夫や妻の浮気やDVなどのせいでうつ病になってしまう人がいます。うつ病と診断されたことで、夫との離婚を考える人もいるでしょう。果たして夫や妻のせいでうつ病になったことを理由に離婚できるのでしょうか。離婚できるケースのほか、慰謝料や親権の問題について解説します。
夫や妻のせいでうつ病に…
夫や妻の不倫やDV、嫌がらせなどによってうつ病を発症してしまう人がいます。うつ病になると、気力がなくなり、物事を悲観するようにもなります。結婚したことを後悔し、そうしたつらい状況から一刻も早く抜け出したいと、離婚を考える人もいるでしょう。
夫源病や夫のせいでうつ病になった専業主婦はどうやって生きるのでしょう?
専業主婦だから経済的に自立出来ていない、病気のため再就職や働くほどのパワーがない、そもそもメンタル崩した原因が夫。
どうしようもない状態だと思うのですが。それに病気になった原因が旦那さんだと結局、その人が元気になるには離婚しかないんでしょうか?
三年前に夫に不倫されてから、うつ病になり、あしかけ2年ほどメンタルクリニックに通ってます。
夫は離婚する気はないと言っておりますが、
水面下で女と連絡を取り続けております。
ここ最近のメンタルクリニックの通院では薬を飲まず、カウンセリングのみです。
そこで質問なのですが、
メンタルクリニックへの通院はこれを理由に
離婚を突きつけられやすくまたそれが成立しやすくなる要因となってしまうのか?
または逆に、離婚話しが上がったときに、夫の不貞によりうつ病になったことが妻の私に有利に働く材料となるのか?
教えていただけますか?
夫や妻のせいでうつ病になったら、離婚できるのでしょうか。離婚できるケースのほか、慰謝料の請求や親権の獲得が可能なのかについて解説します。
夫や妻が原因でうつ病になったら離婚できる?
結婚生活を続けていくうちに、夫や妻が冷たい態度を取ったり、攻撃的な言動をしたりするようになることがあります。そうした夫や妻のせいでうつ病などの精神疾患を発症してしまった場合、離婚できるのでしょうか。離婚できるケースや離婚の手続きなどについて説明します。
互いに合意できれば離婚も可能
離婚は基本的に、夫婦の双方の合意によって成立します。うつ病などを発症し、もう一緒に暮らしていけないと離婚を切り出したのに対し、相手も離婚に応じれば、離婚は可能です。後は、財産分与や親権、養育費、慰謝料などの条件などについて話し合うことになります。このように話し合いで離婚することを協議離婚といい、双方の合意さえあれば、離婚の理由を問われることもありません。
ただ、相手が「離婚する気はない」などと拒否した場合は、一方的に離婚はできません。また、財産分与などの条件をめぐって話し合いがつかないこともあります。特に「相手のせいでうつ病になった」などとして、相手が離婚の原因を作ったと主張するときは、相手も慰謝料を請求される可能性があるため、簡単には首を縦に振らないでしょう。
こうしたときは、相手と妥協しながら離婚に向けた話し合いを続けるか、法的な手続きに基づいて離婚を求めていくしかありません。
離婚の合意を得られないときは調停という手も
配偶者が離婚に反対したり、離婚には同意してもらえても条件で折り合えなかったりした場合、互いが主張をぶつけ合うばかりで話し合いが進まなくなることがあります。このようなときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判所の仲介で合意を図るという方法があります。
調停とは裁判所の調停委員を介した話し合いです。調停委員が双方の意見を聞き、言い分を整理して、妥協点を見つけられるよう調整してくれます。しかし、合意できる見込みがないときは調停不成立として、調停が打ち切られてしまいます。
調停が打ち切られると、残る方法は再び夫婦間で離婚の話し合いを続けるか、離婚裁判を起こして裁判所に離婚を求めるかのどちらかです。裁判で認められれば、相手の合意がなくても離婚が可能です。ただし、原則として離婚調停を行わずに、いきなり裁判はできません。これを調停前置主義といいます。
事情によっては離婚できることも
離婚裁判では証拠に基づいて離婚を認めるべきかどうかが審理されます。しかし、裁判で離婚が認められるには、民法で定められた離婚事由が必要です。裁判所は離婚事由があり、夫婦関係の修復が困難だと判断したときに離婚を認めます。離婚事由とは、次の5つの事情です。
・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の未払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある
「配偶者のせいでうつ病になった」という訴えが離婚事由にあたるかどうかは、個別の事情によるでしょう。例えば、夫や妻の浮気が原因なら、不貞行為に当てはまりますし、生活費を渡さない経済DVがあれば悪意の遺棄と判断される可能性もあります。もちろん、精神的なダメージを与えるような暴行や暴力も離婚の理由になり得ます。
離婚裁判は個別の事情で判断されますから、判例などを参考に、自分のケースが離婚事由に当てはまるかどうかを判断することが必要です。離婚に詳しい弁護士に相談し、見込みがあるか判断してもらうといいでしょう。今は離婚事由がなくても、いったん別居して離婚が成立する機会を待つという方法もあります。
うつ病になったことを理由に慰謝料を請求できる?
