【体験談】「共同親権」に法改正される日を待ちながら離婚裁判を続ける日々、子どもの幸せのために僕が手に

更新日: 2024年01月16日

いきなり妻からLINEで届いた離婚宣言。「夫婦仲を見直すための単身赴任がまさか離婚を不利にするとは思いもしませんでした」と当時を振り返る小川真人さん(仮名)。離婚が避けられないならせめて子どもたちの幸せを考えたいと、独学で各国の離婚事情などを調べる日々。法改正が近いと言われる今、小川さんの思いをうかがいました。

里帰り出産からなし崩し的に義実家の敷地で同居。それでも仲良く生活していた

――出会いから結婚、義実家の敷地内で同居することになったいきさつを教えてください。

妻とは同じ大学の歯学部だったのでお互いを知ってはいたんです。学生時代は特に意識したことはなかったけど、卒業後、友人の結婚式で再会し意気投合して付き合あうようになりました。その翌年の2013年に結婚しました。

その後、私は大学の先輩に誘われて1年の約束で東京の歯科医院に勤めだし、妻も同じ東京で歯科医をしていました。そこで子どもができたんです。

結婚から約一年後、見知らぬ土地での出産は不安なので妻は名古屋の実家で里帰り出産することになりました。    

※写真はイメージ(iStock.com/Drazen Zigic) 

予定通り私は1年で東京から名古屋に戻ってきたのですが、妻が仕事に復帰するとなると義父母の子育て支援があると安心だといい、義実家の2階で生活することになったんです。義実家は2階が賃貸アパートになっているんです。そこをリフォームして半同居のような生活が始まりました。

――半同居とはいえ階下に義父母がいる生活は窮屈だったのでは?

妻との約束ではそこには1年だけ住むはずだったのに、なし崩し的に半同居が続きました。半同居といっても家賃は支払っていたので家を義実家から借りているような状態でした。

最初は気づかなかったんですけど、義父母が私たちの家の鍵を持っていて、勝手に出入りしていることがわかったんです。きっかけはリビングの床に私のものではない男性用靴下が置いてあって。

「まさか、妻が別の男性を家に連れ込んでいるはずはないよな?」なんてちょっと考えたけど、1週間経ってもその靴下があるので「これ誰の?」と妻に聞くと「知らないよ」と言う。妻が義母に確認したところ、義母が私の靴下だと思い、私たちがいない間に家に入り置いていったとのことでした。

 

※写真はイメージ(iStock.com/Wichayasit Suttiwiriyakun)

妻は自分の親だから気にならないのでしょうが、私はいい感じはしなかった。親子とはいえプライバシーは尊重してほしいと感じました。

義母の金銭トラブルから義実家と妻に対して距離を感じ出す

――夫婦関係が大きく変わった出来事は何だったのでしょうか?

大きく変わったのは、義母が数百万円の金銭トラブルを起こしたことです。弁償するために私がそのお金を義母に貸して立て替えたのですが、義母はあまり反省している様子がなくて。

妻に「あのトラブル後のお義母さんの態度はおかしいよね」と言うと「母があなたにお金を返せばそう思わないの?」と言い返されて。自分の気持ちが妻に伝わらないことに少し悲しい気持ちになりました。

でも義母にお金を貸して1年後に第二子の娘が生まれているので、揉めながらもなんとか生活していたんですよ。

※写真はイメージ(iStock.com/kieferpix)

――奥様とご実家のつながりは強固だったのでしょうか?

妻は大学卒業するまで家を出たことがなく、実家に対する依存度が強かったのだと思います。

だから義母の金銭問題をきっかけに義実家との関係が悪くなったのは私だけだし、私だけがよそ者という感覚が日に日に強くなっていった。

私がいない時、妻と子どもたちはいつも義実家で過ごしていたらしく、子どもたちは私たち一家が住んでいる家を「お父さんの家」と呼ぶんですよ。このようなことが繰り返されていくうちに、私だけどんどん疎外感を持つようになっていきました。

※写真はイメージ(iStock.com/Nuttawan Jayawan)

夫婦仲を再構築するために環境を変えた矢先の離婚宣言

――夫婦仲よりも義実家との仲に悩んでいた。そこで考えたのが環境を変えることだったんですね?

