
モラハラとアスペルガー症候群は一見似ているようで、実際には異なる要因から生じる夫婦間の問題です。本記事では、それぞれの特徴や関係性を整理し、アスペルガー症候群の夫と上手に付き合う方法や離婚を検討する際のポイントを解説します。
夫とコミュニケーションがうまくいかず悩んでいるという方は、モラハラと感じる夫の言動が実はアスペルガー症候群に由来している可能性はないか、本記事を通じてヒントをつかんでいただければと思います。

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
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モラハラ夫は実はアスペルガー症候群の可能性がある?
モラハラだと思っていた夫の言動が、実はアスペルガー症候群の特性によるものだった、というケースがあります。
一見すると、妻の言動や気持ちを無視しているように思える夫の言動は、アスペルガー症候群特有のコミュニケーションの苦手さや共感力の低さからくる場合があります。自分の考えに没頭しがちで、相手の感情に気づきにくいため、周囲からは「思いやりがない」と誤解されやすいのです。
ただし、本当にモラハラであるケースもあるため、一概に全てがアスペルガー症候群によるものとは限りません。
間違った理解のまま夫婦関係を続けると、妻が心身ともに疲弊してしまうリスクがあります。アスペルガー症候群の特徴が原因なのか、あるいは意図的な精神的攻撃なのかを見極めることは、今後の対処法を考える上で重要なステップとなります。
※アスペルガー症候群は、現在は自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)という広い概念に統合されています。ただし、一般的な理解のしやすさから「アスペルガー症候群」という呼称が現在でも広く使われているようです。
モラハラとアスペルガー症候群の関連性
モラハラとアスペルガー症候群にはどのような関連性があるのか、一見似ているように見える理由を確認してみましょう。
妻に精神的攻撃をする
いわゆるモラハラの場合、夫は妻を支配しようとする意図や悪意を持って精神的ダメージを与える傾向があります。
しかし発達障害の一種であるアスペルガー症候群の夫のケースでは、不適切なコミュニケーションやこだわりの強さが周りとの摩擦を引き起こし、結果的に妻へ攻撃しているように捉えられることがあるのです。
当事者である夫には悪意がなくても、結果として配偶者からすれば言動がモラハラと感じられる状況になることもあり、両者の境界が曖昧に見える場合があるのです。
妻が「カサンドラ症候群」になる可能性がある
夫が意図していないにもかかわらず、妻へ否定的な言動を植え付けてしまい、最終的に妻がカサンドラ症候群と呼ばれる状態に陥ることも少なくありません。
カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群のパートナーとの生活で孤立感やストレスが蓄積し、抑うつや不眠などの症状が現れることを指します。医療的な診断名ではありませんが、アスペルガー症候群のパートナーと暮らす多くの方が苦しんでいます。
アスペルガー症候群の夫との生活では、妻が自身のつらさを理解しにくいと感じるケースが多くあります。周囲から見れば夫は“普通”に見えることも多く、妻だけが悩みを抱えていると思われるため支援を得にくいのです。結果として精神的に追い詰められ、カサンドラ症候群と呼ばれる孤立感やうつ傾向に苦しむリスクが高まります。
モラハラとアスペルガー症候群の違いは?
モラハラとアスペルガー症候群は、表面的には似ていても根本的な原因や特徴が異なります。
発症の仕方
モラハラは、モラハラは「自己愛性パーソナリティ障害」が関わっていることがあると考えられ、主に人格形成や成育過程の中で形成された歪んだ性格や価値観が影響しています。これに対し、アスペルガー症候群は先天的な発達特性として生じ、コミュニケーションや社会性に困難を抱えやすいのが特徴です。
つまり、モラハラの矯正には心理的なアプローチが中心となり、アスペルガー症候群の場合は専門的サポートや環境調整が必要となります。
相手の気持ちを理解しているか
モラハラの場合、相手を深く傷つけたい、あるいは精神的に追い詰めてコントロールしたいという意図があることが多いです。一方でアスペルガー症候群の夫は、妻の気持ちを理解できないままに発言や行動をしてしまうため、結果的に妻を傷つけてしまいます。
悪意の有無が大きな相違点といえますが、妻にとっては被害の大きさが同様である可能性もあるため、専門家の判断が有用でしょう。
妻にのみ攻撃的か
モラハラ夫は外では人当たりがよいのに、家庭内だけで妻を攻撃する傾向があります。
アスペルガー症候群の夫の場合、職場や社会生活の場面でもコミュニケーションのズレが生じやすく、場合によっては他者との対人トラブルを引き起こすこともあるでしょう。
攻撃対象が妻だけなのか、対人関係全般に困難を感じているのかを見極めることが重要です。
妻に対して嫉妬や束縛が激しいか
モラハラの背景には、相手を支配したいという強い欲求があり、その表れとして嫉妬や束縛が顕著になることがあります。
一方でアスペルガー症候群の場合は、予測不能な変化に対する不安やこだわりの強さから、妻の行動を制限しようとするケースが見られます。動機は異なるものの、妻が感じるストレスは大きいことに変わりはありません。
妻に対して常に否定的か
モラハラ夫は、妻を服従させるために否定や批判を繰り返す特徴があります。一方、アスペルガー症候群の夫は、妻の話し方や表情の微妙な変化に気づきにくく、結果的に感情を汲みとれず否定的に映る発言をすることがあります。
いずれの場合も妻の自己肯定感を大きく損なうため、早期に専門家へ相談するなどの対策が必要です。
アスペルガー症候群の夫への対処法は?
