別居したら住民票は移すべき?勝手に移して大丈夫?
夫と妻と別居したとき、住民票を移すかどうか迷う人は結構多いものです。基本的には引っ越しをすれば市役所や区役所、町村役場に転居届を出します。しかし、冷却期間として一時的に離れて暮らすだけなら、届けまで出す必要はないとも言え、実情に合わせて判断する必要があります。
また、住民票を移すと、相手に「もう戻る気はない」という印象を与え、関係修復が難しくなる可能性がありますし、逆にきっぱりと関係を断ち切りたいのに住民票から転居先が相手にバレてしまうということも起こり得ます。住民票を移すべきかどうか、どのように判断したらよいのでしょうか。
移さない人も少なくない
そもそも日本の法律上、誰でも、自分が住んでいる市区町村に住民登録しなければなりません。そして、住民登録することで、さまざまな行政サービスを受けられます。たとえば、住民登録がなければ、地元の公営住宅に入居できないことがありますし、児童手当など公的手当や給付金の受け取りも難しくなります。
行政サービスだけでなく、本人確認のため、住民票の提示を求められることもあります。しかし、さまざまな事情で住民票の異動届を出せない人も少なくありません。よくあるのが、DVから逃れるための別居で夫に転居先を知られたくないケース。住宅ローンを返済中で、転居できないという人もいます。
別居直前の電話相談をした際に郵便局にも転居届は出さないように注意された
嘘をつくのが上手く言葉巧みにいいようにされて来て周囲の人を騙す巧妙さは知っている
消えた妻子を探していると涙ながらに訴えて転居先がバレた例もあるとか
見つかったら元の木阿弥
未だに恐怖心が消えない
何で別居してさっさと住民票移さなかったんだろ。別居して1年半位経つのに県営応募できなくて過去の自分を責めたい。変な希望を持ってた自分にパイ投げをお見舞いしたい
住民票の異動には夫の同意は不要
別居後、夫に黙って住民票の異動手続きをすると、夫から「勝手に住民票を異動するのは不法行為だ」と抗議されることもあるようです。また、「無断で住民票を異動すると悪意の遺棄と見なされるのではないか」と心配する妻もいます。「悪意の遺棄」とは夫婦間の義務に反した行動のことですが、住民票の異動に夫の同意は必要ありません。
ただし、本人だけでなく、子供の住民票も異動させる場合は注意が必要です。相手も子供の親権を主張している場合、親権をめぐって深刻なトラブルに発展する恐れがあります。子供と一緒に別居する場合、弁護士に相談すると適切なアドバイスが受けられます。
別居して住民票を移すメリット
法律上、住所が変われば14日以内に市区町村に転居したことを届けなければなりません。罰則も定められていて、これは法律上の義務です。また、妻が夫と別居して新たに住民登録することで、世帯主も妻本人に変更されます。これによって、さまざまなメリットが生じます。主なメリットを紹介しましょう。
住民票を移すことのメリット
・自分宛ての郵便物を確実に受け取れる
・条件を満たせば公営住宅への申し込みが可能になる
・医療費助成など自治体の支援制度を利用できる
・児童手当の受給者変更ができる
・子供の転園・転校が可能になる
・別居状態にあることの証明になる
自分宛ての郵便物を確実に受け取れる
別居して家を出たときに、意外と困るのは郵便物の受け取りです。中には相手に見られたくない郵便物もあるでしょうし、重要な連絡が郵便で送られてくることもあります。
郵便局に転送届を出せば、1年間対象の人の郵便物を別居先の住所に転送してもらえますが、クレジットカードやキャッシュカード、公共料金の納付書といった郵便物は「転送不要」の扱いになっていることが多く、この場合は転送の対象外となります。自分宛ての郵便物を確実に受け取るには、住民票の異動が必要になります。
自治体の支援制度を受けられる
福祉や医療、教育などに関する行政サービスは、都道府県や市区町村が主体となります。このため、別居しても住民票を移さないと、一部の行政サービスを受けられないことがあります。たとえば、別居後に住宅を探す場合、住民票を移せば、条件によっては家賃の安い公営住宅に入居できる場合があります。
児童手当も市区町村から同居する養育者に給付されるため、住民登録が必要です。自治体によっては未成年への医療費助成や一人親家庭への支援制度を利用できる可能性があります。子育て支援や医療費助成は市区町村ごとに制度が異なるので、子供と一緒に別居する場合は、子育て支援が充実している市区町村を選ぶという手もあります。
公立保育園・小中学校への転園・転入が可能になる
子供と一緒に別居する場合、学校や保育園などへの転園・転入が問題となります。公立の保育園や小・中学校は、よほどの事情がない限り住民票のある子供しか通えません。
ただ、転園や転校は子供にとって大きなストレスとなりますし、親権について合意していないのに一方的に子供を連れて別居すると深刻なトラブルに発展することもあります。子供と一緒に別居するときは、事前に弁護士や公的相談窓口にアドバイスを求めたほうがよいでしょう。
別居して住民票を移すデメリット
別居して住民票を移すことで生じるデメリットもあります。メリットになるか、デメリットになるかは、夫婦関係の状態によっても変わることもあります。別居前に、メリットとデメリットのどちらが大きいのかを慎重に見極めましょう。
住民票を移すことのデメリット
・相手に転居先を知られる可能性がある
・夫婦としての権利を失うことがある
・関係修復が難しくなる恐れがある
相手に転居先を知られる恐れがある
相手に転居先を知られたくない場合、住民票の異動は慎重に進めることが大切です。住民票を移したからといって、家族に通報や連絡がいくことはありませんが、夫婦として同じ戸籍に入っている以上、相手は戸籍を見れば簡単に住民票のある住所がわかります。
夫婦としての権利を失うことがある
別居して住民票を異動すると、それまで夫婦として当然だった権利が失われる可能性があります。特に所得がなく夫の扶養に入っていた妻は、健康保険や年金保険料など社会保険料の負担が増える可能性があるので注意してください。また、万が一、夫や妻が亡くなった場合、遺族に給付される遺族年金を受け取れなくなる可能性もあります。
別居して住民票を異動すると、相手にも「関係を修復する意思はない」と受け止められる可能性は高いでしょう。事情にもよりますが相手側に「家を勝手に出て、夫婦関係を破綻させた」と主張する余地を与えることにもなります。離婚の決心が固まっていないのなら、住民票の異動届の提出は慎重に検討しましょう。
別居先の住所をバレずに住民票は移動できる?
