ドメスティック・バイオレンス(DV)は、男性から女性への暴力だけでなく、女性から男性への暴力も深刻な問題となっています。しかし、多くの男性は「女性の気が強いだけ」「愛情表現の一つ」と捉え、適切な対処が遅れてしまうことも。本記事では、DV加害者となる女性の心理状態や特徴的な行動パターンを解説。さらに、具体的なチェックリストや対処法、専門家への相談方法まで詳しく紹介します。特に子どもがいる場合の注意点や、状況に応じた解決策の選び方についても触れています。女性の暴力について悩みを抱える方は、ぜひチェックしてください。

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者からの暴力のことを指します。暴力には身体的暴力だけでなく、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力なども含まれます。
従来、DVは夫から妻への暴力が注目されてきましたが、近年では妻から夫への暴力(逆DV)や、婚姻関係のないカップル間で起こる「デートDV」なども社会問題として認識されています。
DVの種類
●身体的暴力:殴る、蹴る、物を投げつけるなど
●精神的暴力:脅す、侮辱する、無視する、行動を制限するなど
●性的暴力:避妊に協力しない、性行為を強要するなど
●経済的暴力:生活費を渡さない、収入を取り上げるなど
増加する妻から夫へのDV
近年、妻から夫へのDVも増加傾向にあります。内閣府男女共同参画局の調査によると、配偶者からの暴力の被害経験について、女性の27.5%は下回るものの、男性の22%が「被害を受けたことがある」と回答しています。しかし、男性は被害を受けていても相談しにくい傾向があり、潜在的な被害者数はさらに多いと考えられています。
参考:『女性に対する暴力の現状』/ 内閣府男女共同参画局(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/pdf/kadai.pdf)
もしかしてDV気質?チェックリスト
・殴る・ける・たたく・髪の毛を引っ張るなど、身体に暴力を振るわれる
・殴る・ける・たたくまねをしたり、物を壊したりしておどかしてくる
・バカにしたようなことや傷つくことを言ってくる
・ささいなことで、すぐ不機嫌になって、無視される
・あなたの意見を無視して、物事を勝手に決められる
・デートでの支払いなど、相手はお金を支払わず、いつもあなたが支払っている
・貸したお金を返してくれない
・携帯電話のメールや通話履歴をチェックされる
・電話やメールを立て続けに送ってきたり、反対に送るように言われたりして、行動を細かくチェックされる。
・相手からの電話やメールをすぐに返信しないと、怒ったり、無視されたりする
・友だちと遊ぶ予定を入れると、機嫌が悪くなり、断るように言ってくる
・キスや性行為を無理に求められる
・避妊に協力してくれない
・別れようとすると「つきまとってやる」「自殺してやる」と言って脅し、別れてくれない
引用元: https://teens-sapporo.jp/check-list
これは札幌市男女共同参画課が公開している「デートDVチェックリスト」です。10代向けのものですが、夫婦関係、パートナー関係に置き換えてチェックしてみてください。同様のチェックリストは他の自治体でも作成しているところがあります。
暴力を振るうDV女性の心理は?

ドメスティック・バイオレンス(DV)やモラハラを行う女性は、どのような心理状態にあるのでしょうか。パートナーに対する身体的暴力や精神的な暴力を振るう理由は、生まれつきの性格や育った家庭環境などさまざまで一概には言えません。ここでは、女性加害者に見られる3つの特徴的な心理状態を紹介します。
相手に対する独占欲が強すぎる
DVをする女性は、夫や彼氏など親密な関係にあるパートナーに対して、強い独占欲と支配欲を持っていることが多いようです。相手に対し、常に自分のことだけを考えていてほしい、自分以外の人に関心を持たないでほしいと考える傾向があります。
焼きもち程度なら誰にでもありますが、少しでも帰宅が遅くなったり、連絡が取れなかったりすると、感情的になって暴言を吐いたり、暴力を振るったりします。このような言動を女性からの愛情表現だと勘違いしている男性被害者も多いのですが、適当にあしらっているとしだいにエスカレートし、離婚や別居などの深刻な問題に発展する可能性があります。
ストレスで衝動的になってしまう
家事、育児のストレス、職場での不満を夫にぶつけるDV女性もいます。こうした当事者は家庭の外では人当たりの良い優しい女性を装い、良き妻、良き母親と周囲から思われていることも多いようです。特に子どもの前での言動が豹変するケースもあるようです。
おそらく本来の自分とは違う女性を演じることでストレスを感じ、そんな自分に腹立たしさも感じるのでしょう。そうして溜まったストレスを夫に対する身体的暴力やモラハラで発散させるのです。男性は「妻は気が強いだけ」と軽く考えず、必要に応じて弁護士への相談や証拠収集を検討したほうがよいかもしれません。
許されると思っている
夫や彼氏と自分は特別な関係なので、多少のわがままや甘えは許されると思っている女性もいます。こうした加害者は、多くの場合パートナーに依存しています。自分の暴力が重大な問題行動であることに気付いていないことも多いようです。
自己中心的な考えをする女性が多く、自分の価値観を相手に押し付ける一方で、相手は自分がどんな言動をしても受け入れ、許してくれるだろうと信じています。
「自分がついていないと」と思う男性もいますが、それは女性の甘えやわがままを助長するだけでしょう。早めに相談窓口や専門家に相談し、適切な対処法を見つけることが重要です。
暴力を振るうDV女性の特徴9選

