単身赴任は夫婦の気持ちが離れる?離婚率が上がる?
夫婦仲の悪化による別居と異なり、単身赴任は夫婦の関係は維持したまま離れて暮らすことになります。当初はお互い連絡を取り合うなど愛情を維持する努力をするものの、物理的に距離のある生活には、夫婦間の気持ちが離れるきっかけが多く潜んでいます。
一般的に、夫が単身赴任をして妻と子供が家に残るケースがよくありますが、一人暮らしを始めた夫には微妙な心境の変化が起こりがちで、一人で子供の世話をする妻は孤独に陥りやすくなります。そうした状況の中で、どのように夫婦の気持ちが離れるのか、その原因や関係を修復する方法について説明します。
単身赴任で夫の気持ちが離れる理由は?
単身赴任で家を離れ、一人暮らしを始めた夫はどのような心境になるのでしょうか。夫を取り巻く環境から、妻への気持ちが離れる理由として考えられる要因を4つ紹介します。
仕事や家事で疲弊する
単身赴任に限らず、異動や引っ越しなどで周囲の環境が大きく変わると、慣れるまでは近所での買い物ですら大変です。また妻と同居していたころと違って、掃除や洗濯などの家事も全て自分でやらなければなりません。
妻と連絡をとりたくても、職場から帰宅後、家事や雑事を片づけて、入浴などを済ませたらすでに深夜ということも珍しくないようです。このように、精神的・時間的な余裕がなくなると、妻とのコミュニケーションが希薄になって気持ちが離れる原因になりがちです。
1人の生活に慣れる
単身赴任直後は、妻に会えず寂しい思いをしていても、しばらくすると新しい環境を楽しむ余裕も生まれてきます。同居家族に気を遣わなくてよい自由な生活は、独身時代の気楽さを思い起こさせるでしょう。
深夜までゲームに没頭したり、趣味のコレクションを飾ったり、一人暮らしを満喫するあまり、妻と会うのが億劫になり気持ちが離れることがあるかもしれません。
精神的に不安定な妻に疲れる
夫婦が離れて暮らす単身赴任では、夫だけでなく妻にも精神的な負担がかかっていることがあります。単身赴任の夫をもつ妻は、一人で子供の相手をしなければならない孤独感や、夫からの連絡がない心細さに悩まされることが多いようです。
このため、久しぶりに夫婦で会ったのに愚痴や文句ばかり言う妻に、夫はうんざりして気持ちが離れるかもしれません。また、過度な不安から夫の浮気を疑う妻もおり、そのような事実はないのに夫婦関係だけが悪化したケースもあります。
浮気・不倫をして妻への気持ちが冷めた
単身赴任で一人暮らしを始めると、まるで独身に戻ったような感覚になり、中にはつい浮気や不倫をしてしまう夫もいるようです。当初は妻に会えない寂しさを埋める一時的な遊びのつもりだったのに、ずるずると関係が深まるケースは少なくありません。
育児などのストレスで妻が情緒不安定になった場合、夫にとって浮気相手のほうが心の休まる存在になり、妻から気持ちが離れることもあります。
単身赴任で夫の気持ちが離れたサイン
夫が単身赴任で近くにいなくても、夫の様子から「自分から気持ちが離れたのでは」と感じる妻は多いようです。このようなとき、気持ちが離れたことを示すサインが、夫の言動に現れます。特徴的なサインを5つ紹介しますので、夫の言動に当てはまるものがないか確かめてみましょう。
連絡の回数が減る
単身赴任してすぐは頻繁に連絡があったのに、連絡回数が減ってしまうのは、夫の気持ちが離れる過程でよくみられる特徴です。また、夫から妻への気持ちが離れると、子供とは電話で楽しそうに話すのに、妻とはそっけない会話で終わってしまうことがあります。
帰宅しなくなる
面倒だからと単身赴任先から帰宅しなくなるのも、妻への気持ちが離れつつある夫に多い兆候です。数分ですむ電話と違い、帰宅するには、荷造りや移動など手間と時間がかかります。それでも心から妻に会いたい夫にとっては、帰宅は楽しみなイベントのはずです。
