モラハラ夫に暴言や高圧的な態度を取り続けられると、自信を失い夫に従順になってしまうことがあると言われますが、全員がそうなるわけではありません。中には猛然と反発する妻もいれば、従順な振りをして心の中に不満を溜めこんでいる妻もいます。
不満を溜めこむ妻は、しだいに愛情も冷めていき、やがて顔を見るのも嫌になるほど夫が嫌いになります。しかし、そうした不満を長く溜め込んでおくのは精神的に良くありません。モラハラ夫へのイライラを解消する方法を紹介します。また、離婚する際のポイントも説明しますので、参考にしてください。
この記事でわかること
・モラハラ夫の特徴的な言葉や行動パターン
・モラハラ夫へのストレス対処法と距離の取り方
・モラハラを理由に離婚する際の手順と必要な証拠

高草木 陽光
これまで9,000人以上のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題で悩む人を解決に導くお手伝いをする夫婦カウンセラー。
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美容師、育毛カウンセラーを経て、結婚して専業主婦となるが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え「結婚生活とは何か」ということを深く考え始める。書籍に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」(左右社)、「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(左右社)、メディア実績にNHK総合「あさイチ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニュングショー」、「ABEMA Prime」などがある。

モラハラ夫の特徴とは
怒るとカッとなり、つい怒鳴ったり高圧的な態度を取ったりしてしまう夫もいます。しかし、妻を見下したり、常に冷たい態度を取ったりしているのでなければ、モラハラとまでは言いません。夫にモラハラ資質があるのかを見極めるチェックポイントを紹介します。
モラハラ夫がよく口にする言葉
モラハラ夫には共通点がいくつかあります。口にする攻撃的な言葉がよく似ているのも特徴です。モラハラ夫は常に妻を見下すので「誰のおかげで生活できると思っているんだ」「俺の家から出ていけ」などと、自分が上の立場であることを強調することが多く、妻を抑圧します。
また、妻の家事や仕事をけなすことも多く、「どうせ家で楽にしているんだろ」「家事くらい簡単にできるだろ」などと主婦をバカにするような言葉も口にします。妻だけでなく、妻の家族や友人も批判するほか、自分の機嫌が悪いと、それを妻のせいにするのもモラハラ夫にはよくあることです。

モラハラ夫をよくある言葉からチェック
モラハラ夫がよく口にする言葉を10個紹介しますので、次のような言葉に心当たりがないか、チェックしてみましょう。夫がよく口にする言葉が多いほど、モラハラ夫の可能性が高くなります。
モラハラ夫によくある言葉
・誰のおかげで飯が食えていると思っているんだ
・子供の面倒ぐらいしっかり見ろ
・家にいるんだから、家事ぐらいちゃんとしろ
・主婦は気楽でいいよな
・俺ぐらい稼いでみろ
・大した仕事もしていないのに偉そうに言うな
・よくそんなみっともない格好ができるな
・嫌なら家を出ていけ
・お前の親のようにはなりたくない
・俺をイラつかせるな
こうした言葉を使わずに、態度で妻への不満や怒りを表現するモラハラもあります。妻に対し舌打ちをしたり、にらみつけたり、大きな物音を立てたりして、妻を威嚇するのはモラハラの特徴です。妻を無視したり、冷笑したりすることもあり、こうした言葉を使わないモラハラをサイレントモラハラとも言います。


嫌いすぎるモラハラ夫へのイライラを解消するには
モラハラ夫の攻撃的な言葉や態度から身を守り、精神的な負担を軽減するための具体的な対処法を紹介します。感情的に反応するとモラハラ夫の思う壺になってしまうため、冷静に距離を取りながら、自分の心と生活を守ることが大切です。

