家庭内別居を始めると、「もう生活費は渡さない」「折半にする」と言われることがあります。しかし、離婚していない限り、夫婦には生活費を分担する義務があります。本記事では、家庭内別居における生活費負担の法的ルール、請求できる金額の目安、払ってもらえない場合の対処法について、弁護士監修のもと詳しく解説します。
この記事でわかること
・家庭内別居でも夫婦の生活費分担義務は継続する
・婚姻費用算定表を参考に適正な生活費を算出できる
・生活費を払ってもらえない場合は早めの対応が重要

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。


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家庭内別居とは?完全別居との違い
家庭内別居とは、離婚や物理的な別居はせずに、同じ家に住みながら夫婦としての生活を実質的に行わない状態を指します。 寝室を分ける、食事を別々にとる、会話を最小限にするなど、生活空間を共有しながらも互いに独立した生活を送ります。
一方、完全別居は夫婦のどちらかが家を出て、物理的に異なる場所で暮らす状態です。生活費の分担や子どもとの面会など、別居後の取り決めが必要になります。
家庭内別居を選ぶ理由としては、経済的な事情で別々に暮らすのが難しい、子どもへの影響を最小限にしたい、離婚を決断する前の冷却期間としたい、などが挙げられます。
ただし、家庭内別居であっても法律上は夫婦であることに変わりはなく、生活費の分担義務など夫婦としての義務は継続します。
家庭内別居でも生活費の負担義務はある
家庭内別居を始めると、「もう夫婦としての生活は送っていないのだから、生活費を負担する必要はない」と考える人もいるかもしれません。しかし、法律上はどのように扱われるのでしょうか。

夫婦には扶養義務がある
民法では、夫婦は同居して互いに助け合わなければならない、生活費(婚姻費用)を収入などに応じて分担しなければならないと定めています。これを同居義務、扶助義務、婚姻費用分担義務などと言います。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。引用元: e-Gov法令検索 民法
夫婦仲が良好であれば、こうした義務を意識することなく自然に助け合うことができます。しかし、不仲になってしまうと、生活費の負担をめぐってさまざまな争いが生じてしまいます。
特に問題となるのが「悪意の遺棄」です。悪意の遺棄とは、夫婦間の義務に反したり、履行しなかったりすることで、裁判による離婚では離婚の原因として認められます。収入に見合った生活費を負担しなかったり、相手が家を出て行かざるを得ないような状況を作ったりすると、悪意の遺棄と見なされることがあります。
別居でも扶助義務はなくならない
たとえ家庭内別居で、実質的に夫婦関係が破綻していようとも、離婚が成立していない限り、夫婦が果たすべき義務に変わりはありません。 当然、扶助義務や婚姻費用分担義務に基づき、生活費は双方が収入に応じて負担することになります。
「家庭内別居だから、これからは生活費は渡さない」という主張は、法律上認められません。 また、「生活は別々なのだから、生活費も折半にする」という要求も、必ずしも正当とは限りません。共働きの夫婦なら折半も可能ですが、専業主婦や扶養控除が受けられる範囲内でのパート勤務の場合、収入に応じた分担が原則となります。
婚姻費用の範囲とは
民法が定める婚姻費用には、どのような費用が含まれるのでしょうか。婚姻費用とは、夫婦と経済的に自立していない子どもが日常生活を送っていくために必要な費用のことです。
具体的には次のような費用が含まれるとされます。
- 衣食住に関わる費用全般(家賃、食費、被服費など)
- 子どもの養育費・教育費(学費、習い事の費用など)
- 医療費
- 冠婚葬祭費
- 一般的に必要と考えられる交際費や娯楽費
これらの費用は、夫婦双方の収入や資産、その他の事情を考慮して分担することになります。家庭内別居であっても、これらの費用を一方的に負担しないということは、民法上の義務違反となる可能性があります。
家庭内別居で「生活費を払わない」と言われたときの対応
家庭内別居を始めた際、相手から「もう生活費は渡さない」「生活費は折半にする」などと言われることがあります。こうした主張に対し、どのように対応すればよいのでしょうか。