別居先に住民票を異動すると、どうして配偶者に別居先の住所が分かってしまうのでしょうか。その詳しい理由と、住所がバレないようにするための対策を紹介します。
離婚していなければ引越し先は調べられる
住民票を異動すると、家族に連絡や通知が届くと思っている人もいますが、市区町村がそうした通知をすることはありません。その点は安心していいでしょう。しかし、夫婦は別居しても同じ戸籍に入っているため、配偶者が調べようと思えば、転居先を知ることができます。
戸籍には、附票というものがあり、そこには過去から現在までの住所が記載されています。そして戸籍の附表は戸籍の筆頭者をはじめ、筆頭者の配偶者や父母、子、孫であれば閲覧や写しの交付を請求できます。このため、配偶者は市区役所や町村役場の窓口で請求すれば、簡単に現住所を調べられます。
DVの場合はバレない可能性も
DVなどの被害を受けていた場合、市区町村に対し、自分以外の人が住民票や戸籍の閲覧・交付を申請できないようにする申し立てができる場合があります。夫からの暴力などから逃れるために別居する場合は、そうした措置も検討しましょう。申し立てをするための条件や手続きなどについては、弁護士や市区町村に相談してみてください。
また、閲覧や写しの交付の制限ができない場合も、他人が住民票や戸籍の証明書などを取得した場合、市役所から通知を受け取れる本人通知制度もあります。
住民票を移す時の手続きは?
実際に住民票を移す場合には、どのような手続きが必要なのでしょうか。手続きの流れや必要なものなどを紹介します。住民票を異動する場合、市区町村内で転居するのか、別の自治体に転居するのかで手続きが異なります。
住んでいた役所で転居の手続きを行う
同じ市区町村内で転居する場合、引っ越しから14日以内に市区役所や町村役場の窓口に転居届を提出します。届け出様式や窓口の名称は市区町村によって異なりますが、だいたい「市民課」「住民課」という名称が多く、フロア内に届け出用紙が置いてあります。同一の市区町村内での転居の場合、これで手続きは完了です。
別の自治体に転居する場合は、これまで住んでいた市区役所や町村役場に転出届を提出します。窓口は転居届と同じです。届け出をすると「転出証明書」がもらえます。ただし、マイナンバーカードを持っている場合は、転出証明書は必要ありません。基本的に転出届は、転居前に提出します。
転居届・転出届で必要な物
【転居届】
・本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
・認印(必要のない自治体もあります)
・在学証明書(子供が転校する場合)
【転出届】
・転居する全員のマイナンバーカードか通知カード
・本人確認書類(マイナンバーカードがあれば必要ありません)
・印鑑証明書(持っている場合)
・認印(必要のない自治体もあります)
引っ越し先の役所で転入手続きを行う
転居を終えたら、14日以内に引越し先の市区役所、町村役場に転入届を出します。このとき、前住所の市区町村で発行された転出証明書の原本が必要です。手続きは、転出届のときとほとんど変わりません。届け出が受理されたら、ごみの出し方や水道料金の徴収方法など自治体それぞれのルールや決まり事を教わります。
その他各種手続き
住民票の異動手続きを行うと、それにともないさまざまな手続きが必要になります。主なものを挙げておきましょう。場合によっては、ほかにも手続きが必要になることがあるので、事前にチェックしておきましょう。
健康保険の変更
夫の扶養から外れ、新たに健康保険に加入する際は手続きが必要です。国民健康保険に加入する場合は市区町村の役場で手続きをします。
運転免許証の住所変更
引越先を管轄する警察署や運転免許試験場で手続きします。
自動車の住所変更
自分名義の自動車を持っている場合は、陸運局などで住所変更の手続きをします。
金融機関の住所変更
口座を持っている銀行や証券会社などで手続きします。
郵便局の転居手続き
以前の住所宛ての郵便物を転送してもらえます。インターネットからでも手続きが可能です。
児童手当の受給者変更
子供と一緒に転居し、新たに児童手当の受給者となるときに必要です。
子供の転園や転校
スムーズに受け入れてもらえるよう、転居手続きとは別に保育園や学校と相談して手続きを進めておくことが大切です。
住民票を移す際は、夫婦関係や子供への影響を考慮して
転居したら、住民票を異動するのが原則です。住民登録をしないと、本来受けられたはずの行政サービスを受けられないこともあります。しかし、住民票を移すことで、配偶者に転居先が知られてしまうことがありますし、夫婦関係の破綻が決定的になることもあります。
住民票を移す場合は、今後の夫婦関係や子供への影響も考慮して慎重に検討しましょう。離婚を視野に入れている場合や、DVが原因となっているときは、弁護士にも相談するとよいでしょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。