義父・義母の関係が原因で離婚は成立する?
結婚をすると、夫婦2人が婚姻関係を結ぶだけでなく、配偶者の父母や兄弟とも親族関係が生まれます。いわゆる「義理の○○」という関係ですが、これを法律では姻族といいます。
親類が増えるということは心強い半面、配偶者の父母との関係の悪化が夫婦関係にも影響し、夫と妻の仲も険悪になるケースがあります。中には離婚まで考える人もいますが、義父・義母の関係悪化は離婚の理由として認められるのでしょうか。
離婚相談の多い義父母とのトラブル
離婚に発展するほどの義父母とのトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。離婚相談の多い義父母トラブルの中でも典型的なケースを紹介します。
義父母の過干渉
義父母が子育てや日常生活に過干渉してくることで疲弊し、離婚したいと感じる人は多くいます。例えば、夫の義母が夫の様子や食べ物の好みまで、毎日事細かに連絡してくると、さすがにストレスがたまり、ウンザリしてしまいます。これは、義父母が子離れできていないことに原因があります。
嫁姑問題
義母と嫁との間で価値観が衝突し、嫁姑問題に発展するケースもあります。例えば、姑が子育てについて自分の価値観を押し付けてくると嫁は過干渉だとストレスを感じ、やがて衝突するでしょう。他にも、姑を介護しているにもかかわらず、介護の仕方に文句を言われたり、暴言を吐かれたりというケースもあります。
このような嫁姑問題のせいで、離婚話に発展するケースは少なくありません。
義父母のトラブルから離婚した人の体験談
義父母とのトラブルは事実上の離婚原因になり得ます。実際に義父母のトラブルから夫婦の関係が悪化して離婚に至った人の体験談を紹介します。
ケース①義父母との同居で子育てを放棄した夫と離婚
投稿者 50代パート(女性) 離婚時の年齢 夫:44歳 / 妻:43歳 婚姻期間 14年(同居は6年) 子供の有無 1人(中3) 離婚の種類 協議離婚
もともと同居するまでは、夫との仲はそこまで悪くありませんでした。だからこそ、悩みはしたものの、長男が小学校に入るタイミングで夫の両親との同居を始めました。
幸いなことに、義理の両親は、私には良くしてくれました。
特に子ども好きで、働き者の義母は、子どもの面倒をよく見てくれました。そのおかげで、私は長男を義母に預けてフルタイムの仕事に就くこともできました。もちろん、すべてを義母任せにするわけにはいかないので、私は仕事と子育てと、義理の両親への気遣いででいっぱいいっぱいの生活でした。
夫の方は、義母が子育てを手伝ってくれることに安心したのか、同居以降これまでやっていてくれた子どもの面倒をほとんど見なくなってしまいました。
子ども自体は、おばあちゃん子でもあり、すくすく育ってくれていたのですが、私は年々夫への不信感が募っていきました。「私と夫の子どもなのに、なぜ義母と2人で育てているのだろう」、そんな気持ちで、夫の顔を見るのも嫌になっていきました。
夫としては、私の負担は以前より減っているから大丈夫という気持ちだったらしく、何度も「もう少し子育てをしてほしい」と言っても「仕事が忙しい」「お母さんがやってくれるよ」などと言って態度を改めてくれませんでした。
夫の仕事が忙しかったのは確かですが、一人で趣味のテニスをする時間は確保していたので、私にも義母にも甘えているとしか思えませんでした。
結局、長男が中学生になるのを待って離婚を切り出しました。「こんな結婚を続けているのは嫌だ。息子にもこんな冷めきった状況を見せたくない」と思いも何年も変わらなかったので、決断しました。
夫がまったく態度を改めてくれなかったことや、義理の両親との同居生活のために夫のことが嫌になってきても思い切りケンカもできなかった事が、離婚につながったと思います。
ケース②嫁姑問題に無関心な夫に同居を勧められ離婚
投稿者 30代会社員(女性) 離婚時の年齢 夫:27歳 / 妻:27歳 婚姻期間 5年 子供の有無 1人(幼稚園年中) 離婚の種類 協議離婚
結婚前にお付き合いしている頃から義母に不信感はありましたが、元夫が「親は関係ない、自分が守るから」と言ってくれたこと、そして22歳で妊娠したこともあり、そのまま結婚しました。
その後、月1回ほど義母に子供を会わせているうちに、義母が私に「あんたの母親はいつも近くに居るからいいけど、私のところには連れてこない。毎日一緒に居たいから同居しよう」と、一緒に孫と住みたいと言い出しました。
私は拒否していましたが、旦那は少し乗り気の様子で義母・義父・義姉が住んでいる家への引っ越しを提案してきました。
