結婚前のカップルは、新しい生活を前に希望で胸を膨らませているものです。ところがそんな時期に、相手を裏切り、浮気する人がいます。婚約中に相手の浮気が発覚したとき、どうすればいいのでしょうか。結婚前や婚約中の浮気を理由に、離婚や婚約破棄ができるのかを解説します。
結婚前の浮気が許せない…
結婚前の時期というのは、結婚式の準備をしたり新居を探したり、新しい生活に思いを馳せたりと、幸せに満ちあふれた時期のはずです。ところが、そんな時期にこともあろうか別の異性と浮気をしてしてしまう人がいます。
いくら結婚する前とはいえ、間もなく妻や夫になる人への裏切りは、許されるものではありません。浮気をされた人の多くは傷つき、「別れるべきか、許すべきか」と悩み苦しみます。
夫の結婚前の浮気について。心が壊れそうです。夫に気持ちをぶつけるべきか、それとも夫は嘘を言っていたけれど水に流すべきか迷っています。
夫が結婚前、おつきあいしていた時期に女性と2人でくっついている写真を見つけてしまいました。写真の日時的に1年近く関係はあったようです。どこまでの関係かはわかりませんが、ほっぺをくっつけて撮ったりしてたので・・・おそらく体の関係もあったかと思います。
今年の二月(半年前)にプロポーズしてくれた彼氏が浮気していました。
会社の女の子です。
毎日LINEをし、2人で有給をとって愛知からユニバや海遊館に行っていた写真がありました。
しかも海遊館でのツーショットにキスしている写真がありました。
吐き気がします。
今日問い詰めて女の子とLINEをしていること、2人で会っていることは吐きました。
写真はこっそり見たので私が知っていることは知りません。
ただ婚約破棄するだけでは納得がいかないしとても傷ついています。
どうしたらいい仕打ちができるでしょうか。
結婚している男女の間には貞操義務があり、不貞行為は離婚裁判を起こす理由になると民法に書かれていますから、結婚後の浮気に対しては多くの場合、離婚や慰謝料の支払いを要求できます。結婚前の相手による浮気でも、離婚や慰謝料請求が可能なのか、どのような条件が必要なのかを解説します。
結婚前に浮気をしてしまう心理とは
なぜ、結婚前に浮気をしてしまうのでしょうか。結婚を前にした大事な時期に浮気をしてしまう男女の心理を紹介します。
結婚前の最後の遊びだと思っている
男女問わず、貞操観念が低い人がいるものです。そうした人は、交際している人がいても「ほんの遊びだから」「独身の自由を謳歌したい」などと言って、ほかの異性と性的関係をもってしまいます。「浮気されたら相手はどう思うのか」ということに、あまり思いが至りません。共感力が低いとも言えるでしょう。
こうした人も多くの場合、「結婚したら浮気をしてはいけない」ということはわかっています。このため、結婚前に最後に遊んでおきたいと考える男女がいるのです。本人は、浮気をしても「遊びの関係で本気ではないから、バレなければ大丈夫」と思っています。
このため、結婚を機に浮気相手と縁を切る人も多いのですが、相手が別れてくれずトラブルになって後悔する人もいます。また、結婚から何年か経つと、すっかり気も緩み「遊びだから、少しくらいは大丈夫」と浮気してしまう人も少なくありません。
結婚すべきか迷っている
結婚を決めるときは互いに相手に夢中で、勢いでプロポーズし、相手もそれを受け入れることがありますが、実際に結婚が決まると、結婚生活の大変さに気付いて不安を覚える人もいます。結婚前に結婚相手や結婚後の生活に不安を覚えて情緒不安定になることを「マリッジブルー」と言いますが、そうした不安から浮気に走ってしまう人もいます。
マリッジブルーは女性に特徴的な症状と言われますが、男性にも起こります。結婚して生活環境が変わることや、両親から独立して生計を維持しなければならないことへの不安や、「本当にこの相手と結婚して後悔しないだろうか」という迷いなどが原因となることが多いようです。
そうした時期に、少し気になる人が現れたり、過去に付き合っていた人のことを思い出したりすると、不安な気持ちを癒してほしくなり、つい浮気をしてしまうことがあります。
ストレスを発散したい
結婚が決まったことによる周囲からの期待と、それに応えようとする責任感からストレスを感じる人もいます。特に結婚式と披露宴を予定している人は、招待状の発送や引き出物の準備、式場の打ち合わせなど何かと忙しいものです。こうしたストレスから、「少し遊んでストレスを発散したい」「誰かに癒してほしい」と浮気してしまう人がいます。
ストレスの解消を異性との遊びやセックスに求める人は、結婚した後も何かと理由をつけて浮気を繰り返すかもしれません。
婚約中の浮気が発覚したら|結婚前でも慰謝料の請求はできる?
