妻たちが嫌いな夫の死や不幸を願う「旦那デスノート」というサイトがあります。モラハラ夫や働かない夫に苦しむ妻に同情できる部分もありますが、書き込みが夫にバレたらどうなるのでしょうか。旦那デスノートへの書き込みがバレたときの法的リスクについて解説します。
旦那デスノートの書き込みがバレたらどうする?
「旦那デスノート」とは、夫に不満や恨みを持つ妻が、夫の死や不幸などを願って日頃の思いを書き込む会員制のサイトです。会員制といっても、匿名で会員登録するだけで、料金もかかりません。月間利用者は18万人を超え、2023年6月の月間書き込み数は1814件、新規登録者は269人でした。
書き込みを読むのは会員登録しなくても誰でも可能です。これまでの書き込みを読むと内容はかなり感情的で、「一刻も早く、消えてほしい」「死神様に連れて行ってもらいたい」などと夫の死や不幸を願う声、結婚への後悔の念が並びます。中には、食事に薬を混ぜた、シャンプーに漂白剤を混ぜたなどの過激な書き込みまであります。
書き込みの中には夫とのやり取りや、夫の仕事などが具体的、詳細に書かれているものもあり、本人や周囲の人たちが見たらバレてしまうのではないかと、人ごとながら心配にもなります。実際、旦那デスノートへの書き込みがバレたら、夫から慰謝料を求められたり、罪に問われたりすることはないのでしょうか。
妻の旦那デスノートの内容に心底怯えています。離婚したいけど証拠になりますか?
妻のパソコンを見て妻が旦那デスノートにアカウントを持っていることが分かりました。
書き込み欄にデフォルトで妻のニックネームが出ていたんです。
そのときは時間なかったんですがスマホで調べて閲覧するとすごい内容でした。
怒りの理由は家事育児しないとか、夜の誘いがウザいとか、稼ぎが悪すぎて・・・とか。
それだけでなく食事に何かいれたとか、職場にもっていく水筒に何かいれたとか。
それっきり自分は水筒はもたず。
夕食は自分で作ることにしました。
妻に不思議がられたけど睨みつけたら何か察したようでした。
今は冷戦状態です。
ある時、年に一度くらいの大きな喧嘩をした際に、妻が旦那デスノートに書いちゃった〜笑
と言っており、見せてとお願いしたが、はぐらかされました。自分で検索して、内容的にすぐ分かりました。あまり酷い内容ではなかったです。
最近また怖いもの見たさで検索してしまいました。
妻のアカウント名を覚えていたので、
今回は死ねなどの罵詈雑言だらけで、正直ショックです。
誰しも悪口を言ったりすると思うんですが、旦那デスノートへの書き込みは、少し異質に感じてしまいます、妻にどう接して良いか分からなくなりました。
こうなった以上は、離婚すべきか悩んでしまいます。
旦那デスノートに夫への悪口や嫌がらせの内容を書き込んでいることがバレたら、夫から離婚を求められたり、訴えられたりする可能性があるのでしょうか。旦那デスノートへの書き込みがバレたときの法的リスクについて説明します。
旦那デスノートの書き込みがバレたときの法的リスクは?
法的リスクには、刑事と民事の両方があります。わかりやすく言えば、刑事は犯罪行為、民事は人と人の争い事で損害賠償請求といった金銭的な請求などがあたります。このほか、旦那デスノートの書き込みから、夫婦仲が悪化し離婚問題に発展する恐れもあります。
刑事事件では基本的に警察が捜査を行い、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴されると刑事裁判にかけられます。民事では、被害に遭ったと主張する側が相手を裁判所に訴え、相手が違法な行為などをしたことを証拠に基づいて証明します。場合によっては、刑事事件として警察に被害届を出したうえで、民事訴訟を起こすこともあります。
旦那デスノートの書き込みがバレたら刑事事件になる?
旦那デスノートでの書き込みが刑事事件になるとすれば、考えられるのは「名誉棄損罪」や「侮辱罪」でしょう。ネット上で他人を誹謗中傷した人が、名誉棄損罪や侮辱罪などの罪に問われる事例も最近は増えてきました。また、食事に薬を混ぜたり、シャンプーなどに漂白剤などの異物を混入したりするのは罪に問われないのでしょうか。
名誉棄損罪や侮辱罪で告訴される可能性は?
確かに、旦那デスノートでは相手の言動や容姿を具体的に挙げて、誹謗中傷しているものがあり、名誉棄損や侮辱にあたるような気もします。しかし、実際にはよほどのケースでないかぎり罪に問うのは難しいでしょう。
なぜなら、デスノートの書き込みは匿名であり、誰のことを書いたのか、一般の人にはわからないからです。ただし、旦那デスノートには同一人物の過去の書き込みを遡って検索する機能があります、こうした過去の書き込みをたどることで書かれた人物が特定される場合、名誉棄損罪や侮辱罪に該当する恐れも出てきます。
もちろん、相手の実名や住所など本人を特定できる情報まで書き込んだうえで、誹謗中傷すれば罪に問われる可能性は高くなります。名誉棄損罪と侮辱罪は「親告罪」といって、被害者が犯人を知ってから半年以内に告訴しなければ起訴できません。
場合によっては傷害や殺人未遂に問われることも
旦那デスノートの書き込みの中には「食事に薬を混ぜた」「シャンプーに漂白剤を混ぜた」といった過激なものもあります。もし、これが事実だった場合、傷害や殺人未遂などの罪に問われる可能性があります
しかし、実際にはこうした書き込みを見た夫が、被害を訴え、妻に刑事罰を望んだとしても、警察や検察といった捜査機関は、妻が薬や遺物の混入を行ったことの証拠を揃える必要があります。
もちろん、夫が食事やシャンプーを調べて、薬や漂白剤などの異物が混入されているのを確認することは可能ですし、体調の不調を訴えた夫を診察した病院が異物を発見することもあります。そうなると、警察も捜査に乗り出す可能性があります。
ただし、傷害罪や殺人未遂罪で有罪とするには、薬や異物の混入を妻が行ったと証明しなければならず、ハードルが高いことには変わりありません。とはいえ、妻の行動があまりにエスカレートすると、こうした罪に問われる可能性はゼロではなく、過激な書き込みは妄想に留めておくのが賢明です。
旦那デスノートの書き込みがバレたら民事で訴えられる?
