
離婚を考えたとき、住宅ローンが残っている家をどうするかは大きな悩みの一つです。名義人と居住者が異なる場合のリスクや、財産分与との関係、連帯保証人の責任など、知っておくべきポイントは多岐にわたります。この記事では、離婚時の住宅ローンに関する基礎知識から、家を売却・保持する場合の具体的な対処法まで詳しく解説します。トラブルを避け、安心して新生活をスタートするための参考にしてください。
この記事でわかること
・離婚時に住宅ローンがどうなるのか
・売却・住み続ける・名義変更など、状況別の具体的な対処法
・ペアローンや連帯保証がある場合の注意点
折田 裕彦/法律事務所アスコープ 東京オフィス(第一東京弁護士会所属)
所属弁護士数30名を超える法律事務所アスコープの共同代表パートナー。都内を中心に地方展開を手がけ、紹介・リピーターを呼ぶ「圧倒的な実績と安心感」で信頼を築く。
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まず押さえておきたい、離婚と住宅ローンの基礎知識
離婚の財産分与では、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した資産だけでなく、住宅ローンのような借り入れ(債務)についても検討が必要です。
住宅ローンに関する紛争は、離婚成立後に長期化しやすい問題でもあります。離婚直後は精神的にも余裕がなく、手続きの不備が生じがちです。早い段階でローンの名義変更や支払い方針を明確にし、必要に応じて公正証書を作成するなど、法的に支払い義務を確定しておくと安心です。
離婚しても住宅ローンは消えない
離婚をしても、住宅ローンの返済義務は契約した人に残り続けます。夫婦関係が解消されても、金融機関との契約は別問題だからです。
たとえば夫名義で住宅ローンを組んでいる場合、離婚後に妻が自宅に住み続けたとしても、返済義務は夫にあります。離婚協議で「妻が住むから妻が払う」と夫婦間で合意しても、金融機関に対しては夫が債務者のままです。
もし名義人が返済を滞納すれば、最終的には競売にかけられるリスクがあります。離婚時には住宅ローンの残債を必ず確認し、誰がどのように返済していくのか明確にしておく必要があります。
名義人と実際の居住者が異なるとどうなる?
離婚後、住宅ローンの名義人と実際に住む人が違うケースでは、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。
よくあるパターンは、夫名義のローンが残る自宅に、妻と子どもが住み続けるケースです。このとき夫が約束通りに返済を続けていれば問題ありませんが、支払いが滞ると妻と子どもは突然住まいを失う可能性があります。
また、夫が再婚して新たに住宅を購入しようとする際、既存の住宅ローンが審査に影響することもあります。離婚後も名義人には返済能力が求められるため、収入状況によっては新たな借り入れが難しくなる場合があります。
離婚時にはこうしたリスクを踏まえ、養育費と絡めて公正証書で取り決めるなど、対処法を検討しておくことが大切です。
財産分与の対象になる住宅とローンの関係
離婚時の財産分与では、住宅の時価からローン残高を差し引いた金額が対象となります。
たとえば自宅の査定額が3,000万円で、住宅ローン残高が2,000万円であれば、差額の1,000万円が財産分与の対象です。この場合、住宅を取得する側が相手に代償金として500万円を支払うといった方法があります。
一方、ローン残高が売却価格を上回るオーバーローンの状態では、財産分与の対象となる価値がありません。むしろ「負の財産」として、どちらが負担するか、または任意売却するかといった選択肢を検討する必要があります。
住宅とローンは財産分与において密接に関わるため、不動産会社に査定を依頼し、正確な価値を把握しておくことがポイントです。
連帯保証人・連帯債務者の立場は離婚後も続く
夫婦で住宅ローンを組む際、妻が連帯保証人や連帯債務者になっているケースでは、離婚後もその立場は自動的には外れません。
連帯保証人は、名義人が返済できなくなった場合に代わりに返済する義務を負います。連帯債務者は、夫婦が共同で債務を負う形です。いずれも離婚したからといって金融機関との契約が解除されるわけではありません。
もし連帯保証や連帯債務から外れたい場合は、金融機関の承諾を得て借り換えや保証人の変更手続きが必要です。ただし、名義人の返済能力が十分でないと審査が通らないため、実際には難しいケースも多くあります。
離婚協議では、こうした連帯保証・連帯債務の問題も含めて弁護士に相談し、トラブルを避ける手続きを進めることがおすすめです。
家とローン残高の現状を把握する―アンダーローンとオーバーローンとは?

