「旦那デスノート」というサイトをご存知でしょうか。そこには妻から夫への恨み言が書きつづられています。SNSでも「#旦那デスノート」で検索すると、やはり多くの憎しみの声が…。これほど夫が嫌いなのに、なぜ離婚しないのか。ネットで憂さを晴らす妻の心理を紹介します。
旦那デスノートに夫への恨みつらみをつづる妻たち
「旦那デスノート」というサイトをごぞんじでしょうか。夫に不満を持つ妻たちが、夫への恨みつらみを書き込むサイトです。「#旦那デスノート」とハッシュタグをつけて、SNSに投稿する妻もいます。
内容は、日頃の不平不満だけでなく、夫の死を願うものばかり。夫が死亡した妻の、解放された喜びも書かれています。中には、夫が体調を崩すよう、薬を食事に混ぜているとの内容もあり、「さすがに行き過ぎで、やばいのでは」と感じる人もいるでしょう。心当たりのある夫が読むと「自分の妻がこんなことを考えていると怖い」と肝が縮み上がるかもしれません。
また早く帰ってきた…そんで出かけて行った。
出掛けてくれてありがとう。
もう一生帰って来ないでください。お願いします。
色んな事を考えて生きてるのに
貴方は何も考えずに毎日毎日過ごして
私だけこんな目にあうんだ。早くこの生活が
終わりますように。どうか死神様、バイクが故障して事故ってあの世に逝ってくれますように。
その後はどうにかします。私の願いが届きますように。もう帰ってきませんように。
クソ旦那のスーツの内ポケットを破いてやった。唯一のブランドモノだけど、太ってどうせ着れないのに、痩せたら着る、と言ってとっておいてる。スペースの無駄。
先日クソ旦那の歯ブラシでトイレ掃除。いまだにその歯ブラシ使ってる。地獄へ堕ちろ。
靴の中に薔薇の棘を入れておいた。が、あまり効果なかった。何か良い方法考え中。
靴は毎日踏んでるし、触りたくもない。
実際、「そんなに夫が嫌いで、愛情もないのなら離婚すればいいのに」という声もありますが、妻たちは「事情があって離婚できないから、ここで憂さを晴らしている」と反論します。「だんなデスノート」で夫の死を願う妻たちは、どうして離婚しないのでしょうか。
私だって幸せな家庭を作りたかった。普通にケンカしたり仲直りしたり、協力したり助け合ったり、お互い成長できる夫婦でありたかった。できると思ってた。たぶんノート書いてる人大半はそう思ってたと思う。
でも、旦那だけのせいではないかもやけど、明らかに旦那が原因で、こんなノート書くような私になってしまった。
憎い、悔しい、歯がゆい、寂しい、いろんな負の感情で毎日毎日旦那の顔見るたびにがっかりする。そしてものすごく疲れる。
解放されたい、今すぐ飛び出していきたい。けどいろんなしがらみがあってそれもできない。だから、ノートに頼る。ここに書くことくらいは許してください神様仏様。
旦那デスノートに書き込む妻はなぜ離婚しない?
