【不動産専門家が回答】ペアローンと売却拒否で裁判中…離婚時の不動産問題のベストな解決策は?

更新日: 2024年12月23日

離婚・夫婦問題の解決をサポートするリコ活と、離婚時の不動産を中立な立場で査定するマークスライフ株式会社(中立不動産運営)が共同で、離婚時の不動産の課題解決に向けた取材を実施しました。妊娠・出産を機に夫のモラハラが悪化し、3年間の別居を経て離婚裁判中のAさんのケースを通じて、ペアローン物件の問題や解決への道筋を探ります。

夫のモラハラが原因で3年間別居、現在離婚裁判中……

――Aさんの現在のご状況について教えてください。

Aさん:2018年に家を購入しましたが、2022年から別居をしています。私と娘は実家に移り、購入した家には夫が一人で住んでいます。

一年半の離婚調停を経て、現在は裁判中です。

――別居に至った経緯をお聞かせいただけますか?

Aさん:一言で言うと夫のモラハラです。本人は無自覚なのだと思いますが、モラハラ的な発言が増えてきて、妊娠中出産後も育児家事に協力してもらえず、私がいっぱいいっぱいになって育児休業中にうつ病を発症してしまいました。

メンタルカウンセリングを受けながら職場復帰し1年半ほど耐えていましたが、夫のある行動がきっかけで崩れてしまって仕事を休職し、別居が始まりました。その職場には復帰できず、退職しています。

――いつから離婚を考えるようになったのでしょうか。

Aさん:離婚については同居中から考えていて、離婚調停に踏み切ったのは別居から1年後です。調停を申し立てる前にも離婚したい旨は相手に伝えていました。

――相手の反応は?

Aさん:相手は「離婚したくない」の一点張りです。現在の離婚裁判の最大の争点も、離婚するか、しないかという点です。

持ち家の問題も調停で決めたかったのですが、なかなか折り合いがつかず、裁判で決めることになりました。

※写真はイメージ(iStock.com/herstockart)

家に戻る意思がない妻と売却に応じない夫、平行線をたどる不動産売却問題

――不動産処分について、パートナーとどのような点で意見が分かれているのでしょうか?

Aさん:まず、私は離婚したいのですが、もし離婚に至らなくても家に戻るつもりはありません。

また、ペアローンのため、別居を続けることは契約違反になってしまいます。さらに、うつ病で退職後、フリーランスとして働いていますが、まだ収入が安定せずローンの支払いも厳しい状況です。

一方、夫は「家族3人で住んだ家だから」という理由で売却に反対しています。私がローンの支払いが難しいことや家に戻る意思がないことを説明しても、売却を受け入れてもらえない状況です。

――現在もローンを支払っているのですね。

Aさん:半分ずつで、私も夫も5万円弱各自で支払っている状況です。しかし、私は収入が安定していないので実家の親に助けてもらっています。親への負担をなくすためにも、できるだけ早く売却したいのですが……。

また、3年の別居期間中、家に入れたのは荷物を取りに行った1度きりです。その後も「住宅関連の必要書類を取りに行きたい」と調停で申し出ましたが、拒否されました。代わりにダンボール1箱分の書類が、弁護士事務所経由で送られてきただけでした。

自分の家なのに立ち入ることもできず、それでもローンだけは払い続けなければならない。この状況に精神的な負担を感じています。

※写真はイメージ(iStock.com/mapo)

――Aさんの理想的な着地点としては売却後の残金を折半することでしょうか?

Aさん:そうですね。しばらくは実家に住み、収入が安定して自立できれば、子どもがのびのびと過ごせるように娘と2人で暮らせたらと思っています。

――不動産に関して、専門家への相談状況を教えてください。

Aさん:弁護士に相談しているのみで、不動産の専門家への相談は行っていません。

物件の査定については、同居時に一度、メールでの無料査定を利用しました。その際は立地、平米数、築年数の情報だけで概算の査定を受けましたが、3年以上前のことなので具体的な金額は記憶にありません。

物件売却の判断基準は「査定額と残債のバランス」が重要

――中立不動産を運営するマークスライフ様に質問です。離婚時の不動産売却の基本的な流れを教えていただけますか?

マークスライフ株式会社(以下、マークス):不動産を売却したい場合、離婚問題とは切り離して、まず最初に行うのが物件価値の査定です。不動産がいくらで売却できるのか確認した後は、 住宅ローンの残債よりも売却価格が上回るのか下回る可能性があるのかを確認し、売却方針を決定していきます。

Aさんにお尋ねしますが、住宅ローンは当初いくらで組まれましたか?