また、妻への気持ちが離れると、直接会って話をするのが嫌になり、何かと理由をつけて帰宅を延期しようとすることがあります。
スキンシップがなくなる
久しぶりに帰宅しても、夫婦生活がない状態が何度も続く場合、夫から妻への気持ちが離れるサインかもしれません。ただ、夫婦といえどもしばらく顔を合わせていないと、スキンシップがとりづらくなる人もいるようです。
セックスレスでも仲の良い夫婦はいますが、夫の気持ちが離れる要因が多い単身赴任中は、夫婦関係にも影響することがあります。
単身赴任先に来させないようにする
夫の単身赴任中、夫が赴任先から家族のいる家へ帰宅するように、妻や子供が赴任先へ遊びに行くのは自然なことです。それなのに妻や子供が来るのを嫌がる場合、夫の気持ちが離れたのが理由かもしれません。
夫にも都合があるでしょうが、妻の訪問より、一人暮らしの楽しみや浮気相手に会うほうが大事だと思っている可能性があります。ただ、本当に忙しい場合もありますから、あまり決めつけないようにしましょう。
浪費が増える
妻から夫の気持ちが離れるとき、他に没頭できる趣味ができたり、浮気をしていたりする場合があります。趣味も浮気もお金がかかることが多いので、夫のお金の使い方をチェックすると、夫の気持ちが離れつつあるサインが見つかるかもしれません。
銀行の通帳やクレジットカードの明細など、夫婦で共有のものがあれば確認してみましょう。まとまった金額の引き落としが多い場合は、一度夫にそれとなく明細を聞いてみるとよいでしょう。
単身赴任で離れた気持ちを取り戻すには?【体験談】も
環境の変化やコミュニケーション不足により、単身赴任中に夫の気持ちが離れるのは珍しいことではありません。しかし、単身赴任前は愛情があったのですから、その後の対応によっては夫婦関係の修復が可能です。夫の離れた気持ちを取り戻せる可能性が高い対処法を紹介します。
コミュニケーションのルールを決める
仕事や育児で忙しくても、同居していれば夫婦で直接顔を合わす機会を作れますが、単身赴任ではその機会がなかなか持てません。だからこそ、夫婦間で気持ちが離れるのを防ぐため、単身赴任中はこまめに連絡を取り合う必要があります。
「朝起きたらメッセージを送る」「毎週〇曜日の〇時にビデオ通話をする」などあらかじめスケジュールを設定するとよいでしょう。こういったコミュニケーションのルールを決めておくと、定期的にお互いの様子を確認でき、気持ちが離れてもすぐに修復できるかもしれません。
毎週日曜日の夜7時は単身赴任中の夫とのzoomの時間です。お互い忙しいときもあるけど「また今度」にしてしまうと結局来週になってしまうから、食事中でも強制的に開催しています。
夫が単身赴任している家に行く
妻への関心が薄れた夫が単身赴任先から家に帰って来ない場合、妻が夫の家を訪ねることで関係が改善できる可能性があります。忙しくて余裕がない夫なら、料理や掃除などの家事を手伝うだけでも喜んでくれるでしょう。
また、外食続きの夫にとって、妻の手料理は気持ちが離れる前の状態を思い出すきっかけになるかもしれません。ただし、夫にも都合があるので、突然押しかけるのはマナー違反。相手の気持ちを逆なでする可能性もありますから、気をつけましょう。
最初は来なくていいと言われたけど、汚くてもいいからと夫の単身赴任先に行きました。案の定散らかっていたけど、直接会って話したら、お互いの誤解も解けた気がします。
妻が心に余裕をもつ
夫婦離ればなれでお互い不安な気持ちの中、妻が心に余裕を持って明るくふるまうと、夫も妻の存在を見直すかもしれません。とはいえ、育児での孤独感や夫の気持ちが離れるのではないかとの心配で、常に余裕を持ち続けることは難しいものです。
