アスペルガー症候群の夫と妻と離婚してよかった?結婚生活の難しさに悩んだら
結婚した後、夫や妻の考え方が理解できず、話もかみ合わないと思っていたら、相手がアスペルガー症候群などの発達障害だったということがあります。最初は相手を理解しようと努力しても、互いに理解し合えない結婚生活はつらいものです。やがて離婚を考え始める人は少なくありません。
しかし、一度築いた家庭をなくしてしまうのは、誰もが不安に感じるもの。果たして、アスペルガー症候群の夫や妻と離婚した人たちは「離婚してよかった」と思っているのか、離婚したことを後悔している人はいないのか。実際に離婚した人たちの体験談も交えて、離婚を考えるときのポイントや離婚の進め方などを紹介します。
アスペルガー症候群の夫や妻との結婚生活は大変?
アスペルガー障害をはじめとする発達障害の人との結婚生活は困難が多いと言われます。それは、主に相手の気持ちを汲みとれずに行動してしまう発達障害の人の特徴が要因で、そうした人に自分の気持ちを伝えようと努力すればするほど、失望や無力感を味わってしまいます。
相手との意思疎通が難しい
発達障害の人は、相手の気持ちが理解できない一方で、自分の考えや習慣に固執する傾向もあります。このため、結婚生活を送っていても、次のような問題やトラブルを起こしがちです。
・親戚付き合いや近所付き合いができない
・家族の様子がおかしくても気付かない
・夫婦の話し合いをしてもかみ合わない
・目の前のことにしか対応できない。将来のことが考えられない
・自分の考えを曲げずに、いざこざを起こす
・困りごとを相談されても、関心を示さない
・約束を守れない。その場しのぎのことを言う
こうした発達障害の人と暮らしていくには、根気よく相手が分かるまで話し合うか、諦めるしかありませんが、それは互いに理解し合い助けあう理想の夫婦の姿とはかけ離れたものです。このため、発達障害の人の配偶者は、失望やストレスから感情的になったり、体調を崩しやすくなったりします。
つらさが周囲に理解されにくい
発達障害のなかでも、アスペルガー症候群などは知的水準の高い人も多く、「天然で、ちょっと変わった子」として扱われ、障害が見過ごされて大きくなった人も少なくありません。頭が良いため、周囲に合わせる方法を身に付けている人もいます。
こうした場合、配偶者が結婚生活の難しさや自分のつらさを訴えても、周囲に理解してもらえないことがあります。感情の行き違いや意見の相違はどんな夫婦にもあるため「それはよくあることだ」「少しくらいの我慢は必要だ」などと言われてしまい、配偶者のほうが孤立してしまうのです。
カサンドラ症候群になる人も
発達障害の夫や妻と理解し合えない夫婦生活に疲れ、そのつらさを周囲にも理解されない状況が続くと、カサンドラ症候群と呼ばれる状態に陥ることがあります。カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群など発達障害の家族と暮らす人が心身の不調を訴えることで、症状が重い場合は鬱病やパニック障害などと診断されることもあり注意が必要です。
【アスペルガー症候群の夫・妻と離婚した人の体験談】離婚してよかった
アスペルガー症候群など発達障害の夫や妻と離婚した経験のある人は、離婚してよかったと思っているのでしょうか。「離婚してよかった」と思っている人の体験談を紹介します。
支え合えない夫と別れて幸せに
夫婦は互いに理解し合って、助け合って家庭を築いていくもの。そうした家庭に憧れて結婚した人にとって、配偶者と意思疎通できないということは、とてもつらいことです。離婚してよかったと感じる人も多いでしょう。
夫婦は互いに理解し合って、助け合って家庭を築いていくもの。そうした家庭に憧れて結婚した人にとって、配偶者と意思疎通できないということは、とてもつらいことです。離婚してよかったと感じる人も多いでしょう。
別れたあとに良い出会いが
離婚に踏み出すには勇気が必要で、つらいことや不安もあります。しかし、別れた後に、互いに理解し合える相手に巡り合えることもあるでしょう。
離婚後は不思議なことに、お互いにありのままの自分を好きになってくれる相手が現れました。別れるのにはすごく勇気が必要でしたが、お互い別れて良かったと思っています。
【アスペルガー症候群の夫・妻と離婚した人の体験談】離婚して後悔した
離婚した人の中には「発達障害による言動はつらかったが、愛情は残っている」として、離婚して本当によかったのか、と思い悩む人もいるようです。
楽しかった出来事を思い出し涙が
離婚した後、配偶者と過ごしていたころの楽しかった思い出や、優しくしてもらったときのことを思いだして、後悔する人もいるようです。しかし、鬱症状などが出ている場合は、一度距離を取って心身を休めることが必要です。健康を取り戻せば、冷静に2人の関係について考えられるようになるでしょう。
夫にアスペルガーの兆候があり、話し合いや気持ちを共感したりすることが出来ず私が鬱っぽくなってしまい、離婚を申し出ました。
実家に戻ってきた今、夫との楽しかった時や優しくしてもらったことを思い出し寂しく感じ電話をしたりしてしまいます。
夫は私の精神状態や環境が落ち着いたらまた考えましょうと言ってくれたいますが、今すぐ戻りたいという気持ちと、戻ったらまた同じことになるという不安で毎日泣いたり、夜も2時間おきくらいに目が覚めたりしてしまいます。
相手を捨てたという罪悪感に苛まれることも
アスペルガー症候群など発達障害は生まれつきの特性で、最近は特性を理解してうまく付き合う方法も広く知られるようになってきました。どうしても、相手の考え方や言動を受け入れられずに離婚した人のなかには、そうした情報に触れて「もっと相手を理解する方法があったのではないか」と罪悪感や後悔の念を覚える人もいます。
図書館でたまたま「大人のアスペルガー」って本見つけて読んだら、元夫を思い出して。私は彼を見捨てたんだと思い、悲しくて後悔で辛くなりました。
アスペルガー症候群の特徴は
アスペルガー症候群とは発達障害の一つで、知能の遅れなどはないものの、相手の感情を推し量るのが苦手なため、人間関係のトラブルを起こしやすいという特徴があります。現在、医療現場で診断名として使われることはなく「自閉症スペクトラム障害」の1つとされます。
遠まわしな表現や比喩を理解したり、表情やしぐさから相手の感情を読み取ったりすることが苦手で、いわゆる「空気が読め」ず、相手を傷つける言葉を悪気なく使ってしまいます。このため、「変わり者」「協調性がない」と周りにみられることが多く、それを気にして、生きづらさを感じている人もいます。
アスペルガー症候群の夫や妻と離婚するには?