Aさん:3500万円ほどです。

マークス:金利などによって変わってきますが、築7年ですからおそらく600万円~650万円ほど返済済みかと思います。3500万円から600万円~650万円を引いた2850万円~2900万円以上で売却できるかどうかというところですね。

――別居から3年経って、不動産の価格帯や市場状況は変化しているのでしょうか?

マークス:物件にもよるため一概には言えませんが、築年数が経過すると一般的には建物の評価は下がります。ただし、〇〇区(東京都23区内 北西部)は市場が3年前より上がっている場所もあるため、査定価格はそれほど変わらないと思います。

戸建ての場合、7年間でどれくらい建物のメンテナンスをされたのかも重要です。あと数年で外壁や屋根の修繕時期になってきますので、そのあたりで価格が前後すると思います。

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ペアローンと信用履歴の関係、離婚時に注意すべきポイントは?

――Aさんのようなケースは相談内容として多いのでしょうか?

マークス:離婚時の不動産に関する相談で、特に多いトラブルとしては主に2つのケースがあります。

1つ目は売却の合意が得られないケース。一方が物件に居住している場合、「売却したくない」「引っ越したくない」という理由で、価格以前の問題として売却自体が進まないことがあります。

2つ目はペアローンに関する問題です。共同で借り入れているため、どちらかが支払いを停止すると、もう一方の信用履歴にも影響が及びます。

Aさんの場合、現在は相手方がきちんと支払いをされていますが、仮に支払いを停止すると、Aさんの銀行の履歴にも傷がつくことになります。その場合、Aさんに将来的に十分な収入があっても新たな住宅ローンが組めなくなる可能性があります。

反対に、Aさんが支払いを停止した場合は、相手方の信用履歴に影響が出ることになります。

――ペアローンを組んでいる物件の離婚時の対応について、アドバイスをお願いします。

マークス:最も望ましい解決方法は、どちらかが単独で借り換えることです。この場合、物件に住み続ける方が、新たにローンを組み直すのが一般的です。

しかし、新たにローンを組む際には課題もあります。金融機関から理由を確認されるため、「金利が低いから」といった一般的な理由であれば問題ありませんが、離婚を予定しているとなると住宅ローンが組みにくくなる場合があります。

住宅ローンの審査では住民票の確認があるため、別居中で住民票が異動している場合、その理由を問われ、離婚の可能性を金融機関に察知され、審査が厳しくなる可能性が高くなります。

※写真はイメージ(iStock.com/Anucha Tiemsom)

――Aさんからマークスライフ様へ、ご質問はありますか?

Aさん:調停で「もう住む気がないので、単独ローンへの借り換えをお願いしたい」と提案したところ、相手から「それは無理だ」という趣旨の発言がありました。

仮に私が支払いを止めて信用履歴に傷がついた場合、私が将来的に住宅ローンを組むことは完全に不可能になってしまうのでしょうか?

マークス:絶対に組めなくなるわけではありません。個人信用情報の履歴は個人信用情報機関によって異なり、数年で履歴が消える銀行もあれば、10年程度保持される個人信用情報機関もあります。

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不動産の適切な査定とは?中立的視点による価格査定の意義

――Aさんは以前メールで査定されたとのことですが、メールでの査定と不動産会社で直接行う査定では、査定結果に違いが出るものでしょうか?

マークス:メールでの査定には注意が必要です。一般的に不動産会社は、お客様に物件の売却を任せていただきたいという思いから、実際の価格よりも高めの金額を提示する不動産会社もあります。

例えば、実際には3000万円程度の物件でも、3500万円といった査定額を提示することもあります。また、複数社に依頼する場合は、各社が競うように高額な査定価格を提示してくることがあります。

このように高めの査定額を信じて売り出してしまうと、実際の売却活動で支障が出る可能性があるため、不動産会社が実際に物件を確認し、市場で売却可能な適正価格を算出することが重要です。

 

※写真はイメージ(iStock.com/mapo)

――中立不動産にはどのような方々が相談に訪れますか?

マークス:離婚前後を問わず、不動産の取り扱いについて悩まれている方が多く来店されます。中には裁判進行中の方が、弁護士を介さず直接相談に来られるケースもあります。

――一般的な不動産会社と比べて、中立不動産ならではの特徴を教えてください。

マークス:最大の特徴は、弁護士との連携体制を持ちながら、中立的な立場でアドバイスができる点です。一般の不動産会社は売却前提の提案になりがちですが、当社は第三者の視点でお話を伺うことを重視しています。

特に離婚時の不動産問題は、どちらか一方の利益だけを追求すると解決が難しくなります。双方の利害を考慮しながら、円満な解決を実現できれば、その後の関係性にも配慮した対応が可能です。

 

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