モラハラ夫はなぜ試し行為をする?
モラハラ夫は配偶者に対し、わざと悪口を言ったり嫌がらせをしたりして相手の反応をうかがうことがあります。これは「試し行為」といい、妻への歪んだ愛情表現の1つです。子供が母親の気を引こうとして、わざといたずらをしたり、悪口を言ったりするのと同じだと考えていいでしょう。
しかし、モラハラ夫の試し行為をただのわがままだと軽く考えていると、夫のモラハラをエスカレートさせてしまうことがあります。試し行為を行う夫の心理状態を知り、適切に対処することが大切です。
モラハラ夫がよく行う試し行為
モラハラ夫が試し行為をするのは、妻の愛情を確認したいからです。しかし、プライドの高さや妻への優越感などから、歪んだ形でしか愛情を表現できません。モラハラ夫によく見られる試し行為について、具体的な言動とともに説明しましょう。
相手を無視する
配偶者を無視するのは、モラハラの特徴の一つですが、相手の愛情を確認する試し行為として無視することがあります。モラハラ夫が無視をするのは、自分が怒っていたり機嫌が悪かったりしているのを妻に感づかせるためです。
さらに、自分の機嫌の悪さに気付いた妻が、どのような行動をするのか確かめようとするのが試し行為です。このときモラハラ夫は、妻が自分に気を遣ったり謝ったりすることを期待しています。しかも、一度確かめただけでは気が済まず、何度も無視をして妻の愛情を確かめます。
突然無口になる
身近な人が急に無口になったら「体調が悪いのではないか」「気分がすぐれないのではないか」と心配になるものですが、妻の愛情を確かめるために、突然無口になるモラハラ夫もいます。無口になった自分を気にかけてくれるかどうかで、妻の愛情を確かめようとしているのです。
もし、妻に気にかける素振りが見えなければ、別の方法で妻の愛情を試そうとするかもしれません。それによって夫がますます歪んだ愛情表現をするようになり、モラハラをエスカレートさせることがあります。
悪口を言う
モラハラ夫は妻本人や妻の家族、友人の悪口を言うことがありますが、これも試し行為の1つです。妻本人や身近な人の悪口を言って妻の反応を確かめるとともに、妻にとって自分が最も必要な人間だということを理解させようとしています。
こうした試し行為をする夫は、妻を独占したいと考えています。もし、妻が「私の大切な人の悪口を言わないで」と言うと、夫は深く傷つき、嫉妬心に駆られることでしょう。妻を束縛しようと、モラハラをエスカレートさせるかもしれません。
無理な依頼をする
「必要な物を今すぐ買ってこい」「金が必要なら、明日から働きに出ろ」などと無理な要求をするモラハラ夫がいますが、これも試し行為の可能性があります。無理難題を言って、妻がそれを受け入れるかどうかで妻の愛情を確かめようとしています。
言われた妻は、夫のわがままとしか感じられないのですが、夫は、自分に愛着があれば必ず要求を聞き入れる、無理でも何らかの妥協案を出してくるはずだと思っています。そして、妻が要求や依頼を受け入れると、さらに無理な要求を突き付け、試し行為やモラハラがエスカレートしていきます。
自分を愛しているか聞く
自分を愛しているのか、頻繁に尋ねる夫がいますが、こうした夫はモラハラ気質かもしれません。配偶者への愛着をオープンに表現しているだけなら、あまり問題はありませんが、しつこく聞いてきたり、答えを濁すと怒ったりする場合は、愛情に飢えている可能性があります。
愛情に飢えている夫は常に「妻に嫌われるのではないか」「見放されるのではないか」という不安を抱えています。このため、妻が自分を愛しているのか、確かめずにはいられないのです。妻がはっきり答えずにいると、夫は別の方法で妻の気持ちを確かめようと試し行為やモラハラをエスカレートさせるかもしれません。
「嫌い」と言ったり突き放した態度を取ったりする
子供が母親や気になる異性に「嫌い」と言ったり、意地悪をしたりすることがありますが、同じ様なことをモラハラ夫もします。妻に愛着があるのに「お前なんて嫌いだ」と言ったり「俺にかまうな」と言って突き放したりして、相手の反応をうかがうのです。
「そんなことを言わないで」などと言って戸惑う妻の姿を見ると安心して満足しますが、しばらくすると妻の愛情を確かめたくなります。また、妻が「ああ、そう」などと相手にしないと、「自分のことが嫌いになったのではないか」「ほかに好きな男がいるのではないか」と疑念や嫉妬にさいなまれ、モラハラをエスカレートさせることがあります。
ささいなことで離婚話を切り出す
ささいな事で離婚話を切り出す夫も、妻の愛情を確かめている可能性があります。モラハラ気質の夫が「離婚する」と言っても、それは本心ではなく、妻の反応を見ています。そして、もし妻がうろたえ、「離婚はしない」と言えば、妻は自分を頼りにしていると満足し安心します。
夫が離婚を切り出し、妻が思い留まらせる関係が続くと、しだいに夫が優位な立場になっていきます。そうした優劣関係が続くと、妻は夫に支配されていく恐れがあります。
モラハラ夫が試し行為をするのはなぜ?