育児などのストレスを発散するには、掃除などの手を抜いて、気分転換の時間を確保するとよいでしょう。夫に会えず心細い場合は、地域の子育てサークルなどに参加して話し相手や相談仲間を見つけると気が紛れるかもしれません。夫への余計な連絡を控えて余裕を見せると、程よい距離感に夫も心が休まります。
夫の単身赴任中に浮気が気になって1日に何回も連絡をしていました。「余計に気持ちが離れるんじゃない?」と友人に指摘されて止めました。今になって夫に聞いてみたら、やっぱり正直鬱陶しかったそうです。
イベントを大切にする
家族の誕生日や結婚記念日などのイベントには、なるべく単身赴任先から帰宅するよう伝えておきましょう。気持ちが離れると帰宅する頻度が少なくなりがちですが、イベントに参加して妻に直接会うことで、愛情を取り戻せるかもしれません。帰宅できなくても、ビデオ通話で参加してもらったり、誕生会の写真を送ったりすれば、思い出を共有できます。
単身赴任中の夫は忙しいからと言ってあまり帰宅しません。せめて子供の誕生日くらいはと帰ってきてもらいました。
ちゃんと料理を作り、夫にも子供にも楽しく過ごしてもらえたと思います。夫も居心地がよかったのか、ときどき帰宅するようになりました。
家族の写真を飾る
単身赴任先の部屋の目につく場所に夫婦や家族の写真を置いておくと、気持ちが離れる以前の妻の存在が感じられ、関係を修復するのに役立ちます。特に写真立てに入れて、家の玄関やリビングに飾ると、簡単に変えられないのでより効果的です。スマートフォンの壁紙にしてもらうのもいいでしょう。
家族の写真を置いておくといいみたいです。以前単身赴任していた夫は、一人暮らしでつい開放的な気分になってしまうけど、妻と子供の写真が目に入って気持ちが離れるのを抑えられたと言っていました。
単身赴任が理由で離婚は認められる?
単身赴任をきっかけに夫の気持ちが妻から離れてしまうと、夫が離婚したいと言い出す可能性があります。このような場合、妻は離婚を受け入れなければならないのでしょうか。
単身赴任だけでは離婚できない
基本的に夫と妻の両方の合意があれば、話し合いで解決する協議離婚という形で離婚できます。しかし、単身赴任で妻への気持ちが離れたという、夫の一方的な主張に妻が納得できない場合は離婚できません。協議離婚で解決せず、次の離婚調停でも合意が得られない場合、離婚裁判で民法が定める法定離婚事由に夫の主張が当てはまるか、裁判所の判断を仰ぎます。
夫婦仲の悪化による別居は離婚事由として認められる可能性があります。しかし、仕事のために、互いに納得したうえで始めた単身赴任では、「離れて暮らしている」というだけでは離婚の理由になりません。夫が離婚を口にし始めたら、理由をしっかり聞いたうえで、離婚問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
新大塚法律事務所
単身赴任だけでは離婚できないので、夫の離婚したい理由が、民法の定める法定離婚事由に当たらなければ、裁判所は離婚を認めてくれません。それでも、夫が離婚したいとしたら、例えば不倫していて、その不倫相手に気持ちが移ったなども疑う必要があるので、離婚したい理由をしっかりと聞くことが重要なのです。
単身赴任で夫婦の気持ちが離れた時は気持ちを共有しよう
夫婦お互いに納得して決めた単身赴任でも、実際に始めてみると、環境の変化やコミュニケーションの取りづらさから夫婦の気持ちが離れることがあります。
離れた気持ちを取り戻すには、お互い負担にならない頻度で連絡を取り合ったり、直接会う機会を設けたりすることが大切です。普段会えない分、しっかり話し合って気持ちを共有することで、単身赴任前の愛情を取り戻せるかもしれません。
新大塚法律事務所(第一東京弁護士会所属)
離婚等の家族に関する案件や男女トラブルの案件を多く取り扱っている事務所です。法律的な観点だけでなく、人生の再出発に向けた総合的なアドバイスを様々な角度からさせていただきます。