「シンママが応援し合うコミュニティ」で与えられるのではなく自走できる力を
更新日: 2023年12月27日

自助努力は十分すぎるくらいにしている。行政の公助はもちろん必要。でも、シングルマザーにとっては“共助”も大切。シンママ・シンママ予備軍専用コミュニティ「LINQURE(リンキュア)」の運営メンバー、高卒シングルマザー◎いっちゃんさんにインタビューしました。
「誰かと一緒に」は力になる
――シングルマザー歴4年とのことですが、離婚後の生活について教えてください。
仕事を辞めて地元に戻ったので、全くの未経験から求職者支援訓練校に通い、専門職に就きました。それからSNSの運用代行の副業と、LINQURE(リンキュア)というシングルマザーのコミュニティの運営で、いろいろと忙しく生活しています。
――シングルマザーにとってコミュニティは大切な場ですよね。
私自身が離婚について悩んでいた時、インスタグラムの育児アカウントで投稿していたんですよ。ストーリーで「夫にこんなことを言われました」とか「今から別居します」とか。
フォロワーさんの「大丈夫ですか」「私も同じですよ」といったコメントにすごく支えられたんですよね。同じような状況の人たちと話すこと、そして共感してもらえることは精神的な安定に繋がると実感しています。
その思いがあるから、離婚したら次は自分の実体験を基にした情報発信をしようと思ったのです。

※写真はイメージ(iStock.com/metamorworks)
――LINQUREの活動目的を教えてください。
たとえば養育費がもらえない、思った通りに働けない、孤独を抱えている……そうした情報が必要な人に届いていないことも含め、シングルマザーが抱えている社会的な問題はさまざまです。
そうしたことをLINQUREという団体として社会に伝えていきたい。一人の声は届かなくても、集えば届くのではないかと思っています。
現在、社団法人を目指すと共に、2期メンバー募集の準備を進めています。

――シングルマザーの団体は多くありますが、LINQUREの独自性は何でしょうか?
私たちは「シンママが応援し合うコミュニティ」と銘打っています。私たちが何かしら支援をするわけではなく、「一緒にレベルアップしていこうね」という意識を持っているのです。
お金を配るといった支援の方法ではなく、魚の釣り方を覚えようよ! という感覚に近いですね。

――LINQUREはシンママ3人で運営しているとのことですが、いっちゃんさんの主な役割は何ですか?
役割を明確に分けているわけではないのですが、私はメンバー27名と交流して、みんなの意見を吸い上げるという感じでしょうか。
「誰かと一緒に」というのはすごく力があって、一人でインスタグラムを始めても続かなかったのに、コミュニティ化してから続くようになったんですよ(笑)。なぜかはわからないけれど、集えば頑張れるのです。
逃げられない状況でエスカレートするモラハラ
――ここからは、いっちゃんさんがシンママになるまでの経緯を伺います。
結婚後、妊娠7カ月目に籍を入れました。その後、いろいろとつらいことがあって1年半くらいかけて離婚したので、結婚生活よりも離活(りかつ)の方が長かったという感じでしたね。
――離婚の原因は何だったのですか?
私の主な理由はモラハラと経済的DVの二つでした。
相手は若くして会社を立ち上げた自営業歴が長い人だったので、仕事に関わる人や自分に対して厳しい人なのだと思っていました。ところが、籍を入れた途端にその厳しさが私に向くようになったのです。

※写真はイメージ(iStock.com/kieferpix)
後から調べて知ったことなのですが、モラハラの人って、結婚や妊娠、家の購入など相手が逃げられないと思うタイミングから、どんどんモラハラが強くなるらしいんですよ。私の場合も、結婚届を出したときから如実にモラハラの傾向が現れて、出産間際の臨月の頃にはさらにひどくなりました。
産後は、「娘に母乳をあげられるのは、俺がご飯を食べさせてやっているからだ」と言われたことも。
結婚生活が始まってからというもの、怒られたり、説教をされたりが続き、向こうが帰ってくる時間になると怖くなってしまうようになりました。このままでは子どものことさえ可愛がれなくなってしまいそうな精神状態まで追い詰められ、別居することにしました。
養育費が払われず、自力で強制執行
――離婚活動はどのように進めたのですか。
とりあえず3カ月でいいから実家に帰りたいと伝えました。でも、一度実家に帰ったらもう東京に戻るつもりはなかったので、自分と娘のものを全て実家に送りました。

