
離婚したくないのに離婚調停を申し立てられると、どのように対応すべきか判断に迷うこともあるかもしれません。離婚調停は対応の仕方によって、精神的・時間的な負担やその後の手続きの進み方が変わることもあります。
本記事では、離婚調停を欠席・拒否した場合のリスクや、具体的な対処法について解説します。
この記事でわかること
●離婚調停に行きたくない場合は拒否できるのか
●離婚調停を欠席するとどんなリスクがあるか
●離婚したくない場合はどう対処するべきか

弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所(東京弁護士会所属)
2009年の事務所開設以来、女性側の離婚・男女問題の解決に注力しています。年間700件以上、累計5000件以上の相談実績があり、多様な離婚のノウハウを蓄積。
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離婚調停に行きたくない!欠席するとどうなるか

「離婚調停に行きたくない」と感じる背景には、精神的な負担の大きさや、裁判所という場への抵抗感、相手と直接向き合うことへの不安など、さまざまな事情があります。ただし、家庭裁判所から期日の呼び出しを受けている以上、欠席の影響を事前に理解しておく必要があります。
調停は話し合いの手続きであり、出席したからといって必ず離婚が成立するわけではありません。一方で、正当な理由なく欠席した場合には、法的・実務的な面で不利益が生じる可能性があります。ここでは、離婚調停を欠席した場合に考えられる影響について見ていきましょう。
無断の欠席は過料が科されるおそれがある
家事事件手続法51条2項によると、家庭裁判所から期日呼出しを受けた場合には、調停期日に出頭する義務があるとされています。この出頭義務は同法258条1項によって離婚調停にも準用されており、正当な理由なく欠席した場合には、同法51条3項により5万円以下の過料を科される可能性が否定できません。
実際に過料が科されるかどうかは、欠席の理由や回数、事案の内容などによって個別に判断されます。やむを得ない事情がある場合は事前に家庭裁判所へ連絡し、期日の変更を申し出ることで対応できるケースもあります。「行きたくない」という気持ちだけで無断欠席することは避け、適切な手続きを取ることが重要です。
関係者に悪印象を与える可能性がある
調停を無断で欠席すると、調停委員や裁判官から「話し合いに応じる姿勢が乏しい」「協議に消極的」と受け取られることがあります。調停は当事者双方の意見を踏まえて進められるため、一方が出席しない状態が続くと、その事情や考えを十分に伝える機会を失うかもしれません。
相手方に対しても「協議が成立しにくい相手」という印象を与え、感情的な対立が深まる要因になるケースもあります。結果として調停が不成立となり、その後の手続きが訴訟へ移行しやすくなるなど、望まない展開につながる可能性もあるでしょう。
親権や財産分与に影響するケースがある
離婚調停やその後の裁判では、親権・面会交流・養育費・財産分与といった条件について判断が行われます。継続的に欠席していると、自身の生活状況や子どもとの関わり方、経済状況などを十分に説明できないまま手続きが進むこともあり得ます。
特に親権や面会交流に関しては、子どもの監護状況や養育への関与が重視される傾向です。資料提出や説明の機会を逃すことで、結果として不利な条件が定められるリスクが高まる点には注意が必要です。
離婚調停は拒否できる?

