夫源病を治すために『プチ別居』を試す価値はある?
夫源病とは、夫の無理解な言動などによるストレスで妻が体調不良を訴えることで、2022年に亡くなった石蔵文信医師が提唱しました。休日に夫と一緒に家にいたり、平日の夫の帰宅時間が近づいてきたりすると、頭痛やめまい、胃痛などの症状が現れ、夫がいないと症状が落ち着くのが特徴です。
とりあえず夫源病の症状を改善するには別居して夫と離れて暮らすのが効果的ですが、多くの夫婦は簡単に別居はできません。家事のできない夫をいきなり一人にしてもトラブルになり、夫婦関係が悪化するだけでしょう。そこで、短期間家を出る「プチ別居」で気分転換を図るとともに、夫にも日頃の言動を振り返ってもらうのが有効だというわけです。
プチ別居はストレス発散に効果的
プチ別居とは数日から1週間くらい、家を出て生活することです。プチ別居の期間、どう過ごすかは本人の自由で、旅行に出かける人や近場のホテルでのんびり過ごす人、実家に里帰りする人などさまざま。要するに、夫や家事のことは忘れて気ままに過ごすことが大切です。
プチ別居によって家事や夫の身の回りの世話から解放された妻は気分転換でストレスが発散できます。夫も妻がいないことで、妻のありがたみに気づき、日頃の言動を反省してくれれば理想的です。そうすれば、夫源病の症状も軽くなっていくでしょう。
夫源病を治すために『プチ別居』をどう進める?
夫源病を治すため効果的にプチ別居を行うには、どのように夫に理解してもらうか、家を空けるのはどの程度の日数にするかなど進め方も大切です。どのように進めればうまくいくのか説明しましょう。
まずは短い時間の外出から
プチ別居と言っても、いきなり「1週間ほど家を空ける」と言われたら、さすがの夫も驚きます。家事をする気のない夫なら「その間、俺はどうなるんだ」と逆上するかもしれません。それでは夫の不満は募るばかりで、妻のストレス解消にはつながらないでしょう。
最初は夫が受け入れられる短い時間の外出から始めるのが得策です。平日の夜、友人と食事に出かけたり、夫の休日に朝から出かけたりして、夫には自分のことは自分でするようお願いしましょう。「1日くらいなら」と了解してもらえれば、成功です。少しずつ外出の回数を増やし、日数を延ばしながら、夫には家事を覚えていってもらいましょう。
「医者に言われたから」で通す
中には「俺が家にいるときは、お前も家にいてくれないと困る」と言って、夜の外出も認めてくれない夫もいます。自分は同僚とお酒を飲んで帰ってきたり、休日にはゴルフに出かけたりするのに、妻が自由にするのを嫌がるのです。こうした夫は自分の言動が妻のストレスになっていることに気づいていません。
こうしたときは心療内科などを受診して、プチ別居に効果があるかどうかを医師に聞いてみましょう。医師からお墨付きをもらえたら、「医者に言われたから」と改めてプチ別居を持ちかけてみます。それでも断るのなら、医師に診断書を書いてもらったり、夫と一緒に受診したりするのも良い方法です。
離婚をちらつかせる
医師に言われてもプチ別居を認めようとしない夫は、既にモラハラ夫だと言っていいかもしれません。こうした夫には最後の手段に出るしかありません。「このままでは離婚しかない。離婚を回避するには、時折、互いに距離を取り、気分転換するしかない」と訴えるのです。
さすがに離婚をちらつかされては夫も「プチ別居」を認めざるをえないはずです。ただ、夫の側が夫婦関係の修復を諦めているときは、そのまま離婚に発展してしまう可能性があります。一度「離婚」を口にしてしまうと、引き返せなくなることもありますから、夫の考えも見極めたうえで、プチ別居を切り出しましょう。
プチ別居のポイント
夫の了解も取り付けてプチ別居をすることになったら、日頃のストレスを発散できる計画を立てましょう。そして、もう一つ大切なことは、家事や育児を妻任せにし、妻は自分の言う事を聞くものだと考えている夫の意識を変えることです。どうすれば夫の意識を変えることができるのか、プチ別居のポイントについて説明します。
夫の身の回りの世話はしない
プチ別居には、夫に家事の大変さを知ってもらい、妻のありがたみを実感してもらうという目的もあります。このため、できるだけ夫のための準備はせずに出かけましょう。食事の用意などをしていくと、結局、妻の負担が増えるだけですし、不便さを感じない夫はむしろ、一人でいるのを快適だと感じてしまうかもしれません。
自分で買い物をして、料理をしなければ食事ができないようにしておけば、夫も仕方なく自分で料理をするでしょう。洗濯や掃除も頼んでおくといいかもしれません。そうやって、夫に自立を促していきましょう。
夫に連絡をとらない
自分がいない間、夫がどう過ごしているのか、心配になる妻もいるかもしれません。しかし、できるだけ夫と連絡は取らないようにしましょう。夫と距離を取るのが目的のプチ別居なのですから、電話はもちろん、LINEやSNSなどのメッセージのやり取りも避けます。せっかく自由になれたのですから、夫のことは忘れて楽しまないと意味がありません。
夫から連絡が入るかもしれませんが、よほど大事な用事でない限り、相手にする必要はありません。大人なのですから、困ったことがあっても自分で解決できるはずです。いつも妻に頼ることはできないということを、夫に気付かせるのも大切です。
