「義両親と同居する夫婦は離婚率が高い」などと言われますが、本当なのでしょうか。確かに「夫の義両親と仲が良くない」「妻の義両親と暮らし始めて夫婦仲が悪化した」という話も聞きます。義父母との同居のストレスを軽減する方法や離婚を考える際のポイントなどを紹介します。
義両親との同居に疲れたから離婚したい…
経済的な問題や介護を理由に両親との同居を考えなければならないことがあります。しかし、同居するのが実の親ならいいのですが、義両親となると大変です。たとえ配偶者の親でも、自分にとってはもともと赤の他人。生活習慣の違いから互いに気まずい思いをすることがあり、最初から性格が合わない場合もあります。同居でつらい思いをする人も少なくありません。
夫の両親と完全同居を始めて10ヶ月、離婚したいと毎日思ってしまうような日々が辛くてしかたありません。何か辛いのか。義両親との、気を遣ったり、合わないやり方にストレスが溜まる生活ももちろん大変ですが、そういった大変さに夫の理解がないわけでもないけれど、親と妻の間に立たされて夫自身もストレスが溜まってはいるのでしょうが、親の顔色ばかり伺って結局妻である私が我慢を強いられる現状です。私が義両親に対する不満を夫に告げると、共感はしてくれるけど「俺が言うとバトルになるから、自分で言えよ」と言われます。
現在結婚4年目で、入籍直後から旦那の実家で完全同居しています。
入籍した時には妊娠していたのでギリギリまで外で働いていましたが、産休に入った頃から義両親に気を遣いすぎて疲れてしまうことが多く、初めての妊娠時は夜は寝付けず、日中になると不眠からくる眠気と気怠るさで分け与えてもらっている部屋でよく休んでいました。(掃除・洗濯・食事の準備などの最低限の家事はしていました。)
ある時、我慢の限界を超えて同居を解消して自分たちで生活したいと切り出した際に喧嘩になり、いつも寝てて家事もろくすっぽしてないくせに…等言われ、誰がそんなこと言ってるのか?と聞くと、親が言っていると。
それからすごく義両親に対して嫌悪感を抱くようになりました。
妻の両親と同居中なのですが義父が好きになれません。
現在、一軒家を購入し一回妻には断ったのですが断りきれず渋々妻の両親と同居してしまっています。
同居する際に私に対してお礼も謝罪の言葉もありませんでしたし、その代わりに「お互い気を使わないようにしような」と図々しくも言われて、その時点でそれまでが普通であったのが嫌悪に変わりました。
「親と同居すると離婚率が高まる」と言われますが、それは本当なのでしょうか。また、どうしても別居や離婚ができないときに義両親との同居のストレスを軽減する方法や、離婚を検討する際のポイントなどを紹介します。
義両親との同居は離婚率を高める?
「義両親と同居している夫婦は、別居している夫婦より離婚率は高い」とよく言われます。しかし、そのようなことを裏付けるデータはありません。そもそも「離婚率」とは人口1000人あたりの離婚件数のことで、結婚した夫婦のうち、何組が離婚するのかといった「割合、確率」を指すものではありません。「離婚率」の意味を取り違えています。
義両親の同居で離婚率が高まるとは限らない
「義両親と同居している夫婦のほうが離婚する割合が多いような気がする」という実感を抱いている人も多いでしょう。しかし、これも統計や調査の裏付けに基づく話ではありません。義両親と円満に同居する夫婦も少なくありませんし、同居する義両親の介護をしている人もいます。
義父母との不仲、特に嫁と姑の不仲が原因で離婚する話をよく聞くため、「義両親と同居する夫婦は離婚しやすい」というイメージが「離婚率」として広まっているのではないでしょうか。1組の夫婦の離婚にはさまざまな事情があり、似たような環境でも離婚する夫婦がいれば、危機を克服する夫婦もいます。「離婚率」の話は都市伝説のようなものでしょう。
離婚理由で最も多いのは「性格の不一致」
結婚した人が離婚する割合といったデータは存在しませんが、離婚調停を申し立てた人の「離婚したい理由」については、裁判所が毎年件数を集計して「司法統計」の中で報告しています。2020年の司法統計によると、調停を申し立てた理由で最も多かったのは、「性格が合わない」で全体の約4割(複数回答)を占めました。
次いで「精神的に虐待する」「生活費を渡さない」と続き、「家族親族と折り合いが悪い」はDVや浮気、浪費などより低く8番目の4871件となっています。これは、あくまでも離婚調停だけの集計なので、離婚全体の傾向を表しているとはいえませんが、「親との同居」がほかの理由より多いとは言えないのは確かでしょう。
大切なのは「割合」ではなく現在の状況
義両親との同居で、夫婦関係が悪化する確率が高まるわけではないのですが、夫婦や家族の事情はさまざまです。日常生活の不満が少しずつ重なり、離婚を考えなくてはならないほど、つらい状況になることもあります。義父母の同居をきっかけに夫との価値観の違いに気付いたり、それまでの長年の不満が噴出したりすることもあるはずです。
義父母との同居がきっかけで夫婦関係が悪化していると感じているのなら、冷静に現在の状況を見つめ直し、改善できる点はないか、離婚を避けられないのかを落ち着いて考えてみましょう。夫婦関係に詳しいカウンセラーや弁護士にも相談すると、よい解決策が見つかるかもしれません。現状について考えるためのポイントを紹介していきますので、参考にしてください。
義両親との同居で問題になることとは?
