家庭内別居はいつまで続くのか
夫婦がお互い干渉せずに生活する家庭内別居では、夫婦間の気持ちが離れやすく、離婚や別居は避けて通れない問題です。そのような不安定な状態にあると、自分たち夫婦の行く末に悲観的になるかもしれません。
しかし、家庭内別居状態にあっても、必ずしも離婚に至るわけではなく、工夫次第で夫婦関係を修復できるケースもあります。そこで、一般的な家庭内別居の行く末や、夫婦仲を取り戻すためのポイントについて説明します。
家庭内別居の行く末は?離婚しかない?
夫婦喧嘩や日常的なすれ違いなど、家庭内別居に至るまでには大小さまざまな要因が関係しています。家庭内別居により夫婦の関係はどのように変化していくのでしょうか。家庭内別居がどのような行く末を迎えるのか、次のようなケースが考えられます。
・関係を修復する
・どちらかが家を出て別居する
・離婚する
関係を修復する
夫婦関係の悪化から家庭内別居状態になっても、夫婦双方の意識が変わり、関係を修復できる場合があります。家庭内別居を解消するきっかけは、夫婦によってさまざまですが、相手に対して関心を持ち、気長に対話を続けると関係修復につながりやすいようです。ささいな会話でも続くようになれば、家庭内別居の行く末にも期待が持てるでしょう。
夫婦喧嘩から家庭内別居になりました。食事や洗濯も夫婦別々で行い、最低限の会話で生活しましたが、すぐに疲れてしまいました。
妻に言いたいこともあったけど、気まずい空気に耐えられず自分から謝りに行きました。最初は無視されましたが、何度か繰り返して仲直りできました。
どちらかが家を出て別居する
すでに気持ちが冷め切った家庭内別居中の夫婦は、ちょっとした原因で本格的な別居につながってしまいます。お互いの存在を無視していても、同居することで感じるさまざまなストレスに耐えられず、どちらかが家を出てしまうケースが多いようです。
また、家庭内別居の行く末として、どちらかが別の人へ愛情を求め、不倫や浮気をしてしまうケースもあります。他人と関係を持った相手との同居は生理的に受け入れられないとして、ただちに完全な別居を決意する人も少なくありません。
家庭内別居中でも家族だからと腹が立つことがあっても見逃してきました。そうは言っても浮気まで許せるわけがありません。私が出ていくはずがないと思っていたみたいですが、何も告げずに家を出ました。
離婚する
家庭内別居が続くと、相手への関心がますます薄れて、結局離婚という結末を迎えるケースは珍しくありません。家庭内別居では相手と過ごす時間が減る分、夫婦の行く末について冷静に考える余裕が生まれます。その結果、夫婦関係の修復につながる場合もありますが、改善が見込めないと判断して離婚を決意する人もいるようです。
子供のために離婚ではなく家庭内別居を選択する夫婦もいますが、子供が成長して家を出ると夫婦が同居する理由が失われてしまいます。長年一緒に暮らしてきたからと油断していると、相手が熟年離婚を切り出してくるかもしれません。
価値観の違いから夫婦関係が悪化し現在家庭内別居中です。会話もスキンシップもない泥沼状態でこれ以上は時間の無駄としか思えません。さっさと離婚して自分のために有意義な時間を過ごしたいです。
家庭内別居の期間とその行く末は
家庭内別居の行く末は夫婦によってさまざまですが、夫婦関係が改善できないまま離婚を選択するケースが多いようです。家庭内別居を開始してから離婚に至るまでの期間について解説します。
家庭内別居の多くがいずれは離婚に
ささいな夫婦喧嘩が原因の家庭内別居の場合、早期に対応して仲直りできれば、短期間で家庭内別居を終えられるでしょう。しかし、家庭内別居から夫婦仲を改善できるのは珍しいケースで、多くの場合はいずれ離婚してしまうようです。
2021年にノマドマーケティングが行った調査によると、家庭内別居を経験した夫婦の83%が離婚を選択しています。離婚を回避したいなら、夫婦関係が悪化しても安易に家庭内別居を選択すべきではないといえるでしょう。
今回の調査では家庭内別居をした後の離婚率は83%という結果となりました。
特に女性は91%とかなりの高確率で離婚に至っていて、やはり家庭内別居のまま夫婦関係を継続するのは簡単ではないことが伺えます。
家庭内別居の継続期間はどれくらい?
家庭内別居を何年も続ける夫婦もいますが、ノマドマーケティングが行った同じ調査では、30代・40代の夫婦の半数以上が家庭内別居後、半年から1年以内に離婚したという結果がでました。
また、年齢を重ねた夫婦ほど、若い世代に比べて家庭内別居を続ける期間が長いようです。50代・60代では、家庭内別居から離婚までに3~5年かかる人の割合がもっとも高いという結果でした。
アンケート調査の結果、家庭内別居から離婚に至る場合は以下の期間で離婚する夫婦が多いことが分かりました。
・1位:別居後5年以内(22%)
・2位:別居後1年以内(17%)
・3位:別居後半年以内(15%)
しばらく家庭内別居を続けて5年以内に離婚する割合が多い一方、半年~1年以内という短期間で離婚に至ってしまう夫婦も多くなっています。
ただ、年代による期間の違いが大きく、30~40代は別居から半年~1年以内に離婚する人が多いのに対し、50~60代は別居から3~5年経ってから離婚するケースが多くなっています。
家庭内別居から離婚は避けられない?
家庭内別居は離婚の理由になる?
