専業主婦への財産分与はおかしい?適正な割合とは?家事をしない妻はどうなる?

離婚時には、夫婦間でさまざまな取り決めが交わされます。その中で、もめることが多いのが「財産分与」です。夫婦で半々にするのが一般的ですが「専業主婦の妻に半分渡すのはおかしい」と主張する夫もいます。専業主婦が財産分与で半分受け取るのはおかしい事なのかを解説します。

専門家監修 |弁護士事務所 北松戸ファミリオ法律事務所
北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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2020年開業した当事務所は、ご家族内やご家族をめぐる問題やお悩みを気軽に相談で きる地域密着型の法律事務所として、一人一人のお客様に親身に寄り添い、最善の解決を 目指しています。

目次

  1. 専業主婦の財産分与割合が50%なのはおかしい?
  2. 財産分与の平均額は?
  3. 財産分与の考え方とは
  4. 財産分与は夫婦双方に権利がある
  5. 対象となるのは共有財産
  6. 財産分与の対象とならない「特有財産」
  7. 離婚の原因には左右されない
  8. 財産分与の割合はどうやって決める?
  9. 基本は話し合い
  10. 話し合いで決まらないときは裁判所で調停
  11. 調停不成立のときは審判手続きへ
  12. 財産分与の割合が変わる例外ケース
  13. どちらか一方の貢献度が非常に高い場合
  14. どちらか一方がギャンブルや借金をしていた場合
  15. 特有財産を原資に資産を形成した場合
  16. 専業主婦の妻が家事を全くしなかった場合はどうなる?
  17. 離婚時に財産分与しない方法はある?
  18. 話し合いによって可能なことも
  19. 結婚前に契約を結んでおけば財産分与せずに済むことも

専業主婦の財産分与割合が50%なのはおかしい?

離婚するときには、子供の親権や財産分与、慰謝料の有無などさまざまな条件について話し合われます。結局、条件面で折り合えず、裁判所の調停や裁判に持ち込まれることもあります。そのなかで、財産分与の割合をめぐって対立することも少なくありません。

通常、結婚後に築いた財産は夫婦で半分に分けられますが、中には「専業主婦で何も稼いでこなかった妻が半分受け取るのはおかしい」と訴える夫もいます。果たして、専業主婦が離婚時に財産の半分ををもらうのはおかしいことなのでしょうか。財産分与の額の決め方などを解説します。

財産分与の平均額は?

財産分与では、いくらくらいの財産が見込まれるのでしょうか。財産と言っても、多額の住宅ローンを抱えている家庭では、家を売却しても多額の資金は残りませんし、子供の教育費として貯めているお金を財産分与してしまっていいのか、など考えなければならいことは数多くあります。実際、平均的にいくらくらい手にしているのでしょうか。

財産分与の平均額というデータは存在しませんが、裁判所は1年間に行われた離婚調停で取り決められた財産分与の額を集計して、毎年「司法統計年報」の中で公表しています。

2021年の司法統計年報によると1年間で成立するなどした離婚調停は約2万6000件で、このうち財産分与の取り決めがあったのは約8000件でした。額を見ると、100万円以下が1774件で最も多く、次いで400万円以下の996件、200万円以下の987件と続きます。2000万円を超えたのは401件で最も少なくなりました。

婚姻期間を見ると、年数が長くなるほど金額が高くなり、婚姻期間が25年以上になると1000万円以上が約3割を占めます。一方で、婚姻期間が5年以下だと半数近くが200万円以下となっています。当然のことながら、婚姻期間が長いほど、資産も増え、結果財産分与額も増えていくといえます。

財産分与の考え方とは

財産分与とは、夫婦が離婚する際、夫婦が持っている財産を分け合うことです。どのようなルールで財産を分けるのか、基本的な考え方を説明します。

財産分与は夫婦双方に権利がある

財産分与では、原則として夫婦で2分の1ずつ、財産を分けます。結婚後に形成された財産が対象で、名義がどちらにあるか、どちらの収入によって築かれたかは問われません。たとえ、妻が専業主婦で一度も収入を上げたことがなくても、財産の2分の1を受け取れます。

これは、夫が収入を得たり、財産をつくったりできたのは、妻が家事に専念し、家庭生活を生活を支えるなどの貢献があったからだとの考えからです。かつては「外で働いて家計を支えてきた夫が、多くの財産を受け取るのは当然だ」という考えがありましたが、現在は主婦の貢献を軽視するのは不公平でおかしいという意見が一般的となりました。

しかし、夫や夫の親族の中には、いまだに「自分の収入でつくった財産だから、妻に半分も渡すのはおかしい」と考えている人も多く、財産分与の割合をめぐってもめることが多くあります。

