夫や妻以外の異性に心を引かれることがあります。中には「離婚して、その人と再婚したい」と考える人までいます。しかし、ほかに好きな人ができたからといって簡単には離婚できません。「好きな人ができた」と離婚を考えたとき、後悔しないために何をすべきなのかを解説します。
結婚しているのに好きな人ができた!離婚するにはどうしたらいい?
結婚しているのに、夫や妻以外の異性に恋愛感情を抱くことがあります。配偶者にない魅力を感じたり、今の結婚生活に不満を抱いていたりと、理由はさまざまですが、配偶者以外の異性と性的関係を持つと、不法行為として慰謝料を請求される恐れがあります。
このため、今の配偶者と離婚し、好きな人と再婚したいと考える人もいるのですが、「好きな人ができた」という理由で離婚は可能なのでしょうか。配偶者以外に好きな人ができた場合、どうすれば離婚は可能なのか、後悔しないためにどのように話を進めていけばよいのかを解説します。
好きな人ができたことを理由に離婚はできる?
「旦那や妻とは別に好きな人ができた」という理由で、離婚は可能なのでしょうか。どのようなケースであれば、離婚が可能なのかを説明します。
相手の同意がなければ離婚は難しい
離婚は基本的に双方の合意があって可能になります。話し合いによって双方が合意して離婚することを「協議離婚」と言い、実際の離婚の多くが協議離婚です。既に夫婦生活が破綻していて、配偶者も関係を修復する気がなかったり、別居が続いたりしている状況であれば、「好きな人ができた」という理由でも、配偶者が同意してくれ、離婚できるかもしれません。
しかし、それまで平穏な結婚生活を送っていて、配偶者も離婚について全く考えていない場合は、同意を取り付けることは困難です。相手は明確な理由を求めることでしょう。「好きな人ができた」などという身勝手な理由で相手を納得させることはできません。最終的に離婚できたとしても、相当な困難を乗り越えなくてはならないでしょう。
調停や裁判でも容易ではない
話し合いによる離婚ができないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる方法があります。これは裁判所を介した話し合いで、裁判所の調停委員が双方から話を聞きます。調停も基本的には話し合いなので、相手が納得しなければ離婚はできません。話がまとまらない場合は、調停不調として調停が打ち切られます。
調停が打ち切られたときは、離婚を求めて裁判を起こせます。裁判で離婚が認められれば、相手の同意がなくても離婚できます。しかし、裁判で離婚が認められるためには、夫婦関係が破綻しているという明確な理由や証拠が必要になります。「好きな人ができた」という理由だけでは、裁判で離婚が認められない可能性が高くなります。
もし仮に調停や裁判に持ち込めたとしても、「好きな人ができた」という理由のほかに、調停委員や裁判官を納得させられる離婚の理由と夫婦関係が破綻しているという証拠が必要です。「好きな人ができた」という理由だけでは、「身勝手な主張で離婚を求めている」と思われて相手側に同情の目が向き、自分側には不利な状況となるでしょう。
性的関係があると裁判で離婚が認められない可能性も
既婚者が他の異性と性的関係を持つことは、「不貞行為」という不法行為です。夫婦関係を損ね、平穏な夫婦生活を送る権利を侵害したとして、慰謝料を請求される可能性があります。このように、夫婦生活を破綻させる原因を作った側を、「有責配偶者」と呼びます。
基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められないというのが一般的な解釈です。そのため、裁判を起こして離婚したいのに、弁護士から「不貞行為をしているのであれば、離婚は困難でしょう」と難色を示されるケースも少なくありません。事情によっては離婚できることもありますが、レアケースと言っていいでしょう。
新大塚法律事務所
離婚が認められるかどうかは、個別具体的事情の総合判断となりますので、似たような事情が存在する場合でも、結論が異なることは少なくありません。また、有責配偶者からの離婚請求についても、配偶者が拒否した場合でも、例外的に離婚が認められる場合がありますが、それも、個別具体的事情の総合判断となります。
そのため、好きな人ができたという理由で離婚したい場合や、ご自身が有責配偶者であるのに離婚したい場合は、まずは専門家である弁護士などにご相談ください。離婚が認められる可能性があるか、仮に認められた場合にはどのような手続が必要で、どのようなデメリットがあるかなどについても理解を深め、その上で、弁護士と共に方向性を検討していくことが望ましいと思います。