アスペルガー症候群など発達障害の夫や妻との生活に疲れ、これ以上夫婦関係を維持するのが難しいと感じたとき、離婚できるのでしょうか。できるだけトラブルを避け、離婚するにはどうすればいいのか、ポイントを説明します。
話し合いによる離婚を目指す
離婚をする場合、理想は話し合いによって双方が納得して離婚することです。互いの条件に合意すれば、心理的、肉体的な負担も軽く離婚手続きを進められます。これを協議離婚といいます。最初は協議離婚を目指し、離婚を切り出してみましょう。
発達障害の人は人間関係が苦手で、面倒なことを避ける傾向があるため、あっさり離婚に応じることがあります。そのときは、できるだけ早く手続きを進めましょう。ところが、発達障害の人にはコロコロと言う事を変える傾向もあります。一度合意しながら、後から「やはり嫌だ」と言い出すケースも少なくありません。
強硬に離婚を拒否するケースも
発達障害の人には相手の言い分を聞かず、自分の意見や考えを押し通そうとする傾向もあります。相手の気持ちを汲もうという気持ちはないので、話し合いは平行線になりがちです。離婚の話し合いでも、配偶者の言い分には耳を傾けず、かたくなに離婚を拒み続けることも珍しくありません。中には暴言を吐いたり暴力を振るったりするケースもあるようです。
相手が話し合いに応じないときは、離婚調停に入り、裁判所で調停員を交えた話し合いをすることになりますが、それでも合意できない場合は、離婚裁判に進みます。しかし、発達障害の人は主張がコロコロ変わるうえ、調停や裁判の意味を理解していなかったり、自分に都合の良いように曲解したりすることがあります。
離婚後も約束を守ってもらえないことがある
発達障害の人は、自分に関心のないことに関心を示さず、理解しようとしないこともあります。こうした場合、調停や裁判中にも、個人的な話し合いを求めてくるなど、ルールを守らず、自分勝手な行動をする可能性があることを覚えておきましょう。
こうした人は、離婚が成立しても、約束を守ってもらえない可能性があります。中には、離婚したのに、その後もメールや手紙を送るなどして再婚を求め、しつこくつきまとう人もいるようです。夫や妻がこうした執着しやすいタイプの場合、対策を講じておくことも必要でしょう。
アスペルガー症候群は離婚の理由になる?
離婚裁判になったとき、配偶者がアスペルガー症候群などの発達障害だということは、離婚理由として認められるのでしょうか。裁判で離婚を認めてもらうためのポイントを説明します。
アスペルガー症候群というだけでは離婚理由にならない
裁判で離婚が認められるには、浮気や不倫、長期の行方不明など民法で定められている離婚事由が必要です。その中には「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」場合も含まれるのですが、アスペルガー症候群などの発達障害は「強度の精神病」とまでは言えません。それだけで、離婚事由として認められることはないでしょう。
結婚生活を維持するための努力も問われる
離婚裁判を有利に進めるには、結婚生活の維持に努力したものの、関係の修復に至らなかったということを主張することも大切です。裁判で「発達障害の配偶者をどのように支えてきたか」を問われることもありますので、しっかり答えられるようにしておきましょう。
結婚生活を維持できない理由と証拠を用意する
アスペルガー症候群など発達障害を理由に、裁判で離婚を認めてもらうのは難しいのですが、発達障害にともなう言動によって被害を被っていることや、相手への愛情が冷め、夫婦生活が破綻していることを証明できれば、離婚が認められる可能性があります。カサンドラ症候群で治療を受けていれば、それも理由となり得るでしょう。
裁判で離婚事由があることを認めてもらうには証拠が必要です。相手の日頃の言動を記録し、日記もつけておくといいでしょう。カサンドラ症候群で治療を受けている場合は、診断書も取っておきます。
アスペルガー症候群の夫や妻と離婚してよかったと思えるには、専門家のアドバイスも必要
アスペルガー症候群など発達障害の夫や妻と離婚するには、特有の難しさもあります。話し合いで合意できないときは、発達障害の特有の思考に振り回されることもあるでしょう。離婚してよかったと後から思えるよう、弁護士のアドバイスも受けながら十分な準備をして、離婚を切り出すことが大切です。
北松戸ファミリオ法律事務所(千葉県弁護士会所属)
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