夫と妻の両方が合意していれば、家庭内別居などの離婚理由に関わらず離婚が可能です。しかし、相手の合意が得られず、離婚裁判になったとき、家庭内別居だけでは離婚理由に該当しないとして離婚が認められない場合があります。
離婚裁判では、民法で定められている「法定離婚事由」に当てはまる事情があり、夫婦関係が破綻していると認められると、夫婦の合意がなくても離婚できます。完全な別居と違って、家庭内別居は同じ家で暮らしているため、他に理由がない場合、夫婦関係が破綻していると判断されにくいようです。
関係が破綻していると思っても浮気や不倫は禁物
家庭内別居中でも、婚姻関係にある限り、浮気や不倫は法定離婚事由の一つである「不貞行為」とみなされる場合があります。相手が浮気や不倫をしている場合、証拠で立証できれば、相手の合意がなくても裁判で離婚できる可能性が高まります。
逆に家庭内別居中だからといって、浮気や不倫をしてしまうと、離婚事由の原因をつくった「有責配偶者」となり、有責配偶者からは離婚を求めるのが困難です。相手から慰謝料を請求される可能性もあるため、自分では、夫婦関係が破綻していると考えていても、婚姻中の軽率な浮気や不倫は禁物です。
家庭内別居から関係は修復できる?
夫婦関係が悪化した家庭内別居状態から、再び夫婦の愛情を取り戻すのは簡単ではありません。しかし、自分から変わろうとする意識を持ち、時間をかけて取り組めば、夫婦関係の破綻を回避できる可能性があります。家庭内別居状態から夫婦関係を修復するためには、以下の3つがポイントとなるでしょう。
・不仲の理由を考えてみる
・相手に譲歩する気持ちを持つ
・相手の良いところを見つける
不仲の理由を考えてみる
夫婦関係の修復に向けて行動する前に、なぜ現在のような不仲になってしまったのか、原因について考える必要があります。家庭内別居は相手から精神的に距離を置ける分、自分や相手の状況を客観的に把握できるでしょう。
夫婦が不仲になった原因は、決定的な夫婦喧嘩といったように特定が容易な場合もあれば、日常の小さな不満の蓄積など一つに絞れないこともあります。それぞれの原因に対して、丁寧に対応していくと、相手も次第に心を開いてくれるかもしれません。
相手に譲歩する気持ちを持つ
家庭内別居中の夫婦は、相手に対して何かしらの不満を抱いている場合がほとんどです。「休日は子供の相手をしてほしい」という妻と「疲れているから子供を近づけないでほしい」という夫では、お互いの要求がぶつかり合ってしまいます。
そこで、相手へ一方的に不満や要求を伝える前に、自分で譲歩できる点がないか考えてみましょう。育児の負担が大きいなら、夫ではなく子育て支援サービスを利用するのも解決法の一つです。相手に期待し過ぎず接することで、お互いに余計なストレスがかからず、夫婦関係の悪化を回避するのに役立つでしょう。
相手の良いところを見つける
長年一緒に暮らしていると、つい相手の欠点が気になってしまいますが、人間誰しも長所・短所があるものです。夫婦関係を修復したいなら、ネガティブな気分になる短所よりも、相手の良いところを見つけるよう意識するとよいでしょう。また、ささいなことでも、相手の長所を褒めたり感謝を伝えたりすると、相手との距離を縮められる可能性が高まります。
家庭内別居で離婚を決意したときは
家庭内別居を経験して、中途半端な別居よりもきちんと離婚したいと思ったら、離婚の手続きや離婚後の生活に向けて準備を始めましょう。次のような準備があると、離婚の手続きをスムーズに進められるでしょう。
・夫婦関係破綻の証拠を集めておく
・経済的な自立を始める
・可能であれば、家を出て別居する
夫婦関係破綻の証拠を集めておく
離婚裁判では、同居したままでは離婚理由に必要な夫婦関係の破綻が認められにくいため、相手が合意しない限り離婚できない場合があります。そこで、同居していても夫婦関係が破綻していることを示す証拠を残しておきましょう。
別居以外にも、協力し合って生活するという夫婦の義務が果たされていない場合、夫婦関係の破綻として認められることがあります。たとえば、特別な理由がないのに生活費を渡さない、家事や育児をしないといった理由が当てはまります。家計簿や日記などでこういった記録を細かく残しておくと、裁判に有利な証拠として役立つでしょう。
このほかに、DVやモラハラ、浮気など、家庭内別居よりも認められやすい離婚事由の証拠があれば、離婚裁判においてさらにプラスに働きます。
経済的な自立を始める
相手の収入に依存したままの状態だと、生活のために離婚したくてもできない場合があります。また、離婚手続きを進める中で、弁護士への相談料や別居にかかる費用などさまざまな出費も予想されます。離婚を決意したら、離婚後に自立して生活するためにも、十分な収入が得られる方法を見つけましょう。
可能であれば、家を出て別居する
家庭内別居に比べて、完全な別居状態は夫婦関係の破綻として認められやすいため、可能であれば早めに別居するとよいでしょう。別居することで、愛情がない相手と同居するストレスから解放されるというメリットもあります。
家庭内別居を始めたら離婚も念頭に。修復を目指すのなら専門家にも相談も
家庭内別居はさまざまな行く末を迎えます。夫婦関係を修復して愛情を取り戻すケースもありますが、多くの場合は離婚や別居に至るようです。長期間、夫婦の会話がないなど家庭内別居の状態が続いたら、数年以内に相手から離婚を切り出される可能性もあります。
家庭内別居になるまで悪化した夫婦関係は、当人同士では解決が難しいかもしれません。そのような場合は、夫婦カウンセラーといった専門家に相談すると、早期の解決が期待できるほか、さらなる夫婦関係の悪化を防げるでしょう。
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。経験豊富な男女20名の弁護士が所属し、新聞・テレビ・雑誌・Webなど多くのメディアからの取材も受けています。