できるだけ距離を取る
モラハラ夫の攻撃的な言葉や態度から身を守るには、とりあえず距離を取ることが大切です。できるだけ顔を合わせずに、違う部屋で過ごしたり、休日には外出したりします。趣味を見つけたり、資格取得のための勉強を始めたりして、夫のことを忘れて集中できる時間を作るのもいいでしょう。
第三者に相談してストレスを軽減する
モラハラ夫は、外面が良いことが多く、外では「妻思いの良い夫」で通っていることもあります。このため、妻はモラハラ被害を周囲に理解してもらえず、孤立してストレスを抱えることがあります。
夫への不満が限界に達し、我慢できなくなったら、信頼できる知人など第三者に相談して、夫の言動がモラハラなのかどうかを判断してもらうといいでしょう。現在の状況を客観的に判断してもらえますし、誰かに話すことでストレスも解消されます。友人や知人でなく、自治体や弁護士事務所の相談窓口に相談するのも一つの手です。
感情的にならず冷静に受け流す
モラハラ夫は、自分が常に相手より正しいと思い、気に入らないと暴言を吐いたり、すねて冷たい態度を取ったりします。自分が失敗したのに、それを妻のせいにすることもあります。こうした幼稚な言動に対して、真正面から反論したり感情的になったりすると、相手の思う壺です。
モラハラ夫の小言や暴言が始まったら、「はい、はい」と何も答えずに聞き流す。不機嫌そうな態度をとっても気づかぬふり。心の中で「またか」と思いながら冷静に受け流せば、腹も立ちません。そして、いつか必要となる日のために、そっとレコーダーやスマホの録音アプリを起動させておきましょう。
夫婦カウンセラーに相談する
夫婦関係の専門家である夫婦カウンセラーに相談するのも有効な方法です。夫婦カウンセラーは、モラハラを含む夫婦間のコミュニケーション問題に精通しており、あなたの感情を整理しながら、今後どうすべきか冷静に考えるサポートをしてくれます。
カウンセリングを通じて、自分の気持ちや置かれている状況を言語化することで、心の整理がつき、離婚すべきか関係修復を目指すべきかの判断もしやすくなります。夫婦で一緒にカウンセリングを受けることが理想ですが、モラハラ夫が応じない場合でも、妻だけでカウンセリングを受けることで精神的なサポートを得られます。

自分の時間を確保して気持ちを切り替える
モラハラ夫との生活では、常に緊張状態が続き、自分らしさを失ってしまうことがあります。意識的に自分だけの時間を作り、好きなことに没頭することで、心のバランスを保つことができます。
習い事を始める、読書をする、友人と会う、運動をするなど、夫から離れて自分が楽しめる活動を見つけましょう。資格取得の勉強を始めれば、将来の経済的自立にもつながります。自分の時間を持つことは、モラハラ夫への依存を減らし、精神的な自立を促す効果もあります。
証拠を記録しながら冷静に対処する
モラハラ夫の言動に苦しんでいても、将来的に離婚を考えるのであれば、感情的に反応するのではなく、冷静に証拠を集めることが重要です。暴言や理不尽な要求はスマホの録音アプリで記録し、メールやLINEのやり取りはスクリーンショットで保存しておきましょう。
日記やメモに、いつ、どこで、どんなモラハラ行為があったかを詳細に記録することも有効です。証拠を集めることで、「いざというときに使える」という安心感が生まれ、精神的な余裕も持てるようになります。証拠は離婚調停や裁判で必ず役立ちますので、継続的に記録する習慣をつけましょう。
モラハラ夫を後悔させられる?
夫が嫌いになるほどモラハラを受け続けていると、なんとかして夫に仕返しできないか、モラハラを後悔させられないかと考えるようになるものです。モラハラ夫を後悔させるには、どのような方法があるのでしょうか。

仕返しや復讐などは考えない
モラハラ夫を後悔させる方法として、仕返しや復讐を考える妻も多いでしょう。仕返しや復讐が上手くいって、相手が窮地に追い込まれると、一時的にスカっとするかもしれません。しかし、相手を困らせるというのは、どこかしら後味の悪さも残るものです。モラハラ夫に合わせて、自分も嫌がらせをするのは止めたほうがいいでしょう。
それに、仕返しや復讐をしようとすると、相手から思わぬ反撃を受ける可能性もあります。下手をすると、自分のほうが加害者となりかねません。いくらモラハラで嫌な思いをしていても、決して感情的にならず、「自分は間違ったことはしていない」と胸を張れるよう行動することが大切です。
離婚して相手を忘れること
モラハラ夫は執着心が強いうえ、承認欲求が強い面もあるので、心の中では「妻をずっとそばに置いておきたい」「妻に認められたい」と思っています。ですから、モラハラ夫に最も効果的な仕返しは、夫の価値を一切認めず、夫の元を離れ、さっさと相手のことを忘れることです。
モラハラをする夫が嫌いで、仕返しをしたい、後悔させたいと思ったら、まずは別居や離婚を考えましょう。突然、離婚を切り出され、「あなたには何の価値もない」と言われたら、夫は精神的にダメージを受けるはずです。
幸せになることが最大の仕返し
晴れてモラハラ夫と離婚できたら、次にすることは幸せになることです。モラハラ夫と別れることで、自由に生き生きと生きることができ、毎日、充実した日々を送っていることを見せつけてやりましょう。
「自分の言う事を聞いていれば間違いない」「俺のおかげでお前は生活できている」などと妻を束縛しようとしていた夫に、離婚することで幸せになれたという姿を見せることが、最大の仕返しで、相手を後悔させることになるのです。
夫婦カウンセラー高草木 陽光冷静に話し合いを求めても話にならない相手なら、これ以上何をしても無駄なのかもしません。現実、同居しながら離婚調停を申し立てたり、離婚訴訟を提起したりするのは難しいので、「離婚調停を申し立てる前に別居する」というのが一般的です。
なので、感情的に勢いで別居することはせずに、これまでの証拠や資産が把握できる書類や通帳のコピーなども持って別居する準備を整えましょう。




