モラハラ夫・妻は本当に自覚がない?
被害者にとってはとてもつらいモラハラですが、加害者側は自分がモラハラ夫・妻であることに自覚がないとも言われます。どうして自覚もないままにモラハラをしてしまうのでしょうか。
全く自覚がない人も多い
モラハラをしても、本人に自覚がないのは、その人の性格や気質によるといわれます。そして、自覚がない人ほどモラハラをエスカレートさせるようです。
なぜ、自覚がないのか。それは本人が正しいことをしている、相手のためにやっていると信じているからです。
モラハラをする夫や妻は、自分は常に正しい、もしくは、正しくありたいと思っています。ですから「正しいことを教えてあげているのに、どうして相手はそれを素直に受け入れないのか」と苛立ちます。そのため、ついつい言葉や態度が乱暴になってしまいます。
また、「相手は自分より下の存在だ」と見下し「正しく導いてやらないと、何もできない」とも思っています。そのため、厳しく言ってやることは本人のためだと思っています。このため、自覚のないままモラハラを繰り返してしまうのです。
自覚があるモラハラ夫・妻の特徴
モラハラをしている夫や妻の中には、自覚がありながら暴言や嫌がらせを繰り返す人がいます。
自覚しているが、わざと続けている
モラハラは相手への依存の裏返しのような部分もあります。相手を自分に依存させたい、支配したいと思いながら、実は相手に依存しているのです。相手がいなくなれば、誰も自分を頼りにしてくれなくなります。
ですから、それが怖くて、わざと相手を傷つけるような言動で関心を自分に引き付けようとします。こうした人は次のような言動をすることがあります。
・無視をして相手の反応をうかがう
・相手の愛情を確かめたがる
・相手が心配するようなことを口にする
自覚して直したいが、自力で直せない
モラハラは自覚することが難しいのですが、他人から指摘されたり、自己診断をしたりして、自分がモラハラ加害者であることに気づき、悩んでいる人もいます。しかし、モラハラは本来の生活や気質、子供の頃の家庭環境が原因であることが多く、簡単に直すことができません。
もともと、弱音を吐くのが嫌いで、強い自分をアピールしたいという欲求のある人ですから、モラハラの加害者であることを認めたくないという気持ちも生まれます。
こうした人は、次のような言動をすることがあります。妻や夫、家族の力も借りながら少しずつ言動を改善していくしかありません。
・弱音や本心を吐露することがある
・相手を叱ることもコミュニケーションの一つだと思っている
・相手の立場に立った振る舞いができない
自覚がないモラハラ夫・妻の特徴
モラハラ夫・妻の多くは自分が加害者であることを自覚していません。どうしてモラハラを自覚できないのか、モラハラ夫・妻の心理状態の特徴から理由を説明しましょう。
誰にも指摘されたことがなく、自覚がない
ほとんどの場合、モラハラは他人に指摘されて初めて気づきます。本やネットのチェックシートなどで自己診断して気づく人もいるかもしれませんが、数は少ないでしょう。なぜなら、モラハラ夫・妻は絶対に自分の非を認めたくないからです。
自覚がないため、平気で次のような言動を繰り返します。
・妻(夫)の言い分には決して耳を傾けない
・「妻(夫)に謝ったことがない」と胸を張る
・妻(夫)は、自分がいなければ何もできない人だと口にする
指摘されたことはあるが、自覚がない
モラハラだと指摘されて「もしかして」と自分の言動を顧みることができる人は、モラハラをやめられる可能性があります。厄介なのは、指摘されても自覚できない人です。モラハラに対する問題意識を持つことができず、「自分の場合は当てはまらない」と勝手に判断します。
自分がモラハラの加害者であるという罪悪感や、自分の弱さと向き合うのが怖いのでしょう。そのため、次のような言動をすることがあります。
・「自分は何も悪いことをしていない」と声高に主張する
・自分の正しさを証明するため、妻(夫)に対する支配を強めようとする
・モラハラをしているのは相手のほうだと言い張る
自覚がないモラハラ夫・妻を自覚させる方法は?
