父親からのモラハラに悩む子供は多い?
大人同士である配偶者へのモラハラと違って、明らかな力関係のある父親から子供へのモラハラでは、子供は一方的に傷つけられます。子供のころから日常的にモラハラを受けていると、精神的に問題を抱えたまま成長してしまうかもしれません。
父親からモラハラを受けた子供には、どのような特徴がみられるのか、チェックリストで紹介します。さらに、モラハラをする父親への対処法や、子供をモラハラから守るために母親ができる対策も説明します。
父親からのモラハラチェックリスト
モラハラをする父親は、家庭の外では紳士的に振る舞うことがあり、周囲はモラハラに気付かないケースが少なくありません。また、幼少時からのモラハラに慣れてしまった子供は、どういった言動がモラハラなのかわからないまま成長してしまいます。そして、常に委縮した態度をとる性格になってしまうこともあります。
そこで、父親からモラハラを受けた子供によくみられる特徴を紹介します。次のような言動に、心当たりがないかチェックしてみましょう。自分の父親はモラハラ気質なのかどうか診断したいときの参考にもしてください。
・父親がいつキレるか分からず、ビクビクして生活している
・父親から言われたきつい言葉が忘れられない
・父親から謝られた経験がない・少ない
・父親に対して意思表示できない
・母親がかわいそうだと感じる
父親がいつキレるか分からず、ビクビクして生活している
予測不能なタイミングで激昂する父親に、常に気を遣って生活しているなら、父親からモラハラを受けている可能性があります。モラハラをする父親は、機嫌を損ねると大声で罵倒したり大きな音を立てて物に当たったりするのが特徴です。さらに「誰のおかげで生活できているのか分かっているのか」といった高圧的なセリフで子供を支配しようとします。
父親につい怯えてしまいます。いつも高圧的で、少しでも機嫌が悪いと大きな音でドアを閉める・家に帰ってきた瞬間に怒鳴る・壁を殴って穴を空けるといった感じです。そのせいで、父親が階段を上がったり廊下を歩いたりする音を聞くだけでビクッとしてしまいます。
家の方針で家族全員で夕ご飯を食べるのですが、お父さんは否定されることが大嫌いです。自分を否定されたと思った瞬間に命令口調になったり怒鳴ったりするので、話すのが怖いです。いつも否定しているつもりはないんですが…悲しいし怖いです。
父親から言われたきつい言葉が忘れられない
「お前は何をやってもダメ」といった父親からのきつい一言が忘れられず、大人になっても自分に自信が持てない人もいるのではないでしょうか。モラハラをする父親は、子供の人格を否定したり精神的に追い詰めたりする言葉で、子供の自己肯定感を奪ってしまいます。たとえ子供であっても一人の人間なのですから、そのような発言は許されません。
中学受験に失敗。部活を辞めて努力したと思うのですが、高校も第一志望のところに入学出来ませんでした。不合格自体もショックでしたが、不合格の通知を見たお父さんに「お前は努力する才能のないクズだな」と言われたことも忘れられません。
現在高校生(女)です。お父さんがずっとご飯を食べているので「そのご飯、何食目?」と聞いたら「うっせ―、お前には関係ないだろ、死ねクソ豚」と言われました。暴言自体はいつものことなので慣れているのですが、勉強している時など、ふとした瞬間に涙が出てきます。
父親から謝られた経験がない・少ない
モラハラをする父親はプライドが高く、自分の非を認めない傾向があります。父親が謝る姿をほとんど見たことがないなら、父親はモラハラ気質かもしれません。たとえば子供の大事なものを誤って捨ててしまっても「そんなところに置いていたお前が悪い」などと言って謝りません。さらに「俺が悪いって言いたいのか」と子供を脅して黙らせようとすることもあります。
妹のためにケーキを作ったのですが、深夜にお酒を飲んで帰って来た父親に勝手に食べられてしまいました。朝父に言ったら「うちにあるもん食って何が悪いんだ」と逆切れされ、謝る様子もありません。
いまリビングで両親が喧嘩しているのですが、お母さんが土下座して泣いて謝っているのに、お父さんはお母さんの頭を踏みつけて許す様子がありません。「謝る時は土下座が常識」と言われて育ちましたが、そういえば、お父さんが土下座をしているのは見たことがありません。
父親に対して意思表示できない
あれこれ指図や命令をする父親に対して意思表示できないのも、モラハラを受けている子供によくみられる特徴です。こういった父親は自分の理想を子供に押し付け、「お前は努力が足りないんだ」と勉強やスポーツの練習を強要しがちです。子供は嫌なことも拒否できず、次第に勉強やスポーツが苦痛に感じるようになるかもしれません。
今まで両親の意見に従って生きて来たのですが、やりたいことが見つかったので両親に進路のことを相談してみました。そうしたら「自分のことばっかり考えるな」と、父親に理想の進路を押し付けられました。反論したら否定・威圧・怒鳴るで、話しすらできません。
お父さんと話をするのが苦手です。自分の意見があっても、いつも父親の威圧に押されて負けてしまいます。「昼ごはん何が良い?」という簡単な質問にも答えられません。
母親がかわいそうと感じる
「ママみたいになったらダメだよ」などと言いながら子供の前で母親にきつくあたる父親は、母親だけでなく子供にもモラハラを行っているといえます。父親の言動で傷ついた母親を見た子供は、かわいそうだと感じると同時に自分のせいではないかと罪悪感を抱きがちです。さらに自分が母親の味方にならなければと、自分の気持ちを抑えるようになってしまいます。