義両親との同居では、具体的にどのようなことが問題になるのでしょうか。離婚の原因となることもある典型的なトラブルを3つ紹介します。自分たちの場合は、どれに当てはまるか考えてみましょう。
嫁姑など義両親とのトラブル
義両親との同居のトラブルといえば、嫁姑問題。姑による嫁いびりをイメージする人も多いでしょう。しかし、妻が夫の義母と不仲というケースだけでなく、妻と義父が不仲の場合もありますし、最近は逆に妻の両親と同居し、夫と義父母の仲が良くないという例も増えています。
義両親ももともとは他人ですから、生活習慣や価値観が違うのが当然です。それなのに、義両親が自分の考えを押し付け、言われたほうも義両親に遠慮して何も言えないような状態だと、関係が悪化しやすくなります。さらに、夫や妻が義両親との関係に悩んでいるのに、配偶者が無関心だったり、自分の両親の味方をしたりすると夫婦関係まで悪化することがあります。
金銭をめぐるトラブル
義両親の同居では金銭トラブルも起こりがちです。生活費の分担をめぐり、予想以上に義父母にお金がかかることがありますし、同居のためのリフォーム費用の負担をめぐって、わだかまりが残ることもあります。
同居後に、義両親の借金や浪費癖が発覚することもあります。中には、義両親の借金の肩代わりをさせられたという人もいるようです。こうした金銭トラブルが起こると、人間関係も悪化してしまい、相手の顔を見るのも嫌だという気持ちになってしまうこともあります。
夫婦間のトラブル
義両親との同居をきっかけに夫婦仲が悪化してしまう人たちもいます。夫や妻が自分の両親と仲が悪いと、両方から相手の悪口を聞かされ、最後には「なんとかしてくれ」と言われるようになってしまいます。そうなると、自分が板挟みになっているような気持ちになり、不満やストレスも溜まりがちです。
うまく間に入って仲を取り持つことができればいいのですが、大抵の場合、「相手の肩を持つの?」と言われて、ますます板挟みになるばかり。最後は「どうでもいい」という気持ちになってしまうこともあります。そうなると、夫婦仲もしだいにぎくしゃくし始め、愛情も失われていきます。
義両親との同居のストレスを理由に離婚できる?
統計上、義両親との同居を理由に離婚する夫婦が、特に多いわけではないとしても、実際に義両親との関係に悩んでいる人が多いのも事実です。そうした義両親との同居のストレスを理由に離婚はできるのでしょうか。離婚を検討する際のポイントを解説します。
配偶者の同意がなければ離婚は難しい
義両親との同居へのストレスを理由に離婚したいときは、まずは夫婦で離婚について話し合うことが大切です。裁判で離婚を認めてもらおうとしても、「義父母との同居がストレスになる」という理由だけでは、離婚が認められる可能性は低いでしょう。このため、配偶者に同意してもらえなければ、離婚が成立するまで時間がかかってしまうことが多くなります。
もし、離婚に合意してもらえたとしても、義両親と同居していた場合は、条件についての話し合いが難航する恐れもあります。財産分与では、どこまで義両親の財産なのかをめぐってもめる可能性がありますし、義両親から生活を支援するために渡していたお金を返すよう求められることもあります。
義両親と同居していて離婚する際は、金銭面でこじれることも多いので、たとえ話し合いによる離婚でも、事前に弁護士に相談したほうがよいかもしれません。
離婚の同意が得られないときは?
