【体験談①】小1で親が離婚「父には一度も会っていない」22歳になった娘の本音

更新日: 2023年03月02日

小学一年生の時に両親の離婚を経験した井上詩穂さん(仮名)。離婚後一年で授かり再婚した母のパートナーとの溝が年々深まり、高校生の時に養子縁組を解消。戸籍上では継父と他人になり、実の母とは姉妹関係になった。22歳になった井上さんの今日までの歩みを全3回でお届けする。

結婚式でやり直すはずが最悪のリスタート

――実のお父さん、お母さんと暮らしていた時のことを教えてください。

生まれは福岡県です。父は会社の社長でイケメンだったし、母も美人だったので周囲からは羨ましがられていましたが、実際は幼かった私にもわかるほどの仮面夫婦でした。

家族でよくお出かけしていたのですが、帰宅するとそっけなくて寝るところも別々というような感じで。父が浮気をしていたことを母も知っていたようです。

それが原因かわからないですし、直接確認したわけではないので、多分……なのですが、実の父と母は一度離婚していて、母が浮気を許してヨリを戻す形で再婚しているんですよね。最初の結婚の時に式を挙げていなかったため、私が小学一年生の時に結婚式を挙げました。

でも結婚式の前日、自宅のポストに旅館から宿泊のお礼のハガキが届いているのを母が見つけてしまったんです。日付を照らし合わせると父は出張と言っていたのに、どう考えても仕事で泊まるような宿ではなくて女性と行ったのだろうなと。

結婚式は夫婦関係をやり直す再出発のためのイベントだったのに、最悪の形のリスタートとなってしまいました。母としては不信感しか抱けず、父ともう一度結婚した同じ年に再び離婚することになったんです。
※写真はイメージ(iStock.com/gyro)

――ご両親が離婚することになった時、何と伝えられましたか?

当時一年生でしたが、とても鮮明に覚えています。それ以前から母が離婚を考えていることは薄々伝わっていたので、いつか話があるだろうと覚悟はしていました。

ある日、寝室で両親が真剣な話をしていたので、私は別室で遊んでいようと思って。しばらくすると呼ばれたので、寝室に入ると離婚を告げられました。

でも、うちの場合は「どちらがいい?」と父と母のどちらに付いていくか選択肢を与えてくれたんです。私はどちらも好きだったけれど、父が間違ったことをやったのはわかっていたので、大好きな母を選び、母の実家の埼玉に引っ越しました。

それから父には一度も会っていません。

離婚後、実の父に会ったことはない

――会っていないのは、井上さんの意思ですか。

私は父の連絡先を知らないですし、会っていないというか会わせてくれない。中学生の時に何気なく「福岡に旅行に行きたい」と母に言ったら、嫌な顔というか複雑な表情をしたんですよね。

父にすごく会いたいわけではないし、もう言わないようにしようと思って。父の親戚が住んでいる駅にもあまり近づかないでほしいと言われました。

私がパパっ子だったら離婚しても会いたかったのかもしれませんが、そこまで思い出があるわけでもないですし、母の嫌がることはしたくありませんでした。
※写真はイメージ(iStock.com/CatLane)

――実のお父さんと別々に暮らして十年以上経ちますが、今、会いたい気持ちはありますか?

ううん……もう顔もぼんやりとしか覚えていないですし、もう一回会いたいというような気持ちはなくて。父が幸せに暮らしているのだったらいいかなと。

母になぜ父に会わせてくれなかったのか踏み込んで聞いたことはありませんが、お互いに違う生活を選んだわけですし、今更話を広げなくてもいいのかなと思っています。

離婚後一年で授かり再婚、娘の想いは

――両親の離婚に伴う引越しや転校を井上さんはどのように受け止めていたのですか。

私、小さい頃はめちゃめちゃおてんば娘だったんです。男の子とスライディングキックしたり、スカートを履いているのに大股広げちゃうみたいな(笑)。

でも埼玉の祖父母の家に引っ越して、小学校二年生の時に母が再婚して埼玉から東京の学校に転校することになったんです。離婚して名字が母の旧姓の井上になり、再婚したのでまた名字が変わりました。

年齢的なものもあったのかもしれませんが、東京に引っ越してからはしっかり者キャラに変わりました。妹ができたこともありましたし。
※写真はイメージ(iStock.com/Prostock-Studio)

――離婚から再婚まで一年ほどだった、と。

母の職場で出会った再婚相手と籍を入れる前に、母は私の意向も聞いてくれて「詩穂が嫌だったら再婚しないから」と言ってくれたんですよね。

おそらく授かり婚だったと思うのですが、既にお腹に赤ちゃんがいたので「妹ができるんだよ」という話もそのタイミングで聞いて。それを聞いた状態で首を横に振るのは難しいと思うのですが(笑)、私の気持ちを最優先で考えてくれたことは嬉しかったです。

実の父の浮気で傷ついた母を大事にしてほしかったので「新しい父親がママのことを大事にしてくれるんだったらいいよ」と答えました。妹ができることは嬉しかったし、再婚が早いことに関して、母親である前に一人の女性なので今でも何とも思っていません。

―再婚後の出産と民法改正―

井上さんは一年間で、親の離婚と再婚、さらに母の再婚相手との間に子どもができたことを告げられた。このことに対し、娘である井上さんは母親の気持ちを汲み理解を示している。

法律的に見ると、どのような問題が潜んでいるのか。

2022年10月、嫡出子推定の規定に例外を設けるという民法改正案が閣議決定された。法改正の背景についてAuthense法律事務所の白谷英恵弁護士に聞いた。

【白谷英恵弁護士監修】「離婚後300日問題」に絡む民法改正の背景

嫡出推定規定(子が生まれた時期から父親を推定する規定)を見直す改正民法が、2023年12月に成立し、2024年夏ごろまでに施行されます。

改正前の民法では、女性が、婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定し、その上で、離婚から300日以内に生まれた子も婚姻中に妊娠した子と推定します。そして、結婚・再婚から200日経過後に生まれた子は現夫の子と推定します。

父親が前夫なのか現夫なのかを推定する期間が重なるため、女性に限っては、離婚後100日以内の再婚を禁止しています。このように女性に再婚禁止期間が法律上定められていた理由は、「父性推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐこと」(最判平成7年12月5日)にあります。この規定により、離婚後300日以内に生まれた子が、実際は前夫とは別の男性の子でも、出生届を出すことにより、婚姻中の夫婦の「嫡出子」として戸籍に載ることになります。

そのため、子と血縁関係のない前夫の子になることを避けるために、母親が出生届を提出せず、子が無国籍になる「無戸籍者」問題が大きな社会問題となり、その解消をする必要があったのです。

法改正により、離婚から300日以内に生まれた子でも、女性が再婚した後に生まれた子の場合には現夫の子と推定し、また、再婚禁止期間も撤廃されます。

無戸籍だと、国民健康保険に加入できない、住民票がないことによって選挙権を行使できない、パスポートが発行できないなど、子にとって深刻な人権問題が生じます。法務省の統計によると、令和3年11月時点で無戸籍者の人数が901名にものぼっています。こうした「無戸籍者問題」が徐々に社会問題として顕在化してきたことから、今回の法改正に踏み切ったと考えられます。


【体験談②】養子縁組を解消された私は戸籍上は母と姉妹に

【体験談③】「お前には無理」と言った継父を見返したい一心で叶えた夢
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弁護士: 神奈川県弁護士会

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