離婚届を勝手に出されたらどうなる?無断で出すと犯罪?離婚は成立する?

「離婚届を勝手に出された」という訴えを聞くことがあります。以前に記入した届を、同意もなく役所に提出されたというケースや、知らないうちに代筆された届を出されたという場合もあります。離婚届を勝手に出された場合、離婚は成立してしまうのか、対処法とともに解説します。

専門家監修 |弁護士 川原 蓮
川原 蓮/銀座ロータス法律事務所(第一東京弁護士会所属)
離婚と男女問題に特化した業務を行っている銀座ロータス法律事務所の代表弁護士。親権、財産分与、婚姻費用、養育費、...
川原 蓮/銀座ロータス法律事務所(第一東京弁護士会所属)
離婚と男女問題に特化した業務を行っている銀座ロータス法律事務所の代表弁護士。親権、財産分与、婚姻費用、養育費、面会交流等の離婚に伴う様々な問題に豊富な経験を持つ。夫婦カウンセラーの資格も保有する二児のママ弁護士。女性ならではの目線で、離婚後の未来も見据えたサポートを行っている。

目次

  1. 離婚届を勝手に出されたら?どうすればいい?
  2. 離婚届を勝手に出せる?出されたらどうなる?
  3. 離婚届は無断で提出できる?
  4. 本人確認ができない場合は受理通知を発送
  5. 離婚届が勝手に出されたときの対処法
  6. 受理されても合意のない届は無効に
  7. 離婚無効確認調停を申し立てる
  8. 離婚無効確認訴訟
  9. 判決に基づいて戸籍を訂正する
  10. 離婚提出を阻止するには不受理届を出しておく
  11. 離婚届を勝手に出した側はどうなる?
  12. 罪に問われる恐れも
  13. 結婚した場合は重婚になる
  14. 慰謝料を請求されることも

離婚届を勝手に出されたら?どうすればいい?

夫婦喧嘩の勢いで「もう離婚する」などと言ってしまうことがあります。中には勢い余って、離婚届に署名してしまったという人もいるのではないでしょうか。その離婚届が、配偶者によって同意なしで勝手に提出されてしまった場合、離婚は成立するのでしょうか。また、自分が知らないうちに代筆され、離婚届を出されてしまったという人もいます。

離婚届書いてないけど勝手に出される事はありますか?
別居中で、手紙で別れたいと連絡がありました。
私は別れたくないです。話し合いをしようとしてますが、離婚届ってお互い記入が必要ですよね?何も書いてないのに勝手に出されないですよね?代筆されない限り。

離婚届が勝手に出されてしまった場合、それに対する慰謝料はいただけるのでしょうか

.財産分与や子供に関することが全然決められていないのですが、離婚届を受理された後でも請求出来るのでしょうか

正直、もう勝手に出されてしまい、相手の自分勝手な行動、これから産まれてくる子供に対する責任のなさ、話し合いのできなさ(今回の最初の喧嘩原因でもありました)に復縁は無理です。
今となっては復縁はしたく無いのですが、ただ当時の私はこれからお互いでやっていこう、私も言い方が良く無かった所もあったから謝って2人で子供を育てたいと希望や旦那を信じていた気持ちがあったのに、勝手に出されてそこに関しての怒りが収まりません。

一方、離婚協議がうまくいかず、「離婚届を相手に無断で出してしまおうか」と考える人もいます。しかし、勝手に提出して不利益を被ることはないのでしょうか。相手に無断で離婚届を提出してもいいのか、そのまま離婚は成立するのか、離婚届の提出を阻止する方法があるのかなどについて解説します。

離婚届を勝手に出せる?出されたらどうなる?

憲法で結婚は「両性の合意のみに基づいて成立」すると定められていますが、離婚も同様に基本的には双方の合意によって成立します。離婚裁判は、話し合いがまとまらなかった場合の最終的な手段です。このため、相手との合意がないのにもかかわらず、一方が勝手に出しても離婚届は無効です。

しかし、役所の窓口では、届け出の内容を確認するものの、形式などがそろっていればそのまま受理します。また、夜間や休日の場合は、時間外受付の窓口に届を提出すれば、すぐに預かってもらえ、そのまま受理されてしまうこともあります。だからといって、勝手に届け出を出された場合、すぐに離婚が成立するわけではありません。離婚届の扱いについて解説します。

離婚届は無断で提出できる?

離婚届には、夫婦双方と証人2人の直筆署名と押印が必要になりますが、離婚届を作成すれば、提出はさほど難しくはありません。離婚する際、未成年の子供がいれば、親権を決める必要がありますが、それも離婚届の欄に親権者を記載するだけです。

離婚届に必要事項を記載し、後は本籍地が別の市町村にあれば、戸籍謄本1通を添えて、役所の窓口に提出すれば、届け出は完了です。手続きは全国共通で、どちらか1人だけでも提出できますし、代理提出でも郵送でも構いません。このため、相手に無断で役所に提出しようとすれば、簡単にできてしまいます。

本人確認ができない場合は受理通知を発送

戸籍法などによって、離婚届が提出された場合、役所は本人確認をすることになっています。当日、どちらか1人しか来なかった場合や代理人が提出した場合は、本人確認ができなかった当事者に対し、役所は離婚届の受理通知を送ります。これが本人確認の代わりで、無断で離婚届を提出しても、本人にバレることになるのです。

ただし、離婚届の受理通知は住民票の住所に届くので、住民票を異動せずに引っ越した場合は通知を受け取れないことがあります。

離婚届の受理通知を受け取っても、役所では戸籍の変更が済んでおり、すぐには離婚を無効にはできません。離婚を認めないときは、法的に離婚が無効であることを確定させ、戸籍を変更して元に戻す必要があります。

