子供がいる夫婦の離婚で、よく問題となるのが親権と養育費。特に年月が経つにつれ養育費を払わない父親が増えていくようです。離婚しても父親には変わりないはずですが、そんな男の心理はどうなっているでしょう。養育費を払わない男の心理と、支払ってもらう方法を紹介します。
養育費を払わない最低男!いったい何を考えているの?
子供がいる夫婦が離婚すると、たいていはどちらかの親が子供を引き取り、子供を引き取らなかった親は養育費を支払います。しかし、養育費を払わない親も多く、厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費を受け取っている母子家庭は全体の28.1%という結果でした。養育費を受け取ったことがないという母子家庭も56.9%にものぼります。
母子家庭の中には十分な収入がある母親もいるでしょうし、父親が死亡したというケースもありますから、養育費を受け取っていない家庭が全てお金に困っているわけではないでしょう。しかし、「養育費の取り決めをしている」という母子世帯でも、養育費を受け取り続けているのは57.7%にとどまっています。
取り決めがあるのに、養育費を受けたことがないという母子世帯も19.2%を占め、約束をしているのにもかかわず、お金を払わない最低な父親も多いことがわかります。このように養育費を払わない男の心理はどのようなものなのでしょうか。
【体験談】養育費に疑問や不満を持つ元夫は多い?
母子家庭なのに養育費を受け取っていないと言っても、各家庭の事情はさまざまで、中にはやむを得ない事情で養育費を支払えない父親もいます。一方で、養育費の負担や金額の決め方に不満を抱いている父親も少なくありません。養育費が子供のために使われているのか疑わしい、というケースもあるようです。
手取り18万しかないので養育費3万も払いたくないです‥そんなものでしょうか?
これじゃあ再婚もできないです。
離婚して10年近くなります、子供は2人、別れた妻(親権)が引き取りました。
元妻は浪費癖があり働く事が嫌いな性格ですので、実際に今も無職で私からの養育費で全て生活している状態です。
子供の養育費(48万×2人/年間)を払いたく無い訳ではありませんが、支払った養育費を子供以外に使わせない様にするにはどうしたら良いでしょうか?
養育費を払わない父親がすべて「最低な父親」というわけではなく、養育費を当てにしてあまり働かない「最低な母親」もいるようです。いずれにせよ、養育費は子供の生活や教育のために使われるもの。よほどの事情がないかぎり支払いは続けるべきです。理由もなく養育費を払わない男の心理とはどういったものなのでしょうか。
養育費を払わない男の心理とは?
養育費を支払っていない父親の中には、事業に失敗して多額の負債を抱えているという人や、病気になって働けないという人もいるでしょう。しかし、そうした特別な理由もなく、養育費を払わない男の心理を紹介します。
親権を取れなかったことを恨んでいる
養育費を払わない父親は、親権を取れなかったことを恨んでいる可能性があります。日本では、親権の争いでは母親に有利だと言われており、裁判にまで持ち込んでも、母親が親権者として指定されるケースが多いのが実情です。その場合、父親は養育費の支払いを求められますが、親権の決定方法や養育費の額に納得がいかないことが多いようです。
人は、納得のいかないことにお金は払いたくないものです。また、元妻に対しても「望み通り親権を取ったのだから、養育費も自分で負担すべきだ」という気持ちにもなっていきます。こうした恨みや不満が残ると、最初は養育費の支払いに応じていても、支払いが滞るようになってしまいます。
自分の稼いだお金は自由に使いたい
養育費を支払うくらいなら自分のために使いたいと考える父親もいます。最初は養育費の支払いに応じていても、時が経つにつれ、子供への愛情が薄れていったり、子供に懐いてもらえなかったりして「お金がもったいない」と考え始める人もいます。
また、あまり収入が増えないため、養育費の負担を重く感じるようになる人もいますし、借金ができて養育費を支払う余裕がなくなったという人もいます。再婚して子供ができたので、一緒に暮らしている子供のためにお金を使いたいという人もいるでしょう。
再婚して子供ができたことを理由に、養育費の減額を求める父親もいます。両親に新たな事情が生じたときに、養育費の額の変更(事情変更)を求めるのは珍しいことではありません。再婚や子供が生まれたことを理由に、裁判所も減額を認める決定を下すことがよくあります。
子供のために使われていないのではないかと疑っている
養育費を子供のために使っていないのではないかと元妻を疑い、養育費を払わない父親もいます。「母親が養育費を当てにして、あまり働かない」「子供が塾や習い事を我慢しているようだ」と、実際に養育費が本来の目的に使われているのか疑わしいケースもあるようです。
しかし、家庭の実情は外からではなかなかわかりません。父親側も、母親側から説明を聞くなど疑いを解消する努力をせずに、支払いを拒否すると「養育費を払わない口実に、言いがかりをつけている」と見られる恐れがあります。
新しい家庭を持ったので元妻とはかかわりたくない
離婚後、父親が新しい妻と再婚した場合、「もう元妻とはかかわりたくない」と考えて、養育費の支払いはしたくないと考えることがあります。再婚して子供ができ、扶養家族が増えれば事情変更も可能ですが、こうした父親は一緒に住んでいる子供に愛着を感じ、妻と暮らす子供への愛情も薄れている可能性があります。