そうなんです。仕事のキャリアアップをしたかったので職場を変えようと考えていました。ただ希望している歯科病院は義実家から通うとなると片道2時間ちょっとかかるんです。

義実家との問題で私の精神状態も良くなかったので、ちょっと距離をおこうと近くに単身赴任でアパートを借り、週末は妻と子どもたちのいる家で過ごすことにしたんです。一年間修行を積んだら新しい家を探し、家族4人で生活する計画に妻も合意していました。

※写真はイメージ(iStock.com/AzmanJaka)

単身赴任を始めたのが4月だったんですけど、その月は結婚記念日もあって。私は結婚記念日に近い週末を家族4人で外食してお祝いしようとレストランを予約していたんです。

リスタートじゃないですけど、これからも家族4人で仲良くやっていく節目の日にしようと考えていたんですよ。

――ところが単身赴任してすぐに奥様から離婚の話がでたんですね。

はい。単身赴任して1週間ほどで妻からLINEがきて。

内容は「離婚をしたい。話し合いでは自分の思いが伝えられないので代理人を立てた。アパートに代理人からの手紙が届いているはずなので確認してほしい。今後会うことはないため連絡は全て代理人の方にお願いする」というものでした。

 

※写真はイメージ(iStock.com/anyaberkut)

妻に連絡しても出ないので妻の代理人に「急にこのようなことを言われても同意できないので、話し合いをしたい」と申し入れても「奥様は離婚を考えているので無理です」と言われ、とにかく早く決断して欲しいという感じなんです。

これでは埒があかないので、こちらも代理人を立てることにしました。

離婚調停となるも代理人探しに苦戦。法的な離婚理由がないまま離婚裁判が続く

――代理人はすぐに見つかりましたか?

最初はすぐに見つかると思ってネットで近所の弁護士を探したけど、会って開口一番「別居案件はやれることはかなり少ない。あまりお力になれないですよ」と言われ、現状は絶望的なんだと知りました。

そこで私の父親に相談しました。父は会社経営しているので、そこの顧問弁護士なら利害関係があるから断らないだろうと思ったんです。両親には義実家や妻との関係、もちろん義母の金銭トラブルの話も一切していません。

自分のプライドを捨てて父親に相談し弁護士を紹介してもらいました。企業弁護士ですから離婚に詳しいわけではないと思いますけど。今現在も同じ弁護士で交渉を続けています。

――小川さんの離婚における要望は最初から変わっていないのですか?

ええ。最初からほぼ同じです。女性側から離婚を申し立てているのだから離婚は避けられないし、親権も妻になるはず。妻は同じ歯科医で実家に暮らしているから、収入も安定しているし、子どもたちにとって祖父母である監護補助者もいてその実績もある。

妻は子どもたちを虐待などしないし、子どもたちを愛する良い母親だと思います。だから今の法律では私が親権をとれる可能性はゼロです。

※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

そもそも好きで一緒になった人と争い続けることは、ほんとうはしたくありません。
ただ、離婚は避けられないけど、せめて子どもたちの幸せは父親として考えたい。いろいろ調べていくと法改正で「共同親権」が認められる可能性が高いことにいき着いたんです。

まず要求したのが子どもたちとの面会を徐々にで良いので「隔週1回の夕食と隔週の土、日宿泊。長期休みの半分は私と過ごす」という条件です。そのために、平日1日は半日勤務、土、日は休みという勤務体系に変えました。

これが子どもたちにとって離婚による心の傷を癒しやすい手法だというのをいろいろな論文を読んで調べた結果なんです。

――奥様はその要望をどう受けているのですか?

全否定です。妻側の弁護士は私が出すデータはアメリカのもので日本の常識とは異なると。実際は多くの共同親権国のデータを集めて解析しているものなんですよ。その時点で違うんです。

向こうの弁護士は日本の常識って言うけど、厚生労働省の調査によると、日本では離婚後に約7割の親子が面会交流を行っていないんです。交流できても月1回、数時間が一番多いみたいです。私と仲良しの子ども達が私と会えなくなることを望んだり、低頻度の交流で満足するわけがありません。

※写真はイメージ(iStock.com/pcess609)

いろいろあって妻が出してきたのは2カ月に1回、2時間の面会です。もちろん私は不服を申し立てて、面会交流調停を2年ほど経て、今は月1回3時間で一応合意しています。

ただ、将来的に法改正されたら「共同親権」にするという約束ができないのであれば離婚には応じられないというのが私の主張です。法的離婚理由がないので、早々に離婚調停は不成立になり、今離婚裁判になっています。

――別居期間が長くなればそれだけで離婚理由になりえますよね?

妻は私の条件を受け入れたくないから、いろいろ離婚理由を主張してくるんです。ちょっとした喧嘩を精神的DVだと言いだしたり、主張書面がどんどん過激になっています。

不毛な争いはしたくないから相手を責め立てるなどはしません。ただ、虚偽があればそれを指摘する。それをえんえん裁判で繰り返しています。

※写真はイメージ(iStock.com/AmnajKhetsamtip)

別居は大体3年で離婚理由になるみたいですが、5年くらい頑張っている方もいらっしゃるみたいです。私は来年の4月で別居して3年になるので、早く法改正してくれないかと思っているところです。

離婚していないので婚姻費用も月々きちんと妻に払っていますよ。

子どもの幸せのために認めて欲しい共同親権

――お子さんとの面会はできていますか?