離婚調停は、当事者の合意によって成立する話し合いの手続きです。最終的に離婚に応じるかどうかは、当事者の意思に委ねられています。ただし家庭裁判所の手続きとして行われる以上、調停期日への出頭や手続き上の対応については、一定の義務が生じる点に注意が必要です。
この章では、離婚調停の「拒否」が認められるのか、また拒否した場合にどのような流れになるのかを解説します。
離婚調停の拒否は可能
離婚調停は、話し合い手続きであり、原則として当事者双方が合意しなければ成立しません。そのため、調停の場で「離婚に応じない」という意思を示して離婚そのものを拒否し、調停不成立とすることは可能です。調停委員から合意案が提示されたとしても、納得できなければ同意する必要はありません。
一方で、離婚調停の期日への出頭自体を一方的に拒否することは、前述のとおり過料や心証面での不利益につながるおそれがあります。離婚したくない場合には、調停に出席したうえで、自身の考えや事情を伝え、離婚に応じない姿勢を明確に示す対応が現実的でしょう。
調停不成立の後に裁判に移行するのが一般的
離婚調停で当事者間の合意が得られなかった場合、調停は不成立となります。その場合、離婚を求める側は家庭裁判所に離婚訴訟を提起することが可能です。
離婚訴訟を提起する際には、調停不成立調書や不成立証明書を添付し、裁判官が婚姻関係の状況や離婚原因の有無について審理します。調停はあくまで話し合いの場であるのに対し、訴訟では法的な判断が下される点が大きな違いです。
離婚訴訟では一方が拒否しても離婚が成立するケースがある
離婚訴訟では、当事者の一方が離婚を拒否していても、裁判所が離婚を認める判決を出すことがあります。民法770条1項では、次のような法的離婚事由が規定されています。
- 配偶者に不貞行為があった場合
- 配偶者から悪意で遺棄された場合
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない場合
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
長期間の別居や、夫婦関係の修復が困難と判断される事情が認定された場合は、「離婚したくない」という意思表示だけでは、婚姻の継続が認められないこともあります。調停の段階でどのような事情が主張されているのか、将来訴訟に移行した場合にどの点が争点になり得るのかを把握しておくことが重要です。
参考:e-Gov法令検索 民法
離婚したくない場合の対処法

離婚調停を申し立てられた場合、直ちに離婚を受け入れなければならないわけではありません。離婚を望まないのであれば、取るべき対応や備えておきたい手続きはいくつかあります。
ここでは、離婚したくない場合に検討されることの多い対処法について、見ていきましょう。
離婚届の不受理申出書を提出しておく
配偶者が離婚届を一方的に提出する可能性がある場合には、市区町村役場に「離婚届不受理申出書」を提出しましょう。この申出書の届出により、本人の意思確認がない限り、離婚届が受理されない状態になります。
離婚調停中や別居中であってもこの申出は可能であり、費用もかかりません。申出をしておくことで知らない間に離婚が成立してしまう事態を防げるため、離婚を望まない場合には早めに検討しておきたい手続きといえます。
調停委員の心証を良くするようにふるまう
離婚調停の場では感情的な主張に終始するのではなく、事実関係や自身の考えを落ち着いて伝える姿勢が求められます。調停委員は、当事者双方の話を踏まえながら、合意の可能性や今後の方向性を探る立場にあるためです。
誠実に出頭し、必要な資料を提出しながら子どもの生活や将来を考えた発言を行うことで、協調的な態度として受け取られやすくなる可能性が期待できるでしょう。こうした姿勢は、親権や面会交流、養育費などが議題になった場合議題になった場合の進行において、スムーズに進む可能性があります。にも判断の前提事情として考慮されることがあります。
本当の離婚理由を再確認し見極める
相手から示される離婚理由が「性格の不一致」や「価値観の違い」といった抽象的なものであっても、その背景に別の事情が存在するケースもあります。不貞行為のような表に出ていない要因が、離婚調停の申立てにつながっている可能性も否定できません。
離婚したくない場合は、相手の主張をそのまま受け取るのではなく、これまでの生活状況や経緯を振り返り本当の理由がどこにあるのかを冷静に確認する必要があります。状況に応じて、証拠となり得る資料や記録を手元に残しておくことも検討しましょう。
離婚調停の申し立てをされることによって生じ得る負担