対象となるのは共有財産

財産を半分に分けるといっても、夫と妻が持っている財産すべてを半分にするわけではありません。対象となる財産は、結婚して以降に夫婦が協力してつくったもので、これを「共有財産」と呼びます。

共有財産に含まれるのは、結婚後に貯めた預貯金や、購入した株式、金融商品、マイホーム、自動車などです。結婚後に契約した生命保険の解約返戻金や、年金、退職金も共有財産となります。このほか、家財道具や、趣味で購入したゴルフクラブ、釣具、カメラなども共有財産です。

財産分与の対象とならない「特有財産」

結婚後につくった財産を「共有財産」というのに対し、結婚する前から持っていた財産や、離婚した後につくった財産を「特有財産」と言います。特有財産は財産分与の対象外です。また、親族から相続したり贈与されたりした財産も、夫婦の協力とは関係ないと見なされ、特有財産になります。

特有財産は配偶者と分け合う必要のない財産ですが、離婚の協議の中で特有財産かどうかをめぐって争われることもあります。特有財産であることを証明できないと共有財産として扱われてしまいますので、離婚する際、特有財産であることを主張できるよう準備しておくことも大切です。

離婚の原因には左右されない

夫婦の一方が浮気や不倫(不貞行為)をしていたり、暴力を振るっていたりしていた場合、「離婚の原因をつくったほうは、財産分与の割合が下げられる」と思っている人もいますが、離婚の原因は財産分与とは無関係です。離婚原因に左右されることなく、夫婦間の事情に応じて財産分与の割合が決められます。

ただし、離婚の原因が夫の不貞行為や暴力、生活費を渡さず困窮させる経済DVなどだった場合、妻から慰謝料を請求できる可能性があり、慰謝料と相殺する形で妻への財産分与の割合を増やすことがあります。これは、慰謝料分を含んでいるためであり、離婚原因によって財産分与の割合が変わったわけではありません。

財産分与の割合はどうやって決める?

財産分与の割合はどのようにして決められるのでしょうか。実際の財産分与で、割合が決まるまでの流れを説明します。

基本は話し合い

夫婦が離婚する場合、基本的に夫婦の間で離婚に合意するかどうかの話し合いが行われますが、その際、親権や養育費、財産分与といった離婚の条件についても話し合われます。財産分与の割合は法律で定められているわけではありません。このため、一般的には互いに半分ずつにするという考えに基づいて、具体的な金額を話し合います。

夫婦で半分ずつというのは、あくまでも一般的な考え方であり、お互いに納得すれば、最終的にどのような割合になっても問題はありません。極端な話で言えば「夫が浮気したため、財産は100%妻のもの」という結論であっても、夫の同意さえあれば問題はありません。

話し合いで決まらないときは裁判所で調停

夫婦間の話し合いで財産分与の割合が決まらない場合、裁判所に調停を申し立てることができます。調停とは、夫婦の間に裁判官と調停委員が入って話し合いをすることをいいます。離婚前であれば、離婚調停の中で財産分与についても話し合われます。

財産分与に関する調停は離婚が成立した後からでも申し立てが可能です。これを「財産分与調停」と言い、財産分与の条件のみを話し合います。しかし、財産分与の申し立てには期限があり、離婚から2年となっています。離婚前、離婚後のどちらの調停も合意できなかった場合は、「調停不成立」となり手続が終了します

調停不成立のときは審判手続きへ

離婚調停では調停が不成立となった場合、離婚裁判を起こさなければ、協議を続けるか離婚を諦めるしかありませんが、財産分与調停では自動的に審判手続に進みます。審判では、家庭裁判所が当事者の主張や証拠、裁判所が調査した事実などをもとに、処分を決めます。

審判の流れは裁判に似ていて、審判期日にそれぞれが言い分を主張し、証拠を提出します。そして、家庭裁判所が十分な審理が尽くされたと判断すると終結し、審判をする日が決められます。審判の日に審判書が作成され、夫婦双方に内容が告知されて手続きは終了です。

審判は裁判における判決と同じような効力があり、当事者はそれに従わなければなりません。審判の内容に不服がある場合、審判の告知を受けた日から2週間以内に、即時抗告することができます。この間に即時抗告が行われなければ、審判が確定します。

財産分与の割合が変わる例外ケース

財産分与をする際の考え方は、共有財産を夫婦で2等分するのが基本ですが、事情によって、どちらかに多く配分するケースもあります。配分がどちらかに偏るケースについて紹介します。

どちらか一方の貢献度が非常に高い場合

共有財産の大部分が、夫か妻のどちらかの収入によって形成され、しかも特殊なスキルや、専門的な知識が必要とされる場合、財産分与の割合が偏ることがあります。これは資産形成に対する貢献度に大きな差があることを考慮した結果です。

