長男の嫁だけど義父母の介護を拒否したい|介護は義務?離婚できる?

「長男の嫁だから義父母の介護は義務だ」と言われ、拒否できずに悩む妻がいます。夫の親といっても、不仲で互いに顔も見たくないという場合もあり、中には介護を拒否できないのなら離婚したいと考える妻もいます。「介護は長男の嫁の義務」と言われたときの対処法を紹介します。

専門家監修 |弁護士 加藤 惇
加藤 惇/CSP法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
弁護士として、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料・不貞・親権・面会交流など、離婚にかかわる事件を特に重点的に取り扱う。...
加藤 惇/CSP法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
弁護士として、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料・不貞・親権・面会交流など、離婚にかかわる事件を特に重点的に取り扱う。依頼者の意向を丁寧にくみ取り、常に依頼者の利益を最大化することを目標に活動している。離婚事件のほか、いじめなどの学校事件も多く扱っており、子供に関する問題にも詳しい。CSP法律会計事務所所属。

目次

  1. 長男の嫁だけど義父母の介護を拒否したい
  2. 長男の嫁が介護をするのは義務?
  3. 法律上は嫁に介護の義務はない
  4. 介護を拒否すると「保護責任者遺棄罪」に?
  5. 介護するかしないかは嫁と義父母との関係しだい
  6. 長男の嫁が介護を拒否する理由とは
  7. 嫁姑問題などで義父母との関係が良くない
  8. 仕事や育児との両立が難しい
  9. 夫に介護をする気が全くない
  10. 経済的な負担が重い
  11. 長男の嫁で介護を拒否できないことを理由に離婚できる?
  12. 互いの合意があれば離婚は可能
  13. 「介護を拒否できない」という理由だけでは離婚は難しいことも
  14. 「介護を拒否できない」として離婚できるケースとは

長男の嫁だけど義父母の介護を拒否したい

「長男の嫁だから、いずれ義父や義母の介護をする義務がある」と言われたことはないでしょうか。もちろん「義父や義母にはお世話になったので、長男の嫁だからということではなく、恩返しとして介護する」という人もいるでしょう。しかし、中には義父や義母と仲が悪く、「顔も見たくない」「介護するくらいなら離婚したい」という妻もいます。

長男嫁です。
夫は2人兄弟で、次男は養子にでてます。
義父母は長男である夫に期待してます。

しかし、私は義父母には、あまりよくして貰ってません。
金銭的にもですが、あまり価値観も意見も合わず衝突ばかりになります。

そもそも、旦那にもあまり妻として大切にされてない(セックスレスや育児協力など)ので、夫ですら老後を見たくないのにその親の面倒なんてもっての他です。

義母が1人暮らしをしているのですが最近は軽い脳卒中を起こしたり人工透析に通う様になりいずれ介護が必要になりそうです。
今はヘルパーが来てなんとかなってますが、いずれは要介護になること必須です。
私は義母とは色々あり大嫌いなので介護はしたくありません。
旦那はこちらに呼び寄せたいようなことを言ってます。
もちろんこちらに来たら私が介護しなきゃいけないし、旦那にも嫌だということを伝えました。
旦那は「俺は仕事があるから仕方ないだろ、じゃあ俺が仕事やめて代わりに働いてくれるのか」というような事をいってきます。
主人は一人っ子なので他に頼れる兄弟はいません。
老人ホームに入れるお金はありません。
嫁には義務はないのになぜ大嫌いな義母を介護しなきゃいけないのかわかりません。

本当に夫の両親の介護は「長男の嫁の義務」で、どんな理由があろうと拒否することはできないのでしょうか。「長男の嫁だから義父母の介護は拒否できない」と言われたときの対処法や、介護を拒否できずに離婚を検討するときのポイントなどについて説明します。

長男の嫁が介護をするのは義務?

