
オンライン離婚調停を考えたとき、まず気になるのは、何を準備すればよいのかという点ではないでしょうか?また、公正証書という言葉を見かけて、調停でも必要なのかどうか迷う方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、オンライン離婚調停の基本や必要書類、公正証書が関係するケース、手続の流れをわかりやすく解説します。


竹内 裕美/弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所(愛知県弁護士会所属)
離婚事件を中心とした家事事件に25年間携わる。2016年アメリカ国務省IVLPプログラム参加。
愛知県弁護士会紛争解決センター副委員長・国際ADRあっせん仲裁人、公益社団法人日本仲裁人協会常務理事・中部支部長として、ADRの普及に尽力。
オンライン離婚調停とは?

離婚調停は、夫婦だけで話し合ってもまとまらないときに、家庭裁判所で進める手続です。
最近は、事情に応じてオンラインで参加できる場面もあり、裁判所まで行く負担を減らしたい方や、相手と同じ空間にいることに不安がある方にとっては気になる選択肢になっています。
まずは、家事調停の中で離婚調停がどう位置づけられているのかを押さえたうえで、オンライン参加の考え方や、2025年3月からの変更点を見ていきましょう。
離婚調停とは?家事調停との関係
離婚調停は、家事調停の中の1つです。家事調停とは、夫婦や親子、親族など、家庭に関するもめごとについて、話し合いながら解決を目指す手続のことをいいます。
離婚調停では、離婚するかどうかだけでなく、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割などもあわせて話し合います。裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、調停委員を介しながら合意できる形を探していくのが基本です。
オンラインで進められるかはどう決まる?
離婚調停をオンラインで進められるかどうかは、希望すればそのまま決まるものではありません。たとえば、相手と同じ空間にいると安心して話せない場合や、遠方に住んでいて裁判所へ行くのが難しい場合などに、家庭裁判所が相当と認めれば、オンラインで参加することができます。実際に利用するかどうかは、当事者の意向や具体的な事情を裁判所が確認したうえで判断されます。
そのため、オンライン参加を希望する場合でも、まずは申立てをしたうえで、裁判所の案内に沿って参加方法を確認していく流れになります。移動の負担が大きい、相手と顔を合わせたくないといった事情がある場合には、その点を早めに伝えておくと話を進めやすくなるでしょう。
2025年3月から離婚調停はどう変わった?
2025年3月より前も、家事調停や家事審判では、事情に応じてウェブ会議を使って参加できる運用がありました。離婚調停もその流れの中にあり、オンライン参加そのものは以前から認められていました。
2025年3月1日から変わった大きな点は、離婚調停もウェブ会議の方法で成立させることができるようになったことです。これまでは、途中の期日にウェブ会議を使える場面があっても、離婚調停を成立させる最終段階では対面での手続が必要でした。2025年3月以降は、その点が見直され、条件が整えば成立までウェブ会議で進められるようになっています。なお、音声だけの電話会議の方法では成立させることができません。
※参考:裁判手続 家事事件 Q&A
弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所/竹内 裕美弁護士申立てに必要な書類は、申立書や戸籍謄本など基本のものに加え、子どもの有無や年金分割の希望によって変わります。よく混同されますが、公正証書は申立ての必要書類ではなく、合意した離婚条件を文書として残し、約束の履行を確保したいときに検討するものです。書類の不備は手続きの遅れにつながりやすいため、申立て先の家庭裁判所の案内を確認しながら早めに準備しましょう。判断に迷う点があれば専門家に確認すると安心です。
オンライン離婚調停の必要書類


