【コラム#1】共同親権は”ハード”の問題、共同養育は”ハート”次第で実現できる
更新日: 2025年04月03日

離婚後も両親で子育てに関わる「共同養育」とは?法改正で注目される「共同親権」との違いを理解し、家族それぞれの形を尊重する共同養育の在り方を探ります。一般社団法人りむすび代表、共同養育コンサルタントのしばはし聡子さんに、共同養育を考えるに当たり大切なことを教えていただきました。
「共同養育」は家族によってさまざま
共同養育の定義を一言でいうと「離婚後父母が子育てに関わること」。
私たちりむすびが目指す共同養育とは、離婚した父母の間をただ子どもが行き来するのではなく、父母それぞれが互いに尊重し協力する風通しのよい関係性を築くことです。
「共同養育」という言葉から、子どもを半々で育てるというイメージを持つ方もいれば、両親が少しでも関われれば共同養育だと考える方もいます。これに正解はなく、家族によって共同養育の形は様々です。
大切なのは、離婚前の段階から共同養育について両親の間で認識を合わせておくことです。どのような関わり方をしたいのか、どの程度の頻度で交流するのか、その温度感を丁寧にすり合わせていくプロセスが重要になります。
共同養育を円滑に進めるためには、頻度や関わり方も大切ですが、それよりも重要なのは「子どもに関する変更事項があったときに親同士が円滑に修正できる関係性」を築くことが、条件よりも優先されるべきポイントなのです。
共同親権と共同養育の違いを理解する
2024年に共同親権の導入が可決されましたが、親権制度にかかわらず共同養育は実践できるものです。この2つは混同されることが多いのですが全く別のものです。ここで重要なのは、「共同親権」と「共同養育」を区別して考えること。
私たちは「ハードとハート」という言い方をしていますが、共同親権は「ハード」、つまり法律の問題であり、私たちがコントロールできないもの。一方で共同養育は「ハート」に当たり、自分自身の気持ち次第で実践可能な部分になります。
もちろん、共同親権が導入されることで「離婚しても両親が子育てに関わる」という社会的な意識づけになり、その意味では相関性はあります。結果として、共同親権の導入は「共同養育が当たり前な社会になる」という意味で大きなソーシャルインパクトをもたらすと私は考えています。
キーワードは「尊重と協力」
今回の法改正により、「婚姻関係の有無に関わらず、子どもの利益のために父母は互いに人格を尊重し協力しなければならない」という文言が追加されます。
「尊重・協力」は非常に重要なキーワードで、父母それぞれに、子どもが両親と関われるよう親同士の関係再構築に向けて努力する義務が生じることになるのです。
高葛藤ケースにおいて同居親に求められる「尊重・協力」とは、子どもに危害がない限り、夫婦の感情と切り分けて別居親と子どもの交流を早期に行うこと。一方、別居親に求められる「尊重・協力」とは、相手を責めることなく事情を汲んで、同居親を攻撃せず気持ちの面で歩み寄ることです。
共同養育は必ずしも「仲良くやらなければならない」というものではなく、様々なフェーズがあっていいのです。直接的な関わりが難しい場合は、親子交流支援団体を利用するという選択肢もあります。
もちろん、子どもへの虐待など深刻な問題がある場合は別ですが、そうでない限り、父母双方の小さな一歩の歩み寄りにより共同養育を実践していくことで、別居親は「子どもに会いたい」と強く要求することが減り、同居親は「会わせたくない」という感情が減り、悪循環が解消されていくのではないでしょうか。
大切なのは「相手が変わらないから何もしない。相手を変えよう。」ではなく自分自身が「できることから始める。自分が変わる。」という姿勢だと思います。
一般社団法人りむすび:https://www.rimusubi.com/
※この記事は2025年4月3日に公開しました
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