精神的DVとも呼ばれるモラハラを夫から受けている妻は少なくありません。そんなモラハラ夫の妻には、モラハラされやすい特徴があります。どのような人がモラハラ夫の妻になりやすいのか、性格や考え方の共通点を紹介します。モラハラ被害者の特徴を知り、対策を講じましょう。
モラハラ被害を受けやすい人には共通点がある?
激しい暴言や高圧的な言動、冷たい態度などで相手を精神的に追い詰めるモラハラは、夫婦の間でよく起こる問題です。モラハラの加害者も被害者も、2人の関係に問題があることに気づかないケースが多く、被害者側がいつの間にか洗脳されたような状態になり、加害者に服従してしまうこともあります。
こうしたモラハラ被害者になりやすい人には、いくつかの共通点があります。加害者が夫で、被害者が妻の場合、どのような女性がモラハラ夫の妻になりやすいのか、特徴を紹介します。
モラハラ夫の妻によくある特徴とは?
モラハラをする男性は、モラハラしやすい女性を妻に選ぶ傾向があります。なぜならモラハラに遭いにくい女性は、夫がモラハラをしようとしても反論したり反発したりして、逆に夫をやりこめてしまうからです。このためモラハラ気質の男性は、本能的にそうした女性を避けます。もし結婚したとしても夫のモラハラは相手にほとんど通じないでしょう。
それでは、どのような女性がモラハラ夫の妻として被害者になりやすいのでしょうか。モラハラされやすい女性の主な特徴を5つ紹介します。
他人のために自分を犠牲にして尽くす
責任感が強く、犠牲をいとわず他人に尽くすタイプの女性は、モラハラされやすい傾向があります。モラハラをする男性は、妻を服従させ、自分の思い通りになるよう支配しようとしています。このため、多少理不尽な要求にも、なんとか応えようと奮闘する女性はモラハラ夫にとって最高の妻となるのです。
また、献身的な女性は我慢強い面もあり、モラハラを受けても、「私が我慢すればうまくいく」と考えがちです。このため、モラハラ夫はさらにモラハラをエスカレートさせていきます。
他人を思いやる気持ちが強い
他人の気持ちを察し、相手の考えや行動に合わせようとするなど、思いやりの気持ちが強い女性もモラハラされやすいタイプです。モラハラ気質の夫に対しても「こうしてほしいのだろう」「断ったら相手ががっかりするのではないか」と考え、相手の期待に応えようとします。相手に共感する力が強い女性ともいえるでしょう。
しかし、モラハラ夫の気持ちを読み、相手に合わせ過ぎていると、だんだん自分の意見や気持ちがわからなくなってしまうことがあります。やがて夫の意見がそのまま自分の考えでもあるかのように行動するようになり、夫の言いなりとなってしまいます。
自分に自信がない
モラハラされやすい女性には、自分に自信がなく、罪悪感が強い傾向も見られます。このため、夫に暴言を吐かれたり、冷たい態度を取られたりしても「自分が悪いのではないか」「自分がしっかりしないから、夫を怒らせてしまう」と考えがちです。
一方で、モラハラ気質の男性は、決して自分が間違っているとは考えず、失敗しても他人のせいにします。こうした男性にとって「自分が悪い」と考える女性はパートナーとして好都合です。女性側も、自信を持って何でも決めてくれる男性は頼もしく映ります。こうして、モラハラが生じやすい関係が生まれてしまいます。
夫への依存心が強い
自信家の男性を頼りにしているだけでなく、経済的にも依存している妻も、夫からのモラハラを受けやすい女性です。特に専業主婦で収入のほとんどを夫に頼っていると、「俺がいないとどうなるのか、わかっているのか」などといった脅しに抵抗できません。逆に夫も、そうした関係を利用して、「一人では生きていけない」という意識を刷り込もうとします。
こうして夫に強く依存するようになると、妻は「夫の言う事はすべて正しい」「言う事を聞いておけば間違いない」と考えるようになり、ますます夫に頼るようになります。一方で、夫はモラハラの自覚がなくても「俺が指示しないと妻は何もできない」と考えるようになり、暴言や抑圧的な態度をエスカレートさせていきます。
虐待やDVを受けた経験がある
