家庭内別居でしんどい…主な原因は?
夫婦関係が悪化して修復が難しい場合、別居や離婚のほかに、同居したままお互い干渉せずに暮らす家庭内別居という選択肢もあります。対外的には仲の良い夫婦のふりをする「仮面夫婦」にも似た状態です。結婚当初は愛情があったはずなのに、どのような原因から家庭内別居に至るのでしょうか。
喧嘩して仲直りができなかった
ささいな原因の夫婦喧嘩でも、その後の対応によっては家庭内別居に発展するきっかけになることがあります。自分から謝りたくないという男性心理から夫が話し合いに応じず、家庭内別居状態になるのはよくみられるケースです。
堪忍袋の緒が切れた
「話を聞いてくれない」「無駄遣いが治らない」など日常の小さなストレスが蓄積した結果、我慢の限界を超えて夫婦関係の維持を諦める妻や夫は珍しくありません。一つひとつの原因はささいなことなので、いきなり家事も会話もしなくなったパートナーが理解できず困惑する人もいるようです。
決定的な事件が起きた
それまでの夫婦関係に不満がなくても、浮気やDVなど決定的な事件をきっかけに、一気に家庭内別居に陥ることがあります。特に浮気や不倫では、他人と親密な関係になった相手を生理的に受け入れられず、生活空間を別にしたいと考える人が多いようです。
また、DVやモラハラで暴力が一定のラインを超えても、家庭内別居のきっかけになり得ます。webメディアの調査によると、30代・40代では別居を始めて半年から1年以内に離婚する人が半数以上という結果が出ました。
しばらく家庭内別居を続けて5年以内に離婚する割合が多い一方、半年~1年以内という短期間で離婚に至ってしまう夫婦も多くなっています。
ただ、年代による期間の違いが大きく、30~40代は別居から半年~1年以内に離婚する人が多いのに対し、50~60代は別居から3~5年経ってから離婚するケースが多くなっています。
家庭内別居中の男性心理とは?
最低限の会話のみで生活する家庭内別居では、男性心理が理解できない妻が、夫の理不尽な行動に疲弊してしまうこともあります。家庭内別居中の男性心理について、よくみられる具体例を7つ紹介しましょう。
①相手が謝るまで許さない
家庭内別居を選択した男性心理として、一度決めた自分の信念を変えたくないという傾向があるようです。このため、夫婦喧嘩が原因の場合、相手が謝るまで頑固な態度を貫き通すことがあります。こうした男性は、絶対に自分から謝りません。
②時間が経てば解決される
自分から何もしなくても、時間が経てば解決すると信じているのも家庭内別居中の男性心理にみられる特徴です。妻は本気で怒っているのに、こうした夫はいつものことだと楽観的に考えて、妻と向き合おうとしません。その結果、夫婦関係の修復が難しくなってしまいます。
③妻と会話したくない
何事も効率を重視する男性は、感情的な妻との会話は時間の無駄だと考えるケースが多いようです。こういった男性心理から、妻から否定される恐怖感や、口論による精神的な消耗を避けるため、妻との会話を嫌がる夫もいます。
④全てが面倒くさい
細かな分析や考察が苦手な男性は、妻の気持ちや夫婦の将来を見据えて行動するのが面倒だと感じる傾向があります。このような夫は家庭内別居になっても、苦労して問題に向き合うより、なるようになればいいと考えがちです。
⑤子供のことを思うと離婚はできない
一般的に、離婚すると子供の親権は母親が持つケースが多いため、男性は離婚して子供に会えなくなることを心配しがちです。家庭内別居中の男性心理としても、子供のために離婚したくないと願う傾向があります。
⑥世間体を気にして離婚はできない
社会的な承認欲求が強い男性心理が働くと、世間体を気にして離婚より家庭内別居を選ぶことがあります。職種によっては離婚が仕事の信用に影響する場合もあり、社会的・経済的な事情から仮面夫婦を演じる夫婦もいます。
⑦離婚話が切り出されるのを待っている
浮気やDVなど妻に対して後ろめたい理由がある男性は、自分から離婚を切り出すと、妻から慰謝料を請求される可能性があります。家庭内別居中の男性心理として離婚はしたいが、自分に有利な条件を引き出すため妻から離婚話が切り出されるのを待っている状態です。
家庭内別居の末路とは?
