【体験談】面会交流は年1回ペース…子どもに会いたい別居親の思い、離婚協議書の法的効力の限界

更新日: 2023年04月03日

「地獄のような日々でした」子どもの手術当日に夫婦の争いが警察沙汰に発展、翌日には離婚することで話がまとまったという山田淳さん(31歳・仮名)。離婚協議書を交わしたものの、面会交流は約束通り行われず、今のところ年に1回のペースでしか子どもに会えていないといいます。離婚に至るまでの流れ、そして別居親の葛藤について聞きました。

「苦労をかけた自覚はある…」育ってしまった離婚の火種

――離婚までの流れを聞かせてください。結婚したのはいつですか?

2016年に結婚して、そのすぐ後に、彼女が突然倒れて救急搬送されてしまったのです。夫婦になったばかりの時期でしたし、病気になった彼女を支えなければという思いがありました。

振り返れば、この頃から彼女は感情のコントロールがうまくできなくなっているようでした。しかし病自体は快方に向かっていた2018年、長男が生まれたんです。

――元パートナー自身の感情のコントロールがうまくできない中、思い通りにいかないことの連続である子育ては大変だったのではないですか。

そうですね、大きく振りかぶって子どもを叩く姿も目にしました。大人の力なら“軽く”かもしれませんが、子どもからすると痛かったと思います。「さすがに、それはやめなよ」と言うと「だってあなたは何も手伝ってくれないじゃない!」と。

当時の私は、リモート勤務とはいえ朝から晩まで仕事をしていたことは事実。子どもとの関わりは、寝かしつけと休日に公園に行くくらいしかできていなかった。子どものことでケンカすることも多かったのですが、ワンオペの育児でだいぶ苦労をかけていたと思います。

――ケンカの種はお子さんに関わることが多かったのですか。

片付けや掃除など私が普段やれていなかったこともあり、奥さんはそういう部分も頑張ってくれていたのでので、細かなフラストレーションが溜まっていたのだろうと思います。

「ケンカになったときに、言いたいことが言えなかったのが嫌だった」と後に言われたことがあるのですが、自分としては建設的に質問していたつもりでも、正論で詰められているように相手は感じていたようです。やりたいことがあっても邪魔されるといった感情があったようですね。
※写真はイメージ(iStock.com/PeopleImages)

――山田さんに心当たりはありますか。

たくさんあります。たとえば、電化製品の調子が悪く、修理に出したら新しい製品を勧められたそうです。奥さんに任せていた家計が苦しい時期でもあったので、その価格が生活費の全体のどれくらいを占めるのか、それは誰が支払うのか、そういったことを聞きたかっただけなのに、奥さんにとっては問い詰められているようで苦痛だったようです。

里帰り出産中に言われた「離婚したい」

――他にも印象的なケンカのエピソードがあれば知りたいです。

長男を出産する時、私としては初めての出産に立ち合いたかったし、もしもの場合に備えて設備が整っている病院にしてほしかったんです。しかし、奥さんは地元の病院がよかったらしく「産むのは私なんだから!もう実家に帰るから!」と地元の高知県の病院で産むことを決めてしまいました。

出産後、長男は先天性の身体障害を持っていることがわかり、この障害は発症率が低く対応している病院が国内でも少なかった。でも、まさに私たちの住む山梨県には専門医のいる小児科があったんです。

一年に1、2回ほど、子どもの体力・体調もあり、数年会で合計4回の手術を行い、現在はほぼ完治しています。4回の手術は全て私が有給をとって子どもが一人で入院し寂しくないように、また何かあった時にすぐに看護師・医師の方々に伝えられるように、病院に宿泊し、息子に付き添いました。
※写真はイメージ(iStock.com/gorodenkoff)

――山田さんはお子さんが二人いるとのことですが、下の子は奥さんが見ていたということでしょうか。

息子の3回目の手術の後、2020年の8月に娘が生まれたので、4回目の手術の時はそういうことになりますね。娘を妊娠したときはコロナ禍ということもあり、奥さんは息子を連れて早めに里帰りして出産準備に入っていました、また、出産も県外の家族の付き添いを病院が許可してくれなかったこともあり、立ち会えませんでした。その後もしばらく、コロナの状況が落ち着かないからと産後もしばらく高知にいることになって。

