「旦那と離婚したいけれどお金がない」と悩む妻がいます。専業主婦やパートでは十分な収入が見込めず、離婚後の生活が不安です。お金がない妻は、我慢して結婚生活を続けなくてはならないのでしょうか。「離婚したいけれどお金がない」と悩んだときの対処法を紹介します。
旦那と離婚したいけれど…お金がない
結婚生活がうまくいかず、夫婦関係も修復が困難になっているのに「旦那と離婚したくても、お金がなくて離婚できない」と嘆く妻がいます。確かに、離婚すると引っ越し費用など当面のお金に加え、その後の生活費用など、かなりのお金が必要になりそうです。不安になるのも当然でしょう。
旦那と離婚したいけど、お金もなくて、家も出でいけません。
現在、3歳の娘がいます。
毎月の給料よりも借金返済の額が上でやっていけません。
借金は結婚前から。その当時は同棲をしていた
ので「借金は生活の為に作った!!」と私のせいにされます。
全てが生活費ではなく、無駄使いばかりで元々金遣いが荒い上にお金に汚ないし悪い事は全て私のせいにします。
離婚を考えています。しかし貯金もなければ、親権問題で裁判沙汰になりそうで、その後の生活にも養える勇気がないので、
離婚に踏み切れず辛い日々を送っています。
離婚となると住まいや生活にお金がかかるのは解っています。しかし先立つ物はないし、子連れですが、学校を変わらないといけないので、なかなか行動には移せません。親には頼りたくないです。
離婚する際にはどのようなことにお金が必要なのか、離婚後の生活費が不安なときはどうすればいいのかを解説します。
離婚するために必要な費用はどれくらい?
離婚を考えるとき、まず離婚する方法や離婚後の生活について考える必要がありますが、どのくらいのお金が必要なのかといったことまで頭が回らない人もいます。こうした人は、実際に離婚の手続きを始めたとたん、お金が足りないことに気づいて慌てることがあります。
そうしたことにならないよう、離婚を切り出す前に離婚するのに必要なお金が用意できるかどうか、確認しておくことが大切です。どのようなことに、どのくらいのお金がかかるのかを解説します。
別居費用
離婚すると、普通は夫や妻と別々に暮らすようになります。今まで通り、家に住み続けられる場合、問題はありませんが、家を出るには新しい住まいが必要になります。住まい探しから、引っ越し、入居費用と結構お金がかかるものです。
アパートやマンションなどを借りる場合は、契約の際、敷金や礼金、前払いの家賃などが必要ですし、引っ越し費用も用意しておかなければなりません。最小限の家財道具もそろえておかなければ、何かと不自由でしょう。
暮らす地域の家賃相場によって必要な費用は変わりますし、親族に手伝ってもらったりして引っ越し費用を抑えることもできますが、最低でも数十万円の費用は必要でしょう。子連れで家を出るのであれば、その分費用もかかります。
協議離婚に必要な費用
離婚は一般的に、夫と妻が話し合い、条件に合意することで成立します。話し合いで離婚することを協議離婚といい、夫婦だけで話し合うのであれば、離婚の手続きに費用は必要ありません。ただ、離婚の条件や離婚時の取り決めなどを公正証書として残すのであれば、公正証書の作成手数料が必要です。
公正証書は公証役場で作成され、公文書と扱われるため、後から離婚の条件や取り決めをめぐって争いになったときも、2人が合意した契約の存在を証明する証拠となります。公正証書を作成する際には手数料が必要です。手数料は慰謝料や財産分与、養育費などの金額によって決まります。
目的の価額(離婚条件の金額)と手数料
100万円まで 5000円
200万円まで 7000円
500万円まで 11000円
1000万円まで 17000円
3000万円まで 23000円
5000万円まで 29000円
公正証書の枚数によっても手数料が変わる場合があります。
また、自治体によっては公正証書作成費用の一部が補助される場合もあります。
離婚調停に必要な費用
夫婦間の協議では離婚に合意できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申立てる方法があります。離婚調停とは裁判所を間に挟んだ話し合いで、実際には調停委員が双方の話を聞き、解決に向けて解決案を提示するなどします。
離婚調停を申し立てるには1200円の手数料が必要です。このほか、裁判所から相手方に書類を郵送するための切手代などを事前に納める必要があります。切手代は申立先の裁判所によって金額が異なります。このほか、必要な書類を取得する費用や、家庭裁判所に行くための交通費も必要です。
離婚裁判に必要な費用
調停を行っても、双方が合意する見込みがないときは、「調停不調」として調停が打ち切られます。調停不調となった場合、もう一度離婚協議をやり直すか、離婚裁判を起こすしかありません。ちなみに、調停前置主義と言って、離婚裁判を起こす前には必ず、調停を行わなければなりません。
裁判の申し立ては、弁護士に依頼しなくても自分で可能です。離婚のみを求める場合、訴訟費用として13000円を裁判所に納める必要があります。離婚だけでなく、慰謝料や財産分与、養育費なども裁判で決着させたい場合は、請求額の総額に応じて手数料が上乗せされます。