話し合いによって離婚できないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。離婚調停では裁判所の調停委員を通じて離婚の条件などを話し合います。しかし、離婚調停でも合意できる見込みがないときは、調停不成立として打ち切られます。
離婚調停が不成立となったときは、再び協議を続けるか、離婚裁判を起こして裁判所に離婚を認めてもらうしかありません。裁判で認められれば、相手の合意がなくても離婚できます。
裁判で離婚が認められるには
裁判離婚を起こすには、民法で定められた「離婚事由」が必要になります。離婚事由とは、次の5つの事情です。
・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の未払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある
「義両親との同居がストレスになる」という理由は「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」に当てはまるとは言い難く、これだけで離婚裁判を起こすのは難しいでしょう。もちろん、これとは別に配偶者の浮気があれば、それだけで離婚の理由になりますし、夫や義両親からの暴力、耐え難い嫌がらせなどがあるという場合も離婚できる可能性があります。
「義両親との同居によるストレス」以外に大きな理由がない場合は、いったん別居して、数年後に「婚姻を継続しがたい重大な事由があり、夫婦関係も破綻している」として離婚裁判を起こすという方法もあります。いずれにせよ、離婚問題に詳しい弁護士に、どのような方法なら離婚できるのかを相談したほうがいいでしょう。
【離婚する前に】義両親との同居のストレスを軽減する方法
「義両親の同居がストレスで離婚したい」と思っていても、離婚に同意してもらえないことや、経済的な事情などから離婚や別居に踏み切れないことがあります。そうした場合、義両親との同居を続けるしかないのですが、ストレスを軽減する方法はないのでしょうか。義両親とのトラブルを防ぎ、ストレスの少ない生活を送る方法を紹介します。
夫婦でよく話し合う
義両親とのトラブルを防ぐには、実の子供である配偶者の協力が必要です。嫁姑問題で、よく「夫が母親をかばって妻が孤立する」と言われますが、こうしたことが起きないよう配偶者には自分の味方になってもらいましょう。もともと他人である義両親には、不満があっても遠慮してしまうものですから、身内で配偶者を味方につけることは重要なことです。
義両親との同居がストレスになっているなら、それを正直に配偶者に話し、今後どうすればいいのかをよく相談しましょう。配偶者が盾になってくれれば、義両親とのトラブルも減り、同居生活もうまくいくようになる可能性があります。
互いにルールを決める
義両親と夫婦の間でトラブルが起きる家庭は、同居するにあたって生活のルールを決めていないことが多いようです。生活習慣の違う2組の夫婦が一緒に生活をしていると、どうしても誤解やすれ違いも起こってしまいます。そうしたことをできるだけ防ぐためにもルールが必要です。
日常生活や家事の分担だけでなく、生活費や住宅ローンの負担などの金銭に関するルールもしっかりと決めておけば、後からトラブルになるのを防げます。「家族なんだからルールなんて必要がない」と反対されるかもしれませんが、「互いに気持ちよく生活するためだから」と説得し、よく話し合ってルールを決めましょう。
生活スペースを分ける
「完全同居は離婚しやすい」と言われることもあります。これもきちんとした裏付けのある話ではないのですが、おそらく夫婦の個室を除いて玄関やリビング、台所、お風呂などほとんどのスペースを共同で使用している「完全同居」の場合は、トラブルが起こりやすいという意味なのでしょう。
二世帯住宅には、義両親と夫婦の生活スペースを完全に分ける完全分離型や一部分だけを共有する部分共有型という間取りの家があり、完全同居型よりはトラブルを避けられるといわれます。しかし、無駄なスペースができやすく、将来、親の介護が必要になったときに不便だというデメリットもあります。
一方、完全同居はほとんどのスペースを共有するため、互いに気兼ねがあったり、1人で自由に過ごせる時間がなかったりという不自由さがありますが、義両親に子供の面倒をみてもらいやすいというメリットもあります。こうしたメリットを生かすため、完全同居でもできるだけ生活スペースを分ける工夫も必要です。
多少のリフォームも必要になるかもしれませんが、ルール作りと合わせて、それぞれの夫婦が相手を気にせずに過ごせるスペースを増やすことで、ストレスも軽減できる可能性があります。
必要以上に干渉しない
義両親との同居にかぎらず、同居生活では互いに干渉しすぎないことも、うまくいくコツの一つです。どうしても相手のしていることが気になることもありますが、相手の家庭のことは、よほどのことではない限り、自分たちには関係ないと割り切り、余計な口出しは避けましょう。
もちろん、これは義両親側も同じことで、「自分たちのことには口出ししないでほしい」などと配偶者からも釘を刺しておいてもらいましょう。
ストレス解消法を見つける
義両親と円満に過ごしている人でも、毎日生活していれば、何かしらの不平や不満を抱き、ストレスも生じるものです。ストレスがたまれば、イライラも募り、ますます義両親との関係が悪化してしまうかもしれません。ストレスを上手に解消する方法を見つけておきましょう。
趣味でも運動でも、何か楽しめて気分転換できることがあれば、嫌なことも忘れてストレスもためずにすむはずです。
義両親との同居に疲れて離婚を考えたら専門家に相談を
嫁姑問題に代表されるように、義両親との同居によるトラブルは昔からある問題です。解決するには、義両親とうまくいくように努力するにせよ、離婚するにせよ、よく話し合うことが大切です。良い解決策が見つからないときは、夫婦問題に詳しいカウンセラーに相談するといいでしょう。
また、「義両親との同居がストレス」だという理由だけで、裁判によって離婚するのは難しいので、離婚を考えている人は事前の準備も必要です。法律や裁判例の知識も必要になるため、離婚問題に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。