アスペルガー症候群の夫との関係を円滑にするために、どのような対処を行うべきかを紹介します。
まず大切なのは、夫が意図的に妻を傷つけようとしていない可能性を踏まえつつ、対策を講じることです。アスペルガー症候群の特性を理解し、専門家と連携しながら、双方が納得できるコミュニケーションや生活ルールを整えていくステップが必要とされます。
仮にそうした取り組みを重ねても改善が見られない場合には、夫婦の将来を考えたより具体的な方策を検討することも大切です。
※写真はイメージ(iStock.com/mapo)
病院で診察やカウンセリングを受ける
アスペルガー症候群かどうかの診断をはっきりさせるためにも、精神科や発達障害の専門外来を受診し、医師の意見を聞くことが第一歩です。
カウンセリングを受けることで、夫だけでなく妻にとっても気持ちの整理や不安の軽減に役立ちます。専門家のサポートがあると、夫婦間の意思疎通をスムーズに進めやすくなるでしょう。
コミュニケーションの仕方を工夫する
夫に伝える際は、簡潔で具体的な言葉を使い、曖昧な表現を避けるように心がけましょう。視覚的なツールやメモなどを活用すると、夫にとってわかりやすくなることがあります。
また、感謝の気持ちを伝えるなど、肯定的なフィードバックを積極的に行ないながら、夫が理解しやすいコミュニケーション環境を整えていくことが重要です。
コミュニケーションの改善が難しい場合は、夫婦カウンセリングを受けることで、専門家のサポートを得ながら適切なコミュニケーション方法を見つけることができます。
家庭内でのルールを決める
家事や育児、仕事の分担など具体的な役割を明確にしておくことで、夫の混乱や妻の不満を最小限に抑えることが期待できます。
例えば、週に一度は夫婦でスケジュールを確認する時間を設けるなど、ルールとして仕組み化してしまうことも有効です。その際、夫が把握しやすい形でルールを明文化することも有効でしょう。
うまくいかなくても落ち込まない
アスペルガー症候群の特性上、夫婦間のコミュニケーションがうまく噛み合わないことはよくあります。その度に落ち込んだり激しく詰め寄ったりすると、かえって修復が難しくなる可能性があります。
うまくいかない状態を前提として柔軟に対応する姿勢が、長期的には大きな負担の軽減につながるでしょう。
アスペルガー症候群を個性と捉える
発達障害をあくまで“病気”と捉えるのではなく、“個性”として向き合う考え方も大切です。夫の特性に合わせた配慮を取り入れる一方で、夫の長所や得意分野を伸ばす工夫をすることで、夫婦間の協力体制を築き上げる可能性が広がります。
そうした姿勢が夫にとっての自信回復にもつながり、家庭内の雰囲気を改善する可能性があります。
どうしようもない場合、別居・離婚を検討する
手を尽くしても夫の行動が改善しなかったり、妻が心身の限界を迎えている場合は、別居や離婚を具体的に検討するのもやむを得ない選択肢です。
独りで悩まず、弁護士や公的機関、信頼できる相談先に早めにアドバイスを求めることが、回復への道を開きます。経済的な準備や周囲のサポートを確保することで、離婚後の生活設計がより具体的に描けるようになります。
アスペルガー症候群の夫と離婚するためのポイント
夫がアスペルガー症候群の場合、離婚することはできるのでしょうか。
アスペルガー症候群は離婚事由にはならない
発達障害を直接的な理由として離婚原因にするのは、法律上難しいとされています。離婚を進める際には、モラハラを含む精神的・身体的な被害や継続的な生活困難といった客観的事由を立証しなければなりません。
夫の言動が法律的なモラハラやDVにあたるかどうか、専門家と相談して判断することが重要です。早い段階から弁護士に相談し、法的なアドバイスを受けることで、適切な対応方法を見つけることができます。
「離婚事由」を見極める
離婚を成立させるためには、法的に認められる“離婚事由”の証明が求められます。
実際に夫からの暴言や生活費の不払いなど、具体的なエビデンスがあるかどうかが鍵となるでしょう。アスペルガー症候群に対する理解が十分でないと話し合いが難航することもあるため、時間をかけた準備と冷静な対応が求められます。
慰謝料請求できるケース
アスペルガー症候群そのものを理由とした慰謝料請求は、離婚事由と同様に法的根拠として認められにくいのが現状です。単にコミュニケーションが困難という理由だけでは、慰謝料請求の対象とはなりにくいでしょう。
ただし、コミュニケーションの問題から派生して、継続的な暴言やモラハラ的言動、生活費の放棄といった具体的な被害が発生している場合は、それらを複合的な要因として慰謝料請求が認められる可能性があります。
モラハラ夫にアスペルガー症候群の疑いがあれば第三者へ相談を
まずは専門家の診断を受け、正確な状況を把握することが今後の対応方針を決める第一歩となります。
モラハラ問題の背後に、夫がアスペルガー症候群の特徴を抱えている可能性があるならば、本人を責めるだけでは根本的な解決にならないケースが多いです。
コミュニケーションの行き違いが続けば妻の負担が増え、カサンドラ症候群に陥るリスクも高まります。早期に受診すれば、夫が支援を受ける可能性も高まり、最悪の事態を回避できるかもしれません。
また、モラハラの問題に対しては、夫婦関係の改善を目指して夫婦カウンセリングを受けることも一つの選択肢となります。