家庭内別居とは?ご飯を作らない妻も
修復が難しいほど夫婦関係が悪化しているにもかかわらず、どちらかが家を出て別居するわけでも、離婚するわけでもなく、家庭内別居という方法を取るケースがあります。経済的な問題や子供が幼いなど家庭の事情が理由となりますが、「ご飯をつくらない」などと家事の分担でもめて、いっそう関係を悪化させることがあります。
「あんな旦那のご飯なんて作りたくない。洗濯もしたくない」「夫が生活費を稼いでいるのだから、妻が家事をするのは当たり前だ」などと双方言い分があると思いますが、実際、妻が夫のご飯を作らないとどうなるのでしょうか。将来、離婚に発展したときに影響するのか、双方が折り合うにはどうしたらよいのかなどを説明します。
家庭内別居とはどのような状態?
家庭内別居とは法律などで定義が定められているわけではなく、一般的に同居しながら家の中では別々に生活している夫婦のことを言います。夫婦によって事情が異なり、単に顔を合わさないようにしている夫婦から、生活費まできっちり分けている夫婦まで実情はさまざまです。
一般的に「家庭内別居」とは次のような状態を指します。ただし、離婚裁判で「家庭内別居」を理由に離婚が認められるためのハードルは相当高く、こうした状況に全て当てはまっても、裁判で離婚が認められるとは限りません。
・最低限の会話しかせず、ほとんど会話がない
・寝室を含めて別々の部屋で過ごし、顔を合わさないようにしている
・顔をあわせても挨拶する程度。もしくは、互いの存在を無視する
・洗濯や掃除は自分の分しかしない。
・一緒に食事はせず、自分や子供の分しか作らない
家庭内別居なら家事を拒否してもいい?
家庭内別居でよくトラブルになるのが、生活費や家事の負担です。互いに十分な収入があるのなら、家賃や光熱費などは互いに半分ずつ負担し、後は自分の収入で暮らすという方法も可能です。しかし、妻が専業主婦の場合はそうはいきません。離婚していない以上、夫は妻を含めて生計を支えていかなければなりません。
夫が生計を支えているのに妻が夫の分の家事を拒否すると、夫は「こちらは金銭的な負担をしているのに」と不満を募らせます。ときには「家事を拒否することによって結婚生活を破綻させた」と主張することもあります。このような夫の言い分に不安を覚える妻も多いようです。果たして、この夫の主張は正しいのでしょうか。
丸の内ソレイユ法律事務所
離婚に向けた家庭内別居をするのであれば、家事をしなくても問題ないともいえます。一方、離婚原因を作りたくない、婚姻を継続したいという場合は家事を拒否しない方がよいでしょう。
家庭内別居で「ご飯を作らない」という妻の気持ちとは
家庭内別居で夫のご飯を作らない妻は、離婚協議などで不利になるのかということを説明する前に、夫のご飯を作らない妻は、どのような思いを抱えているのかを見ていきましょう。
ご飯を作らない理由は、そのまま別居の理由に
妻が夫にご飯を作らない理由は、たいてい夫への不満です。単に「ご飯を作るのが面倒」「後片付けをしたくない」といった理由は少ないようです。実際に、夫のご飯は作らないが子供のご飯や弁当はちゃんと作るという人は少なくありません。
ご飯を作らない理由で主なものは次の通りです。
・共働きなのに自分だけ作るのはおかしい
・家事をすべて押し付けられるのは嫌だ
・作っても「おいしい」と言ってくれない。食べてくれない
・生活費を渡してくれない
・夫と一切かかわりたくない
妻は夫への不満の積み重ねから、ご飯を作るのが嫌になっていくのです。こうした不満はそのまま別居や離婚の理由になると言っても過言ではないでしょう。
夫婦関係が破綻しているのにご飯を作りたくない
夫が「食事の準備や洗濯など家事は妻がやるものだ」という考えを持っていると、妻は徐々に不満を溜めこみ、夫婦仲が悪化していくことがあります。そうした夫は、家庭内別居でも、家事はやってもらえるものだと思うようです。そんな夫に妻は、さらに怒りを募らせます。
家庭内別居やのにご飯はあたしが作らないといけないんですかね?洗濯物はあたしがやらないといけないんですかね?
おかしくね?
ご飯を食べないのなら作らない
家庭内別居でも、夫の食事は用意するという妻は少なくありません。しかし、夫の中にはそれを感謝するどころか、自分の都合や好き嫌い、妻への嫌がらせなどから、食べたり食べなかったりする人がいます。夫のそんな態度に憤り、ご飯を作るのをやめてしまう妻もいます。
明日から奴のご飯は作らない事にした。
家庭内別居でも奴の晩ご飯だけは作ってたのに今日を含め2回食べなかったからもう作らない。
ママに作ってもらえ。
家庭内別居でご飯を作ってもらえない夫はどう感じている?