モラハラの加害者だという自覚のない夫や妻に、自覚させるにはどのような方法があるのでしょうか。効果が期待できる方法を5つ紹介します。
しかし、モラハラ夫・妻といっても、性格や原因、モラハラの状況はさまざま。ケースによって最も効果がありそうな方法を選んでください。
モラハラをしていることを伝える
直接、「あなたのやっていることはモラハラだ」と伝える方法があります。ただ、誰が伝えるかが問題で、妻や夫、その家族、友人が伝えても、モラハラ夫・妻は「自分のほうが立場が上だ」と思っているため、聞く耳を持たない可能性が高いでしょう。「根拠のない言いがかりをつけられた」と逆恨みされる恐れさえあります。
モラハラ夫や妻には、自分より立場が上の人には弱いという特徴があるので、夫なら職場の上司に注意されるのが効果的なようです。女性なら、目上の知人や友人の言うことであれば素直に聞く可能性があります。
やられたことや言われたことを、そのまま返してみる
モラハラ夫や妻がやっていることを、そのままやり返してみるという手もあります。夫に対してなら「誰が食事を作っていると思っているの」「出て行ってもいいけど、あなた1人で生活できるの」などと言ってみたり、不機嫌なそうな顔で無視してみたりします。
それで、自分がやっていたことの愚かさに気づいてくれればいいのですが、効果がないことが多いようです。モラハラ夫・妻は自分が絶対的に正しいと思っていますから、逆に「モラハラをされた」と騒ぎ出す恐れもあります。
モラハラのチェックシートをやってみる
夫婦関係に関するサイトや雑誌記事などに載っているモラハラの診断チェックシートをやってみると、自分の言動を反省するきっかけになるかもしれません。
しかし「少し気を付けたほうがいい」と思うことがあっても、「これまでモラハラをやっていたのか。申し訳なかった」とまで考えることはあまりなさそうです。
やはり、自分の非を認めるのは受け入れがたく、自分の弱さからは目をそらそうとします。「自分の場合は、相手の悪い所を直すため、あえて言っているのだからモラハラにはあたらない」などと勝手な理屈で納得してしまうこともあります。
カウンセリングを受けてみる
夫婦関係が専門のカウンセリングを受けてみるのも一つの方法です。心療内科などでカウンセリングを受けることもできます。
ただ、カウンセリングを受けさせるのが一苦労で、そもそも自分の本心や弱音を話すのが嫌いなモラハラ夫・妻はカウンセリングなど受けたくありません。カウンセリングでモラハラの可能性を指摘されると逆上して、カウンセラーや医師に食ってかかる人までいるようです。
家を出ていく
実際に家を出て、反省を促すことも一つの方法です。「そこまで相手を追い詰めていたのか」と反省するきっかけになるかもしれません。それに、世間体を気にするところがありますから、妻や夫が家を出たというのはモラハラ夫(妻)にとって大きなダメージです。
ただし、家を出る以上は相当な覚悟が必要です。モラハラ夫(妻)が反省するそぶりを見せたからといって、すぐに家に戻ると「結局、家に戻るんだろ」と軽く見られる可能性もあります。かえってモラハラが悪質化、陰湿化することもあるので、強く自覚と反省を促す必要があります。
モラハラ夫・妻は自覚すれば改善される?
モラハラをやめさせるのに、自分が加害者であることを自覚させることは重要です。しかし、自覚したからと言って改善されるとは限りません。それがモラハラの難しいところです。
モラハラの改善のどこが難しいのでしょうか。
改善には長期間かかるとの覚悟が必要
モラハラは自分で自覚すれば、すぐに治るというものではありません。精神的な未熟さや他人への思いやりの欠如、自分を特別な存在だとする意識など、本来の資質や性格、家庭環境などと密接に関わっているからです。
長い時間をかけて、考え方や行動を変えていく必要があります。それには、専門家の支援が必要になることもありますし、なにより本人の「モラハラをしない人間になろう」という前向きな意識が欠かせません。
治すのではなく、感情をコントロールする
モラハラは、個人の資質と密接にかかわっていますので、モラハラ体質を治すのは不可能だと言う人もいます。確かにモラハラの言動を改善するだけでも非常に困難です。
ですから、自分の考え方の傾向や特徴を知り、自分で感情をコントロールすると考えたほうがいいかもしれません。怒りや嫉妬などマイナスの感情を抱きがちな自分の性格と向き合い、そうした感情が行動に現れないよう自分自身をコントロールするのです。
そうすれば、モラハラをしてしまうこともなくなっていくでしょう。
モラハラ夫・妻を自覚させてから改善した人の【体験談】
実際にモラハラ夫・妻に加害者であることを自覚させ、夫婦関係を改善させた人の体験談を2例紹介します。いずれも、相手としっかり向き合ったことで解決に向かったようです。
離婚を切り出したことをきっかけに夫が自覚
モラハラをする夫や妻は、自分の言動がモラハラだということに無自覚です。そうした夫や妻には「あなたのしていることはモラハラだ」「モラハラを辞めなければ離婚する」などと突きつけると、ようやく自分がモラハラをしていたことに気付くことがあります。
夫のモラハラ言動が原因の喧嘩が続き、私から「そこまでしてモラハラを続けるなら離婚しよう」と切り出しました。すると夫はようやく自分の言動が誤っていたことに気付き、「モラハラを自覚して改善していくから離婚はやめてくれ」と言ってくれました。
それ以降、夫は2人が穏やかに過ごすにはどうしたらよいのか、考えて行動してくれているようです。
地域の相談員を交えて夫婦で話し合い克服
モラハラ気質の夫や妻は、配偶者を自分より下に見ているので、なかなか相手の言うことに耳を傾けません。しかし、モラハラ気質の人の弱点は、自分より目上の人や地位が上の人に逆らえないこと。第三者の年長者らに間に入ってもらうことで、モラハラについてしっかり話し合えることもあります。
モラハラ気質な妻は私の言うことを一切聞こうとしないので、地域の相談員に同席してもらい、2人の意見を客観的な立場で聞いてもらいました。そして、話を聞いた相談員は妻に「あなたのしていることはモラハラ行為だよ」と説得してくれました。
その結果、妻はやっとモラハラを自覚したようで、そこからは少しずつ私への態度も変わっていきました。
モラハラを自覚させることは改善の第一歩
モラハラを本人に自覚させることは非常に難しいことですが、それなくしてモラハラの改善はありません。
モラハラ被害から逃れるには別居や離婚しかないという意見もありますが、モラハラ夫や妻に改心してもらい、一緒に暮らし続けたいという人も少なくないでしょう。大変な道のりですが、それも一つの方法です。
モラハラ夫・妻に加害者であることを自覚させるには、被害者である妻や夫の力も欠かせません。専門家や周囲の力も借りながら、相手と向き合ってみてください。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。