弁護士費用
調停や裁判は、自分一人でも起こせますが、弁護士に依頼すれば、スムーズに手続きが進められますし、自分で争うより多くの慰謝料や養育費を得られる可能性もあります。協議離婚の段階から弁護士に依頼すれば、話し合いもすべて任せることも可能です。しかし、弁護士に依頼すると、いくらかかるのか不安だという人もいるでしょう。
離婚問題を弁護士に相談する場合、次のような費用が必要になります。
・相談料
・着手金
・報酬金
相談料は、最初に法律相談などをするときの費用です。1時間5000円から1万円が相場ですが、初回に限り無料で相談に応じる法律事務所もあります。また、自治体などでの無料相談もあります。法律のことが全くわからず、どうすればいいのかわからないという場合は、こうした無料相談を利用したほうがいいかもしれません。
着手金は弁護士に依頼したときに支払う費用で、いわば手付金です。結果にかかわらず支払うもので、途中経過や結果が思い通りにいかなかったからといって、返金されることはほとんどありません。また、問題が解決したときには成功報酬を支払います。このほか、調査や裁判所への出廷などのために、旅費や経費がかかった場合は、実費が請求されます。
着手金は、依頼内容によって金額が決められます。成功報酬は、依頼時に弁護士と依頼人の間で取り決めますが、慰謝料や財産分与、養育費などの額の10%~20%、親権獲得の場合は10万~20万円ということが多いようです。
離婚したいけれどお金がないときの対処法
離婚するにはまとまったお金が必要です。DVやモラハラなどの被害を受けていて、本人や子供に危害が及ぶ可能性があるという場合は別ですが、結婚生活に耐える余裕があるのなら、貯金するなどしてから離婚するというのも選択肢の一つです。
子育て中の40代くらいまでは我慢して、子育てが終わる50代以降に離婚できるよう貯金をしているという人もいます。しかし、結婚生活に我慢できず一刻も早く離婚したいというケースもありますし、なかなか貯金が貯まらないというケースもあります。離婚したいけれどお金がないときの対処法について紹介します。
婚姻費用分担請求をする
離婚を考え始めたら、実際に離婚するときに向けて、貯金を始めるのが賢明です。夫と同居しているのなら、夫の目を盗んでお金を貯めることも可能でしょう。ただ、離婚を前提に別居したのに、お金がなくて離婚できないという場合もあります。別居している場合は、婚姻費用分担請求をして、貯金もできるよう生活費を確保しましょう。
婚姻費用請求とは、夫婦間で生活水準が変わらないよう、配偶者よりも収入が低い場合や子供と生活している場合に、配偶者に生活費の一部負担するよう求めることです。たとえ、別居していても、夫婦には、お互いに助け合う「相互扶助義務」があり、一方だけ経済的に苦しい生活を強いられることはあってはなりません。
婚姻費用の相場については、裁判所が婚姻費用の算定表を公表していますので、多くの場合、その額を参考に話し合いで決められます。
婚姻費用は一定水準の生活を保つものなので、基本的に別居の理由や夫婦間の事情によって額が左右されることはありません。もちろん、どちらかが高収入を得て裕福な場合は、配偶者も同程度の生活水準で暮らす権利があるので、一般的な婚姻費用を上回る額を受け取れることがあります。逆に、相手を上回るような生活水準を要求しても認められることは少ないでしょう。
婚姻費用を受け取れるのは、請求したときから離婚するまでです。婚姻費用を受け取れることを知らずに請求せずにいると、遡って請求はできません。離婚に備えて収入を確保するためにも、別居中は婚姻費用の請求を忘れないようにしましょう。
加藤 惇
【監修コメント】
婚姻費用の請求をした場合、毎月何円ならば支払うといった提案を夫から受ける場合があります。相場よりも低い金額で了承してしまうと、その後、相場の水準にまで引き上げさせるのは困難です。夫から具体的な金額を提示されても、安易に応じてしまわずに、いったん弁護士に相談してから合意するようにしましょう。
離婚時に受け取れるお金を活用
離婚をすると、相手から財産分与や慰謝料として、一定の額を受け取れる可能性があります。そうしたお金が見込めるのであれば、離婚後しばらくは生計を立てられるかもしれません。離婚時に受け取れる可能性があるのは、次のようなお金です。
・財産分与
・慰謝料
・養育費
・年金分割
財産分与とは、結婚期間中に夫婦で築いた財産を公平に分けることです。妻が専業主婦の場合、「財産はすべて自分が稼いだもので、妻の分はない」と主張する夫もいますが、これは誤りです。専業主婦も夫が仕事に専念できるよう家事などで貢献しており、基本的に財産の半分を受け取ることができます。
財産分与の対象となるのは次の通りです。
預貯金
有価証券
家・土地
家具・家財
自動車
保険の解約払戻金
退職金
ただし、結婚前や別居後に蓄えた預貯金などの資産、親族からの遺産、贈与などは財産分与の対象外です。また、住宅ローンなどの借金も財産分与の対象となります。このため、思ったほど財産分与の額が多くないこともあります。