家庭内別居でご飯を作ってもらえない夫はどのように感じているのでしょうか。夫の場合は、自分で家事ができるかどうか、妻に対しどのような感情を持っているかによって、感じ方も違うようです。
家庭内別居でご飯を作ってもらえない夫は、事情によって異なりますが、次のような感情を抱くようです。
・自分が生計を支えているのだから、妻が家事をするのは当たり前だ
・顔を合わせてご飯を食べたくないが、面倒なので準備だけはしてほしい
・作ってもらえないのなら、外食するしかない
・作りたくなければ、自分で作るからいい
・妻の作った食事も食べたくない
・子供とは一緒にご飯を食べたい
子供とは一緒にご飯を食べて会話をしたい
家庭内別居と言っても、一人で食べる食事は寂しものです。妻はともかく、子供と一緒にご飯を食べたいと思いながら、自室で自分で作ったインスタント料理を食べる夫もいます。
家庭内別居のオッサンは
2階の部屋で1人で🍺
今日はみそラーメン
たまには子供と他愛もない会話しながらご飯食べたい
作ってもらえないのなら、外食で済ませる
妻がご飯を作ってくれないからと、毎日外食する夫もいます。ときには、公園でお弁当を食べることもあるとか。こうした夫にとって、既に自宅は安らげる場所ではないのかもしれません。
アラ還上司は家庭内別居状態で、ご飯を作ってもらえないそう💦
飲食店が20時閉店になってから
「夕飯難民になるから〜」
って焦って帰るようにw
うっかり遅くなるとお弁当を買って公園で食べるそう😩
「暖かくなってきたから助かる」だって💧
お弁当も自宅で食べられないなんて😱
家庭内別居でご飯を作らないと「悪意の遺棄」?
家庭内別居で妻が夫のご飯を作らなかったり、洗濯をしなかったりすると、夫が「悪意の遺棄だ」と言い、「結婚生活が破綻した原因は妻にある」と主張することがあります。本当にご飯を作らないと夫婦関係を破綻させたことになるのでしょうか。また、「悪意の遺棄」とは何を指すのでしょうか。
「悪意の遺棄」と判断されると離婚で不利に
悪意の遺棄とは、正当な理由なく結婚生活への協力を拒むことです。民法770条で、離婚裁判を起こすことができる理由の1つとして定められています。裁判所で悪意の遺棄などの理由が認められ、結婚生活を維持するのは難しいと判断されると、離婚が成立します。
第二款 裁判上の離婚
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
夫婦には「同居義務」「協力義務」「扶養義務」があり、これらの3つの義務に反すると、悪意の遺棄だと認められる可能性があります。ただし、これらは夫婦間の実情に合わせて判断されるため、どんな夫婦にも一律に適用されるものではありません。
ご飯を作らなくても「悪意の遺棄」にはならない?
妻がご飯を作らない場合、確かに夫婦の協力義務に反しているようにも感じます。しかし、料理は妻がするものと決まっているわけではありませんし、掃除や洗濯などほかの家事をやっていれば、義務を果たしていないとまでは言えません。逆に夫が全く家事をやっていなければ、夫が義務を果たしていないと主張することも可能です。
もちろん、多くの嫌がらせの1つとしてご飯も作らない、ご飯を作らないことを含めて夫婦関係が破綻しているというのなら、離婚の理由になる可能性はあります。離婚裁判では、夫婦関係全般を見て判断されるので、「ご飯を作らない」という1点だけをとらえて「悪意の遺棄」と判断されることはありません。
家庭内別居で「ご飯を作らない」と宣言するには
家庭内別居を始めたら、できるだけ相手とは関わらず、無用なトラブルも避けたいものです。夫のご飯を作りたくないとき、揉め事になるのを避け、相手を納得させるにはどうしたらよいのでしょう。
家で過ごすときのルールを決める
家庭内別居を始める前に同居する上でのルールを決めておけば、無用なトラブルを防げます。たとえば、生活費の分担や自宅にいるときの過ごし方などです。その中に「ご飯は自分で用意する」と入れてしまいましょう。
子供の気持ちには配慮を
家庭内別居をするときに、忘れてはならないのは子供の気持ちです。高校生や大学生になっていれば、ある程度理解してくれるかもしれませんが、小学生や中学生の子供なら、家族そろってご飯を食べられないのを寂しく感じるかも知れません。子供の気持ちを汲んで、食事だけは家族が顔をそろえるということも大切です。
家庭内別居でご飯を作らないと決めたら、ルールの明確化を
家庭内別居でご飯を作らないと決めても、それだけで「夫婦関係を破綻させた」と言われることはありません。しかし、破綻を決定づける事の1つになる可能性は十分にあります。一時の感情なのか、離婚を見据えてのことなのか、自分の気持ちをよく確かめたうえで行動しましょう。
事情があってすぐには離婚できず、しばらく家庭内別居を続けなければならないというときは、ご飯作りについても、しっかりルールを決めておけば、無用なトラブルを防げます。このほか、家庭内別居について悩みや不安があれば、夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談してみましょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。