「だんなデスノート」や「#旦那デスノート」で夫へ恨みつらみを吐き出し、夫の不幸を「書き込みの効果だ」と喜ぶ妻たちは、なぜ離婚しないのでしょうか。デスノートの書き込みからうかがわれる「離婚しない理由」を5つ紹介します。
離婚しても一人で生活していく自信がないから
どんなに夫が嫌いでも、専業主婦で収入を夫に頼っていると簡単には離婚できません。「働いて自立すればいい」と言っても、特に資格や技能がなければ、生活費を賄えるだけの収入がすぐに入るとは限りません。あまり仕事をした経験がない人や、長いブランクがある人は、働くことへの不安もあるでしょう。
経済力がなく、離婚しても一人で生活していく自信がないから、多くの妻は離婚をためらいます。こうした妻は夫への不満や、将来への不安、現状を変えることのできないもどかしさなどを抱えているため、だんなデスノートに書き込むことでストレスを発散するのです。
モラハラ夫がウザすぎる。
離婚したいのに経済力がないが故に踏み切れない自分が情けない
子供に苦労させたくないから
子供がいなければ、妻が一人で家を出て行っても、なんとか暮らしていけるでしょう。夫と暮らしているときよりも、生活水準が下がったとしても気ままな一人暮らしを楽しめます。しかし、子供がいると「子供には苦労をさせたくない」と離婚せずに我慢する妻は少なくありません。
経済力のある夫と離婚して子供と暮らし始めれば、多くの場合、生活水準は下がってしまいます。子供の教育費まで賄えるほど十分な養育費をもらえるとは限りませんし、支払いが滞ることもあります。子供の進学や将来を考えると「今は離婚せずに我慢するしかない」と考える妻も多いでしょう。
裏切り男。
家族として一緒にいるだけ。
子供いなかったら、とっくに離婚してるっつーの。
自分の置かれてる状況考えろ。
前回は捻挫したから、今回は骨折してください。
それか熱中症で倒れてください。
心配するふりして心の中で思いっきり笑ってやるよ。
どうか神様お願いします。
奴をむこうの世界へ連れてってください。
夫が離婚に同意しないから
離婚には、基本的に夫婦の合意が必要です。協議離婚にせよ、家庭裁判所の調停委員が間に入る調停離婚にせよ、最終的に財産分与や親権、慰謝料などの条件で合意しななければ離婚は成立しません。離婚裁判はハードルが高く、夫の浮気やDVなどの原因がなければ、裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。「愛情がない」というだけでは離婚できません。
こうなると、妻は家を出て別居するか、我慢して同居を続けて離婚に必要な証拠を集めるか、それとも、夫の死を願うしかありません。このうち、最も手間がかからず、一定の金銭の確保が見込めるのは、夫の死でしょう。このため、妻は「夫と死別できれば、今の生活から抜け出せるのに」と願うのです。
離婚話をしてるのに、全然同意してくれないよね。
子どももいるし、ローンもあるし、正直事故死してくれないかなーと祈ってるよ。
早く死んでほしい。一緒にいるだけでイライラする。
死別すると遺産や保険金が入るから
夫の経済力にもよりますが、定職に就き、堅実な生活をしているのであれば、夫が死亡したとき、妻には遺産や保険金が入るはずです。住宅ローンの支払いが終わっていれば、家も手に入ります。夫と一刻も早く離れたいと願っている妻にとって、これほど幸運なことはありません。
だからといって、専業主婦にできることは、健康に悪そうな脂ぎった食事を用意するくらいのことです。テレビドラマのように、簡単に犯罪に手を染めるわけにはいきません。このため妻は、夫のいない安定した暮らしを夢見て「だんなデスノート」に夫の死を願う言葉をつづるのです。
私は離婚して新しい人生を始めたい。
子ども達も旦那が嫌いだから早く別れたい。
婚姻関係の今、旦那死んでくれたら一軒家が無料になる。
ローン消える。
子ども達と広い家に固定資産税だけで住める。
変えてなかったら私に保険金も入るから子ども達にいい学校行かせてあげれる。
だから早く死んで。
夫の死を見届けたいから
中には「夫の死を見届けたい」という妻もいます。これまで、自分勝手に生きてきて、家族にも迷惑をかけてきた夫の最期を見て、気持ちをスッキリさせたいというわけです。中には、悲惨な状況の中で最期を迎えさせてやりたいと、復讐心を抱く妻もいます。
これは離婚できないことへの不満の裏返しでしょうが、夫が事故で重体になったことや、命に関わる病気が進行していることを、喜びながら報告する書き込みも数多く見られます。そして、夫が死亡すると、妻は「効果がありました」と死神様に感謝しながらサイトを去っていきます。
私がなぜ離婚しないでいるかわかる?