旦那デスノートへの書き込みがもとで、自分や夫が特定されてしまった場合、事情によっては夫から民事訴訟を起こされる恐れもあります。民事で訴えられる場合、どのようなケースが考えられるのでしょうか。
名誉棄損やプライバシー権の侵害にあたる可能性が
名誉棄損は民法上の不法行為にもあたり、損害賠償を求められることがあります。特に夫が著名人だったり、信用が重視される職業に就いていた場合、仕事が減るなどの実害を被ることがあります。この場合、実害の賠償に加え、精神的苦痛への慰謝料を請求される可能性が高いでしょう。
また、人には私生活上の情報(氏名や住所、前科といった個人的な情報など)を無断で公表されないというプライバシー権があり、もし、旦那デスノートに書き込まれた内容で個人が特定されれば、プライバシー権の侵害を主張できる可能性があります。この場合、精神的苦痛に対する慰謝料を求めるということになるでしょう。
夫に知られただけでは訴えられる可能性は低い
旦那デスノートへの書き込みが、自分や夫のことを指してしていると夫に知られたからと言って、すぐに訴えられるリスクが生じるわけではありません。夫が知った段階では、内容が広く一般に広まったわけではありませんから、すぐに謝罪し、書き込みを削除すれば、一応情報の拡散を抑えたことにはなります。
名誉棄損やプライバシー権の侵害では「公然性」がポイントの一つとなります。公然性とは不特定の人たち、もしくは多数に広まることです。旦那デスノートの場合、個人を特定できる書き込みの内容が誰でも閲覧できる状態であれば、名誉棄損やプライバシー権の侵害となる恐れがあります。
また、少数の人しか個人を特定できない場合でも、閲覧した人からSNSなどを通じて内容が広く拡散する可能性があれば、名誉棄損やプライバシー権の侵害となる可能性があります。個人が特定されないまま書き込みが削除されれば、公然性があるとまでは言えず、名誉棄損やプライバシー権の侵害で訴えられることは回避できる可能性が高いでしょう。
旦那デスノートの書き込みがバレたら離婚で不利になる?
旦那デスノートへの書き込みが夫にバレたからと言って、すぐに刑事事件になったり、民事で訴えられたりする可能性は低く、よほどの事情がないかぎり、そこまでの事態には至らないでしょう。では、書きこまれた夫が離婚を求めた場合、書き込みはどのような影響を及ぼすのでしょうか。
離婚に同意してもらえない場合は好都合?
旦那デスノートに夫の悪口を書き込んでいたら、離婚される理由になるのでしょうか。そもそも、悪口を書くくらい夫が嫌いなのですから、離婚を求められても構わないような気がしますが、デスノートに書き込む妻の中には「離婚では、経済的にその後の生活が不安だ」と考えている人がいます。こうした妻は遺産や保険金を当てにして夫との死別を願っているのです。
ですから「夫が離婚に同意してくれない」という妻にとっては、夫から離婚を求められるのは好都合かもしれません。ただし、離婚をめぐる協議では書き込みが弱みとなり、夫に主導権を握られて不利な立場に置かれるかもしれません。
離婚の有責者になる可能性はある?
実際に離婚の話し合いになったときに、夫が「妻が旦那デスノートに書き込みをしたことによって、夫婦関係が修復不能になった」と主張する可能性があります。もし「食事に薬を混ぜた」などの書き込みが事実であれば、妻に離婚の責任があると判断される恐れもあります。
「妻による書き込みで結婚生活が破綻した」と夫が主張する場合、夫から離婚慰謝料を請求される可能性もあり、「ようやく夫と離婚できる」と喜んでいる場合ではないでしょう。
旦那デスノートの書き込みがバレたら訴えられる可能性も
旦那デスノートは匿名のサイトですが、パソコンのログアウトのし忘れによって夫に書き込み内容を見られてしまうことがありますし、夫がサイトを見て「これは自分のことではないか」と気付くこともあるでしょう。
また、匿名サイトという安心から、書き込み内容がしだいにエスカレートしていくこともあります。最初は書き込みに多少の罪悪感があったのに、何度も書き込んでいるうちに、しだいに感覚がマヒして感情的に高ぶっていく人もいます。匿名サイトだからと言って、決して安心はできないのです。
旦那デスノートに悪口を書いてストレスを発散するのもいいですが、サイトへの書き込みは個人が特定されるリスクがあることを忘れてはなりません。
夫への不満がどうしても我慢できなくなったら、夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談するなどして、冷静になって問題解決を図りましょう。もし、夫に書き込みがバレてしまった場合は、夫婦仲のさらなる悪化は免れません。カウンセラーや弁護士に相談しながら解決を図りましょう。
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