「長男の嫁が義父や義母の介護をするのは義務」と言われますが、なにか根拠があるのでしょうか。法律上の解釈や、一般的な考えについて整理します。

法律上は嫁に介護の義務はない

法律の解釈からいえば、「長男の嫁が義父や義母の介護をする義務」というものはありません。民法には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という条文があり、祖父母や父母、子供、孫には介護する義務があると言えるかもしれませんが、それでも、子供の妻は該当しません。

また、「長男本人が仕事で忙しくてできないときは、妻が代わりに介護をするのは当然」と言う人もいますが、妻が代わりをするかどうかは夫婦間の問題であり、夫婦が話し合って決めることです。他人がとやかくいうことではありません。また、民法の「扶養する義務」も必ずしも介護を指しているわけではなく、できる範囲での金銭的な援助でも十分です。

介護を拒否すると「保護責任者遺棄罪」に?

「長男の嫁が介護を拒否して、義父母がけがをしたり亡くなったりすると、保護責任者遺棄罪に問われる」という人もいますが、これも正確ではありません。保護責任者遺棄とは、「世話をする法的な責任を負う人が、自分の力で生きていけない人の世話をしない」という罪です。

たとえば、妻と義母が2人きりの部屋で、義母が危険な状態であることを知りながら、妻が何もしないという状況であれば、罪に問われる可能性もあります。しかし、長男の妻が罪に問われるのであれば、夫やほかの親族も責任が問われるはずです。ただ介護を拒否したというだけで、罪になることはないでしょう。

加藤 惇

法的な責任があるかのように脅すことで、妻を思い通りに行動させようとする夫や夫の親というのは決して珍しくありません。そのようなことを言われても鵜呑みにしないことが大切です。すぐに弁護士に相談して、相手の言っていることが正しいのか確認すると良いでしょう。また、そのような夫や夫の親にどのように対処するのが適切か、弁護士と相談すると良いと思います。

介護するかしないかは嫁と義父母との関係しだい

「家」「跡継ぎ」などといった伝統的な家族観を持っている義父や義母、親類などは「長男の嫁が夫の親の介護をするのは当たり前」「今まで世話になってきたのだから」と言うこともあるでしょう。夫の両親に子育てを手伝ってもらったり、経済的援助を受けていたりした場合、「恩知らず」などと言われることもあります。

確かに、義父母にお世話になったのだから、介護するのは当然という意見にも一理あります。しかし、妻のすべてが義父母と良好な関係を保っているわけではなく、妻と義父母の関係性によって、妻の気持ちも変わるものです。結局は、妻が「お世話になったから恩返ししたい」と思えるか、「介護なんて絶対にしたくない」と思うかがすべてではないでしょうか。

長男の嫁が介護を拒否する理由とは

「長男の嫁だから義父母の介護をすべきだ」と言われても妻が介護を拒否するのは、「法律で介護の義務がないから」という理由だけではないはずです。どのような考えから介護を拒否するのか、よくある理由を4つ紹介します。

嫁姑問題などで義父母との関係が良くない

やはり、妻が義父母の介護をするかどうかは、妻と義父母の関係とおおいに関係があります。いわゆる「嫁姑問題」があり、妻と義母が不仲な場合、大変な介護を自分からしようという気持ちにはなりません。また、「これまで困ったときに助けてもらったことがない」と感じている妻も「義父母に恩返しをしよう」という気持ちにはならないでしょう。

また、介護を始めたものの、義父母に「やってもらうのが当たり前」という態度を取られ、感謝の言葉もないため、不満がたまり、介護する気持ちが失せてしまう妻もいます。介護では、介護する側とされる側の信頼関係も重要です。

仕事や育児との両立が難しい

仕事と育児を両立させている妻は、それだけで手一杯で、義父母の介護まで手が回らないということもあります。「仕事を辞めて、育児と介護、家事に専念してほしい」と周囲に言われることもありますが、それで退職を余儀なくされると、妻は「介護のために仕事を奪われた」と後悔したり、不満を抱いたりすることがあります。

仕事を辞めるということは、本人にとって大きな環境の変化で、ストレスもかかります。そこに新たに介護という肉体的にも、精神的にも大変な役割が加わるのですから、妻には相当な負担となります。介護が始まった後、メンタルの不調を訴えるようになる妻も珍しくありません。