子供の頃に家庭内で虐待を受けていた人や、父親がモラハラ気質だった人は、自分がモラハラを受けても当たり前のように受け入れてしまうことがあります。また、過去にモラハラやDVをする男性と交際していたことがある女性も、再び同じような男性に引かれ、被害者となる可能性があります。
こうした女性は、男女の間に支配・被支配の関係があるのは当然で、一方が献身的に尽くすことで相手を満足させるのは当然だと考えがちです。強い相手に依存する考えが身に付いているため、自分がモラハラの被害者だと自覚しにくく、夫のモラハラ言動を増長させる恐れがあります。
モラハラ夫の被害から抜け出すには
モラハラされやすい女性が、夫からのモラハラから抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。モラハラ被害から抜け出すための第一歩は、自分が被害者であると自覚することです。被害を自覚することで、次にすべきことが見えてきます。冷静に自分が置かれた状況を認識するために必要な5つのポイントを紹介します。
尽くしすぎない
モラハラ夫の言う事をすべて受け入れ、相手に尽くすのはやめましょう。夫が普段、妻にやってもらうのが当たり前だと思っている事の中には、自分でできる事もあるはずです。やってもらうのは当然と感謝もしない人間は、相手を見下しています。
夫のために何でも自分がやろうとは思わずに、時には「忙しいから、自分でやってくれないかしら?」と言ってみましょう。妻がいないと、何もできないということを夫に自覚させることも重要です。
自分を責めない
モラハラ夫はよく「お前はダメな奴だ」「全く何もできないんだな」と妻をなじります。そんなときに「私が悪いから怒らせたんだ」「もっとしっかりしなければ」と自分を責めるのはやめましょう。夫が不機嫌なのは妻のせいではありません。不機嫌になった理由を妻に押し付け、本当の理由から目を背けているだけです。
思い切って開き直り「自分が悪いんじゃないの」と言ってみましょう。勇気がなければ、心の中でそう思って、夫の話を聞き流すだけでも構いません。いちいち、気にしていたら身が持ちません。自分を責めるばかりではなく、「自分はよくやっている」とたまには自分で自分を褒めてやりましょう。
我慢することをやめる
我慢強い性格はとても大切ですが、モラハラ夫を相手に我慢のし過ぎは禁物です。夫はまるで、どこまで我慢できるのか試すかのようにモラハラをエスカレートさせます。我慢するのをやめて、夫に立ち向かうことも必要です。
立ち向かうと言っても、一言二言何か言い返すだけで、夫の反応は変わります。「私に命令するのはやめて」「そんなに言うのなら、あなたがやってよ」といった言葉で十分です。その後、あれこれ言ったり、あからさまに冷たい態度を取ったりするかもしれませんが、気にせずに「言いたいことは言った」と涼しい顔をしていれば十分です。
自分に自信を持つ
モラハラに立ち向かうには自分に自信を持つことも大切です。自分に自信があれば、夫が言う事が正しいかどうか、受け入れるべきかどうかを冷静に判断できます。自信家に見えるモラハラ夫も実は、自分に自信がありません。自信がないからこそ、妻に傲慢な態度を取って、自分の優秀さを確認しようとするのです。
急に「自信を持て」と言われても、どうしたら良いのかわからない人もいるでしょう。そういう人は、信頼できる第三者や夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談してみるといいでしょう。そうすれば、どちらの言い分が正しいのかを公平に判断してもらえます。今後どうすればいいのか、良いアドバイスも得られるでしょう。
経済的に自立する
専業主婦やパート収入しかない妻の中には「夫に離婚されると生活できない」とモラハラを我慢している人がいます。本当に夫に頼らなければ生きていけないのでしょうか。今の生活を守るために、理不尽な仕打ちに耐え続けなくてはならないのでしょうか。経済的な自立を考えることも必要です。
確かに夫から離れると、生活は一変するでしょう。現在の生活水準の維持も難しくなるかもしれません。しかし、贅沢をしなければ生活していく方法はあるはずです。モラハラ被害に遭っていることを打ち明ければ、助けてくれる人が周りにいるかもしれません。いきなり自立は難しくても、理由を付けて働きに出るなど、経済的な自立の道を模索しましょう。