私が覚えている1番古い記憶は、父親に殴られた母がおでこから血を流して泣いている光景です。母も家を出たいと言っているのですが、父親が「女は働くな!」というので外で働いて資金を貯めることもできません。毎日辛い、逃げたいと言っている母がかわいそうです。
いまお母さんが、お父さんに玄関先で5時間も怒鳴られています。最近お母さんが食費を稼ぐために外に働きに行くようになったんですが、帰りが門限の19時に3分遅れたからです。せっかく働けるようになったのに、私がいるからお母さんは家を出ることができません。お母さんがかわいそうです。私なんて生まれてこなければ良かったと思います。
父親からモラハラを受けている時の対処法は?「絶縁しかない」と思ったら
父親からのモラハラにはどのように対処すればよいのでしょうか。根本的な解決法として、家を出るなどして「絶縁」するという選択肢もありますが、今の生活を変えずにやりすごす方法もあります。父親からのモラハラでストレスが限界に達する前に、次のような対処法を検討してみてください。
基本は受け流して、口答えをしない
モラハラをする父親は子供を支配することが目的なので、子供から言い返されただけで不機嫌になりがちです。まともに話し合う前に激昂されても困りますから、口答えせず軽く受け流すのがよいでしょう。自分が正しいと信じており、決して非を認めないモラハラ気質の父親には、正面から向き合っても疲弊するだけです。
うちの父親がモラハラの典型のような人でした。お母さんを「お前」と呼んだり、出てくるご飯を全て「まずい」とひっくり返したり。18年間我慢して同居しましたが、対策としては相手にしないことが一番です。相手を支配したい、構ってほしいという気持ちなんですよね。
母親に相談する
父親からのモラハラをやめさせたいとき、母親に相談するのも対処法の一つです。父親からのモラハラに母親も悩んでいるなら、同じ悩みを持つ味方として、力になってくれるはずです。父親が不機嫌になる兆候が見られたら、お互い合図をして二人で外出してしまうといった対策がとれるかもしれません。
父に暴言を吐かれた夜、母に相談をしました。母も同じように父から暴言を受けていたので、同じ悩みを持つ人間として話を聞いてくれました。
自宅にいる時間を減らす
自宅にいる時間を減らし、父親と物理的な距離をとることも、父親からのモラハラ対策として有効だと考えられます。外出先が限られる学生の場合でも、学校に加えてアルバイトや塾といった自宅外で過ごす時間を増やすと、父親と顔を合わせる頻度を減らせます。
父親のモラハラが酷くて悩んでいました。高校になったら周りの子がアルバイトをしだしたので、私も祖母に許可をもらってアルバイトすることにしました。アルバイトをしている分家にいる時間が短くなるし、アルバイト代で母や弟においしいものを買ってあげられます。快適です。
独立する
家を出て独立し、父親と離れて暮らすこともモラハラから抜け出すのに有効な手段です。年齢や経済的な問題ですぐには自立が難しい場合でも、家を出る準備は始められます。家から離れた大学への進学を目指したり、一人暮らしに向けて貯金をしたりするとよいでしょう。
ITには全く興味がなかったのですが、とにかくモラハラ父親と離れたくて、実家から離れた高専に進学しました。幸いなことにエンジニアとして食べていく技術が身に付いたので、卒業後は母の口座にお金を入れてあげようと思います。
絶縁する
実家から独立しても、父親が干渉してきてモラハラが続くようなら、父親と絶縁したいと思うことがあるかもしれません。そのときは、父親に引っ越し先を知らせず、住民票や戸籍にも閲覧制限をかければ、父親は子供を居場所を見つけるのが困難になります。
ただし、住民票等に閲覧制限措置をかけるには、市区町村に申し出て、父親からモラハラ等を受けていることを証明しなければなりません。その際、カウンセリングを受けたり警察に相談したりした記録や、父親からの暴言の録音などが証拠として役立つ可能性があります。民間の支援団体もありますので、相談してみてもいいでしょう。
母のために我慢して来ましたが、ついに離婚して母が家を出たので心配事がなくなりました。父親と絶縁して実家を出て、東京で1人暮らしをしようと思います。母にはもう彼氏がいるので頻繁には連絡できませんが、たまに会えるといいな。
父親からモラハラを受けている場合は距離を置こう
高圧的な態度で子供に暴言を吐く父親の元で育った子供は、自己肯定感が低くなりやすく、人間関係がうまく築けずに悩む可能性があります。もし、家庭がそのような環境なら、モラハラをする父親からは距離をとって生活するなどの対応が必要です。自立できる年齢なら、思い切って家を出ることを考えてもいいでしょう。
もし、配偶者が自分や子供にモラハラをしてくるのであれば、子供のためにも離婚を検討する必要があるかもしれません。すぐには離婚が難しい場合は、子供を塾や習い事に通わせるなど、子供が父親と過ごす時間が少なくなるよう配慮しましょう。家族だけで問題を解決するのが難しい場合は、親子関係を相談できるカウンセリングを利用するという方法もあります。
佐々木 裕介/チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所(第二東京弁護士会所属)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。