夫に介護をする気が全くない

本来、親の介護をすべき夫に全く介護をする気が見られず、妻に全てを丸投げする考えが明白な場合、妻は「私に任せて何もしないつもりなの?」と夫の態度に反発し、義父母の介護を拒否することがあります。妻に親の介護をしてほしいのなら、自分もできるかぎり、介護や家事、育児に関わるべきでしょう。

経済的な負担が重い

介護には経済的な負担もかかります。通院が必要なこともありますし、介護のためリフォームが必要になることもあります。介護用品の購入も必要です。入浴などの介護サービスを利用しなければならないこともあるでしょう。こうした介護費用が家計を圧迫することもあります。

妻がこうした家計のやりくりに頭を悩ませているのに、「家計のことは君に任せているから」と何も考えず、何もしない夫もいます。そうなると妻は子供の教育費や老後の生活設計などについても不安を抱くようになり、「とても経済的な余裕はない」として、義父母の介護を拒否することになります。

長男の嫁で介護を拒否できないことを理由に離婚できる?

「長男の嫁だから義父や義母の介護をしなければならない」と言われ、介護を強く求められた場合、介護を拒否できないことを理由に離婚できるのでしょうか。離婚を考える際のポイントを紹介します。

互いの合意があれば離婚は可能

配偶者と離婚したいと思ったとき、まずは夫婦で離婚について話し合うことが大切です。話し合いで条件を決めて離婚に合意すれば、後は役所に届を提出して離婚が成立します。これを協議離婚といいます。協議離婚では、離婚の理由を問われることはありません

しかし、どちらかが離婚に反対したり、条件で折り合えなかったりした場合は、すぐに離婚はできません。まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判所の調停委員を介して離婚の話し合いを続けます。それでも、合意できないときは、離婚裁判を起こして裁判所に離婚を認めてもらうしかありません。裁判で認められれば、相手の合意がなくても離婚できます

「介護を拒否できない」という理由だけでは離婚は難しいことも

裁判離婚を起こすには、民法に定められた「離婚事由」が必要になります。離婚事由とは、次の5つの事情です。

・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の未払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある

「義父母の介護を拒否できないので離婚したい」という場合は、妻にとって、介護を拒否できないことが「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」に当てはまるかどうかが問題になります。介護の問題は、話し合いによって改善ができる可能性があり、よほどの事情がないかぎり、離婚が認められる可能性は低いと考えられます。

「介護を拒否できない」として離婚できるケースとは

「義父母の介護を拒否できない」ことを理由に離婚裁判を起こすのであれば、夫婦生活が成り立たなくなるほどの事情がなくてはなりません。たとえば、次のようなケースであれば、離婚が認められる可能性があります。

・介護を拒否すると暴力を受ける
・介護を拒否していることを理由に生活費がもらえない
・介護を負担しない代わりに、金銭を要求されたり勝手に預金を引き出されたりする

また、夫や他の身内が妻に介護の責任を押し付けて何もしないという状態が長く続き、妻も手助けを求めているのに、一向に状況が変わらないという状況であれば、夫婦の関係など他の事情も総合的に判断して離婚が認められるかもしれません。

離婚裁判では個別の事情をもとに、夫婦関係が破綻しているかどうかが判断されます。離婚を検討するときは、弁護士に相談して法律や裁判例に基づいたアドバイスを受けたほうがいいでしょう。

長男の嫁で介護を拒否できずに悩んだら専門家に相談を

介護の問題は家庭ごとに事情が異なり、何が正しいのか、一概に判断することはできません。しかし「長男の嫁だから」という理由だけで、介護を一人に押し付けるのは間違っています。義父母の介護を強く求められて悩んだときは、夫婦関係に詳しいカウンセラーにアドバイスを求めてもいいでしょう。

夫をはじめ周囲の手助けが得られず、義父母の介護で心身ともに疲れ切ったときは、自分の健康を守るため、別居したり離婚したりして介護から離れることも必要かもしれません。自分の力で解決が難しいときは、夫婦間の問題に強い弁護士に相談しましょう。

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