その間に、奥さんに渡しているファミリーカードと連携している私のクレジットカードが使えなくなっていたので、明細を確認してみると実家で大きな電化製品をいくつか買っていたようでした。奥さんは子どもを育てる環境を整えたかったとのことですが、実家に新しい電化製品を買ってあげたかっただけではなかったのかと今でも思ってしまいます。

そのやりとりの後、娘が生まれてすぐ、まだ里帰りをしている間に離婚したいという話をされました。

息子の手術当日、妻が包丁を取り出し警察沙汰に

――娘さんと一緒に生活する前に離婚の話が出たと……。

離婚の話が出た後に長男が4回目の手術をすることになり、その間数カ月だけ奥さんたちが山梨に戻ってきて一緒に暮らすことができました。

息子が手術前の検査入院は私が付き添うことになっていたのですが、ちょうど奥さんと財産分与の話をしていたので、何気なく自室の中を写真に収めていました。趣味で集めていた機材にプレミアがついていたものがいくつかあったんです。

入院手続きを終えて、一時帰宅した際に、部屋を確認すると先ほど写真を撮ったときは、そこにあった高額な機材がいくつかなくなっていました。そのことを、奥さんに聞くと「知らない」と。仕方なく病院に戻ると、奥さんからSNSで写真付きで、「ここにあったよ」と連絡がきたのですが、明らかに私が置いていた場所とは違うし、出る前に確認したときに取った写真では、そこにないことも確認できました。

「なんで息子の大事な手術の前に、そんな嘘をつくの?」と、もう一度帰宅してきちんと話したかったのですが、奥さんの方はずっと無視です。警察呼ぶよ?といったら、本人は「どうぞ」というので、私も落としどころが見えなくなり、警察を呼ぶことになりました。そうすると奥さんが発狂しながら包丁を取り出し「死んでやる!」と言うので、それを押さえているところに警察が到着しました。

警察の話では、夫婦ゲンカは民事不介入。窃盗にはならないそうです。奥さんは心の状態がよくないので、今日のところは旦那さんは病院に戻ってくださいということでした。

次の日には協議離婚をすることに決まり、お互いすぐに判を押すことで話がつきました。本当は術後間もない息子のことに集中したかったのに、病院と弁護士事務所、家をグルグルと回っていた1カ月間で、まるで地獄のようでしたね。

奥さんは「早く別れたいけれど、養育費は払ってほしいし、子どもにはなるべく会わせたくない」という要望だったので、こちらもなかなか交渉がハードでした。
※写真はイメージ(iStock.com/PrathanChorruangsak)

離婚協議書の内容は守られず、面会交流は1年に1回のペース

――養育費の取り決めは行いましたか?

養育費については、奥さんはまだ育休中だったので年収ベースだと0円で算出されます。私の年収から算出した最大値を養育費として受け取ろうとしていたようですが、それは違うだろうと。今後、仕事をするのだからと話し合った結果、算定表の半額ほどを支払うことでまとまりました。

公正証書ではなく、離婚協議書を作成しました。

――面会交流の約束は交わしましたか。

私の仕事がそれまで以上に忙しくなる見込みだったため、毎月高知まで行くのは難しい。落としどころとして、協議書では夏と冬の長期休みに合わせて年2回交流をするという約束でした。

ところが、コロナ禍と重なったこともあり結局、年に1回ほどしか会えていません。2021年の2月に離婚が成立してから面会交流できたのは2回。いずれも奥さんが付き添っています。

1回目の面会交流の後、半年の約束だったはずが、なかなか面会交流できないので頭に来て、面会交流調停の手続き申請をしたんです。その後に、2回目の面会交流を行う話が出たので調停は取り下げました。

子どもに会えるんだったら何でもよかったですし、調停は相手の管轄裁判所で行う必要があるので、平日に高知県まで何度も出向くのは現実的に厳しいということも調停を取り下げた一因でした。

サンタさんではなく「パパから」のプレゼントにしたい

※写真はイメージ(iStock.com/ecep-bg)

――お子さんは山田さんに会いたがっている様子はありますか。


特に最初の一年は会いたいと言われました。1回目の面会交流の別れ際に、長男があまりに激しく泣くので私もつらくて……。「キリがないので早く帰ってください」と追い返されてしまいました。