離婚調停を申し立てられると、離婚の可否だけでなく、生活や仕事、子どもへの影響など、さまざまな側面で対応を求められることになります。
離婚を望んでいない立場であればなおさら、手続きに伴う負担を事前に把握しておくことが重要です。ここでは、離婚調停の申し立てによって生じ得る主な負担について解説します。
精神的な苦痛が大きい
離婚調停は婚姻関係の継続そのものが争点となる手続きであり、当事者にとって心理的な負担が生じやすい場面です。特に離婚したくない側にとっては相手方の主張や離婚を求める理由に向き合う必要があり、その過程が精神的な疲弊につながる可能性もあるでしょう。
仕事や家事、育児と並行して調停への対応を続けることで、日常生活の中に継続的な心理的ストレスを抱える状況になりやすい点も、離婚調停によって生じ得る負担といえます。メンタル面の不安は、一人で抱え込まず、カウンセラーに相談するのもひとつの方法です。
平日対応が必要になる
家庭裁判所で行われる離婚調停は、原則として平日の昼間に期日が指定されます。そのため、平日仕事をしている場合には休暇の取得や業務調整が必要になり、職場への説明や引き継ぎといった実務的な負担が生じます。
育児を担っている場合にも、保育園や学校の予定調整、子どもの預け先の確保などが必要なこともあるでしょう。どうしても期日に出頭できない場合は事前に家庭裁判所へ連絡し、期日変更の申出を行うなど継続的なスケジュール管理が求められます。
子どもに影響が出る可能性がある
離婚調停や別居をめぐる状況は、家庭内の雰囲気や生活環境の変化を通じて子どもに影響を与えることがあります。親同士の対立が続くことで、子どもが不安定な状態に置かれたり、生活リズムが乱れたりするケースも少なくありません。
特に、親権や面会交流が話題になる場合には、子どもの生活状況や意向が調停の中で取り上げられることがあり、配慮が求められます。
関連記事:離婚が子どもに与える影響とは?小中高別に解説|離婚による悪影響を最小限に抑える7つの方法
費用面の心配がある
離婚調停自体の申立費用や郵券代は比較的少額ですが、弁護士に依頼する場合は相談料や着手金、報酬などの費用が発生します。調停が長期化したり、訴訟へ移行したりすると、経済的な負担が増える可能性も考えられるでしょう。
別居に伴う住居費の増加や生活費の分担など、調停とは直接関係しない支出が生じることもあり、全体として家計への影響を考慮しておく必要があります。
法律面の対応が難しい
離婚調停では、親権・養育費・財産分与・慰謝料・年金分割など、複数の法的論点が同時に扱われます。これらはいずれも専門的な知識を要する分野であり、短期間で理解し判断することは困難です。
十分な理解がないまま調停にのぞむと、将来の生活や子どもの養育に影響する条件について、結果的に不利な内容で合意してしまうおそれがあります。
離婚したくないのであれば弁護士に相談がべストか
弁護士への相談は有力な選択肢のひとつではありますが、負担や状況に応じて必要性を検討することが重要です。
弁護士に相談するメリットは、調停で主張すべき点の整理や、法的に評価されやすい事情の見極めについて助言を受けられる点です。客観的・専門的な視点からアドバイスを得られれば、調停対応の負担軽減が期待できるでしょう。
特に相手がすでに弁護士を付けている場合は当事者同士の力関係に差が生じやすくなるため、弁護士を付けたほうが良いケースといえます。
一方で、弁護士に依頼すると、相談料や着手金、報酬などの費用が発生します。離婚に強い弁護士を探す手間もかかるでしょう。また、すべてのケースで弁護士対応が必要になるとは限らず、調停の内容や争点の複雑さによっては、スポット的な相談にとどめるという選択もあり得ます。
裁判所での調停に強い抵抗がある場合や、より柔軟な話し合いの場を求める場合には、弁護士相談とあわせて別の手段を検討する余地もあります。
負担を減らしたいならADRを提案するのもひとつの方法

