
夫の浮気に直面したとき、多くの方が抱くのは怒りや仕返しをしてやりたいという強い思いでしょう。ただ、感情のままに動いてしまうと取り返しのつかない結果になる恐れもあります。本記事では、合法的かつ効果的な方法で夫の浮気に対処し、冷静に今後の人生を見据えるためのポイントをご紹介します。
折田 裕彦/法律事務所アスコープ 東京オフィス(第一東京弁護士会所属)
所属弁護士数30名を超える法律事務所アスコープの共同代表パートナー。都内を中心に地方展開を手がけ、紹介・リピーターを呼ぶ「圧倒的な実績と安心感」で信頼を築く。
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浮気した夫に仕返ししたくなったらどうする?
夫の浮気を知った瞬間に怒りや失望の感情が爆発し、何かしらの仕返しを考える人は少なくありません。
中には、SNSや共通の知人を利用して相手を攻撃したい気持ちが生じるケースもありますが、軽率な拡散は後々トラブルを大きくすることもあるでしょう。これまで築いてきた関係や信用を失うことにつながれば、仕返し以上に代償が大きくなりかねません。
まずは自分の感情を整理し、衝動的な行動に走らないよう注意することが大切です。すぐに報復へと動きたくなるかもしれませんが、状況を正確に把握することが大切です。家族や親しい友人、弁護士やカウンセラーといった専門家に相談しながら落ち着く時間をつくることで、今後の進め方を冷静に考えられるようになるでしょう。
まず最初にしておきたいのは、夫の浮気に関する情報を冷静に集めることです。あやふやなまま仕返しへ進むよりも、確かな証拠があることで法的にも心理的にも優位に立ちやすくなります。

【体験談】夫に浮気された妻はどんな仕返しをした?
実際に浮気した夫へ仕返しを実行した人たちに体験談をお話いただきました。

義父母の力を借りた仕返し

冷静に証拠を集め、不倫が発覚した後、まず夫の母親に相談しました。浮気相手との写真を見せると、義父は激怒。慰謝料の請求どころか、旦那は会社の役職も降格。今では私のお小遣い制になり、夫婦関係が完全に逆転しました。子どものためにも再発防止策は必須です。
(20代)
自分磨きで心理的仕返し



夫の浮気が発覚して、離婚も考えました。でも息子のために結婚生活を続けることに。専業主婦だったため資格を取り、パートを経て最近社員に昇格しました。気持ちを整理するために3カ月間の別居期間も設けました。私が経済的に自立したこともあり、今では夫は私に頭が上がりません。自分を磨くことが最大の復讐になると思います。
(30代)
冷静な対応と法的措置



探偵に浮気調査を依頼して主人の不貞行為を知った後、その足で弁護士に相談に行きました。浮気相手に内容証明を送付する一方、主人には表面上は普通に接し、親友に話を聞いてもらい、何とか精神的余裕を作りました。葛藤がありましたが、夫婦カウンセリングに通うことで主人は自分の行動について深く反省し、現在関係修復中です。
(30代)


違法となる可能性のある浮気の仕返し行為
感情的になり違法行為に及ぶと、被害者だった妻側が加害者になってしまう恐れがあります。浮気の怒りから行った行為が刑法上の犯罪や、民法上の不法行為に該当し、妻が法的責任を問われるケースも少なくありません。