新しい家族ができれば「過去のことは忘れて新しい生活を始めたい」と考えるのも当然です。そこで、元妻との子供も忘れてしまおうと考えると、養育費を払わないという問題が生じてしまいます。特に、妻も再婚した場合「新しい父親ができたのだから」といって、養育費も支払う必要がないと考えることが多いようです。
子供に会わせてもらえないので払いたくない
「子供に会わせてもらえないので、養育費を払わない」という父親もいます。離婚した後でも、親には子供と面会する権利があります。本来は離婚するときに面会交流のルールについても決めておくのが望ましいのですが、取り決めが行われなかったり、妻がルールを守らなかったりして、父親が子供に会えないことがあります。
こうした状況に陥ると、父親も「子供に会えるまでは養育費を払わない」と考えるようになり、互いに養育費の支払いと面会交流を求めて争いになってしまうのです。しかし、養育費の支払いも面会交流も子供の幸せが目的であり、夫婦間の取引材料に使われるべきものではありません。面会交流を求めるのなら、裁判所に調停を申し立てるなど別の手段を取るべきです。
泣き寝入りせずに養育費を払ってもらう方法
厚生労働省の調査でも分かる通り、母子家庭で養育費を受け取っていない家庭は7割以上にのぼります。中には養育費を必要としない家庭や、父親が病気になったり亡くなったりした家庭もあるでしょうが、それにしても多い数字です。養育費を受け取れずに泣き寝入りしている母親も多いと思われます。
しかし、忘れてはならないのは養育費の支払いは法律上の義務だということです。民法には次のような条文があります。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
つまり、離婚するとき、夫婦は親権や面会交流、子供の養育費用の分担について決めておかなければなりません。もし、話し合いで決まらなければ、家庭裁判所がルールを決めます。当然ですが、法律に基づいて決められたルールには従わなければなりません。法律を踏まえて、養育費を払ってもらう方法について説明します。
弁護士に相談する
養育費の支払いを夫に求めても「お金に余裕がない」「既に十分な額を支払った」などと理由をつけて拒否するかもしれません。減額も考えなければならない事情がある可能性もあります。そうした場合、スムーズに話し合いを進めるには、法律の知識が欠かせません。
養育費を払ってもらえずに困っているときは、まずは弁護士に相談しましょう。養育費を支払ってもらう方法や、事情に合わせた適正な養育費の水準について、具体的なアドバイスがもらえるはずです。裁判所のホームページに掲載されている「養育費・婚姻費用算定表」も参考になります。
出典: 東京家庭裁判所
養育費の支払いで話し合いを求める
養育費を払ってもらうには、話し合いをすることが第一です。相手の言い分や事情を聞き、無理のない範囲で養育費の支払いを求めます。相手に事情があり、養育費を減額したり、支払いを猶予したりしなければならないこともあるでしょうが、相手にも法的義務があることや、妻側の事情が伝われば、支払いに応じてくれるかもしれません。
弁護士に代理人を依頼しておけば、本人に代わって話し合いをしてもらえますので、法律の知識が乏しくて不安なときも安心です。
家庭裁判所に調停を申し立てる
父親が話し合いに応じなかったり、話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に養育費支払請求調停を申し立てることができます。調停とは裁判所の調停委員を介した話し合いです。調停委員は両親双方から話を聞いて、合意を促し、話し合いがまとまらないときは必要な措置について裁判所が判断(審判)します。
合意や審判の内容は調停調書や審判書という文書にまとめられます。これらの文書は法的拘束力を持つため、両親はその内容に従わなければなりません。
文書があるときは強制執行も可能
離婚するときに、養育費の支払いを含むさまざまな条件を、公正証書や調停調書、判決書などといった法的拘束力のある文書にまとめておけば、養育費を払わないことを理由に相手の財産を差し押さえることが可能です。これを強制執行と言います。
ただし、文書は法的拘束力を持つ文書であることが必要で、念書や覚書といった私的な文書や口約束では強制執行まではできません。その場合は、調停を申し立てて調停調書や審判書を作成してもらったり、公証役場で公正証書を作成したりすれば、強制執行が可能になります。
北松戸ファミリオ法律事務所
養育費は離婚後の元配偶者に支払うものですが、子供の健やかな成長のために不可欠なものです。
養育費を払わない男性に対しては、子供の成長をどのように経済的にサポートするかという観点から今一度よく考えてもらうよう促すことが、円満な解決につながるでしょう。
養育費を払わない男に対抗するには弁護士に相談しよう
国の調査では、今まで養育費を払ってもらったことがない母子家庭が半数を超えるなど、養育費を払わない父親が数多くいるのは確かです。養育費を払わない父親の中には、払えない事情がある人もいるでしょうが、子供の幸せのため、養育費を負担するのは親の義務です。
しかし、父親の中にはあれこれ理由をつけて、支払いを逃れようとする人もいます。そうした父親に養育費を払ってもらうには大変な労力と法律の知識が必要です。養育費を支払ってもらえず困っているときは、夫婦問題に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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