裁判所で行われる離婚調停に強い抵抗がある場合や、できるだけ柔軟な話し合いの場で関係の修復や条件調整を模索したい場合には、弁護士への相談とあわせて民間のADR(裁判外紛争解決手続)を検討する方法もあります。
ADRは、裁判所を介さず、第三者の関与のもとで当事者同士の話し合いを進める仕組みです。
離婚調停と異なり、手続きの進め方や開催方法に一定の柔軟性がある点が特徴です。仕事や育児との両立、心理的負担の軽減といった観点から選択肢のひとつとなり得ます。
ADRと離婚調停の違い
ADRは民間の調停機関が運営する話し合いの場であり、家庭裁判所で行われる離婚調停とは制度上の位置付けが異なります。ADRでは、当事者の事情に応じて、話し合いの進め方や開催場所、時間帯などについて比較的柔軟な運用が行われる点が特徴です。
一方、家庭裁判所の離婚調停は裁判手続として実施され、法律に基づいた枠組みの中で進められます。調停が成立した場合には、調停調書が作成され、その内容について一定の法的な強制力が認められる点もADRとの違いのひとつです。調停が不成立となった場合には、離婚訴訟へ移行しやすいルートも用意されています。
ADRと離婚調停では、話し合いの柔軟性や法的枠組み、強制力に違いがあり、それぞれの特性を踏まえて選択することが求められます。
ADRを利用するメリット
ADRは仕事や育児との両立がしやすくなり、時間的な負担を抑えやすい点がメリットです。平日夜間やオンラインでの実施など、当事者の生活状況に合わせた形で話し合いの場を設けられるためです。
また、法律の専門家や調停人が中立的な立場から双方の意見を整理し、感情面にも配慮しながら合意案を提示します。対立を激化させずに関係修復や円満解決を目指しやすい点も、ADRならではといえるでしょう。
ADRにおいて気をつけたいポイント
家庭裁判所の調停調書とは異なり、ADRで合意に至った内容は履行を確保できない場合があります。合意内容を確実なものとするためには、別途手続きが必要になるケースがある点は理解しておきましょう。
また、ADRを運営する団体によって、費用体系や担当者の専門分野には差があります。取り扱い実績や担当者の資格、費用の明確さなどを事前に確認し、自身の状況に合ったADR機関を選ぶことが重要です。
離婚調停に行きたくない、離婚したくないケースについてよくある質問
Q1.離婚したくないのに調停に応じる必要はありますか?
家庭裁判所から正式に期日の呼び出しを受けた場合、正当な理由なく出頭しないと、過料や心証面で不利に扱われるおそれがあります。離婚そのものに応じる意思がない場合であっても、調停には出席し、自身の考えを伝えることが望ましいでしょう。
調停の場では離婚に応じない意思を示しつつ、婚姻継続のための条件や今後の生活方針について話し合うことも可能です。
Q2.離婚調停から円満調停に切り替えることは可能ですか?
当事者双方が婚姻関係の継続を希望する方向になった場合には、離婚調停から夫婦関係円満調整調停といった別の家事調停へ切り替えることは手続き上可能とされています。
関連記事:うまく離婚する方法〜円満離婚を実現するための徹底ガイド
Q3.調停中に別居するといわれました。離婚したくないならどうするべき?
調停中の別居は、後の裁判において「夫婦関係が破綻に向かっている事情」と評価される可能性があります。離婚を望まない場合は、別居の必要性や期間、条件について慎重に検討し、安易に応じないことが重要です。
関連記事:離婚調停中に別居してもいい?別居を決断する前に考えるべきことや調停を有利に進めるためのポイント
Q4.裁判所に行かずに離婚調停をすることはできますか?
家庭裁判所を利用せずに離婚や夫婦関係の問題を話し合う方法として、ADRを活用する選択肢があります。ADRは厳密には「離婚調停」ではありませんが、第三者が関与する話し合いの場として利用可能です。
オンラインや夜間対応が可能な機関もあり、「裁判所に行くこと自体に抵抗がある」「できるだけ柔軟な環境で話し合いたい」という夫婦にとって、裁判所外で離婚や条件調整を進める選択肢になり得るでしょう。
Q5.離婚調停で弁護士が必要になるケースとは?
相手方がすでに弁護士を付けている場合や、親権・高額な財産分与・DVやモラハラなど複雑な事情が関係している場合には、弁護士に依頼する必要性が高まります。
一方で、必ずしもすべてのケースで弁護士対応が不可欠というわけではありません。調停内容や争点に応じて、相談のみを利用するという選択も考えられます。
関連記事:【取材】弁護士に依頼した方がよいケースとは?元調査官×元書記官・現弁護士の視点から
離婚調停における負担を少しでも減らすために

「離婚したくない」と考えているにもかかわらず離婚調停を申し立てられた場合、調停への対応自体が精神的・時間的な負担になることがあります。欠席や拒否による影響、調停後の手続きの流れを把握しないまま進めると、結果として負担が大きくなるおそれもあります。
離婚調停は話し合いの手続きであり、必ず離婚に応じなければならないわけではありませんが、対応の仕方によっては将来の条件や手続きの進み方に影響が及ぶことがあります。そのため、自身の立場や希望を踏まえ、無理のない対応方法を選ぶことが重要です。
裁判所での調停に強い抵抗がある場合や、柔軟な話し合いの場で関係の修復や条件調整を模索したい場合には、弁護士への相談とあわせてADRを検討する選択肢もあります。制度の特徴を理解したうえで自分に合った方法を選ぶことが、負担を抑えるための一助になるでしょう。
