよね。だから何とかやっていけたんです。
※写真はイメージ(iStock.com/Edwin Tan)
親の反対で離婚できずに流れた6年の歳月
――それでも離婚願望が消えることはなかったのですか。
いずれ離婚するつもりでした。子どもが巣立ってから熟年離婚するか、子どもが小さいうちに離婚するか、どちらがいいのだろうと迷って、離婚している友人も含めて相談したところ、みんな口を揃えて「早い方がいい」と言うんですよね。
確かにそうだよね、と。険悪だったり微妙な家庭環境の中で育つよりも、早く離婚できるよう進めようと思ったのですが、なかなか突破できなかったのは親でした。
――小口さんの親は、家庭の事情を知っていますよね。
いろいろと話はしていたのですが、それでも結婚して子どもがいる以上、責任があるから離婚は絶対にダメだと言われてしまいました。
私の母親自身、離婚したかったけれど子どもがいるから我慢して結婚生活を続けてきた人なんですよ。でも私は「子どもがいるから離婚しない」と言われていたことがすごくイヤで、「好きにすればいいのに」と感じていたんです。
だから私は自分の子どもに同じ思いをさせたくなかったし、お母さんが笑っていれば子どもは多分幸せだろうと思っていたので、諦めずに親に離婚したい気持ちを伝え続けていました。
そうして結婚してから6年が過ぎた頃、旦那との生活のストレスから急激に体重が落ちてしまったんです。たまたま親戚の集まりで母と顔を合わせた際に、私の痩せた姿を見て「こんなふうになってしまうのなら、もう離婚していいよ」と言ってくれました。
それなら離婚しようと。実はその前から、資格を取得して在宅でできる仕事を始めて、コツコツと離婚資金を貯めていたんです。
そうした中「あ、もうダメだ」という瞬間が訪れ、旦那に離婚を切り出しました。
1都2県を往復し離婚準備に奔走
――旦那さんは離婚に応じましたか?
向こうは「子どもが2人いてどうやって生活していくんだ。お前に離婚なんかできないくせに、何を言ってるんだ」という感じで、全く話し合いになりませんでした。
そんな時、横浜市に住んでいた母方の親戚が亡くなり、その家が空き家になったんです。母や親戚たちに許可を取り、離婚して生活が落ち着くまでの間、その家に住まわせてもらうことになりました。
とはいえ、すぐに引越しできなかったので、東京の姉の家にとりあえず逃げ込む形で2月の終わりに子どもたちと家出をしたんです。
東京の姉の家で寝泊りして、卒園間近の長女と年少の次女を千葉の幼稚園に送り、その間に千葉と横浜の役所で相談したり引越しの手続きを進めたり。離婚調停を考えていたのでそのための準備も進めていました。
さらに、向こうが仕事に行っている間に千葉の家から荷物を運び、空き家だった横浜の家を住める状態に整えていたのも、この時間でした。
※写真はイメージ(iStock.com/bernardbodo)
千葉、東京、神奈川を往復する生活が、長女が卒園する3月中旬頃まで2~3週間続いて。今、同じことをやれと言われてもできないくらい大変でしたが、それくらい勢いがあったんですね(笑)。
ー離婚に伴う転居のポイントー
その朗らかな笑みに、小口さんと話していると思わずこちらの表情も緩んでしまいます。
結婚して間もない時期から離婚を意識していたものの、実際に離婚へ向けて動き出すことができたのは6年後のことでした。1都2県をまたぎ、子どもが幼稚園に行っているわずかな時間で慌ただしく離婚準備を進めていた小口さん。
離婚に伴い、自治体をまたいで転居する際のアドバイスをAuthense法律事務所の江藤朝樹弁護士に教えてもらいました。
【江藤朝樹弁護士監修】離婚による転居、どこの弁護士事務所に依頼すればよいか
離婚が成立していない状態で、自治体をまたいで転居する際、妻と子どものみ住民票を移すことは可能です。またその際、夫の同意は不要です。
そもそも住民票を移したほうがよいのかという点は、転居先の自治体で、子どもを学校へ通わせたり、その他種々の行政サービスを受けたりしたい場合は、住民票を移した方がよい場合が多いでしょう。ただし、転居先を夫に知られたくない場合や、自分が住宅ローンの名義人になっている場合には注意が必要です。
そして、最も重要なことは、信頼できる弁護士へ依頼することです。
オンライン手段の充実により、地理的な距離による不利益は大幅に小さくなっています。いずれの地域の弁護士へ依頼するにしても、その弁護士の方針や費用等につき、十分に納得できる弁護士へ依頼いただきたいと思います。
費用の面では、確かに、調停や訴訟の手続上、代理人である弁護士が裁判所へ出向かなければならない場面もあり、その場合、弁護士の日当や交通費が生じます。そのため、手続を行う裁判所へアクセスのよい弁護士へ依頼するほうが日当や交通費の負担は小さくなることが多いでしょう。
ただ、最近は裁判所も積極的にオンラインによる手続を取り入れており、当事者や代理人弁護士が遠方の場合は手続の大部分をオンラインで行うことも多くなっています。したがって、遠方の裁判所で手続を行う場合でも、費用面での負担は以前より大幅に軽減されているといえます。
また、現在住んでいる地域の弁護士へ依頼すると、弁護士と直接面談したり、資料を渡したりすることが容易であるという利点があります。
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