離婚時の住宅とローンの対処法は、家の評価額とローン残高のバランスによって大きく変わります。
家の評価額がローン残高を上回る状態を「アンダーローン」、逆にローン残高が評価額を上回る状態を「オーバーローン」と呼びます。アンダーローンなら売却しても手元にお金が残る可能性がありますが、オーバーローンの場合は売却後もローン残債が残るため、任意売却など特殊な方法を検討する必要があります。
まずは自宅の正確な価値を知ることが大切です。不動産会社の査定や公的機関の評価証明を活用し、複数の業者に相談して平均的な査定額を出しましょう。市場価格はエリアや時期によって変動するため、正確な数字を把握することで財産分与や売却の方向性が明確になります。
どちらの状況にあっても、夫婦間でしっかり協議し、お互いが納得できる対策を立てることがポイントです。
土地建物の評価額の調べ方
不動産の評価額を調べる方法はいくつかあります。不動産会社や銀行の査定のほか、固定資産税の評価証明書や路線価などの公的データからもおおよその価格を把握できます。
ただし、実際に売却する際の市場価格とは差が出ることもあるため、複数の情報を総合して判断することが大切です。夫婦間で評価額に合意できない場合は、第三者の鑑定士に正式な鑑定を依頼する選択肢もあります。
査定を受ける際は、一社だけでなく複数の不動産会社に依頼し、物件の価値を客観的に確認しておくと安心です。
住宅ローンが財産分与の対象となる理由
婚姻期間中に夫婦で支払ってきた住宅ローンは、プラスの財産だけでなくマイナスの財産としても財産分与の対象となります。
離婚後に残るローン負債の扱いを曖昧にすると、どちらが返済を続けるかでトラブルになりがちです。財産分与とは、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンのようなマイナスも含めた「夫婦共同の成果」を分け合う意義があります。
そのため離婚時には、自宅の時価とローン残高を正確に把握し、公平に負担を分け合う方法を検討する必要があります。
【ケース①】夫が家に住み続ける場合の注意点
夫が住宅を保持してローンを継続して支払うケースでは、名義や財産分与の整理がポイントになります。
共有名義や連帯保証がある場合、妻側の責任が残る可能性があります。元配偶者が連帯保証人のままだと、返済が滞ったときに請求が行くリスクがあるため、離婚協議では借り換えや名義変更の可否を事前に確認しましょう。
金融機関に事前相談を行い、夫の単独名義でローンを継続できるか審査を受けます。夫の収入や信用情報が基準を満たせば承認されますが、条件次第では難航することもあります。

名義変更・ローン引き継ぎの方法
名義変更を行う際は、金融機関への申請に加えて、確定申告や住宅ローン減税の手続き変更も考慮する必要があります。
夫の収入や信用力が十分であればスムーズに進みますが、審査で通らない場合は他に担保や連帯保証人を用意しなければならないこともあります。離婚協議の段階から金銭計画をまとめておくことが、スムーズな手続きの鍵となります。
公正証書でルールを明確にしておく大切さ
支払い義務や住居の権利関係をはっきりさせるために、公正証書の作成は非常に有効です。
公正証書には強い法的効力があるため、万一の支払い不履行時にも差し押さえなどの手続きがとりやすくなります。特に家やローンといった大きな金銭的負担が絡む問題では、公正証書での明文化がトラブル回避に役立ちます。
【ケース②】妻が家に住み続ける場合の注意点
妻が自宅を引き継ぐ場合、離婚後の生活設計や審査条件など多方面の検討が必要です。
まず、夫名義のローンを妻名義に借り換える必要があるケースが多く、妻の収入や資産状況を考慮した審査を受けます。離婚後の子育てや家計のやりくりを見越した返済計画を立てることが大切です。
ペアローンや連帯債務の場合は、名義変更だけでなく金融機関と再度契約を結ぶ必要があり、審査内容も複雑化しがちです。勤務形態や勤続年数が審査の重要ポイントとなるため、離婚準備の段階で再就職や職場での待遇も含めたライフプラン全体を考慮しておくと安心です。
また、住まいの維持費や固定資産税、リフォーム費用なども妻側が負担する可能性が高いため、安易に「とりあえず家を残す」という考え方は避けましょう。将来的な支出や不測の事態にも対応できる金銭計画を固めることが、安心して住み続けるための秘訣です。