オンライン離婚調停を進めるうえで、まず確認したいのが必要書類です。
基本となる書類に加えて、子どもがいる場合や年金分割を求める場合など、状況に応じて揃えておきたい書類が増えることもあります。
必要書類を表にまとめると以下のとおりです。
| 書類名 | 必要になる場面 | 補足 |
|---|---|---|
| 申立書 | 全員 | 申立ての基本書類 |
| 戸籍謄本 | 全員 | 3か月以内のものが案内されることがある |
| 事情説明書 | 全員 | 事情や背景を整理するための書類 |
| 進行に関する照会回答書 | 全員 | 進め方の確認に使う |
| 送達場所等届出書 | 全員 | 連絡先に関する書類 |
| 子についての事情説明書 | 未成年の子がいる場合 | 親権や養育費などの整理にも関わる |
| 年金分割のための情報通知書 | 年金分割を求める場合 | 原本と写しが必要なことがある |
ここからは、まず共通して必要になる書類を確認し、そのあとで状況に応じて追加で見ておきたい書類を見ていきましょう。
基本となる必要書類
離婚調停の申立てでまず揃えたいのは、申立書、事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書、そして戸籍謄本です。
東京家庭裁判所では、申立書は3通、事情説明書と進行に関する照会回答書、送達場所等届出書は各1通、戸籍謄本は3か月以内に発行されたものを提出するよう案内しています。オンライン参加を考えている場合でも、この基本が変わるわけではありません。
とくに戸籍謄本は、夫婦関係を確認するための土台になる書類です。事情説明書や進行に関する照会回答書も、裁判所が状況を把握し、今後の進め方を考えるうえで必要になります。
未成年の子どもがいる場合に確認したい書類
未成年の子どもがいる場合は、基本書類に加えて、子についての事情説明書も確認しておきたいところです。離婚調停では、離婚するかどうかだけでなく、親権、養育費、面会交流なども一緒に話し合うことが多いため、子どもの状況を整理するための書類も必要になります。
離婚後の生活や子どもの環境に関わる項目は、あとから慌てやすい部分でもあります。申立ての前に、何を話し合うことになるのかを整理しておくと、その後の話し合いにも入りやすいでしょう。
年金分割を求める場合に必要な書類
離婚とあわせて年金分割も求める場合は、年金分割のための情報通知書が必要です。東京家庭裁判所では、離婚とともに年金分割における按分割合に関する調停を求める場合に、情報通知書の原本1通とコピー2通を用意するよう案内しています。
年金分割は、離婚の話し合いの中で後回しになりやすいですが、準備が足りないと足踏みしやすい部分です。養育費や財産分与と同じように、離婚条件の一つとして早めに確認しておきましょう。
裁判所ごとに追加で確認したい書類
必要書類の大枠は共通していますが、細かな運用は家庭裁判所ごとに異なることがあります。東京家庭裁判所でも、部数や添付方法について具体的な指定があり、住所を秘匿している場合や外国人を当事者とする場合など、状況に応じた注意点も案内されています。
そのため、一般的な説明だけを見て準備を終えるのではなく、実際に申し立てる家庭裁判所の案内まで確認しておくことが大切です。部数や追加資料の有無を先に見ておくだけでも、提出し直しになる負担はかなり減らしやすくなります。
公正証書はオンライン離婚調停で必要?


オンライン離婚調停の申立てに必要な書類と公正証書では、役割が異なります。
ここでは、公正証書が必要になる場面やその位置づけを見ていきましょう。
公正証書は申立ての必須書類ではない
結論からいうと、公正証書はオンライン離婚調停の申立てで必ず必要になる書類ではありません。まず揃えるのは、申立書や事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書、戸籍謄本など、調停を始めるための書類です。
公正証書は、調停を申し立てるための前提というより、離婚条件を文書として残したいときに関わってくるものです。日本公証人連合会でも、離婚に関する公正証書は、離婚給付等契約公正証書として、離婚の合意や養育費、財産分与などを条項化するものと案内しています。
参考:日本公証人連合会
公正証書を検討したいケース
公正証書は、養育費や財産分与、慰謝料など、お金に関する取り決めを明確に残しておきたい場合に検討されます。
日本公証人連合会の案内では、離婚に関する公正証書には、離婚の合意、親権者と監護権者の定め、子どもの養育費、面会交流、慰謝料、財産分与、強制執行認諾などを、必要に応じて盛り込むとされています。
また、公正証書に一定額の金銭支払いの合意と、支払わないときは強制執行を受けてもよいという内容を記載しておくことで、支払いが履行されない場合に強制執行が可能になるケースがあります。
公正証書を作るときに確認したい資料
公正証書を作る場合には、離婚調停の申立書類とは別に、公証役場で確認する資料が必要になります。
日本公証人連合会は、離婚給付契約公正証書を作成する資料として、戸籍謄本、不動産を財産分与する場合の登記事項証明書と固定資産評価関係資料、年金分割の場合の年金番号が分かる資料などを挙げています。さらに、本人確認のために、印鑑登録証明書と実印、運転免許証、マイナンバーカードなどが必要になる場合もあります。
つまり、公正証書はオンライン離婚調停の申立てに必要な書類ではなく、離婚条件を文書として残したいときに別途検討するものです。
オンライン離婚調停の流れ


ここからは、実際にオンライン離婚調停の流れを見ていきましょう。
全体の流れが分かると、どの段階で何を準備すればよいかもつかみやすくなります。
まずは、申立書や戸籍謄本、事情説明書など、申立てに必要な書類を確認してそろえます。
子どもがいる場合や年金分割を求める場合は、追加で必要になる書類もあわせて確認しておきましょう。
申立てが済むと、裁判所から期日や今後の進め方について案内があります。
オンライン参加を希望している場合は、この段階で参加方法や利用の可否も確認されます。
調停期日では、離婚するかどうかに加えて、親権、養育費、財産分与などの条件を順に話し合います。
オンラインで参加する場合も、手続の中身が変わるわけではありません。
調停が成立したあとは、離婚届の提出など、その後に必要な手続を進めます。
成立した時点で終わりと考えず、その先の流れまで確認しておくことが大切です。
オンライン離婚調停の手続きの流れや当日の進み方についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
オンライン離婚調停のメリットと注意点