モラハラ夫はなぜ、妻の愛情を試すような言動をするのでしょうか。試し行為の裏にある心理を解説します。
構ってほしいと思っている
試し行為をする夫の中には、もっと妻に構ってもらいたいと思っているタイプがいます。こうしたタイプの夫は「構ってくれないのは、愛情が冷めたからだ」と考える傾向があります。愛情に飢えていて、常に妻の関心を引き付けておきたいと考えている可能性が高いでしょう。
妻を支配したい
モラハラ夫は、常に妻よりも優位に立ちたい、思い通りに支配したいと考えています。このため、モラハラ夫は、常に妻が自分のことをどう考えているのか確認しようとします。
こうしたタイプの夫は、激しい言葉での叱責や無理な要求にも妻が素直に従う姿を見て満足し安心するのです。
愛情を確かめたい
試し行為は、妻の愛情を確かめたい夫による歪んだ愛情表現です。こうした形でしか妻への愛着を表現できない夫は、妻の直接的な言葉や行動でなければ安心できません。このため、しつこく「愛しているのか」と尋ねたり、「離婚だ」などと心にもないことを言ったりします。
嫉妬している
嫉妬深い性格の夫も試し行為をしがちです。こうしたタイプの夫は、妻を独占したいと考えていますから、妻に友人が多かったり、家族と仲が良かったりすると、自分から心が離れるのではないか、仲間外れにされてしまうのではないかと考えてしまいます。
また、コンプレックスを抱えていることが多く、妻に認められることで自信を持ちたいと考えている夫もいます。こうした夫は、とにかく妻の目を自分に向けさせるために妻を試そうとします。
傷つきたくない
モラハラ夫の多くはプライドが高く、自分が傷つくこと、他人に弱みを見せることを恐れます。妻の心が自分から離れていくような屈辱には耐えられません。妻に捨てられみじめな思いをすることがないよう、妻の心を常に確かめようとするのです。
こうした夫は、常に自分を強く見せようとしているのに、実は自分に自信がなく、他人からの評価を気にするタイプだといえます。
モラハラ夫の試し行為への対処法
モラハラ夫が試し行為を繰り返す場合、どのように対処すればいいのでしょうか。たとえ愛情を確認する行為だとしても、何度も何度も試されるようでは、妻もうんざりしてしまいます。また、試し行為がエスカレートすると、妻が夫に束縛される恐れもあります。
夫にとっては妻の愛情を確認し、安心できる行為かもしれませんが、妻はその分、愛情が冷めていくかもしれません。決して、互いに愛情や信頼を高め合うことにはならないでしょう。そのままでは、いずれ離婚という結末を迎えるかもしれません。そうならないためにも、試し行為への対処法を覚えておきましょう。
信じて欲しいと伝える
「妻が自分から離れていくかもしれない」という疑念や不安に駆られている夫には「私を信じてほしい」と伝えましょう。試し行為をしなくても、常に自分は夫を信頼し、愛情を持って接していることを伝えれば、夫も安心し、妻の言うことに耳を傾けてくれるようになるかもしれません。
疲れること、傷ついていることを伝える
「私を信じてほしい」と伝えると、プライドを傷つけられたように感じて逆上する夫もいます。そうした夫には、試し行為に疲れたこと、傷ついていることを直接伝えたほうが効果的かもしれません。ただし、感情的になると相手を刺激しますから、冷静になって落ち着いて、自分の気持ちを丁寧に伝えることが大切です。
何が不安なのかを聞き出す
試し行為を繰り返す夫は、何か不安を抱えている可能性があります。ゆっくり夫の話を聞き、何を不安に思っているのか、聞き出してみるのもいいでしょう。「浮気をされるのではないかと心配だ」「捨てられて独りになってしまうのではないか」といった不安を聞けるかもしれません。
モラハラ気質の夫は、もともと自分に自信がなく、常に不安を抱えている可能性があります。そうしたタイプの夫を簡単に安心させることは困難ですが、ゆっくり時間をかけて信頼を高め不安を解消していきましょう。
相手の要求に応じない
わがままな子供の振る舞いに対し断固とした対応も必要なように、試し行為を繰り返す夫に対しては、要求に応じず動じないことも大切です。どこかで一線を引き、これ以上は許さないという態度も見せないと、夫の試し行為はどんどんエスカレートし際限がありません。
このとき、大切なのは決して感情的にならず、頭ごなしに夫の言動を否定しないことです。無理な要求には応じられないことを落ち着いて伝え、試し行為には動じない態度を見せましょう。
試し行為が不適切なことを理解させる
最終的に試し行為をやめさせるには、そうした行為はモラハラの一種であり、不適切な行為だということを本人に自覚させる必要があります。妻の毅然とした態度や説得によって、ある程度のことは理解できるかもしれませんが、完全にモラハラ気質から脱却することはできません。
モラハラ夫の試し行為はやめるように仕向けましょう
モラハラ気質は、本人の性格や成育環境とも密接な関係があり、直すことは容易ではありません。モラハラ被害を経験した妻の中には「決して治らない」という人もいます。それだけに、モラハラ気質を克服できるかどうかは、本人の自覚にかかっています。
モラハラ夫の試し行為はやめさせるのではなく、本人に「やめよう」と自覚させるもの。妻として寄り添いながら、夫を自覚へと導いていきましょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。