その当時、結婚から4年が経ち、義姉・義父に対して不信感はありませんでしたが、義母だけは本当に嫌でした。
夫のいないときに電話でお金をせびってきたり、私が流産した際も「お前が仕事しているから悪いんだ。いいからお金を渡せ」など常識外れのことばかり言ってくるので、顔も見たくないほど大嫌いでした。
それを夫に伝えても、「馬鹿な母親だから仕方がない。お前も気にするな!無視しておけばいい」と味方になって守ってくれることはなく、同居の話がどんどん進んでいくので嫌気がさしてしまい夫に離婚を告げました。
夫は離婚したくないの一点張りでしたが、私が「同居なんて死んでも嫌。だけど今までの貴方の発言にも嫌気がさしました。私は離婚します」と突っぱねました。
夫はその後も同居を続け、どうにか離婚はしないように持っていこうとしていましたが、私は実家に逃げ、協議の末1か月後に離婚が成立しました。
その後、夫や義母とは一切会っていませんが、本当に苦しかったので楽になれて良かったです。
ケース③義父母の介護に妻が耐えられず離婚
私(男性)の母は、若いときに脚を悪くし、普段から歩くだけでも大変な状態でした。父が亡くなってからは、母は元気までも失ってしまい、外を出歩くことも少なくなっていきました。よほど父の死がつらかったのでしょう。
そうしているうちに、母は介助を受けないと歩けなくなってしましました。
一人暮らしの母を放っておけるわけもなく、同居するかどうか、妻と話し合いました。今思えば、離婚の話はここから始まっていました。同居に関して妻は猛反対でした。「お母さんと住むくらいなら離婚も考えるからね」と言われましたが、正直なところ、当時は「冗談だろ」と考えていました。
しかし、母からの助けを求める電話は毎日かかってきます。私としても「母を助けたい。母の力になりたい」という気持ちは募るばかりでした。
そこで、子どもを含めて家族会議をしました。私は事前に、息子2人に「ゲーム機を買ってあげるから、ばあちゃんと住みたいと言ってね」と根回しをしていました。やっぱり妻をどうしても説得したかったのです。
その結果、妻は折れて、晴れて母と同居することになりました。「よかった」と胸をなでおろしたのはつかの間で、同居を始めて以降、妻はいつも不機嫌です。それもそのはず、日中は常に妻と母が一緒に居なければなりません。介護はほぼ、私ではなく妻が担当するからです。
それから1年ほど経ったある日、耐えられなくなった妻から離婚の提案がありました。つらい経験です。
義父母のトラブルから離婚を回避するポイント
義父母とのトラブルによる離婚を回避するためには、自分たちの家庭が壊れないように、義実家とは無理せず付き合っていくことが大切です。離婚を回避するポイントを紹介します。
別居する
義父母と同居すると、夫婦との考え方の違いが衝突しがちです。生活習慣や子育てに関する意見の相違がトラブルに発展するケースもあります。特に多いのが「嫁姑問題」でしょう。
「男が外で働き、女は家事をするもの」といった考え方の家の場合、夫の父母と同居していると、どうしても夫の母親と妻の意見がぶつかりがちです。そうしたことが続くと、妻のストレスは溜まって離婚に発展する可能性が高くなります。離婚を回避するには、別居も考えたほうがいいでしょう。
夫が中立の立場に立つ
「嫁姑問題」での離婚を回避するために夫は、父や母の意見ばかりを正しいと考え、鵜呑みにしてしまうことを一番避けるべきです。夫が「姑」側についてしまうと、味方のいない「嫁」が孤立してしまいます。
「嫁姑」の間に入った夫は中立の立場で双方の話をきちんと聞いた上で、自分の母親の顔を立てながら、最終的には妻を守るために動くことが理想です。
会う頻度を減らす
義父母と会う機会を減らすことも離婚を回避するポイントです。「自分の子供と孫にさえ会えればいい」という義父母もいます。そんなときは無用なトラブルを避けるため、義父母の子供である夫、もしくは妻と子供だけで会いにいくのもいいでしょう。
会いたくない人に無理に会う必要はありません。
義父母のトラブルは事実上の離婚原因になり得る
結婚を機に始まる義父母との付き合いがうまくいかず、離婚の事実上の原因になることもあります。離婚を回避するには、ストレスのもととなる原因を解消することが重要です。
しかし、義両親との同居解消に夫が取り合ってくれない、状況が全く改善しないといった場合には、最終的には離婚も視野に入れる必要があるでしょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。