結婚前の恋人同士で付き合っているときの浮気は、結婚した夫婦と違って法律に裏付けられた「貞操の義務」はありません。このため、浮気をされても慰謝料請求はできません。しかし、結婚を前提に交際しているときや、同居して内縁状態にあるときは慰謝料を請求できる可能性があります。結婚前でも、浮気した相手に慰謝料を請求できるケースについて解説します。
婚約中や内縁関係であれば慰謝料請求も可能
婚約すれば、将来結婚するという二人の合意を誠実に実現する契約を結んだことになり、夫婦として共に生活を始められるよう協力するという約束を実行しなければなりません。つまり、婚約は契約の一種として法的に保護されていると考えられます。このため、浮気によって婚約破棄になるなど結婚が困難になった場合は慰謝料を請求できる可能性があります。
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婚約の成立により、婚約相手と異なる人物と性的関係を持たない義務が発生し、この義務に反したことが不法行為(民法709条)に当たるとして、慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります(佐賀地方裁判所平成25年2月14日判決)。
また、婚姻届を出してはいないものの、同棲していて内縁関係と認められるときは法律上の夫婦と同様の権利や義務が発生するため、相手が浮気をすると慰謝料を請求できる可能性があります。
婚約中であることを証明するには
婚約していたにもかかわらず相手が浮気をしたとして離婚するときは、婚約中であることを客観的に証明しなければなりません。単に「いつかは結婚しようと言われた」「結婚するのは当然だと思っていた」という程度では、裁判になったときに婚約中とは判断されない可能性が高いでしょう。
婚約中であることを証明するには、次のような証拠が必要になります
・婚約指輪や結納品
・結婚式場や引き出物の予約・購入
・家族や両親に結婚相手として紹介していた
・新居の契約
こうした証拠をできるだけ多く用意することで、婚約中であることを証明できます。また、準備が進んでいればいるほど、実際の損害も含めて慰謝料の額は大きくなります。
内縁関係を証明するには
内縁関係とは、婚姻届けを出していないものの、普通の夫婦と変わらない生活を送っている状態のことです。「事実婚」ともいわれますが、ただ一緒に暮らしている「同棲」とは区別されます。
内縁関係に法律上の定義はありませんが、次のような条件をいくつか満たすと、内縁関係と認められる可能性があります。
・長期間同居していて、生計を共にしている
・どちらかが相手の社会保険の扶養に入っている
・住民票の続柄に「未届けの夫・妻」と記載されている
・子供がいる
・周囲に夫婦と認識されている
特に住民票に「未届の夫・妻」と記載してあると、内縁関係にあることを証明しやすくなります。
内縁関係にあることを証明できれば、夫婦と同等の権利と義務を得ますから、浮気をした相手に対して関係を損ねたことに対する慰謝料を請求できます。
浮気相手に慰謝料請求できる?
婚約中であることや内縁関係にあることを証明できれば、浮気したパートナーの相手に対しても慰謝料請求ができる可能性があります。ただし、浮気の相手も婚約中であることや内縁関係にあることを知っていた場合に限られます。
「本命の交際相手がいるのは知っていたけれど、まさか婚約しているとは知らなかった」などと主張されてしまうと、婚約中や内縁関係であるのを知っていたはずだということを証明しなければならないのが難しい点です。このため、夫婦関係のときの浮気に比べて、慰謝料請求のハードルは高くなってしまいます。
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婚約が成立し、又は内縁関係にあったとしても、最終的に結婚するかどうかはそれぞれの自由意思が尊重されます。しかし相手方の浮気で婚約や内縁関係が壊れてしまった場合には、慰謝料請求により相手方に責任を追及することが可能となる場合があるのです。
結婚前の浮気が発覚したら|離婚の理由になる?
結婚相手が結婚前に浮気していたことを、結婚後に知るというケースもあります。このとき、結婚前の浮気を理由に離婚できるのでしょうか。
基本的に結婚前の浮気は離婚の理由にはならない
不貞行為が離婚の理由になるのは、あくまでも結婚した後のことです。結婚する前の男女に貞操の義務はなく、結婚前の浮気は基本的に離婚の理由にはなりません。
ただし、結婚前に浮気をした相手が謝罪も反省もしなかったり、事実すらも認めなかったりしたことによって、夫婦の信頼関係が損なわれ、その結果夫婦関係が破綻した場合は、一定期間を経た後に離婚が認められることもあります。
婚約中や内縁期間中の浮気なら慰謝料請求できる可能性も
基本的に結婚前の浮気は離婚の理由にはなりませんが、慰謝料を請求できる可能性はあります。それは、浮気していた期間が婚約中だったり、内縁関係の状態だったりした場合です。
もちろん裁判になれば、浮気をしていた証拠も必要で、浮気していた期間に婚約中だったり内縁関係だったりしていたことも証明しなければなりません。過去のことだけに証明は困難ですが、しっかり証拠さえそろえられれば慰謝料の請求が認められるでしょう。
結婚前に浮気されたことを忘れられないときは?