貴方の最期を見届ける為だよ。泣くふりして立派に喪主を務めてやるからよ。復讐したいんだよ。
早く喪主させてくれよ!
旦那デスノートに書き込む妻の心理
妻たちはなぜ離婚しないで、だんなデスノートで恨みを吐き出すのでしょうか。だんなデスノートに夫の不幸を願う言葉を書き込む妻たちの心理状態を探ってみます。
結婚したことを後悔している
だんなデスノートに書き込む妻は、結婚したことを激しく後悔しています。「こんな夫と結婚しなければ、もっと幸せだったのに」「世の中には、幸せそうな夫婦がたくさんいるのに」と思いながら、今とは別の人生を夢見ています。
恋愛時代や新婚時代に愛情があった頃は、夫の良いところばかりが目につき、欠点や短所に気付いても「結婚して子供ができたら、きっと変わってくれるだろう」と思っていたはずです。しかし、現実はそうではありません。だんなデスノートに書かれているのは、「結婚」という夢に裏切られた妻の嘆きの声ともいえるでしょう。
今日もいつも通りにむかついた
まだ死なないのかと毎日願ってる
お前の顔も言う事も行動も全部嫌い
結婚が人生で1番後悔してる
早く消えて下さい
よろしくお願いします
あいつに嫌なことがたくさんおきますように
モラハラに耐えられない
夫がモラハラで、毎日、暴言や見下したような態度に耐えているという書き込みも多く見られます。モラハラ夫は妻を精神的に抑圧し、従順な妻として支配しようとします。中にはモラハラに屈して、洗脳されてしまう妻もいますが、モラハラに反発したり、洗脳が解けたりした妻にとって、モラハラ夫との日々は地獄のようなつらさです。
モラハラは証拠が残りにくいため、被害を訴えても理解されないことが多く、妻は孤独になりがちです。また、モラハラを理由に裁判で離婚を認めてもらうことも難しいのが実情です。ただ夫の仕打ちに耐えるしかない妻はやがて、夫の死を願い、恨み言をネットに書き込むようになってしまいます。
もう嫌い過ぎて仕方ない…好きで結婚したはずなのに…結婚して23年…あの頃の気持ちはお前のモラハラのせいでどっか行ったわ!23年だぞ!お前のモラハラとDVに耐えて耐えて、一度は離婚寸前まで行ったのに、、なんでまだ続いてるんだ?
あの時離婚しとくべきだったと後悔しかない…
もうとにかく早く死んでほしい…
こればかり毎日切に願う…
精神的に追い込まれている
だんなデスノートに夫への恨みを書き込む妻の多くは、精神的に追い詰められた状態になっています。中には「生きているのが嫌になった」とまで、追い詰められた心情を書きつづる妻もいます。こうした妻は、夫への怒りを書き込むことでストレスを発散し、辛うじて精神を保っているのでしょう。
精神的に追い詰められると、人は冷静な思考ができなくなり、一つのことに考えが凝り固まってしまうことがあります。そして、追い詰められれば追い詰められるほど、考えも過激になっていくのです。
嫌がらせしてきたら離婚に向かういっぽうだよ?
あなたが不利になるいっぽうだよ?