好きな人ができても離婚前に考えた方がよいこと
「好きな人ができた」という理由で離婚を考える場合、自分にとって有利な状況がほとんどない可能性もあります。そのような状況で本当に離婚すべきなのか、離婚して後悔しないのか、慎重に検討する必要があります。
「旦那以外に好きな人ができたので離婚したい」「妻と別れて好きな女性と再婚したい」という場合、後悔しないために、どのようなことを考えなければならないのかを説明します。
現在の夫婦関係は破綻しているか
離婚する際、通常は夫婦関係が破綻して、関係修復が不可能だというのが前提です。平穏で円満な家庭生活を送っているのに、いきなり「好きな人ができたので離婚してほしい」と言っても、それは誰が見ても身勝手な言い分です。たとえ離婚できたとしても、平穏な夫婦生活を破壊したとして、慰謝料の支払いなど厳しい条件が突き付けられるでしょう。
このため、離婚するのであれば、「既に夫婦生活が破綻していて、他の異性を好きになっても仕方がない」と主張できる状況にあることが重要です。それで離婚へのハードルが下がるとは限りませんが、それなりの説得力はあるでしょう。離婚を考えるのであれば、現在の夫婦関係が客観的に破綻しているといえるかどうか、冷静に振り返ってみてください。
慰謝料などの不利益を受け入れられるか
配偶者以外に好きな人ができたとして離婚する場合、慰謝料の支払いを覚悟する必要があります。夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の異性と性的関係を持った場合、貞操義務に違反し、円満な夫婦生活を送る権利を侵害したとして、慰謝料を請求される可能性が高くなります。
慰謝料の金額は個別の事情によって変わりますが、数十万円から300万円くらいです。特別な事情があれば、さらに高額になる可能性がありますし、好きな相手が既婚者だった場合、相手の配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。こうした慰謝料を払ってまでも、離婚して再婚したいのか考える必要があります。
また、不倫によって離婚したと見なされることによって、周囲から冷たい目で見られる可能性もあります。職場での信頼を失い、冷遇されることがありますし、特に信用が大切な仕事をしている場合、多くの取り引き先を失う恐れもあるでしょう。こうした不利益を受け入れられるかどうかを考えることも必要です。
子供の養育をどうするのか
子供がいる場合は、離婚した後の子供の養育についても考える必要があります。特に親権を望んでいる場合、「好きな人ができたから離婚する」という身勝手な主張をした親が、子供を引き取れる可能性があるのかをよく考える必要があります。
「好きな人ができたから離婚する」と主張する親が、親権者として妥当でないかは別問題ですが、いくら親が望んでも、子供に拒絶される恐れもあります。
もちろん、離婚が子供の成育に及ぼす影響も心配です。子供は家庭を壊した親を恨みながら、成長することになるかもしれません。そうした子供は、将来、結婚に否定的な考えを持つようになることもあります。
また、親権を取れなかった場合は、養育費の負担を求められる可能性もあります。離婚を考えるのであれば、子供と会えなくなるリスクや子供への悪影響、養育費の負担などについても、よく考えましょう。
再婚後の幸せな生活をイメージできるか
離婚には、今後の生活への不安や子供への悪影響、経済的損失などさまざまなリスクがあります。「旦那や妻以外に好きな人ができた」という理由で離婚すると、周囲には「身勝手な恋愛で家庭を壊した」と見られ、リスクはさらに高まります。そうしたリスクを負ってでも離婚して、好きな人と再婚する価値があるのでしょうか。
離婚した場合に考えられるリスクについて考えたら、その後の新しい生活についてイメージしてみましょう。幸せな結婚生活を想像できるでしょうか。よく「2人で力を合わせれば苦労を乗り越えられる」という人がいますが、実際にはそんなに甘くはありません。「こんなはずではなかった」と後悔する人がほとんどです。
もちろん、再婚して幸せになる人もいます。迷ったら、好きな人がいなくても、今の配偶者と別れる理由があるのか、現在の配偶者と別れて1人になっても幸せになれるのかを考えてみるといいでしょう。
要注意!「好きな人ができた」と離婚したものの後悔するケース