1. 暴力を振るう
夫の浮気によって怒りに支配されることもあるでしょう。しかし、感情のままに夫や浮気相手へ暴力を振るうと、以下の罪に問われるケースもあります。
- 暴行罪(刑法第208条):暴力を振るったり、水をかけたりする行為も暴行に該当し、2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処される可能性があります。
- 傷害罪(刑法第204条):暴行によって相手に怪我を負わせた場合は傷害罪となり、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
- 器物損壊罪(刑法第261条):怒りのあまり夫や浮気相手の所有物(スマートフォンなど)を壊した場合、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料に処されることがあります。
2. 浮気相手への接触や嫌がらせ
夫の携帯電話やパソコンを勝手に操作して証拠を不正に取得したり、不正に相手の私生活を暴いたりする行為は刑事罰の対象になるおそれがあり、たとえ浮気された側であっても法的責任を問われかねません。 浮気相手に電話したり、家や会社をつきとめて過度な言動等をすることは、以下の罪に該当する可能性があります。
- 脅迫罪(刑法第222条):「命を脅かす」「家族にも危害を加える」などと脅す行為は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性があります。
- 強要罪(刑法第223条):「夫と別れないと〇〇する」など、脅しによって相手に何かを強制する行為は、3年以下の拘禁刑に処される可能性があります。
- ストーカー規制法違反:繰り返し電話やメールを送ったり、つきまとったりする行為は、ストーカー規制法に違反し、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
- 威力業務妨害罪(刑法第234条):浮気相手の職場に押しかけて業務を妨害するような行為は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
3. 浮気相手の会社や家族への告発
夫の浮気が発覚すると、「なんとしてでも痛い目に遭わせたい」という思いがよぎるかもしれませんが、浮気相手の会社や家族に浮気の事実を知らせる行為は、以下の罪に該当することがあるため、注意が必要です。
- 名誉毀損罪(刑法第230条):公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
- 侮辱罪(刑法第231条):事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処されることもあります。
- 民事上のプライバシー侵害:刑事罰ではありませんが、プライバシーの侵害として民事上の損害賠償請求の対象となる可能性があります。
相手の社会的地位を下げる可能性のある行為のため、あなたが罪を犯してしまうと、慰謝料を請求するどころか、損害賠償請求されるケースもあるため注意しましょう。
4. SNSでの拡散
その場の感情に任せて行動すると、自分の大切な仕事や家族関係をも失ってしまう可能性が高まります。特にSNSを使った攻撃は拡散力が強く、一度拡散されると取り返しがつかないほど大ごとになることもあります。 そのため、SNSやブログ、インターネット掲示板などに、配偶者の浮気相手を実名で出して浮気について投稿することは、以下の罪に該当するケースがあります。
- 名誉毀損罪(刑法第230条):インターネット上で名誉を毀損した場合、特に拡散力が強いため重大に捉えられることが多く、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
- プライバシー侵害による損害賠償:民事上の責任として多額の損害賠償を請求される可能性があります。
- リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反:浮気の証拠として入手した性的画像や動画をネット上等不特定多数の者がみれる形で公開した場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
5. その他の違法な仕返し行為とその罪状
- 無断で相手のメールやSNSにログインする行為:不正アクセス禁止法違反となり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処されることがあります。
- 浮気相手の自宅や車を損壊する行為:器物損壊罪に該当し、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料に処される可能性があります。
- 浮気相手のクレジットカード情報を無断で使用する行為:詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪に該当し、10年以下の拘禁刑に処されることもあります。
- 浮気相手に対する誹謗中傷の手紙やビラを配布する行為:名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。
感情的になるのは自然なことですが、違法行為に及ぶと自分自身が法的責任を問われ、状況を悪化させ、不利な立場になる可能性があります。冷静さを保ち、法的に認められた方法で対応することが重要です。



例えば、よくある問題となる仕返し行為は、浮気相手の女性への仕返しとして、①自宅を突き止めるためGPSを仕掛ける、②つきまとう、③いやがらせ電話をする、などがあります。
暴力行為や、脅迫行為が明らかに違法行為であることは当然ですが、上記①から③の行為も、知らない間に刑法に抵触したり、民法上の不法行為となっていることがあります。そして、損害賠償請求をする際に、そのことが足かせになり請求を断念したり、減額せざるを得ないケースがありますので注意が必要です。
合法的な4つの仕返し方法
感情に任せた行動は避け、法的に問題のない方法で対応することが重要です。