離婚調停にきてよ。
暴力・暴言吐いてきて精神的苦痛受けてるのはこっちのほうだよ。
死神様、夫を1週間以内に突然死させてください。
私、生きているのがまた嫌になりました。
旦那デスノート運営者の思い
夫への愛情を失い、夫の不幸を願う妻たちの恨みの声があふれている「だんなデスノート」ですが、どのような人がどのような考えで運営しているのでしょうか。運営者がブログなどで思いを語っているので紹介します。
子供につらい思いをさせたくない
だんなデスノートを運営しているのは、意外にも男性です。1980年生まれで、結婚歴はありません。「だんなデスノート」は2015年に開設しました。これまでITプログラマーやホスト、花屋などの仕事をしてきたそうです。
サイトを開設した理由を、男性は「今の子供たちが、僕のような大人になってほしくない」と語ります。男性の両親は不仲で、両親の嫌な面ばかりを見てきたため、子供の頃から人間関係に悩んできました。そのため「6歳までの間に両親の愛情をたくさん感じられれば、僕みたいにならない」と考えるようになったそうです。
夫婦である限り、ストレスを抱えることもあります。しかし、そのストレスを発散する場があれば、子供の前で夫婦喧嘩も起きなくなるのではないか。夫婦喧嘩がなくなれば、子供の記憶に両親の嫌な思い出は残らない。そう考えて、「だんなデスノート」を開設しました。
一生懸命に生きようとする女性を邪魔するのは、いつも男
だんなデスノートを運営する男性は、妻からの相談にも応じ、弁護士の紹介なども行っています。そうして妻の相談に応じていて感じることは「一生懸命に生きている女性を邪魔するのは、いつも男だ」ということだそうです。
幸せな家庭を築こうと頑張っても、妻を家政婦としか見ない夫は、家庭内で横暴に振る舞い妻のささやかな夢を壊します。そして、離婚して自立しようとする女性を、職場で軽んじ、下心のある態度で接してくるのも男です。運営の男性は「男は加害者であることを自覚して、女性の邪魔をするな」と訴えます。
旦那に死んでほしいと思ったときにやるべきこと
夫の死を望む書き込みには批判もありますが、運営の男性は「旦那に死を望むということは、深刻な問題があることを示唆しています。このような感情は精神的な苦痛やストレスを引き起こすことがあります」と指摘して、次の3つの対処法を勧めています。
1.カウンセリングや精神科医に相談する
2.夫とのコミュニケーションを改善する
3. ストレスを解消するためリラックス方法を見つける。
夫の死を望むようになるまで、精神的に追い詰めた夫に責任があるのは当然です。しかし、そうした負の感情を抱えて思いつめていると、精神衛生上もよくありません。多少のストレスや趣味や運動、瞑想などで解消し、一人では抱えきれなくなったときは、専門家に相談することが大切です。
旦那デスノートは妻のストレス発散の場
過激な書き込みで、「なぜ離婚しないのか」と否定的な意見もある「だんなデスノート」ですが、妻が過激な書き込みをするようになったのには、事情や理由があります。それだけ精神的に追い詰められているということなのです。
夫への過激な書き込みでストレスを発散させている妻も多いでしょう。しかし、書き込みの内容を実際の行動に移してしまうと、犯罪にも問われる恐れがあります。いくら過激な書き込みをしても、ぎりぎりの一線を越えてはいけません。どうしても我慢ができないときは、カウンセラーや弁護士に相談しましょう。
渡辺里佳
カウンセラー
旦那デスノートは妻のストレス発散の場となり、一時的にスッキリするかもしれませんが、根本的な解決には至らず、逆に文字として残すことでマイナスワードが脳にインプットされるリスクがあります。
一度きりの人生です。自分が幸せになるためにはどうすればいいのか、ネガティブ感情に引きずられない思考や自分らしく生きるための方法について、メンタルや法律の専門家と一緒に考えることで、ヒントが得られると思います。
渡辺里佳30代半ばで離婚を経験し、子どもたちが成人する頃に「夫婦関係や離婚に悩む人の助けになりたい」「人の役に立ちたい」という想いが膨らみ、2011年、夫婦問題研究家・岡野あつこ先生主宰の「離婚カウンセラー養成スクール」に通学。
夫婦問題に特化したカウンセリングを学び、同年9月「離婚カウンセラー」資格を取得、52歳でカウンセラーになりました。心理を深く学ぶため、日本プロカウンセリング協会認定「心理カウンセラー2級」資格を取得。現在、法務省認証の民間調停機関「家族のためのADRセンター」主催の「パパとママの離婚講座」の講師を担当。ライター、エディターとしても活動中 (ルポ、インタビューなど)