モラハラ夫が嫌いすぎる!離婚できる?
モラハラ夫と離婚するためには具体的にどうすればいいのでしょうか。モラハラ夫は執着心が強いうえ、自分は絶対に正しいと思っているため、多くの場合、自分が原因で離婚するという事態を受け入れることができません。このため、事前の準備が大切です。離婚のための手順や準備についてまとめました。


協議離婚を目指す
離婚を検討するときに、まず押さえておかなければならないポイントは「夫が嫌い」という理由では離婚できないということです。モラハラや浮気、DVなど、嫌いになった理由が夫婦関係を破綻させるものでなくてはなりません。
このため、最初は協議離婚を持ちかけます。協議離婚とは、話し合いによって互いが離婚に合意することです。条件さえあえば離婚できるので、離婚原因を明確にする必要もありません。ただ、プライドが高いモラハラ夫が離婚に応じることは少ないようです。相手が応じないようであれば、長々と話し合うのはやめ、すぐに離婚調停に進みましょう。
話し合いが無理なら離婚調停
相手と折り合いがつかず、協議離婚が難しい場合は、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てます。離婚調停は中立的な第三者である調停委員を交えて合意を目指す場です。調停委員に離婚もやむを得ないと認めてもらう必要があるため、離婚理由を説明し、客観的な証拠を示す必要があります。「夫が嫌い」というだけでは、十分な理由とは認められません。
モラハラでの離婚が難しいのは、証拠が残りにくいことです。たとえ、一度や二度の会話を録音していても、調停委員に「ただの夫婦喧嘩ではないか」と受け止められるかもしれません。妻側も仕返しをしていれば「一方的な被害者」とは見てもらえない可能性さえあります。それだけに、離婚を考えたら、事前の準備や行動が大切になるのです。
柔軟に解決したいならADRも検討する
裁判所の調停以外にも、ADR(裁判外紛争解決手続)という選択肢があります。ADRは民間の専門機関が提供する話し合いの場で、離婚問題に精通した調停人が夫婦の間に入って解決を目指します。家庭裁判所の調停よりも柔軟なスケジュール設定が可能で、オンラインでの実施にも対応している機関が多いのが特徴です。
ADRでは、離婚だけでなく養育費や面会交流などの条件についても、夫婦の実情に合わせた柔軟な取り決めができます。ただし、ADRで合意した内容には法的拘束力がないため、合意後に公正証書を作成するなどの手続きが必要です。相手が話し合いに応じる意思があり、裁判所での調停よりも柔軟な対応を求める場合は、ADRの利用も検討してみましょう。
調停が整わなければ離婚裁判
モラハラ夫は世間体を気にする傾向があるので、離婚調停でも合意できる可能性はあまり高くありません。自分の行為がモラハラと認定されることには耐えられないでしょう。離婚調停が不調に終われば、離婚裁判に進むことになります。
離婚裁判で離婚が認められれば、夫の意思にかかわらず離婚ができます。しかし、裁判のハードルは決して低くありません。離婚裁判が起こせるのは、民法が定める離婚の原因があるときだけです。その離婚の原因とは次の5つです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
引用元: https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
裁判では離婚を求める側の主張が離婚の原因として認められるか、その理由によって夫婦関係が破綻しているとまで言えるかどうか、などが争われます。このため、相手の反論に備えて、十分な証拠を用意しておくことが重要です。