思い切り楽しみストレスを発散する
プチ別居の第一の目的は、夫から離れて気ままに楽しみ、ストレスを発散することです。今、自分がやりたいこと、楽しみたいことを優先しましょう。実家に里帰りするのもいいですが、家族の会話の中で夫のことが話題に上るかもしれません。このため、多少後ろめたさを感じてしまうこともあります。
非日常を思い切り楽しむには、実家は避けたほうがいいかもしれません。しかし、いつも旅行ばかりしていては、金銭的にも大変です。実家で過ごさざるを得ないこともあるでしょうが、できるだけ夫のことを考えずに羽を伸ばせるような過ごし方を考えるといいでしょう。
プチ別居で夫源病を治すのに大切なのは帰宅後
プチ別居で家事や夫の世話から解放され、ストレスも発散できたと言っても、それで終わりにしてはいけません。夫源病を治して夫婦関係を修復するには、プチ別居から帰宅した後の行動も大切です。プチ別居を効果的にするための、夫へのフォローについて説明します。
まずは夫に感謝とねぎらいを
プチ別居から帰宅したら、まずは夫に感謝し、ねぎらいの言葉をかけましょう。やり慣れていない家事に夫も苦労したはず。妻が外出を楽しみ、ストレスを発散できたのも夫のおかげです。妻が感謝の気持ちを伝えることで、夫の不満も解消し、今後は夫の口からも感謝の言葉が聞けるようになるかもしれません。
別居中の出来事を夫婦の会話のきっかけに
プチ別居の後は夫婦の会話の時間を持ちましょう。妻の土産話はもちろん、家事を頑張った夫の苦労話や失敗談に耳を傾けることも大切です。そうした話から、今後の夫婦のあり方、互いの関係へと話が及ぶかもしれません。冷静になって夫婦関係を見直すことができれば、夫婦関係の修復の第一歩となるはずです。
夫の態度が改まらないのなら離婚も視野に
残念ながら、プチ別居をしたからと言って、全ての夫が自分の言動を反省し、態度を改めるわけではありません。中には「自分だけ楽しんできて」と不満を募らせる夫や、そもそも外出さえ認めない夫もいます。こうした夫は、おそらくモラハラ気質があり、言動を改めるのは難しいかもしれません。
プチ別居をしても夫婦関係の改善の兆しが見えなかったり、夫が外出さえも認めなかったりする場合は、夫婦関係の修復は困難な可能性があります。そうなると夫源病を治すことも難しいでしょう。離婚も検討したほうがいいかもしれません。
夫源病を治すためにプチ別居した人の【体験談】
夫源病を治すため、実際にプチ別居をした人はどのように感じているのでしょうか。プチ別居の【体験談】を紹介します。
土日のプチ別居でのんびり過ごす
夫が家にいる土日だけでも、離れて暮らすとのんびり過ごすことができ、気持ちも落ち着きます。気持ちにゆとりを持って、夫と向き合い、夫婦関係についても話し合ってみましょう。
土日になると夫源病で体調が悪くなってしまい、数ヶ月間、土日だけ帰省するプチ別居をしました。実家の両親は子供と会えるので歓迎してくれました。
家事育児に追われず、天気がよく暖かい日はのんびり散歩をしたり、自分の時間を過ごせたりと、とても晴れやかな休日を過ごせました。
友達との小旅行で苦手だった夫に土産話も
気の置けない友人と小旅行に出かけてみるのも、気分転換になりストレス解消にもなるでしょう。もちろん、夫にはお土産と感謝の言葉を忘れずに。楽しい土産話をすれば、夫婦の会話も弾むかもしれません。
夫が在宅勤務になってから、夫源病になってしまいました。そんな私を気遣ってくれた友人たちが小旅行に誘ってくれ、久しぶりに心から楽しめたような気がします。
ストレス発散できたからか、今まで話をするのもしんどかった夫に土産話をすることができたのには自分でもびっくりしました。
夫源病を治すためにプチ別居するときは、進め方にも注意を
夫源病を治すにはプチ別居を試すのも一つの方法です。離れることで、互いに相手のことや夫婦関係を客観的に見つめ直すきっかけになるかもしれません。
しかし、家を出て別居したり離婚したりする気がないときは進め方に注意が必要です。夫の気持ちや受け止め方によっては、離婚に発展する可能性もあります。進め方や効果に不安があるときは夫婦関係に詳しいカウンセラーに相談してもいいでしょう。
丸山 紀恵
夫源病は主に定年退職後50~60代以降の夫婦で増加。夫の存在自体がストレスとなり熟年離婚の原因の1つとも言われています。
夫源病にかかったら、ズバリ「夫との距離を置くこと」
改善の方向の対処としてカウンセリングで夫婦関係や自身のストレスの捉え方の見直しをしたり、モラハラ気質を改善したり、また、夫婦一緒に受ける夫婦カウンセリングも効果的な場合もあります。
丸山 紀恵
探偵業界でカウンセラーになり、20年以上夫婦問題に向き合ってきたエキスパート。
近年ではマッチングアプリを利用した浮気なども増えていることから、夫婦間のトラブル相談に注力する。
また、結婚前の不安にも寄り添い、婚前調査や相談サポートにも積極的に取り組んでいる。
【保有資格】
NPO法人日本家族問題相談連盟認定 夫婦問題カウンセラー
メンタルバランスマネジメント認定カウンセラー