【コラム#2】話し合いによる離婚で「夫婦から親同士」の関係へスムーズにシフトする
更新日: 2025年05月07日

お子さんがいる場合「どのように離婚するか」が、その後の親同士の関係を大きく左右するという、一般社団法人りむすび代表、共同養育コンサルタントのしばはし聡子さん。近年注目されているADR(裁判外紛争解決手続)という選択肢について、しばはしさんが解説します。ADRが実現する「建設的な別れ方」と、その先にある共同養育への道筋とは?
納得度の高い離婚協議ができるADRと裁判所の調停の違い
私は共同養育において、離婚の「入口」の段階がとても大事だと感じています。入口で「あなたは悪くない、大変ね」と言われれば被害者意識が高まり、「相手が悪い、戦いましょう」と言われれば争いが長引くだけです。どちらにしても解決には至りません。
ぜひ「離婚条件を決めて終わり」ではなく、その先の未来も見据えた選択をされることをお勧めします。
当事者同士で話すことは難しいけれど、裁判所での話し合いは避けたいという方におすすめなのがADR(裁判外紛争解決手続)です。
ADRは、夫と妻の話し合いたいトピックが一致していれば利用できる対話の場です。離婚の条件決めはもちろん、別居に関する取り決めや親子交流の条件など、様々な話し合いに活用できます。ただし、団体によって扱えるテーマが異なるため、事前に調べておくことが大切です。
裁判所の調停との大きな違いとして、ADRは原則として当事者同席での話し合いになります。
裁判所の調停では書面でのやり取りが基本で、「相手が悪い」という主張と反論の応戦になりがちです。また、弁護士がつくことで「勝ち負け」の構図が強くなり、調停中に関係がさらに悪化するケースも少なくありません。
一方、ADRでは中立的な立場の専門家(仲裁人)が間に入り、対話を促進します。お互いが書面ではなく、相手の声で意向を直接聞くことができ、双方が納得できる着地点を探す環境が整っています。
本人同士による協議離婚とADRの違い
本人同士で話し合う協議離婚は、費用もかからず理想的な選択肢です。しかし、お互いが譲り合える関係でなければ、自分の主張だけをして相手の意向を聞かないという対立構造に陥りがちです。
また、情報量が均等でないと「相手が得をするのではないか、自分が損をするのではないか」という不安から、財産の情報などを隠すという行動にもつながります。
ADRでは中立的な専門家が間に入ることで、両方に必要な情報提供を行い、安心感とフェアな条件決めを実現します。対立しそうなポイントでは専門家がアシストしてくれるため、本人同士よりも建設的に話し合いが進みます。
カウンセリング前置主義の効果
私たちの団体「りむすび」では、ADRの前にカウンセリングを実施する「カウンセリング前置主義」を採用しています。
離婚は単に条件が決まれば納得できるものではありません。「(離婚するほどの)相手が出した条件だから、どんな条件も飲みたくない」という感情が働くことが多いのです。そのため、まず気持ちのわだかまりを解消し、建設的な話し合いができる土壌を作ることが重要です。
この前置きがあるからこそ、私たちのADRは通常3回程度で終えることができます。もちろん、話し合いの中で感情が高ぶる場面もありますが、いきなり条件決めからスタートするよりはるかに建設的な対話が可能なのです。
ADRの話し合いによる離婚で「夫婦から親同士」へ
お子さんがいる場合の離婚は終わりではなく、親としての新たな関係の始まりです。裁判所で離婚した場合は調停が終了すれば放置されてしまいますが、ADRによる離婚の場合、その期間を通して「夫婦から親同士へ」とシフトする準備期間を持つことができます。
専門家が間に入るとしても、顔を合わせて冷静に対話できる経験は、親同士の関係を再スタートさせる第一歩になるのです。
まだまだ認知度は高くありませんが、少しずつ「ADR」というキーワードで検索してご相談に来る方が増えていますし、共同親権導入を機に国としてもADRの普及を強化する方針です。
離婚後の共同養育を円滑に進めたいと考える方には、ぜひADRという選択肢を検討してほしいと思います。
一般社団法人りむすび:https://www.rimusubi.com/
※この記事は2025年5月7日に公開しました。
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