夫や妻の言動が原因でうつ病などの精神疾患になったとして、離婚や別居の際、相手に慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。慰謝料請求が可能なケースについて解説します。
原因によっては請求可能
慰謝料というのは、原則として不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。ですから、「配偶者のせいでうつ病になった」として慰謝料を請求するには、配偶者の不法行為と、その不法行為と発症の因果関係を証明しなければなりません。
具体的には、夫や妻の不倫に悩み、うつ病になったしまった場合や、相手の暴力や経済DVで精神的な苦痛を受けて発症したケースなどでは、慰謝料を請求できる可能性があります。
佐々木 裕介
このようなケースでは、そもそも相手方の不倫、暴力、DVが不法行為として慰謝料の原因になっていて、うつ病まで発症したことにより精神的苦痛が甚大と判断される要素になります。その場合、うつ病の発症は慰謝料の加算事由になると考えることができます。
一方で、夫や義理の家族と性格が合わないため、うつ病になったという場合や、家事や育児の負担から精神疾患を発症したというケースでは、裁判を起こしても慰謝料の請求が認められる可能性は低いでしょう。
実際、離婚調停や離婚裁判で当事者の一方がうつ病にかかっていて通院歴や医師の診断書があるケースは珍しくありません。こうした場合、相手方に責任をとってもらいたいと考えるのも当然です。
しかし、うつ病の原因には、生活環境の変化や義両親との関係、子供の生育状況、産後うつなど、いくつかの要因が重なっている場合も多く、うつ病の原因が相手方の不法行為によって発症したとの立証は想像以上に難しいのが実情です。
慰謝料の相場とは
離婚の際の慰謝料は一般的に50万円から300万円といわれていますが、夫婦間の事情や離婚の理由などによって額は変わります。うつ病を発症した場合は、発症の因果関係や症状によって額が上積みされる可能性があります。病気のため、以前のように働けなくなったり、入院や通院が必要になったりした場合も、そうした事情が額に反映される可能性があるでしょう。
また、話し合いの結果、双方が合意すれば、慰謝料請求の理由も金額も問題になることはありません。世間一般の相場より高い額で合意しても、それは当人たちの自由です。もし、裁判になった場合は、配偶者の言動と発症の関係や、発症によって生じた損害や不利益などを証明する必要があります。
慰謝料請求に必要なものとは
慰謝料の話し合いで、双方が合意できないときは、相手が慰謝料をを支払わなければならない理由について、証拠を示す必要があります。それなりの証拠を示すことができれば、相手も「裁判になっても負けてしまう」とあきらめて慰謝料の支払いに応じてくれるかもしれません。
具体的に次のようなものを証拠して確保しておくと、慰謝料請求の根拠となります。
・医師の診断書
・病院の診療明細書
・カウンセラーや相談窓口への相談履歴
・写真
・音声や動画データ
・LINEやメールの内容
・日記やメモ
うつ病での通院歴などだけでは慰謝料請求の原因になりませんので、相手から暴行や暴力を受けた際の、治療の記録なども必要です。DVの場合は、怒声の録音や暴行の現場の動画などもあると有利な証拠となるでしょう。毎日の出来事や、自分の気持ちを日記として残しておくと、証拠となる可能性もあります。
相手の浮気が原因の場合は、浮気現場の写真のほか、浮気を認める音声やメールなどを残しておくと、相手は言い逃れが難しくなります。
うつ病は親権の獲得に不利?