月1回は子どもたちに会えています。面会の仲介には「FPIC」を利用しています。FPICにメールをすると面会を調整してくれます。費用は1回1万5千円で、妻と折半です。

最初、費用は全額私持ちでと妻側は主張してきましたが、2人の子どものためなんだから両親で負担すべきだと。とくに妻は同業者で収入差もないわけですから。

子どもたちとは別れ際に次の約束ができるように予定を立ててから面会しています。面会して別れる時「もっとお父さんといたい」と子どもたちが泣いたり、辛そうな顔をするけど、次に会う約束をすると、少しは安心できるようです。

私自身は、「どちらがいい親か」ということではなく、法改正を通じて「別居や離婚後、子どもを中心とした養育をしていくために両親は、どのような計画が立てられるか」という考え方になればいいと思っています。

法の規範が変われば、親全体が子どもを中心に考えた行動規範に変わっていくのではないでしょうか。

※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)

――小川さんは海外の離婚についてたくさん学んでいますが、日本との違いを感じますか?

それはすごく感じます。例えば、オーストラリアなどは離婚後の子育てに関して親教育プログラムを受けて、子どもを第一に考える視点や元配偶者とのコミュニケーションスキルを学びつつ、第三者を介しながら1年程度の時間をかけて共同監護計画を決めないと離婚できないんです。ところが日本は別居しているだけでマイナスポイントになる。

調停裁判は夫婦の争いを激化させ、相手がいかに酷い人間か証明し合う場になってしまうケースもあります。

家庭の事情はそれぞれ違うのに「一般的に」とか「だいたい決まっている」という答えが多い。私は別居親側で調停に行ったわけですが、開口一番「なぜ、子どもに会いたいんですか?」と言われて。

親子が会いたいと思うことは自分にとって当たり前で、そんなこと考えたこともなかったら、その質問は差別的とも感じましたし、ショックでした。

――最後に共同親権・共同監護に望むことは?

今、共同親権を望んでいて離婚をしていない人たちの多くは、おそらく配偶者に未練があるというよりも、「子どもを中心に据えた話し合いをしたい」という思いが強いと思います。

別居親は離れて暮らしている分、子どものことを考えない日はありません。その思いが熟成して恨みに転じて過激になる人もいるかもしれない。

私は比較的子どもに会えている方ですが、別居親の勉強会に参加すると、お子さんと全く会えず今にも死んでしまいそうな表情をした方もいらっしゃいます。

似たような状況の仲間と励まし合い、いろいろなケースを学ぶことで、怒りをため込まず、死なないと約束して生きていきましょう、と。

※写真はイメージ(iStock.com/franckreporter)

そういった場への重要性を感じると共に、共同親権に付帯する親教育プログラムや共同監護計画書の作成などが進めば、自殺してしまうほど辛い思いをすることもなくなるのではないでしょうか。

地獄のような日々から抜け出せる人が、ひとりでも多くなる社会になることを願います。

-共同親権が認められることが従来の離婚調停や裁判のあり方を問うきっかけになってほしい-

「妻と一緒に住むとか復縁は難しいと思いますけど、将来的には子どもたちのことをちゃんと話し合える仲になりたいですね」と話す小川さん。

子どもたちにとってたった1人の母親、たった1人の父親だから、夫婦のことは切り離して考えられるようなりたい。そのために離婚後共同親権が法制化するまで、婚姻中の共同親権を維持するために離婚裁判を続ける。

すべては子どもたちのため。離婚する夫婦が子どもをふくめた将来の幸せについて率直に話し合いができる場が調停裁判や離婚裁判であってほしいものだ。

【鵜飼 大弁護士監修】離婚に応じられない場合と別居期間について

調停は、夫と妻の双方が裁判所に出席して、話し合いにより自主的な解決を図る制度です。したがって、夫婦の一方が離婚に応じなければ、離婚が成立することはありません。

離婚したい側と離婚したくない側との対立が続き、話し合いによる解決が見込めないときには、調停は不成立で終了します。

調停が不成立で終わっても、離婚したい側が離婚を強く望んでいれば、裁判を提起してくることが考えられます。しかし、裁判でも「離婚したくない」と主張し、勝った場合には、相手からの離婚の請求は認められません。

また、別居が離婚事由として裁判で認められる別居期間に差が生じる理由としては、裁判所が婚姻関係が破綻しているかを判断する際に、別居の期間だけではなく、別居の原因や婚姻期間や等の様々な事情を総合的に考慮しているためです。

例えば、相手方の不貞行為やDV等が認められた場合は、別居期間が短くても離婚が認められることがあります。

また、そもそも婚姻期間が1年未満と短いケースでは、別居期間が短くても離婚が認められることが多いです。

反対に、別居の原因がどちらにもないといったケースでは、相当の別居期間が必要になります。

 

この記事は2023年11月15日に公開しました。

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