たまにオンラインで会話していますし、息子も5歳になったので私の不在に慣れたせいもあるのでしょう。最近は以前ほど切実な様子はなくなってきました。「パパは山梨に住んでるから会えなくても仕方がないねー」と言われ、めちゃくちゃ寂しいですよ。

でも、それでよかったのかなと思います。ずっと切実に寂しさを抱えているよりも、今の環境に馴染んでいるということなので。

――今でも毎日お子さんのことを考えますか。

離婚して2年弱経った今、毎日考えるかと聞かれれば実はそうではありません。私も子どもたちと離れる生活に慣れつつあります。

そんな中で、私が子どもにできることは何だろうと考える時が一番「子どもがそばにいる生活に戻りたいな」と思う瞬間ですね。

離婚後に「子どもたちに誕生日プレゼントを渡したいんだけど、どうしたらいい?」と奥さんに聞くと、「やり取りが大変なので毎年1万円ずつくれませんか」と言われてしまって。

しかし、誕生日は面会交流の他に子どもと関わりを持つことができる数少ない機会。プレゼントを買わせてほしいと頼みました。そうすると今度は、いかに高価なものを私にねだるかということになってくるようで、自転車やランドセルなど元奥さんが費用が掛かりそうなものを都度購入検討してほしいと連絡が来るようになってきました。

クリスマスプレゼントは特に難しいですよね。私としては名目上「パパからもらった」としてほしいのですが、サンタさんからということになりがちです。ここでも交渉が必要でした。

――離れて暮らすお子さんたちに望むことはありますか?

友だちや周囲の人と仲良く付き合ってほしいなと思います。父親がいないことで寂しい思いをすることもあると思うのですが、困った時には周りに助けてもらえるような関係の人が、子どもたちのそばに多くいてくれたらいいと思います。

それからもう一つ。実家で向こうのお母さんの支援もあるものの、女手一つで子ども二人を育てるとなると大変なこともたくさんあるでしょう。だから、お母さんに優しい子に育ってほしいですね。

――再婚を考えることはありますか。

新しいパートナーと、もう一度結婚して別の家族を作るのもいいかなと思っているんです。悩ましいのは、パパが別の家族を作ったということを、どのタイミングで息子と娘に知らせるのがいいだろうかということ。

パートナーに子どもたちのことを意識させてしまっているのも申し訳なさを感じます。パートナーの器の大きさに救われているなと。

ー子どもと面会交流を望む別居親の思いー

離婚前後の日付や出来事を順序立てて詳細に語る山田さん。時に笑いを交えながら饒舌に語る中、少しだけ寂しそうな表情で「私も悪かったのですが……」と結婚生活を省みていました。

山田さんは、里帰り出産中に離婚の話が出たため、長女とは3カ月の間しか生活を共にすることはできませんでした。わが子の成長を感じる貴重な機会である面会交流が思うようにできず、何かアドバイスをもらえたら嬉しいと話します。

ベーグル法事務所・林正和弁護士に、面会交流を定期的に行うために必要な手続きについて教えてもらいました。

【林 正和弁護士監修】離婚協議書の約束が守られない場合の対処法

離婚協議書で面会交流の条件を定めていたのであれば、法的にその内容を守るべき義務を双方が負っていると思いますが、もっとも、離婚協議書だけでは、それを守らない場合に強制する手段がないということです。

調停または審判で決めた内容を守らなければ、一定の場合、間接強制といって約束を破った場合の反則金のようなペナルティーを与えることが出来ます。また、裁判所という第三者が入るので、裁判所が説得や約束を守らない理由を確認したりしてくれます。

面会交流の安定的な実現にご不安があるのであれば、基本的には調停申立をおすすめします。

調停のために遠方であっても、相手方の裁判所に赴く必要があるかどうかという点に関しては、原則、ご本人にもご出席いただく必要があります。ただ、代理人を立てることは可能ですので、例えば小さいお子さんの監護や仕事の都合などで出席が難しい場合などには、代理人である弁護士のみが出席して調停をすすめる方法もあります。

また、調停の際には、代理人以外は同席することが出来ません。一人で調停というのも大変だと思いますので、弁護士を代理人として選任することをお勧めします。
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弁護士: 東京弁護士会

林 正和

ベーグル法律事務所

〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-12FORECAST新宿AVENUE6階

平日9:00〜18:00

*料金詳細は各弁護士の料金表をご確認ください

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