ローン借り換え・名義変更で気をつけたいポイント
妻が新規で住宅ローンを組む場合、金融機関は安定した収入や信用情報を重視します。
加えて、物件自体の担保価値も評価に大きく影響するため、評価が低いと借り換え自体が困難になる場合もあります。こうしたリスクを回避するには、事前に複数の銀行に打診して条件を比較・検討することが大切です。
子どもの生活環境と養育費を考慮する
未成年の子どもがいる場合、家の確保は子どもの生活基盤を維持する意味でも重要になります。
通学区や周辺環境を変えたくないのであれば、妻が家を引き継ぐ選択肢は大きなメリットを持ちます。ただし、その分の金銭的負担や養育費の分配をどう行うかも含め、総合的に判断しなければなりません。
【ケース③】家を売却する場合の流れと対応策
売却によってローンを清算し、夫婦間の財産分与を明確にするという選択肢もあります。
不動産売却を検討する場合は、まず金融機関と事前相談を行い、売却予定価格とローン残債の差額を確認しましょう。オーバーローンの場合、通常の売却ではローンを完済できないため、任意売却を検討することになります。共有名義や連帯保証が絡んでいると手続きが煩雑になるため、早い段階で専門家のサポートを受けるのが望ましいです。
売却益がローン残債を上回る場合は、残りの利益を夫婦で分割します。離婚協議の際に、財産分与のバランスを踏まえて誰がどのくらいの割合を得るのかをしっかり話し合いましょう。協議が整わず時間がかかると、売却のタイミングを逃す可能性もあるため注意が必要です。
売却活動をスムーズに進めるには、不動産会社の選定も重要です。複数社から見積もりや査定をとることで、適正価格での売却を目指せます。離婚後の資金計画にも影響するため、焦らず情報収集し、双方が納得できる形で進めることが大切です。

一般売却と任意売却の違い
一般売却はローン残債より高い価格で売ることを前提とする通常の手続きです。
一方、オーバーローンで売却価格が残債を下回る場合には、債権者である金融機関の同意を得て任意売却を行います。任意売却は早期解決を促せるメリットがある一方、金融機関との交渉が必要になり、時間や手間がかかる側面もあるため、慎重に進める必要があります。

ペアローン・連帯債務ならではのリスクと対処法

夫婦共同で組んだペアローンや連帯債務は、離婚後も返済責任が双方に残る点がポイントです。
ペアローンや連帯債務は融資額を増やしやすいメリットがありますが、離婚後は互いにローン責任が残るため大きなリスクとなります。どちらかが家を引き継いでも、もう一方が連帯債務者として残っていれば、万が一の滞納時に返済請求が及ぶこともあります。定期的な連絡や支払い状況の把握を怠ると、知らない間に債務が膨らむ恐れがあるため注意が必要です。
対策としては、まず金融機関に相談し、どちらかが単独で返済を続けられるよう借り換えを検討するのが最優先です。いずれか一方がペアローンを引き取れるだけの信用力や収入があれば理想ですが、現実的には審査で厳しく見られることが多いでしょう。困難な場合は、家を売却してペアローンを解消する選択肢も視野に入れる必要があります。
どちらも返済を継続できない場合、任意売却や売却後の残債整理など、より複雑なプロセスに移行しなければなりません。トラブルを最小限に抑えるには、離婚協議書等で負担割合を事前に取り決め、公的に文書化しておくことが有効です。