たとえ結婚前であったとしても、交際期間中に浮気をされたらショックを受けます。結婚生活を続けているものの、浮気されたことを忘れられないため、つらい思いをしているという人も少なくないでしょう。結婚前に浮気されたことを忘れられず引きずってしまうときの対処法を紹介します。
不安な気持ちを相手に正直に伝える
浮気された苦しみを思い出したときは、相手にその気持ちを正直に伝えるのも対処法の1つです。つらさや悲しみ、苦しさを心に押しとどめていると、精神的にもよくありません。時には、相手のその感情をぶつけて発散することも大切です。
それに対して、相手がどのように対応するかはわかりません。謝罪して「2度とこんな思いはさせない」と言ってくれるかもしれませんし、「もう昔のことなのに」と相手にしてくれないかもしれません。それでも、とりあえずは感情を吐き出すことで、少しは気持ちは収まるでしょう。
今後、夫婦関係が修復できるかどうかは、互いの行動にかかっています。夫が真剣に向き合ってくれないときは、別の方法を考えたほうがいいかもしれません。
気分転換できる趣味やリラックス法を見つける
浮気されたり、浮気が発覚したりしたことをいつまでも思い出し、心が休まらないときは、気分転換できる趣味やリラックス法を見つけましょう。熱中できることがあれば、嫌なことを忘れられますし、ストレスの解消にもなります。
根本的な解決にはなりませんが、そうして不安やつらさを感じるたびに、気持ちを落ち着けていけば、時間が心の傷を癒してくれるかもしれません。また、二人の関係をどうしていくべきか考えがまとまっていくこともあるでしょう。
誓約書を書いてもらう
結婚前の浮気について謝罪や「二度としない」という約束はあったけれど、口先の言葉しかもらっていない、と感じているときは、誓約書を書いてもらうという方法もあります。謝罪の言葉も、文章にしてもらい署名もしてもらえば、少しは安心感を得られるでしょう。
また、「次に浮気をしたら慰謝料を支払って離婚に応じる」などと、再び浮気をしたときの制裁についても書いてもらえば、浮気の防止策になります。ただし、むりやり誓約書を書かせたり、過度な要求をしたりすると誓約書の内容は無効となる可能性もあります。注意してください。
カウンセラーに相談する
一人で悩みを抱えていても、同じことばかり考えてしまい、いつまでたっても悩みが解決しないこともあります。そうしたときは、誰かに悩みを打ち明けて相談してみましょう。相談相手は知人や友人でもいいのですが、浮気の場合、少し話題がデリケートです。
たとえ過去のことであっても、浮気をしたという事実は本人の社会的評価を低下させる恐れがあります。友人に過去の浮気を話したことで、それが噂として広まると名誉棄損になる可能性もあります。浮気に関する相談は、守秘義務のあるカウンセラーにしたほうが安全です。
夫婦関係に詳しいカウンセラーですと、適切なアドバイスが得られますし、他人に悩みを話すことで、自分の考えを整理したりストレスを解消したりできます。
離婚する
どうしても結婚前の浮気が忘れられないため、結婚生活を続けるのがつらいというときは、離婚を考えたほうがいいかもしれません。修復するあてもないのに、結婚生活を続けるのは精神衛生上もよくありません。また、離婚を切り出すことで、不倫した相手も事態の深刻さを理解してくれるかもしれません。
相手を許すことができず、本気で離婚を考えているのなら、結婚前の浮気に対し慰謝料を請求できるか、相手が離婚を拒否したときにどうするのかなど、過去の裁判例や法律に関する知識も必要になりますから、夫婦関係に詳しい弁護士に相談することも必要です。
相手の結婚前の浮気で悩んだら専門家に相談しよう
結婚する前の男女交際は自由であり、たとえ浮気されても不法行為にはなりませんが、明確に結婚を約束していたり、実質的に夫婦と変わらない生活を送っていたりしたときは、慰謝料を請求できることがあります。
結婚前とはいえ、相手の浮気によって結婚の夢が壊れたり、夫婦と変わらない平穏な生活が損なわれたときは、弁護士にも相談して慰謝料の請求を検討しましょう。
北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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