よくあるケースは、妻が専業主婦で、夫が弁護士や医師といった専門的な資格を持ち、高収入を得ている場合です。スポーツ選手、会社経営者など自分の技術や才覚で資産を築いた場合も夫の割合が高くなることがあります。しかし夫婦間で相当大きな所得差がある場合でも、2分の1を大幅に超えて割合が増えることは実際はあまりないとされています。もちろん、妻が夫の仕事に対し何らかのサポートをしていた場合は、妻の貢献度も考慮されます。

どちらか一方がギャンブルや借金をしていた場合

資産への貢献とは逆に、どちらか一方が家計に対して「不利益な行動」をとって、資産を損ねた場合は、資産分与の割合が大きく減らされることがあります。たとえば、夫がギャンブルで多額の借金を背負い、妻や子供に苦しい生活を余儀なくさせたときなどです。

配偶者が共有の預貯金を勝手に引き出し、浪費していたといった事情も、配分の際に顧慮されることがあります。しかし、借金やギャンブル、浪費に対するペナルティではないので、大幅な減額がされることはほとんどありませんし、損失として考慮されずに半分ずつで決着することもあります。

特有財産を原資に資産を形成した場合

財産分与の対象となるのは、共有財産だけで、結婚前から貯めていた預貯金などの資産は、特有財産として財産分与の対象外とされます。結婚前から持っていた株式や金融商品で利益を上げた場合も対象外となります。また、結婚前から所有していたり、結婚前の預金で購入したりした不動産も特有財産です。

しかし、結婚前から投資などを行っていて、結婚後も株や金融商品を買い増した場合、財産のうちどこまでが特有財産なのかわからなくなってしまいます。この場合、特有財産を含めてすべて共有財産としたうえで、財産分与の割合を調整することがあります。

専業主婦の妻が家事を全くしなかった場合はどうなる?

財産分与でもめるケースの中には「専業主婦だったのに、まったく家事をしない妻に半分も財産を渡すのは不公平だ」と夫が主張するケースもあります。個別の事情によっては、認められるかもしれませんが、「家事をしない」という立証は難しく、妻側も「家事以外での貢献はあった」と主張する可能性が高いので、夫側の主張が認められる可能性は低いでしょう。

たとえば、共働き夫婦で勤務時間も収入もほぼ一緒なのに、どちらか一方だけが家事を負担していたという場合であれば、貢献度の違いが認められるかもしれません。また、結婚前に家事の分担について約束事があったのに、一方が約束を破って家事の負担を押し付けたという場合も、配分への考慮を主張できる可能性があります。いずれにしても非常にまれなケースです。

離婚時に財産分与しない方法はある?

離婚する妻へ財産を半分渡すことに納得がいかず、何とかして財産分与せずに済む方法はないかと考える人もいるのではないでしょうか。また、夫に「財産分与はしない」と主張されて不安に思っている妻もいるでしょう。財産分与を免れる方法があるのかを説明します。

話し合いによって可能なことも

財産分与を免れるには、基本的に話し合いで相手に財産分与をあきらめてもらうしかありません。あきらめてもらうと言っても、無理矢理に財産の放棄を約束させたり、脅したりしてはいけません。あくまでも相手に納得してもらったうえで、財産分与を放棄してもらうことが大切です。

たとえば、相手に特別な事情があり、早期の離婚を求めている場合、離婚に応じる代わりに財産分与をあきらめてもらうといったケースがあります。また、妻に対して何らかの便宜を図る代わりに、財産分与の分は相殺するといった話し合いが可能な場合があるでしょう。

結婚前に契約を結んでおけば財産分与せずに済むことも

特殊なケースとしては、結婚する前に、夫婦の財産関係について婚前契約夫婦財産契約(民法755条)を締結している場合があります。その中に「離婚時には財産分与を行わない」との項目があれば、財産分与をせずに済む可能性があります。

たとえ、契約にそのような項目があったとしても、相手側が契約の有効性や解釈をめぐって反論するかもしれません。この際、夫婦財産契約については、契約内容書を登記してあれば、契約内容は保証されますが、口約束や普通に紙に書き残しているだけの場合は、有効とは認められない可能性もあります。

専業主婦でも財産分与の権利を堂々と主張しよう

専業主婦は資産形成に全く貢献していないという考えは時代遅れで、家庭を支える妻の資産形成への貢献度は、夫と変わらないというのが現在の考え方です。共働きでなくても、妻は堂々と財産分与の権利を主張できます。

もし、夫や親族が「資産のすべては、お金を稼いできた夫のもの」と主張して、財産分与に応じないときは、夫婦問題に詳しい弁護士に相談しましょう。決して泣き寝入りする必要はありません。

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