交際初期や結婚当初はおとなしかった妻や彼女が、次第にドメスティック・バイオレンス(DV)やモラハラの傾向を見せ始めても、多くの男性被害者は「単なるわがまま」と軽視しがちです。しかし、加害者の言動は徐々にエスカレートし、身体的暴力や精神的暴力が深刻化して初めて問題に気づくケースも少なくありません。
そのような事態を防ぐため、パートナーのDV気質には早期発見が重要です。離婚や別居、慰謝料請求などの法的対応が必要になる前に、以下の8つの特徴をチェックしてみましょう。
友達が少ない
DV気質の女性の中には友達が少ない人もいるようです。そもそも友達が多ければ、仕事や家庭のストレスは友達に愚痴を聞いてもらったり、一緒に外食したりして発散できるはず。男性の交友関係を必要以上に気にすることもないでしょう。
そうした友達がいないと、どうしても不満やストレスを彼氏や夫に直接ぶつけてしまい、しだいにエスカレートさせてしまうことになるようです。
家族と不仲
DV気質には子供のころの成育環境も影響するようです。DVをする親の姿を見て育つと、子供も同じように暴力でストレスを発散してしまうようになるとも言われます。また、家族との不仲が原因でストレスを抱えながら成長してしまうこともあります。
家族との関係も人さまざまですから一概には言えませんが、家族との不仲の原因によってはDV気質を持ってしまうことがあります。
相手を見下し優越感に浸る
暴言で相手を見下し、高圧的な態度を取るのは男女問わずDVの特徴的な言動です。「安月給の癖に」「能力がないから、いつまでも出世しない」などと夫に悪態をつくのは典型的なDV妻と言えるでしょう。
DV気質の人は、常に自分が相手より優位な立場にいたいと考えがちです。このため、相手の弱点を見つけると執拗に攻撃します。また、相手をおとしめることで優越感を得て、ストレスを発散していることもあります。
自分の意見を決して曲げない
相手の考えを認めず、常に自分が正しいと主張するのもDV女性の特徴です。たとえ途中で自分が間違っていたと気付いても、話題をそらしたり、屁理屈を言ったりして絶対に自分の意見を押し通そうとします。
それを繰り返していくうちに、DV女性は「相手は絶対に自分の意見を聞く」と信じ込み、夫や彼氏を自分の思い通りにしようと、言動をエスカレートさせていくのです。
自分の非を認めず他人のせいにする
DV加害者である女性は、強いプライドを持ち、自分の非を認めることがほとんどありません。明らかな失敗やミスであっても、責任転嫁して自分には非がないと主張します。たとえば「事前に説明してくれなかったあなたが悪い」「私に任せた時点であなたの責任だ」といった形で、パートナーのせいにして開き直る傾向があります。
このような行動の背景には、自己肯定感の低さがあることも多く、自分の正しさを過度に主張することで、自分の価値をパートナーに認めさせようとする心理が働いています。慰謝料や離婚などの法的問題に発展する可能性もあるため、このような言動があった場合は、会話の記録を残すなどの証拠収集を検討すべきです。また、子どもの前でこのような言動が繰り返されると、子どもの心理発達にも悪影響を及ぼす可能性があります。
夫や彼氏を束縛しようとする
典型的なDV加害者の特徴として、パートナーへの強い束縛行為が挙げられます。「夫や彼氏の行動を常に把握しておきたい」「自分以外の人との付き合いを制限したい」という支配欲が顕著に表れます。
厳格な帰宅時間の設定と監視、行動範囲の制限や外出の制止、スマートフォンやSNSの無断チェック、メールや通話履歴の細かな確認、友人関係への過度な干渉、職場への頻繁な連絡や確認といった行動が見られることもあるようです。
このような束縛は深刻な精神的暴力(モラハラ)に該当し、時には身体的暴力へとエスカレートするケースもあります。特に注意すべきは、加害者が暴言や暴力を振るう一方で、パートナーへの強い依存心も併せ持っているという点です。別居や離婚を恐れるあまり、更なる支配的な言動に走る悪循環に陥りやすいのです。
自分に自信が持てない
DV加害者の女性は、一見プライドが高く、パートナーを見下すような言動を示すことが特徴的です。しかし、この高圧的な態度の裏には、深い自信のなさやコンプレックスが隠されていることが少なくありません。
パートナーに対して自分の価値を過度に認めさせようとしたり、些細なことでも承認を求めたりする傾向があります。表面的な優越感を示す一方で、内面では強い自己否定を抱えており、その感情を攻撃的な言動で覆い隠そうとするのです。
急激な感情の起伏
些細なきっかけで激しい怒りを示したかと思えば、突如として優しく穏やかな態度に変わるなど、感情の起伏が極端なのもDV加害者の女性によく見られる特徴です。たとえばパートナーの些細な言動や行動の遅れに対して、突然激しい怒りを爆発させたり、長時間に渡って責め立てたりすることがあります。
金銭的な支配傾向
パートナーの収入や資産を完全に支配しようとする傾向も、DV加害者の女性に見られる特徴の一つです。表面的には「家計を管理している」という体裁を取りながら、実際には婚姻費用の搾取や経済的な支配を行っているケースが少なくありません。
具体的には、パートナーの給与を全て管理下に置き、必要最低限の生活費しか渡さない一方で、自身の贅沢な買い物は正当化するといった行動が見られます。また、パートナーの支出については細かな報告を要求し、わずかな使用にも厳しく詮索する反面、自身の支出に関しては一切の説明を拒否するなど、著しく不平等な関係を築こうとします。このような経済的なDVは、離婚や別居の際の大きな争点となることも多いようです。
自分やパートナーがDV気質の場合の対処法は?

