亭主関白はモラハラ夫と同じ?違いはある?
高圧的な態度で妻を支配しようとする夫をモラハラ夫と呼びますが、同じような言葉に「亭主関白」があります。亭主関白はモラハラ夫という言葉が浸透する以前から存在し、家父長制が主流だった昔の日本では亭主関白が一般的でした。
モラハラ夫と亭主関白には共通する特徴があり、どちらも同じものだと捉えている人も多いかもしれません。この記事では、モラハラ夫と亭主関白の違いや、それぞれの心理状態に着目した対処方法について解説します。
亭主関白は『家庭で威張る夫』のこと
関白とは天皇を補佐する役職で、関白職が設置されていた時代は天皇に次ぐ強い権力を持っていました。こうしたことから家庭内で支配権を握っている夫を「亭主関白」と呼ぶようになりました。逆の言葉に「かかあ天下」があり、妻が主導権を握っている様子を表します。
モラハラ夫は『精神的攻撃を与える夫』のこと
モラハラ夫は理不尽な要求や威圧的な言葉で、妻の人格を否定するなど侮辱的な行動をとります。言葉の暴力だけでなく、無視する・わざと大きな音を立てるなどの行動も精神的攻撃です。このような夫の言動に妻が苦しんでいるなら、モラハラ夫に該当します。
モラハラ夫の被害を受けている妻の心理状況には、以下のような特徴があります。
・自分に自信がない
・何事にもネガティブ思考
・自己主張できない
・失敗を過度に恐れる
・無気力になる
夫と同じ時間を過ごしていて、これらの心理状況に当てはまる部分があるなら、モラハラ夫である可能性があります。明らかな暴力性のあるDVと異なり、モラハラ夫の攻撃は陰湿に少しずつ繰り返されます。自分でも気づかないうちに、モラハラ夫の被害者になっていることも少なくありません。
亭主関白とモラハラ夫の共通点は?
亭主関白な夫とモラハラ夫の思考や行動には、共通する特徴があります。根本的には、妻は夫に従うべきだという考え方です。背景には、もともとの性格や個人的な思想、社会的なジェンダー意識などが影響しています。亭主関白とモラハラに特徴的な共通点を紹介します。
男尊女卑の意識が強い
男性である夫のほうが優れているから女性である妻は従うべきだというシンプルな考え方です。亭主関白な夫もモラハラ夫も女性は劣った存在として認識しているため、日常的に馬鹿にしたり、小さなミスでも叱ったりします。
男は外で働き、女は家庭を守るという頑固な固定概念があるため、家事や育児には関わろうとしません。女性は男性に尽くすべきだという考え方から、妻が夫の世話をするのは当然と思っている点も共通の特徴です。
亭主関白の人もモラハラ夫も、何も言わなくても妻が自分の気持ちを察してくれると信じています、さらに気づかない妻にはきつく当たり、自分の説明不足を認めません。
妻を支配しようとする
自分より劣った存在である妻が間違った選択をしないよう、行動を制限して支配しようとするのも亭主関白の人やモラハラ夫の共通点です。また、自分から離れてほしくないという妻への愛情から、コントロール下に置こうとする場合もあります。
夫が外出先やお金の使い方などを細かく確認するため、亭主関白やモラハラ気質の夫の妻は自発的な行動意欲を失っていくことがあります。
自己中心的な言動をする
家庭内で優位な立場に立とうとする亭主関白な夫やモラハラ夫の多くは、プライドが高く常に自分が正しいと信じる自己中心的な性格です。大きな出費をともなう買い物も、妻の意見を聞かずに自分だけで判断してしまいます。
また、妻に間違いを指摘されると逆に叱ったり不機嫌になったりして、自分の間違いを認めようとしません。
他人を思いやることが苦手で、妻の視点で物事を見ることができないため、妻の気持ちに気づかず先走ってしまうこともあります。亭主関白な夫もモラハラ夫も、本人には加害者としての自覚がない場合が多く、改善を求めても、頑固に聞く耳を持たないのが特徴です。
亭主関白とモラハラ夫の違いは?
亭主関白な夫とモラハラ夫は同じような行動パターンをとりますが、行動の基になる考え方が異なります。亭主関白は妻や家族のためにと考えているのに対し、モラハラ夫は自身の欲求を満たすのが目的だと言えるでしょう。亭主関白な人とモラハラ夫の具体的な違いについて紹介します。
精神的攻撃を与えるかどうか
亭主関白とモラハラを見分けるポイントの1つが、精神的攻撃の有無です。家庭内で威張っているだけの亭主関白に対し、モラハラは精神的攻撃を加えます。モラハラ夫が精神的攻撃を行うのは、自分の優位性を誇示し、妻を精神的にコントロールするのが理由だと考えられます。
家族思いかどうか
亭主関白の人の言動は、父親・夫が家族を守るという伝統的な家族観に基づいています。家庭より自分の仕事を優先させるのは、妻や家族に金銭面で楽をさせたいと考えるからです。
家族愛ゆえに自分の目の届くところに置こうと、亭主関白の人は妻に対して支配的になります。しかしモラハラ夫と違って自己愛が理由ではないため、理不尽な要求を押し通そうとすることはありません。
言動に一貫性があるかどうか
男尊女卑や家父長制という固定概念が強いものの、亭主関白の人は言動に一貫性があります。一方で、モラハラ夫の行動は、優越感を得ることを目的にするなど考え方が幼稚です。モラハラ夫はその時の感情によって言動が異なるため、予測不可能な行動に妻は困惑してしまいます。
亭主関白とモラハラ夫との対処法は?
高圧的に接してくる亭主関白やモラハラ夫に対し、どのように対処すればよいのでしょうか。支配的な言動の基となる心理に注目して、亭主関白とモラハラ夫、それぞれへの接し方を説明します。
亭主関白は『夫を頼りにする』
家族を守るという使命感が強い亭主関白の人は、妻から頼られると積極的に応えようとします。普段は家事や育児に関わらない亭主関白な夫でも、困り事の相談を持ちかけると、意外と耳を傾けてくるでしょう。ただし、自分の言動を否定されるようなことは受け入れません。「なんでやらないの?」などと責められるとすぐに不機嫌になります。
モラハラ夫は『正面から向き合わない』
亭主関白と異なり、自分の優位性を認めさせたいだけのモラハラ夫の言動は、適度に受け流すのが無難です。モラハラ夫の行動は気分によって不安定なので、常に正面から向き合っていると精神的に疲弊してしまいます。また、相手の要求に応えようとする姿勢は、モラハラ夫の支配欲をエスカレートさせることがあります。
夫と過ごす空間で抑圧的な気分を感じるのなら、メンタルの健康を守るためにも、夫と距離をとることを検討しましょう。行き過ぎたモラハラ夫の言動に悩んでいる場合は、別居や離婚も視野に入れて弁護士など専門家に相談するといいでしょう。
亭主関白はモラハラとは限らない
亭主関白の夫もモラハラ夫も、妻に対して高圧的に接する点では共通していますが、亭主関白だからといってモラハラ夫とは限りません。モラハラ夫は亭主関白と異なり、精神的な攻撃を加えるのが特徴です。夫の言動から「亭主関白ではなくモラハラ夫ではないか」と違和感を覚えたら、弁護士やカウンセラーへの相談を検討してください。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。