1. 慰謝料請求
浮気は法的には「不貞行為」と呼ばれ、民法709条(不法行為の一般規定)および710条(精神的損害の賠償)に基づいて慰謝料を請求することができます。
慰謝料請求が認められるケースは、配偶者と不倫相手に肉体関係がある場合が典型的です。単に親しいメールをやり取りしているだけやデートをしていただけでは、通常は不貞行為とは認められず、慰謝料請求は認められない可能性が高くなります。慰謝料を請求できる相手は以下の3パターンがあります。
- 夫にのみ請求する
- 浮気相手にのみ請求する
- 両方に請求する
結婚生活を続ける場合は、離婚するより慰謝料が低くなる傾向があります。具体的な金額は、浮気の期間や子どもの有無、浮気の態様などさまざまな要素によって決まり、数十万〜300万円程度と言われています。
なお、慰謝料請求権には時効があり、不貞行為および加害者を知った時から3年間行使しないと時効によって消滅します(民法724条)。また、不貞行為の時から20年間行使しないときも同様に時効により消滅するため、請求を検討するなら早めの対応が必要です。
2. 夫と距離を取る
浮気の証拠を握っている場合は、一時的に距離を置くという選択肢もあります。正当な理由なく一方的に別居することは「同居義務違反」や「悪意の遺棄」に該当する可能性があるため、親族の家に一時的に身を寄せる際も、事前に相手に伝えておくことが望ましいでしょう。
また、浮気が発覚した場合でも、冷静に話し合いの場を設け、「浮気の事実を認めているが、今後の関係をどうするか」という建設的な議論を進めることも効果的です。この過程で、相手に反省と謝罪を促すことができます。
3. 態度の変化で心理的影響を与える
浮気発覚後は最小限の会話と家事はこなしながらも、相手に深入りしない態度を取ることで、相手に「何か知られているのではないか」という不安を与えることができます。
夫婦間の基本的な義務は果たしつつも、精神的な距離を置くことで、相手に自分の行動を見つめ直す機会を与えることができるでしょう。家庭の役割は果たしつつ、心の距離を置くことで、夫が浮気したことを後悔することもあり得ます。
4. 両親・義父母の力を借りる
特に子どもがいる場合、両親や義父母などの家族の力を借りることも効果的な場合があります。浮気の事実を適切に伝えることで、義父母から夫への働きかけが期待できることもあります。
また、家族に相談する際も感情的にならず、事実に基づいて冷静に伝えることが重要です。夫を一方的に責め立てる言い方ではなく、「こんな状況でどうすればいいと思いますか?」といった相談の形を取ることで、より協力を得やすくなるかもしれません。
離婚?修復?迷った時は専門家へ相談を
夫の浮気発覚後、多くの人が「離婚か修復か」という決断に直面します。どちらの道を選ぶにしても、感情だけでなく将来を見据えた冷静な判断が必要です。
浮気問題は感情的になりやすく、一人で抱え込むと適切な判断ができなくなることがあります。離婚すべきか、結婚生活を続けるべきか迷う場合は、まずカウンセリングから始めることがおすすめです。


夫婦カウンセリングを受ける
浮気が発覚した直後は感情が激しく揺れ動き、冷静な判断が難しい状態です。この時点で離婚や法的措置を急ぐのではなく、まずはカウンセラーに相談しましょう。
弁護士への相談よりもカウンセリングを最初に受けるメリットとして、感情の整理ができ、冷静に状況を見極めることで、自分が本当に望んでいることが明確になります。「怒りや悲しみの感情」と「今後どうしたいか」は必ずしも一致しないため、専門家の助けを借りて整理することが大切なのです。
また、カウンセラーへの相談は夫に浮気された心の傷のケアへとつながるでしょう。離婚するにしても、心の準備ができていると次のステップに進みやすくなります。




弁護士に相談する
慰謝料請求や財産分与、親権問題などは専門的な知識が必要となります。弁護士に相談するメリットとしては以下が挙げられます。
- 法的手続きの見通しが立てられる
- 慰謝料請求や財産分与など権利を適切に守れる
- 相手方との交渉を代行してもらえる
- 感情的にならず冷静な判断ができる
弁護士に相談せず自分の力だけで進めようとすると、本来受け取れるはずの慰謝料や財産分与を適切に請求できない可能性があります。また、証拠の保全方法や法的に有効な対応策についても専門的なアドバイスが得られます。


浮気後の夫婦関係をどうする?再構築か徹底的な決別か
仕返しを終えたあとも、夫婦として関係を続けるかどうかは大きな決断となります。
浮気が原因で大きく溝が生まれた夫婦関係を修復するのか、それとも離婚などで徹底的に決別するのかは、状況や心情によって大きく異なります。仕返しで一時的に気が晴れたとしても、その後も夫と同居を継続するならば、相手への信頼を取り戻す長い道のりが必要です。裏切った事実を完全に忘れるのは難しいため、夫婦カウンセリングや第三者のサポートを受けるのも一案でしょう。
仕返しによる制裁が果たされても、その後どう生きていくかを考えておくことで、次のステップへ確実に進めるはずです。