まずは話し合いで解決を試みる
生活費の問題が生じたら、まずは冷静に話し合いの場を設けることが大切です。 感情的な対立を避け、以下のポイントを意識して話し合いましょう。
- 法律上の義務を確認する
家庭内別居であっても夫婦の扶助義務・婚姻費用分担義務は継続していることを伝える - 互いの収入を開示する
具体的な金額をもとに、公平な分担割合を検討する - 書面に残す
口頭での約束だけでなく、合意内容を書面化しておく
話し合いがうまく進まない場合は、第三者(家族、カウンセラー、弁護士など)の同席を検討するのも有効です。また、内容証明郵便で生活費の支払いを求めることで、後の法的手続きに備えることもできます。
生活費の負担はルール化しておく
生活費の負担をめぐる争いを避けるには、家庭内別居の前に費用負担に関するルールを決めておくのが良い方法です。互いに扶助義務や婚姻費用分担義務があることを確認したうえで、自分の収入に応じて、どのように負担するのかを決めておけば、生活費の負担でもめることも避けられるでしょう。
具体的には、以下のような項目を取り決めておくことをお勧めします。
- 住居費(家賃・住宅ローン)の分担割合
- 光熱費・通信費の分担方法
- 食費の負担(共同購入か個別購入か)
- 子どもの養育費・教育費の負担
- 共有スペースの使用ルール
これらを書面にまとめ、双方が署名しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

婚姻費用算定表を参考にする
生活費の具体的な金額を決める際は、裁判所が公開している「婚姻費用算定表」を参考にするとよいでしょう。 この表は、夫婦それぞれの年収や子どもの人数・年齢をもとに、標準的な婚姻費用の目安を示しています。
婚姻費用算定表の使い方は以下の通りです。
- 夫婦双方の年収を確認する(源泉徴収票や確定申告書を用意)
- 該当する表を選ぶ(子どもの人数・年齢によって表が分かれています)
- 縦軸と横軸の交点を確認する(義務者と権利者の年収が交わる箇所が目安の金額)
- 個別事情を加味して調整する(住宅ローン、特別な医療費などがある場合)
最高裁判所のホームページから無料で閲覧・ダウンロードできます。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
ただし、婚姻費用算定表はあくまで目安であり、家庭内別居の実態に応じて金額を調整する必要があります。 たとえば、家庭内別居で光熱費を実際に使用した割合で分担している場合などは、算定表の金額をそのまま適用できないこともあります。
家庭内別居の生活費はいくら請求できる?
家庭内別居で実際に生活費を請求する場合、具体的にいくら請求できるのでしょうか。金額を決める際の法的な考え方と、実際の算定方法について説明します。

費用負担は「資産、収入その他一切の事情を考慮して」
婚姻費用分担義務を定めているのは民法760条ですが、その割合については「資産、収入その他一切の事情を考慮」としか書かれていません。つまり、ケースバイケースで判断されるということです。
このため、家庭裁判所で生活費の分担割合を決めるときは、以下のような要素が総合的に考慮されます。
- 夫婦それぞれの収入(給与所得、事業所得など)
- 資産の状況(預貯金、不動産、有価証券など)
- 子どもの有無・人数・年齢
- 健康状態(特別な医療費が必要な場合など)
- 生活水準(婚姻期間中の生活レベル)
- 住宅ローンなどの固定支出
一般的に生活費の額を決めるときの参考として使われるのが「婚姻費用算定表」です。 裁判官の共同研究で作成された表で、最高裁判所のホームページでも公開されています。通常は、互いの年収のほか、子どもの年齢や人数をもとに目安となる金額を調べたうえで、個別の事情を考慮して金額を調整します。
生活費の負担には「生活保持義務」もある
生活費の負担を決めるときに、忘れてはならないのが「生活保持義務」です。
生活保持義務では、配偶者や子どもに対し、自分と同等の生活を保障しなければならないとされます。 つまり、自分は贅沢な暮らしをしながら、配偶者や子どもにはぎりぎりの生活費しか渡さないということは許されません。
たとえば、夫の年収が800万円、妻が専業主婦の場合、夫だけが高級車に乗り、外食や趣味に自由にお金を使う一方で、妻や子どもには最低限の生活費しか渡さないというのは、生活保持義務に反する可能性があります。
生活保持義務は、単に「生活できる最低限の費用を渡せばよい」という「生活扶助義務」とは異なり、より高い水準での生活保障を求めるものです。
家庭内別居の生活費の算定はケースバイケース
結論からいえば、家庭内別居の生活費を算定する一般的なルールはなく、個別の事情をもとに決めることになります。
通常の別居(物理的に離れて暮らす場合)であれば、婚姻費用算定表をそのまま適用できることが多いのですが、家庭内別居の場合は以下のような点が考慮されます。
- 自宅を使用する割合(居住スペースの分担)
- 光熱費の実際の使用割合
- 食費の分担方法(共同購入か個別購入か)
- 共有する生活費と個別の生活費の区分
具体的には、夫と妻で実際に自宅を使用する割合や光熱費の使用割合を決め、負担割合を決めるケースがあります。ただ、居住費用を折半したケースもあり、最終的には生活実態を見て裁判所が判断することになります。
実際に生活費がいくらもらえるかを判断するのは難しく、受け取れる概ねの生活費の額を知りたいという人は、夫婦問題に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。