・慰謝料
離婚の理由が、配偶者の浮気やDVなどの場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料の請求額は、離婚の原因や結婚生活の長さ、相手の年収などによって変わりますが、一般的に数十万円から数百万円です。500万円を超える請求が認められることはほとんどありません。
・養育費
子あり夫婦で、離婚後に子供を引き取る場合、養育費を請求できる可能性があります。離婚しても、両親には子供を養育する義務があるため、一緒に暮らしていなくても養育費を支払わなければなりません。養育費の額についても、裁判所が「養育費算定表」を公表しており、子供の数や年齢、親の年収などをもとに決められます。
養育費を約束通り支払わない親が問題になりますが、養育費は子供のためのお金です。子供が不自由なく暮らせるよう、離婚時にしっかりと額を決め、相手に支払ってもらうことが大切です。できれば、公正証書など法的効力のある形で取り決め内容を残しておきましょう。
・年金分割
年金分割とは、結婚期間中に納めた年金保険料に対応する厚生年金分を分割して、配偶者の年金にあてる制度です。対象となるのは厚生年金だけで、国民年金は対象外です。将来受け取る年金額が配偶者よりも少ない場合は、老後の資金を増やすために、忘れずに請求しておきましょう。
離婚後に受けられるひとり親支援を活用
子あり夫婦の場合、子供を引き取った側の親の収入が低ければ、「ひとり親支援」など国や自治体から公的支援を受け取れる場合もあります。支給には条件があり、自治体によって異なる制度もありますので、離婚後の住居選びの際、どのような支援を受けられるのかを調べておくといいでしょう。
主な「ひとり親支援」の制度には次のようなものがあります。
・児童扶養手当:国や自治体から支給され、子供の人数や所得に応じて支給されます
・児童育成手当:一部の自治体では、児童扶養手当とは別の手当支給制度もあります
・医療費助成:医療費の自己負担分への補助です。自治体によって制度が異なります
就職をする
一定の収入を得るには就職を考えることも大切です。国も子供連れの母親が就職できるよう「マザーズハローワーク」を全国21カ所(2023年4月現在)に整備しています。キッズコーナーが用意されているため、小さな子供がいても利用しやすく、一人一人の状況に応じて、子育てと両立しやすい仕事を紹介してくれます。
マザーズハローワークがない地域でも、全国185カ所(同)のハローワークに「マザーズコーナー」が設置され、母親からの相談に応じています。最近は、在宅ワークが可能な仕事も増えていますので、子供がいるから働けないとあきらめず、仕事を探してみましょう。
離婚後にお金がなくて住む場所に困る場合はどうする?
夫婦間の事情によっては、十分な準備ができないまま離婚せざるを得ないケースもあります。中にはお金も、住む場所もないという人もいるでしょう。そうした人たちを支援する制度として、「生活困窮者自立支援制度」があります。困ったときは、こうした制度の利用も検討しましょう。
生活困窮者自立支援制度とは
生活困窮者自立支援制度は、働きたくても働けない人や住む場所がない人を支援する国の制度です。経済的に苦しいひとり親家庭の相談にも応じています。都道府県や市などに窓口があるので、一度訪ねてみましょう。
自立相談支援事業
住居確保給付金の支給
就労準備支援事業
家計改善支援事業
就労訓練事業
生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業
一時生活支援事業
各自治体の市役所や区役所にも窓口が設置されているので、離婚後に住む家がなく困っているなら、一度相談してみるとよいでしょう。
離婚したいけれどお金がない事に悩んだら弁護士へ相談を
つらい結婚生活が続くと「少しの苦労は構わないから、とにかく早く離婚したい」と思うことがあります。しかし、離婚後の生活も考えずに離婚してしまうと、たちまち経済的に困窮してしまうことがあります。一度冷静になって、離婚後の生活の見通しについてよく考えることが大切です。
離婚したときに受け取れる金額や離婚後の支援などについては、法律や制度についての知識が必要です。「離婚したいけれどお金がない」と悩んだときは、夫婦問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
<加藤 惇/CSP法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
弁護士として、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料・不貞・親権・面会交流など、離婚にかかわる事件を特に重点的に取り扱う。依頼者の意向を丁寧にくみ取り、常に依頼者の利益を最大化することを目標に活動している。離婚事件のほか、いじめなどの学校事件も多く扱っており、子供に関する問題にも詳しい。CSP法律会計事務所所属。