離婚届が勝手に出されたときの対処法

突然、役所から離婚の受理通知が届いて、一方的に離婚届が提出されたことを知ったとき、どのように対処すればいいのでしょうか。同意なしで離婚届が勝手に提出されたときの対処法を紹介します。

受理されても合意のない届は無効に

離婚届が受理された場合、戸籍上は離婚したことになっていますので、裁判所に法的に無効であることを確認してもらい、戸籍を訂正する手続きが必要になります。

離婚を無効にする手続きは家庭裁判所で行います。この際、いきなり裁判を起こすのではなく、裁判の前に調停を行うルールになっています。これを「調停前置主義」と言います。

離婚無効確認調停を申し立てる

調停とは家庭裁判所の調停委員を介した話し合いのことで、裁判官1人と調停委員2人が双方の意見を聞き、言い分を整理して合意を目指します。しかし、合意できる見込みがないときは調停不調として打ち切られてしまいます。

離婚無効確認の調停では、離婚届を勝手に出したのか出していないのか、水掛け論に近い争いになりがちで、合意するのが難しいというのが実情です。多くの場合、早期に調停を打ち切ってもらい、裁判を起こすことになります。

離婚無効確認訴訟

離婚無効確認調停が不調に終わると、裁判を起こして離婚無効確認を裁判所に求めます。裁判では「離婚には合意していなかった」として離婚は無効であると主張します。裁判である以上、証拠に基づく事実によって審理が進められますから、離婚に合意していなかったことを示す証拠が重要です。

具体的には夫婦間の会話の記録やSNS、メールなどのやり取り、当時の状況、離婚届の筆跡鑑定などをもとに事実を立証し、裁判所に離婚の意思がなかったことを認めてもらうことになります。

判決に基づいて戸籍を訂正する

裁判で「離婚は無効」だという判決がでても、自動的に戸籍の訂正が行われるわけではありません。自分で役所へ行き、戸籍の訂正の手続きを行う必要があります。法律では、調停が成立した日、または判決が確定した日から10日以内に戸籍の訂正を済ませなければなりません。戸籍の訂正手続きは、住民票がある市区町村の市民課などの窓口で行います。

離婚提出を阻止するには不受理届を出しておく

離婚届を相手に勝手に提出され、そのまま受理されてしまうと、あとの手続きが大変です。そのため、一方的に離婚届を提出されそうなときは、離婚届不受理申出をしておきましょう。市区町村に離婚届不受理申出をしておくと、離婚届が出されても役所は受理しません。

離婚届不受理申出は、本籍地、または住所地のある市区町村の住民課などの窓口で行います。この手続きは原則として本人しかできず、郵送や代理人による提出はできません。代理人が行う場合は公正証書などが必要になります。手続きが、市区町村で異なることがあるので、事前にホームページや電話で確認しておきましょう。

離婚届不受理申出をしても、相手方に対して何らかの通知が届くことはありません。一方、離婚届が提出されると、申出人に届けが提出されたことが通知されます。離婚届不受理申出は、申出をした本人しか取り下げることができません。

弁護士

離婚無効確認調停や、離婚無効確認訴訟は、時間がかかり、立証も容易でないことがあるため、配偶者が離婚届を勝手に提出するおそれがあるときは、離婚届不受理申出をしておくと安心です。

離婚届を勝手に出した側はどうなる?

早く離婚したいのに、離婚協議が思うように進まないときなどは、勝手に離婚届を出せないかと考えてしまう人もいます。離婚届を勝手に提出すると、離婚手続きを進めるうえで不利になることがあるのでしょうか。相手の同意なしで離婚届を提出した側はどうなるのかを解説します。

罪に問われる恐れも

離婚届を、本人の同意のないまま提出した場合、戸籍に実際とは異なる記載をさせたとして電磁的公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われる可能性があります。また、離婚届を他人が代筆するなどして、本人に無断で離婚届を作成した場合は有印私文書偽造罪(刑法159条)に問われかねません。

さらに、偽造した離婚届を役所に提出すれば偽造私文書行使罪(刑法161条)となる可能性があります。届を無断で提出された相手側が警察署に被害届を出したり、告発したりすれば、警察から事情を聞かれることにもなるでしょう。

ちなみに、有印私文書偽造と偽造私文書行使の罰則は3カ月以上5年以下の懲役で、電磁的公正証書原本不実記録は5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

結婚した場合は重婚になる

離婚届を相手に無断して提出した配偶者が、別の異性と結婚してしまうケースもあります。この場合、離婚が無効となれば、複数の異性と結婚していることになり、「重婚」を禁じた民法に違反します。重婚の状態となった場合、当事者や前の配偶者、親族、検察官が、後の結婚について取消しを請求できます。

慰謝料を請求されることも

離婚届を同意もなく一方的に提出することは違法行為にあたりますから、相手側は違法行為による慰謝料を請求できる可能性があります。特に偽造した離婚届を提出して、重婚となった場合は、裁判所にも悪質な行為と判断される恐れがあります。

離婚届を勝手に出されたら専門家に相談を

離婚は夫婦双方の合意があって成立するものです。離婚の話し合いが思うようにいかないからと言って、相手に無断で離婚届を提出することはできません。離婚届を勝手に出されたら、できるだけ早く対抗手段を取ることが大切です。

しかし、離婚届が役所に受理された後、離婚を無効にするには法的な手続きが必要です。迅速に適切な対応を取るには、離婚問題に詳しい弁護士に相談することも必要でしょう。

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