※写真はイメージ(iStock.com/mapo)
あとは法テラスや弁護士さんの無料相談に行ったり、ネットで調べたり、知り合いのシングルマザーに話を聞いたりしましたね。
――弁護士さんに依頼はしましたか。
当初は協議をしていたのですが、私が離婚の条件を送ったら向こうが驚いたようで、弁護士をつけ内容証明を送り返してきたんですよね。それから私の方でも弁護士さんにお願いをして、こちらから調停を申し立てました。
離婚すること自体はすぐに決まったのですが、条件面で時間がかかりましたね。東京の家庭裁判所で申立てをしたのですが、すごく混んでいて2カ月に一度ほどの頻度でしか調停ができませんでした。
調停申立てをして、離婚が成立したのはちょうど一年後でした。
――離婚時の養育費に関する取り決めについて教えてください。
養育費は最初の2年ほどは払われていたのですが、一度止まった後、相談なく減額されてしまって。履行勧告をしたのですが、その後また払われなくなったので弁護士さんに頼まず自分で強制執行手続きをしました。
ところが向こうに借金があったので、借金の返済が優先されてしまったのです。相手が会社員なら毎月のお給料を差し押さえることができるそうなのですが、自営業の場合は銀行口座を差し押さえることになるようですね。

※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)
ただ、強制執行で口座を止められたのが不便だったようで、後日、請求していた額が全額支払われました。
――面会交流についてはいかがでしょう。
面会交流は月に一回と決まっていたのですが、コロナ禍かつ、遠方に住んでいることもあり行なっていなかったところ、向こうから面会交流と養育費減額の調停を申立てられました。
養育費減額に応じ、面会交流もオンラインで月に一度行なっています。
調停で面会交流専用アプリを提案
――面会交流は第三者を介しているのですか。
直接行なっていますが、面会交流アプリのraeruを使っています。raeruさんは元々イベントに参加していただいたりとご縁があったので、調停の時に私からこのアプリを使うよう提案しました。実際、感情の乗った長文のメッセージが送られることがないので使いやすいです。
――産後間もなく離婚し、娘さんは5歳になって久々に父親と顔を合わせることになったと思うのですが、その時の状況について教えていただけますか。
娘の中でも、(面会交流を)辞めたいと言ったり、やると言ったり、葛藤があったようです。いざ当日を迎えると、「恥ずかしいから隣で手をつないでいてほしい」とのことでした。不安もあったのかもしれません。
最初は2、3分から始め、今は40分ほどオンラインで会話しています。

※写真はイメージ(iStock.com/itakayuki)
――お子さんには離婚のことをどのように伝えましたか。
3歳頃、保育園で他の子に「お父さんいないの?」と聞かれたようで、その時に「お父さんは遠くに住んでいるけれど、会いたければ会えるよ」と説明しました。
ママとパパが一緒にいる家庭もあれば、祖父母も住んでいる家庭、シングルの家庭など、いろいろな家庭があることも伝えました。私自身、10歳のときに両親が離婚していてシンママに育てられたので「ママと一緒だね」と。
女性をエンパワメントし続けたい
――いっちゃんさん個人の展望について聞かせてください。
離婚するきっかけにも繋がっているのですが、世の中は男尊女卑に溢れているということに気付いたんですよね。それに、古い慣習が強く残る業界で働いているので、給与や昇進の面でも男女格差を感じています。
将来的に、シングルマザーに限らず女性の働き方や生き方を提案するような仕事ができればと思っているので、その第一歩としてLINQUREやコミュニティで発信をしています。

※写真はイメージ(iStock.com/Inside Creative House)
――表情からも伝わりますが、いっちゃんさんにとって離婚はいい選択だったようですね。
結婚が一番キツかったので、すごく幸せになりました。離婚して後悔したことは1ミリもないかもしれません。
――最後に、離婚について悩んでいる方に向けて伝えたいことはありますか?
悩む気持ちはとてもよくわかります。でも振り返って思うことは、つらい結婚を継続するよりも、離婚して自力で頑張ることの方がラクだぞ、と。モラハラをするような人を根本的に変えるよりも、離れて自分が頑張った方がいい。
だからといって、母親ばかりが経済的な面でも頑張り続けるのは違います。だから養育費はもらった方がいいと思っていますが、その一方で自分自身の“質”を高めることも大切です。
私みたいに高卒でも、未経験から手に職をつけることもできるし、強制執行だってできるんです(笑)。だから「できるよ」と思うのですが、自分が悩みの渦中にいるときは全くそんなふうに思えなかった。
そういう方にも届けられるように、私はずっと発信していきたいと思います。
この記事は2023年12月27日に公開しました。
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