オンラインで参加できると聞くと便利そうに感じますが、事前に知っておきたい注意点もあります。
ここでは、オンライン離婚調停のメリットと注意点を整理しておきましょう。
オンライン離婚調停のメリット
オンライン離婚調停の大きなメリットは、裁判所まで出向く負担を減らしやすい点です。時間に制約がある方や、事情があって移動しにくい方にとっては、利用しやすい方法の一つになります。
また、相手と顔を合わせずに話し合いを進めやすい点も見逃せません。離婚調停では、話し合いの場に出ること自体が心理的な負担になることがあります。そうしたときに、事情に応じてオンライン参加が認められる可能性があることは、手続に向き合うハードルを下げる助けになります。
オンライン離婚調停の注意点
一方、オンライン参加は、希望すれば必ず使えるものではありません。裁判所は、当事者の意向や具体的な事情を聞いたうえで、実際にウェブ会議を利用するかどうかを判断するとしています。離婚調停をオンラインで進めたいと思っていても、最終的には申立先の家庭裁判所の判断になる点は、最初に押さえておきたいところです。
さらに、端末や通信環境の準備も必要です。裁判所は、家事調停手続のウェブ会議操作マニュアルを公開しており、スマートフォンやタブレットで参加する場合のアプリや操作方法も案内しています。こうした案内は更新されることがあるため、実際には申立先の裁判所の説明を確認しながら準備するようにしましょう。
また、オンラインで進められた場合でも、成立後に必要となる手続まで確認しておくことが大切です。
オンライン離婚調停の必要書類に関するよくある質問
最後に、オンライン離婚調停の必要書類に関するよくある質問をまとめて確認していきましょう。
- スマホだけでも参加できますか?
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スマホで参加できる場合があります。
裁判所は、家事調停などのウェブ会議について、スマートフォンのiPhone版・Android版の操作マニュアルを案内しています。もっとも、実際の参加方法や利用手順は、申立てがなされている裁判所に確認するよう案内されているため、当日は申立先の家庭裁判所の説明に沿って準備することが大切です。
- 弁護士がいなくても申し立てできますか?
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弁護士に依頼しなくても申し立てはできます。
裁判所の家事事件Q&Aでも、弁護士に依頼することはできるが、依頼していなくても調停の手続を行うことができると案内されています。まずは自分で申し立てを検討し、必要に応じて専門家への相談を考える流れでも問題ありません。
- 公正証書があれば調停は不要ですか?
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必ずしもそうとはいえません。
公正証書は、離婚の合意や養育費、財産分与などを文書として残すために使われるものですが、離婚するかどうかや条件面で合意がまとまっていない場合は、家庭裁判所の離婚調停を利用する場面があります。つまり、公正証書と離婚調停は役割が同じではなく、どちらか一方で必ず足りるとは限りません。
- 必要書類は家庭裁判所によって違いますか?
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大枠は共通していますが、細かな運用は家庭裁判所ごとに異なることがあります。
東京家庭裁判所でも、申立書や事情説明書などの部数、戸籍謄本の条件、年金分割を求める場合の提出方法について具体的な案内があります。全国共通の説明だけで終えず、実際に申し立てる家庭裁判所の案内まで確認しておくと安心です。
まとめ|オンライン離婚調停は必要書類と流れをしっかり確認しましょう


ここまで、オンライン離婚調停の基本や必要書類、公正証書が関わる場面、手続の流れを見てきました。
この記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
- オンライン離婚調停は事情に応じてオンライン参加が認められることがある手続
- オンラインでの参加は自由ではなく家庭裁判所が事情を見て判断する
- 2025年3月1日以降は離婚調停もウェブ会議で成立できるようになった
- 必要書類は申立書や戸籍謄本などが基本で、子どもがいる場合や年金分割を求める場合は追加書類がある
- 公正証書は申立ての必須書類ではなく、養育費や財産分与などの取り決めを残したいときに検討する
- 手続を進めるときは必要書類と流れを早めに確認し、申立先の家庭裁判所の案内まで見ておくことが大切
オンライン離婚調停を考えるときには、必要書類と手続の流れを早めに整理し、自分の状況に合った進め方を確認しながら準備を進めていきましょう。