ケース別の生活費シミュレーション
家庭内別居における生活費の目安を、具体的なケースで見てみましょう。以下はあくまで参考例で、実際の金額は個別の事情により異なります。
ケース1:夫が会社員(年収500万円)、妻が専業主婦、子ども2人(10歳、7歳)
婚姻費用算定表の目安: 月額10〜12万円
家庭内別居の場合の考え方:
- 住居費(家賃・住宅ローン)は夫が全額負担
- 光熱費は実際の使用状況に応じて按分(夫6割、妻4割など)
- 食費は個別に負担(共同購入分は折半)
- 子どもの養育費・教育費は夫が全額または大部分を負担
実際の負担額の目安: 月額8〜10万円程度(住居費の負担状況により変動)
ケース2:夫が会社員(年収700万円)、妻がパート(年収150万円)、子どもなし
婚姻費用算定表の目安: 月額4〜6万円
家庭内別居の場合の考え方:
- 住居費は収入割合に応じて分担(夫8割、妻2割など)
- 光熱費・食費は使用割合に応じて個別に負担
- 妻も一定の収入があるため、完全な扶養ではない
実際の負担額の目安: 月額3〜5万円程度(妻の収入分を考慮)
ケース3:夫が会社員(年収900万円)、妻が専業主婦、子ども1人(15歳)
婚姻費用算定表の目安: 月額12〜14万円
家庭内別居の場合の考え方:
- 生活保持義務により、妻と子どもにも一定の生活水準を保障
- 住居費は夫が全額負担
- 子どもの教育費(塾、習い事など)は夫が負担
- 光熱費は実際の使用状況に応じて按分
実際の負担額の目安: 月額10〜12万円程度
注意点
これらのシミュレーションはあくまで一般的な目安です。実際には以下のような要素によって金額が変動します。
- 住宅ローンの有無と金額
- 特別な医療費の必要性
- 子どもの進学状況(私立か公立か)
- 夫婦の生活実態(どの程度独立した生活をしているか)
- 地域の生活費水準
正確な金額を知りたい場合は、婚姻費用算定表を確認したうえで、弁護士に相談することをお勧めします。
生活費を払ってもらえないときの法的手段
話し合いをしても相手が生活費の負担に応じない場合、法的な手段を取ることができます。