モラハラ夫との別居や離婚を考えたら
自分にモラハラされやすい特徴があり、実際にモラハラを受けていると気付いたらどうすればいいのでしょうか。モラハラ夫の被害を抜け出す方法を試してみるのが、効果的ですが、それで必ずしもモラハラが収まるとは限りません。時には、夫が反発して夫婦関係がさらに悪化してしまうこともあります。
モラハラをする夫は、もともとモラハラ気質の人が多く、自分の正しさを主張したり妻を見下したりするのは、本来の性格や考え方によるものです。このため、簡単にモラハラは治りません。中には夫婦関係の修復が見込めず、別居や離婚せざるを得ないケースもあります。
モラハラ夫との別居や離婚を考えるときのポイントについて説明します。
モラハラ夫は別居や離婚に応じない
モラハラ夫はほとんどの場合、別居や離婚には応じません。なぜなら、妻を束縛し支配下に置いておくことがモラハラの目的だからです。それに、自分の非で別居・離婚するというのは屈辱的で、世間体も気になります。たとえ、別居や離婚に応じる素振りをみせても「財産は一切渡さない」など法外な条件を示してくるでしょう。
別居であれば、妻が生活費を請求するのは当然の権利ですし、離婚であれば財産分与を行います。「生活費や養育費は払わない」「財産はすべて俺のもの」といった勝手な主張は通りません。こうした夫の主張にしっかり対応するためにも、事前に弁護士に相談したほうがいいでしょう。
加藤 惇
モラハラ夫の理不尽な言い分に、諦めてしまう方は少なくありません。しかし、モラハラ夫の言い分は、大抵法的にはまったく通用しないものであることが多いです。弁護士に相談しながら、自分がどのような選択肢を取ることができるのか冷静に考えましょう。
離婚に応じてもらえないときは離婚調停を行う
妻が離婚を求めたのに対し夫が合意すれば、話し合いによって離婚が成立します。これを「協議離婚」といいますが、モラハラ夫が離婚を拒否した場合や、子供の親権や養育費、財産分与などの条件面で折り合いがつかない場合は「離婚調停」を家庭裁判所に申し立てます。調停とは裁判所を介した話し合いです。
離婚裁判では「調停前置主義」というルールがあり、離婚裁判を起こす前には必ず調停を行わなければなりません。調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入り、離婚の条件などについて話し合います。基本的には夫婦それぞれが調停委員と話をし、夫婦同士が直接話をすることはほとんどありません。
裁判で離婚を認めてもらう
調停でも離婚に合意できない場合、離婚裁判で裁判所の判断を仰ぐことになります。ただし、モラハラだけを理由に、裁判で離婚が認められることはほとんどなく、かなりハードルは高くなります。実際にはDVや不倫などモラハラ以外の理由も探すか、長期間の別居を経て離婚を目指すかのどちらかが一般的です。
裁判では、民法に照らし合わせ、離婚の理由があり、それによって夫婦関係が破綻しているかどうかが判断されます。もちろん、主張を裏付ける証拠も必要で、法律や裁判に詳しくない人が離婚裁判を起こすには難しい点もあります。離婚協議から調停、裁判の進め方を含め、夫婦関係に詳しい弁護士によく相談したほうがよいでしょう。
モラハラされやすい妻の特徴を知り、適切に対応しよう
モラハラされやすい妻には共通した性格や考え方があります。自分の性格を知り、自分の弱さをモラハラ夫に付け込まれないように気を付けなくてはなりません。また、モラハラ夫にも共通の特徴があります。モラハラ夫の特徴も知って適切に対応しましょう。
加藤 惇/CSP法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
弁護士として、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料・不貞・親権・面会交流など、離婚にかかわる事件を特に重点的に取り扱う。依頼者の意向を丁寧にくみ取り、常に依頼者の利益を最大化することを目標に活動している。離婚事件のほか、いじめなどの学校事件も多く扱っており、子供に関する問題にも詳しい。CSP法律会計事務所所属。