モラハラ夫との離婚準備に必要なこと
モラハラ夫との離婚を決意したら、離婚裁判までいくことを覚悟する必要があります。裁判で離婚が認められるよう、しっかり準備しておきましょう。離婚に向けて必要な準備を紹介します。


証拠を準備する
離婚調停や離婚裁判になったら、モラハラなど結婚生活を続けられない理由があることを証明しなければなりません。そのために次のような証拠が必要です。
・自分に向けられた暴言や理不尽な要求の録音音声
・一方的な要求や命令が書かれた手紙やメール、SNSのメッセージ
・高圧的な言動を撮影した録画や画像
・日常的にモラハラを受けたことを記録した日記やメモ
モラハラ行為があったことを第三者に納得させることは、思った以上に難しいことです。証拠が少なかった場合、ただの夫婦喧嘩と判断されてしまうことがあります。つらくて難しい作業ですが、できるだけ多くの証拠を集めておきましょう。


モラハラに詳しい弁護士に相談する
不倫や浮気、DVなどと違って証拠が残りにくいモラハラによる離婚裁判は、相手の抵抗もあって難航することがあります。できれば、離婚に詳しい弁護士に早くから相談し、アドバイスを受けながら万全の準備を進めましょう。
弁護士に依頼することで、モラハラ夫と直接やり取りする精神的負担が軽減されるほか、調停や裁判での主張の組み立て方、有利な条件を引き出すための交渉戦略についても専門的なサポートを受けられます。


【Q&A】モラハラ夫との離婚でよくある質問
Q. モラハラ夫と離婚したいですが、専業主婦で経済的に不安です。どうすればいいですか?
離婚前にまず自治体の相談窓口や法テラスに相談し、生活保護や母子手当などの支援制度について情報を集めましょう。また、離婚調停や裁判では財産分与や婚姻費用、養育費などを請求できますので、弁護士に相談して適切な経済的支援を受ける権利を確保することが重要です。可能であれば、離婚前にパートやアルバイトを始めて収入源を確保しておくと、離婚後の生活設計がしやすくなります。
Q. モラハラの証拠がほとんどありません。今からでも離婚できますか?
証拠が少なくても離婚は可能ですが、調停や裁判では証拠の有無が大きく影響します。今からでも録音アプリで暴言を記録したり、モラハラ行為があった日時と内容を詳細に日記に書いたり、メールやLINEのやり取りをスクリーンショットで保存しましょう。複数の証拠を積み重ねることで、継続的なモラハラの実態を示すことができます。
Q. 子供がいるのですが、モラハラ夫から親権を取れますか?
母親が主たる監護者として子供の世話をしてきた実績があれば、親権を取れる可能性は高いです。ただし、モラハラ夫が親権争いを激化させる可能性もあるため、子供への悪影響を示す証拠(子供の前での暴言、子供への過干渉など)を記録しておくことが重要です。別居する際は子供を連れて行き、監護実績を作ることも大切になります。弁護士に早めに相談し、親権獲得に向けた戦略を立てましょう。




Q. 別居を考えていますが、勝手に家を出ると不利になりますか?
モラハラから逃れるための別居は、正当な理由がある別居として認められます。ただし、何の準備もなく感情的に家を出ると、生活費(婚姻費用)の請求や財産分与で不利になる可能性があります。別居前に通帳のコピー、不動産や車などの資産リスト、モラハラの証拠を確保しておきましょう。別居後すぐに婚姻費用分担請求の調停を申し立てれば、生活費を確保できます。


Q. モラハラ夫が離婚を拒否し続けたら、一生離婚できないのですか?
相手が拒否し続けても、最終的には裁判離婚で離婚できます。協議離婚が成立しなければ離婚調停を申し立て、調停でも合意できなければ離婚訴訟に進みます。離婚訴訟では相手の同意がなくても、裁判所が「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めれば離婚判決が下されます。ただし裁判には時間と費用がかかるため、早い段階から弁護士に相談し、証拠を集めて計画的に進めることが大切です。


モラハラ夫が嫌いすぎるのなら、離婚の検討を
夫のモラハラがひどく我慢できないのなら、仕返しなどは考えず、早く離婚することを考えましょう。下手に仕返しや復讐を考えると、「喧嘩両成敗」という結果になるかもしれません。ただし、「夫が嫌い」という理由だけでは離婚は困難です。モラハラに詳しい弁護士に相談して準備をしましょう。