婚姻費用分担請求とは
婚姻費用分担請求とは、民法に基づいて配偶者に生活費の分担を求める法的手続きです。 家庭内別居で相手が生活費の負担を拒否したり、一方的に支払いを打ち切ったりした場合に、家庭裁判所に申し立てることができます。
ただし、不倫や浮気、正当な理由のない家出など、自ら夫婦関係を破綻させた側が請求しても、子どもの養育費以外は認められません。
婚姻費用分担請求の手続き
婚姻費用分担請求は、家庭裁判所に調停または審判の申立てをします。
調停での話し合い
調停は、裁判所を交えた問題解決のための話し合いです。 調停委員が双方から事情を聞き、婚姻費用算定表などを参考に適正な金額を調整します。
<必要なもの>
- 婚姻費用分担請求調停申立書
- 夫婦の戸籍謄本
- 収入を証明する資料(源泉徴収票、給与明細など)
- 申立手数料(収入印紙1,200円)
話し合いがまとまれば調停成立となり、調停調書には判決と同じ効力があります。 相手が支払いに応じない場合は強制執行(給料の差し押さえなど)が可能です。
審判手続き
調停が不成立になった場合、自動的に審判手続に移行します。 裁判官が夫婦の収入や資産、子どもの状況などを考慮して負担額を決定します。
婚姻費用分担請求は過去にさかのぼれない
婚姻費用分担請求で最も注意すべき点は、請求以前の費用はほとんどのケースで認められないということです。
たとえば、1年前から生活費をもらっていなくても、今日申し立てをした場合、過去1年分の未払い生活費は原則として請求できません。婚姻費用が認められるのは、基本的に請求した時点から離婚成立または別居解消までの期間です。
請求した時点とは?
- 家庭裁判所に調停または審判の申立てをした日
- 内容証明郵便で生活費の支払いを求める通知を送った日
このため、相手が負担に応じない場合は、できるかぎり早く請求することが重要です。まずは内容証明郵便で請求し、それでも応じない場合は速やかに家庭裁判所に申し立てましょう。
家庭内別居の生活費でもめるのなら離婚も視野に
家庭内別居を始めても、生活費の分担でもめるようでは、落ち着いて生活できません。結局、互いに不満やストレスが溜まる一方で、夫婦関係は悪化するだけでしょう。このような状況が続くのなら、早めに離婚を検討したほうがよいかもしれません。



家庭内別居だけでは裁判離婚の理由にならない
どちらかが家を出て別居状態が続き、関係修復が難しいと判断された場合、夫婦双方が合意していなくても裁判で離婚できる可能性があります。家庭内別居でも、裁判で離婚が認められた例はありますが、非常にまれなケースです。家庭内別居だけで裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいと考えたほうがいいでしょう。
一般的には、寝室が別でほとんど顔を合わさなければ「家庭内別居」と考えますが、裁判所はもっと厳格に「家庭内別居」を判断します。互いにほぼ独立した生活をしている必要がありますし、性交渉を含め夫婦として行動することがないことや、やむを得ない事情で別居できなかったことなどを立証しなければなりません。
いわゆる「仮面夫婦」の程度では、裁判で家庭内別居とは認められないということは覚えておきましょう。
離婚理由の証拠の収集をしっかりと
家庭内別居での離婚は難しくても、家庭内別居の理由に、DVや浮気、モラハラなどがあれば離婚が認められる可能性は高くなります。もし、これらが原因となっているときは、相手の言動を録音したり、毎日、日記などの記録を付けたりして証拠を収集しておきましょう。
家庭内別居から離婚を考える場合
家庭内別居を始めても、生活費の分担でもめるようでは、落ち着いて生活できません。互いに不満やストレスが溜まる一方で、夫婦関係は悪化するだけでしょう。このような状況が続くのなら、早めに離婚を検討したほうがよいかもしれません。