距離を置く
状況が深刻な場合は、一時的な別居を含めた物理的な距離を取ることも検討すべきでしょう。特に暴力がエスカレートしている場合や、子どもへの悪影響が懸念される場合は、早急な対応が必要です。
別居を検討する際は、事前に専門家に相談し、安全な避難計画を立てることと安心です。
相談機関に相談する
全国各地にあるDV被害者支援センターや配偶者暴力相談支援センターなどの専門機関は、DVに関する豊富な知識と経験を持っています。これらの機関では、相談者の状況に応じて、カウンセリングや法的支援の紹介、緊急時の避難場所の提供など、包括的なサポートを受けることができます。相談は匿名でも可能で、専門の相談員が丁寧に話を聞いてくれます。
夫婦カウンセラーへ相談する
パートナーにDV気質がある場合、夫婦カウンセラーへの相談を検討しましょう。カウンセラーは中立的な立場から、夫婦間の問題を専門的な視点で分析し、適切な解決策を提案してくれます。
また、自分にDV気質があると感じる場合も、感情のコントロール方法や健全なコミュニケーションの取り方について、専門家のアドバイスを受けることが問題改善の第一歩となります。
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弁護士へ相談する
弁護士は離婚や別居の可能性も含めた法的対応について、具体的なアドバイスを提供してくれます。特に、婚姻費用の問題や子どもの親権に関する懸念がある場合は、早期に相談することが大切なようです。
弁護士に相談する際は、DVの証拠(写真、録音、診断書など)を収集・保管しておくと、より具体的な対応策を検討できます。
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子どもがいる場合はどうする?DV妻への対処法
暴力のある家庭環境は、子どもの心に大きな影響を与えます。そのため、まず子どもの様子をよく観察し、情緒や体調に変化が見られないか注意を払いましょう。
子どもの心のケアも重要です。子どもの話をよく聞き、気持ちに寄り添いましょう。両親の問題に子どもを巻き込まないよう心がけ、子どもが自分を責めることのないよう注意が必要です。
困ったときは、児童相談所、DV被害者支援センター、学校のスクールカウンセラー、家庭裁判所の調停委員などに相談することができます。特に子どもの安全が脅かされている場合は、躊躇せず警察や児童相談所に通報してください。
状況によっては、子どもの将来のために、別居や離婚という選択肢も視野に入れた対応を考える必要があるかもしれません。
DV女性で悩んだらカウンセリングへ

「女性の気が強いのは愛情表現」「男性が受け入れるべき」という考えは危険です。身体的暴力やモラハラを「単なるわがまま」と軽視していると、やがて深刻な問題へとエスカレートしていきます。
関係修復の可能性があるなら、まずは夫婦カウンセリングの利用をお勧めします。専門のカウンセラーが中立的な立場から、お互いの気持ちを理解し合えるようサポートしてくれます。
一方、暴力がエスカレートしている場合や離婚を検討している場合は、弁護士への相談が有効です。特に子どもがいる場合は、親権問題を含めた法的な対応について、専門家のアドバイスを受けることができます。
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