離婚後に起きやすい住宅ローントラブルと早期対処

離婚後に住宅ローンを巡るトラブルが発生すると、生活再建そのものが危うくなる可能性があります。
離婚直後は感情的にも不安定な状態が続きやすく、ローンの支払いが疎かになったり、名義変更が中途半端なまま放置されるケースが見られます。気づいたときには滞納が重なり、信用情報に傷がついてしまうため、早期に異変を察知し、金融機関や専門家へ相談することが大切です。
また、家の権利関係が整理されていないと、元配偶者が勝手に家に住み続けたり、家賃相当分の支払いがトラブルの種になる事例もあります。離婚時の協議や公正証書で決めた事項を着実に実行するよう、お互いが意識しておく必要があります。
トラブルを早期に解決するためには、調停や審判といった司法の場を利用するのも一手です。第三者の調整を経ることで、支払い責任や不動産処分に関する明確な取り決めができ、将来的なリスクを抑えながら新たなスタートを切るための土台を整えやすくなります。
法律事務所アスコープ 東京オフィス・折田 裕彦離婚のご相談を受ける際、特に多いのが住宅ローンをどう処理すべきかという問題です。名義や返済方法を十分に整理しないまま離婚を進めてしまうと、後になって支払いの行き詰まりや信用情報への影響など、深刻なトラブルに発展するケースが少なくありません。
実務上、この点を軽視したまま離婚が成立してしまい、後から相談に来られる方も多いのが現状です。離婚を検討する段階で弁護士に相談し、売却や借換え、負担割合を含めて戦略的に検討することが重要です。
【Q&A】離婚と住宅ローンに関するよくある質問
Q: 離婚後も元配偶者が連帯保証人のままだとどうなりますか?
離婚しても連帯保証人の契約は自動的には解除されません。名義人が返済を滞納した場合、元配偶者に返済請求が行く可能性があります。連帯保証から外れるには、金融機関の承諾を得て借り換えや保証人の変更手続きが必要ですが、名義人の返済能力が十分でないと審査が通らないケースも多いため、離婚協議の段階で対策を検討しましょう。
Q: オーバーローンの家を財産分与するにはどうすればいいですか?
オーバーローンの場合、家の価値がマイナスのため財産分与の対象となる資産はありません。どちらがローンを引き継ぐか、または任意売却するかを協議する必要があります。任意売却後も残債がある場合は、どちらがどれだけ負担するかを離婚協議書や公正証書で明文化しておくことで、後のトラブルを防げます。
Q: 離婚後に元配偶者がローンを払わなくなったらどうすればいいですか?
まずは元配偶者に連絡を取り、返済状況を確認しましょう。公正証書で取り決めがあれば、強制執行などの法的手段をとることも可能です。放置すると滞納が進み、最悪の場合は競売にかけられる恐れがあるため、早い段階で弁護士や金融機関に相談し、対処法を検討することが重要です。
Q: 離婚時に住宅ローン減税はどうなりますか?
住宅ローン減税は、ローンの名義人が実際に居住していることが条件です。離婚後に名義人が家を出て元配偶者が住み続ける場合、住宅ローン減税を受けられなくなる可能性があります。名義変更や借り換えを行った場合も、新たな名義人の条件次第で減税の適用が変わるため、税務署や税理士に確認しておくと安心です。
Q: 離婚前に家を売却することはできますか?
離婚前でも夫婦の合意があれば家を売却することは可能です。売却益でローンを完済し、残った金額を財産分与として分け合う方法はスムーズに進みやすいです。ただし、共有名義の場合は双方の同意が必要となるため、早い段階で話し合いを始め、不動産会社に査定を依頼して具体的な計画を立てることをおすすめします。
離婚と住宅ローン問題は早めの準備が大切
離婚時の住宅ローン問題を円滑に解決するには、早期の情報収集と専門家のサポートが鍵です。家の評価額やローン残高、名義の状況を正確に把握し、家を残すか売却するかの方針を決めましょう。
夫婦間での合意だけでなく、公正証書などで法的裏付けを取ることで、離婚後の支払いリスクを最小限に抑えられます。本記事でご紹介したポイントを参考に、着実に手続きを進めることが新生活を安定させる第一歩となるでしょう。