家庭内別居だけでは裁判離婚の理由にならない
どちらかが家を出て別居状態が続き、関係修復が難しいと判断された場合、夫婦双方が合意していなくても裁判で離婚できる可能性があります。 しかし、家庭内別居の場合は異なります。
家庭内別居でも裁判で離婚が認められた例はありますが、非常にまれなケースです。家庭内別居だけで裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいと考えたほうがいいでしょう。
裁判所が家庭内別居を離婚理由として認めるには、以下のような要件が必要です。
- 互いにほぼ独立した生活をしている(食事、家計、生活時間が完全に別)
- 性交渉を含め、夫婦として行動することがない
- やむを得ない事情で別居できなかったことの立証
- 数年単位での継続的な家庭内別居状態
いわゆる「仮面夫婦」の程度では、裁判で家庭内別居とは認められません。
離婚理由の証拠の収集をしっかりと
家庭内別居での離婚は難しくても、家庭内別居の原因に、DVや浮気、モラハラなどがあれば離婚が認められる可能性は高くなります。
もし、これらが原因となっているときは、相手の言動を録音したり、毎日、日記などの記録を付けたりして証拠を収集しておきましょう。
<有効な証拠の例>
- 暴力やモラハラ: 録音、録画、診断書、写真、日記
- 浮気・不倫: LINEやメールのスクリーンショット、探偵の調査報告書
- 生活費を渡さない: 家計簿、通帳のコピー、内容証明郵便の控え
証拠は客観的で継続的なものほど有効です。感情的にならず、冷静に記録を残すことが重要です。
生活費以外で決めておくべきこと
家庭内別居から離婚を視野に入れる場合、生活費以外にも決めておくべきことがあります。後々のトラブルを避けるため、以下のような点を明確にしておきましょう。
- 子どもに関すること: 面会頻度、学校行事への参加方法、進路の決定方法
- 家事・生活: 家事分担、共有スペースの使用ルール、食事の扱い
- 財産管理: 共有財産の管理方法、重要書類の保管、銀行口座の整理
これらを書面にまとめておくことで、家庭内別居中の生活をスムーズに進められるだけでなく、離婚協議に移行する際にも円滑に話を進めることができます。
【Q&A】家庭内別居の生活費に関するよくある質問
Q.家庭内別居中、相手が生活費を渡さないのは離婚理由になりますか?
生活費を渡さない行為は「悪意の遺棄」として離婚理由になる可能性があります。 悪意の遺棄とは、夫婦間の義務に反したり、履行しなかったりすることで、民法が定める法定離婚事由のひとつです。
ただし、単に生活費を渡さないというだけでなく、収入があるにもかかわらず正当な理由なく継続的に生活費を負担しない、相手が生活に困窮するような状況を作り出したなど、悪意性が認められる必要があります。
Q.共働きの場合、家庭内別居の生活費は完全折半にすべきですか?
共働きであっても、必ずしも完全折半が正しいとは限りません。民法では「資産、収入その他一切の事情を考慮して」婚姻費用を分担すると定められており、収入差がある場合は収入に応じた分担が原則です。
たとえば夫の年収が700万円、妻の年収が300万円の場合、7対3程度の割合で負担するのが適正と考えられます。婚姻費用算定表を参考に、双方の収入に見合った負担割合を決めることをお勧めします。
Q.家庭内別居を始める前に書面で取り決めをしておくべきですか?
書面での取り決めは必須ではありませんが、後のトラブルを防ぐために書面化しておくことを強くお勧めします。 生活費の負担割合、光熱費の分担方法、子どもの養育費、家事分担、プライバシーのルールなどを明確にし、双方が署名しておくことで、言った言わないの争いを避けられます。
公正証書にする必要はありませんが、日付と双方の署名があれば、後に調停や審判になった際の証拠としても有効です。
Q.相手が自営業で収入を隠している場合、婚姻費用はどう決まりますか?
自営業者が収入を過少申告している疑いがある場合でも、家庭裁判所は確定申告書だけでなく、生活水準や資産状況なども総合的に判断します。 たとえば、申告所得は少ないのに高級車に乗っている、高額な趣味にお金を使っているなどの実態があれば、裁判所が実際の収入を推定して婚姻費用を算定することもあります。
このような場合は、相手の生活実態を示す証拠(写真、領収書、SNSの投稿など)を収集し、弁護士に相談することが有効です。
Q.家庭内別居の期間に決まりはありますか?いつまで続けられますか?
家庭内別居の期間に法律上の制限はなく、夫婦が納得している限り何年でも継続できます。 ただし、家庭内別居を続けながら離婚を視野に入れている場合は注意が必要です。裁判で離婚を認めてもらうには、通常の別居であれば3〜5年程度の別居期間が目安とされますが、家庭内別居の場合はさらに厳格に判断されます。
離婚を前提とするなら、できるだけ早く物理的な別居に移行するか、協議離婚や調停離婚を検討したほうがよいでしょう。
家庭内別居の生活費でお困りなら専門家に相談を
家庭内別居によって、相手の生活費を負担する必要がなくなると誤解している人は多いようです。しかし、離婚しない限り、夫婦は互いに協力し、助け合う義務を負っています。 その義務を一方的に破棄することは、民法の条文に反します。
相手が生活費の負担を拒否しても、正当な負担は堂々と求めることが大切です。どのくらい請求できるのか、どのように請求したらよいのかわからない場合は、夫婦問題に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。 専門家に相談することで、自分のケースに応じた適切なアドバイスが受けられ、納得のいく解決につながります。