配偶者以外に好きな人ができ、望み通り離婚できたとしても、想像していたように幸せになれるとは限りません。全く予想していなかった展開に「離婚なんてしなければよかった」と後悔するケースもあります。離婚して後悔する典型的なケースを紹介しましょう。
再婚したら思っていた人と違った
恋愛していたときは、とてもすてきな人で、好きでたまらなかったのに結婚したとたん、相手の嫌なところばかりが目に付くようになったというのは、よくある話です。「苦労して離婚までして一緒にならないといけない人だったのか」と再婚後に悔やむケースは少なくありません。
まさに「恋は盲目」の言葉通り、恋愛中は相手の長所ばかりに目が向き、短所は軽視しがちです。また、一度離婚に突き進んでしまうと、冷静に周囲を見られなくなることもあります。このため、再婚して落ち着くと「こんな人だとは思わなかった」と失望することになるのです。
ひょっとすると、相手が魅力的に見えていたのは、結婚生活のマンネリや不満からの幻覚だったのかもしれません。人は平穏すぎる生活を送っていると、ちょっと刺激が欲しくなるもので、そうした願望から恋愛に走ってしまうこともあります。そうして実際とは違う理想の異性像を相手に重ね合わせたまま再婚に突き進むと、激しく後悔することになります。
配偶者や子供への罪悪感が残る
「好きな人ができた」という熱情に駆られて、離婚から再婚へと突き進むと、その熱が冷めて冷静になったとき、元夫や子供に対して「家庭を壊してしまい申し訳なかった」という思いを抱くことがあります。こうした思いは、再婚後の生活が満足いくものであっても沸き起こる場合があり、思うような新生活ではない場合はなおさらです。
時が経つにつれて、過去の思い出は美化されていくことがあります。再婚後も、楽しかった新婚生活や親子で遊びに出かけた思い出ばかりを思い起こし、つらい気持ちになる人もいます。特に、元の配偶者には落ち度がなく、ただ「好きな人ができた」というだけで家庭を壊してしまった場合、後悔に苛まされる人が少なくないようです。
離婚後の生活が苦しい
離婚によって、多額の慰謝料を支払わなければならなくなったうえ、社会的な信用も失い、経済的に苦しい生活を余儀なくされることもあります。既婚者とのW不倫で両方の配偶者から慰謝料を請求された場合や、再婚相手に経済力が乏しい場合は、生活レベルの低下はまぬがれません。
経済的に苦しくても、一緒にいるだけで幸せと感じられれば問題はありませんが、再婚後数年たって、生活が落ち着いてからも、そう思えるかどうかは疑問です。結婚後の生活を具体的にイメージしておかないと、「勇気を出して離婚したのに、あのまま結婚生活を続けていればよかった」と後悔することになります。
好きな人と再婚できなかった
大変な思いをして離婚したものの、結局、相手と再婚できないこともあり得ます。W不倫をしていて、互いに今の配偶者と離婚すると約束していたのに、相手側が離婚を切り出す勇気がなく、妻との関係修復の道を選んでしまったというケースがあれば、未婚の相手が周囲に反対され、結婚に踏み切れなかったというケースも少なくありません。
不倫を経て結婚するというのは、周囲の目も厳しく、決断するには勇気も必要です。また、自分は本気のつもりだったのに、相手はただの遊びのつもりで、離婚したとたんに逃げられるという話もよく聞きます。こうして、離婚をしたのに再婚できないという結果になると、「離婚なんてするんじゃなかった」と後悔します。
好きな人ができて離婚すべきか迷ったら専門家に相談
円満な夫婦にも倦怠期が訪れるといいますが、平穏な日々が続くと、生活に刺激が欲しくなることがあります。普通は趣味を始めたり、旅行をしたりして好奇心を満たしたりするものですが、中には新たな異性との出会いにはまってしまう人もいます。
恋愛感情は激しく燃え上がるものですが、いつまでも続きません。一時の熱情の赴くままに離婚し、再婚したりすると、その熱が冷めたときに激しく後悔することにもなりかねません。誰かを好きになることは仕方のないことですが、それによってどのような結果になるのかをよく考えることが大切です。
もし、好きな人ができて「再婚するために離婚したい」と考えたら、夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談してみてはどうでしょうか。真剣に離婚を考えているのなら、弁護士でもいいでしょう。離婚のデメリットも踏まえて、客観的な立場から相談にのってもらえるはずです。
新大塚法律事務所(第一東京弁護士会所属)
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