配偶者のせいでうつ病になってしまうと、離婚したときに親権を取るのが難しくなるのではと心配する人もいます。親権を夫婦で争うことになった場合、どのような点が考慮されるのかを解説します。
親権を決める基準とは
両親が親権を争って裁判になった場合、家庭裁判所は子供と両親それぞれの個別事情を確認したうえで、どちらが子供の養育にとって望ましいかという観点から判断します。うつ病であるという事情も考慮されますが、それだけで判断されるわけではありません。そのほかの事情も含めて、総合的に判断されます。
親の事情として判断材料となるのは次のような事情です。
・これまでの主に養育を担ってきたのはどちらか
・子供との関係は良好か
・子供と同居しているか
・子供を育てる意欲があるか
・経済的な安定が見込めるか
・周囲に協力してくれる人がいるか
・離婚後も子供を養育できるか
・子供に十分な教育の機会を与えられるか
・子育てに支障のない健康状態か
子供については、次のような事情が考慮されます。
・年齢や性別
・きょうだいや親との関係
・生育状況や健康状態
・家庭環境
・本人の意思
うつ病の程度によっては親権に影響がないことも
うつ病と言っても症状はさまざまですし、医師が処方した薬や治療の成果によって健康な人と変わらない生活を送れるようになる人もいます。症状が軽度なら、親権に大きな影響がない可能性もあります。近くに頼れる親が住んでいるなど、サポートが期待できるのなら、有利な事情となります。
しかし、感情の起伏が激しく、症状が悪化する恐れがあるなど症状が重い場合は、子供の養育に支障があると判断されてしまうかもしれません。もし、子供を引き取って離婚したいと考えているのなら、しっかり治療して心身の健康を取り戻し、周囲のサポート態勢も整えてからにしたほうがいいでしょう。
夫や妻のせいでうつ病になったときの相談先
夫や妻のせいでうつ病になってしまったとき、どこに相談すればいいのか、わからない人もいるのではないでしょうか。また、うつ病などの精神疾患は診断が難しく、自分がうつ病を発症していることに気づかない人もいます。夫婦関係などに悩んで気分が落ち込んだり、不安になったりしたときの相談先を紹介します。
心身の健康状態や夫婦間の事情に合わせて、まずは相談しやすそうなところから尋ねてみてください。
心療内科や精神科などの専門医
気分が落ち込む、不安が抑えられない、眠れないといった症状を自覚したら、うつ病などの精神疾患かもしれません。念のため、心療内科や精神科、メンタルクリニックなどを受診してみましょう。医師に話を聞いてもらうだけで、気分が良くなることがあります。夫や妻のせいで発症したと考えているのなら、そのことも訴えてカルテに残してもらいましょう。
うつ病になると、自分が置かれた状況を冷静に見られなくなり、正しい判断ができなくなることもあります。離婚を考えるにしても、適切な治療を受けてからにしたほうがいいでしょう。
保健所・保健センター
保健所は各都道府県と政令指定都市に設置されていて、住民の健康に関わる仕事をしています。また、保健センターは市区町村が設置する施設で、より地域に密着した保健サービスを提供します。どちらも、心身の健康に関わる相談にも応じていて、住民であれば、だれでも相談が可能です。
相談体制は保健所や保険センターによって異なりますが、多くの場合、保健師や精神保健福祉士、精神科医が無料で相談に応じます。症状に応じて、医療機関の受診を勧めてくれたり、法律面や経済面に関する相談窓口を教えてくれたりもしてくれます。自分が病気なのかどうかもわからず、どこに相談すればよいのか悩んでいる場合に相談してみるといいでしょう。
精神保健福祉センター・こころの健康センター
精神保健福祉センターやこころの健康センターも各都道府県と政令指定都市に設置されている公的機関です。保健所や保健センターに役割は似ていますが、心の健康に関する対策を担っています。心の健康に関する相談に広く応じていて、精神科医や看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理士、作業療法士などの専門家が対応します。
保健所と同様、より専門的な相談に応じてもらえる窓口などを紹介してもらえますので、最初は近くにあるなど利用しやすいところを選ぶといいでしょう。
こころの健康相談統一ダイヤル
相談できる窓口がどこにあるのかわからないという人は、厚生労働省が運用しているこころの健康相談統一ダイヤルに電話してみるといいでしょう。本人だけでなく、家族も相談できます。フリーダイヤルではなくナビダイヤルなので通話料はかかりますが、相談は無料です。
全国どこからでも電話しても、電話をかけた地域にある相談窓口に電話がつながります。ただし、自治体によって相談受付時間が異なります。
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
カウンセラー
夫婦関係に関する不安や悩みが強いときは、夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談してみてもいいでしょう。多くの夫婦を見てきたカウンセラーなら、客観的に状況を判断し、適切なアドバイスを与えてくれるでしょう。
メンタル面でのサポートが必要だと感じたら、医療機関の受診を勧めてくれたり、どのような相談窓口があるのかを教えてくれたりするはずです。
弁護士事務所・法律事務所
離婚したいという思いが強い場合は、弁護士事務所や法律事務所に相談してみてはいかがでしょうか。リコ活であれば、オンラインで初回相談無料で利用出来ます。弁護士に話を聞いてもらうことで、自分なりに現状を整理できることもありますし、客観的な立場からのアドバイスももらえます。
必要に応じて医療機関の受診を勧めてくれることもありますし、公的支援制度についても教えてもらえます。弁護士に相談することで不安や悩みが少しでも解消すれば、症状も軽くなるかもしれません。
夫や妻のせいでうつ病になったと感じたら専門家に相談を
うつ病は「心の風邪」と言われることもありますが、誰でも発症する可能性がある一方で、診断が難しい病気でもあります。重症化すると、治りにくくなることもあるので、早めの対応が必要です。気分が落ち込んだり、不安が募ったり、眠れなかったりといった自覚症状があれば、専門医の診察を受けるといいでしょう。
夫婦関係や離婚について悩んでいるときは、カウンセラーや弁護士に相談すると、解決策が見つかり、不安やストレスがやわらぐこともあります。さまざまな専門家の力を借りて、良い対応策や解決策を見つけましょう。
佐々木 裕介/チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所(第二東京弁護士会所属)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。