家庭内別居を選んだ結果、夫婦はどのような末路を迎えるのでしょうか。夫婦関係を修復するのか、結局離婚してしまうのか、それぞれの具体例や体験談を紹介します。
夫婦関係を修復する
修復不可能に見える夫婦関係でも、少しずつ歩み寄ることで、以前のような愛情を取り戻せる場合があります。次のようなことがきっかけとなり、夫婦関係の修復へとつながることが多いようです。
・積極的にコミュニケーションをとる
・2人が折り合える妥協点を見つける
・カウンセリングを受ける
夫婦関係の悪化には、気持ちのすれ違いや価値観の違いが大きく影響します。直接の話し合いや手紙など、さまざまな手段で積極的にコミュニケーションをとることで、誤解が解消されて夫婦関係の改善につながることがあります。また、夫婦関係の悪化の原因は相手にあると考えがちですが、自分にも反省すべき点がないか振り返ってみることも大切です。
自分たちだけで解決が難しいと感じたら、カウンセリングを受けるのもよい方法です。夫婦で受けるのが望ましいのですが、無理な場合はどちらか一方だけでも構いません。今後の夫婦関係をよりよいものにするためのアドバイスが受けられるでしょう。
ただの夫婦喧嘩から家庭内別居状態になりましたが「おはよう」「ありがとう」などこまめに声をかけるようにしました。長い間無視され続けましたが、少しずつコミュニケーションがとれるようになりました。
夫の浮気とモラハラが原因で家庭内別居していました。やったことは許せませんが子供にもよくないので、以前のように自然に接し始めました。夫は最初驚いていましたが、私や子供に優しくなりました。
離婚する
家庭内別居で一定期間距離を置いて冷静に考えた結果、離婚という結論に至ることは少なくありません。次に挙げる理由があると、離婚を決意するきっかけとなります。
・DVやモラハラがある
・浮気や不倫を繰り返す
・相手の意識が変わらない
家庭内別居でも、ことあるごとにDVやモラハラでパートナーを傷つける相手とは、身の安全のため早めに別居・離婚したほうがよいでしょう。また「一度だけなら」と見逃してこちらから妥協したのに、その後も浮気や不倫を繰り返す相手とも、婚姻関係を続けるメリットがほとんどありません。
夫のモラハラが酷かったのですが離婚せず家庭内別居を選びました。ある日夫の罵声を聞いた娘が泣き出してしまい離婚を決意しました。
不安も大きかったのですが女性支援センターでアドバイスが受けられ、娘と逃げることができました。
夫の不倫が原因で離婚しようとしましたが、夫も反省しており世間体も気になるので、家庭内別居で様子を見ることにしました。
数か月後、不倫相手とまだ関係が続いていたと知り、これ以上結婚を続けるメリットがないので離婚しました。
加藤 惇
離婚することを考え始めたとしても、あせって行動をとらないようにしましょう。あせって行動をしたことで財産分与などで不利になってしまうことは珍しくありません。離婚紛争では、戦略的に行動することが大切です。離婚することを考え始めた時点でまずは弁護士に相談し、自分が一番有利になるように行動することを心掛けましょう。
出典: リコ活MEDIA
男性心理を見極めて、よりよい道を選ぶことが大切
家庭内別居中の夫の中にも、夫婦関係を修復し、以前のような夫婦の愛情を取り戻したいと考えている人もいます。しかし、世間体など自己中心的な男性心理により、家庭内別居からの脱却に消極的な夫も少なくありません。
家庭内別居の今後を考えている妻は、夫の男性心理を見極めることが大切です。夫の気持ちを理解できないときは、夫婦カウンセリングを利用するとよいでしょう。専門家の立場から、当事者だけでは気づかない問題を指摘してもらえ、今後の方向性が見えてくるかもしれません。
加藤 惇/CSP法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
弁護士として、婚姻費用・財産分与・養育費・慰謝料・不貞・親権・面会交流など、離婚にかかわる事件を特に重点的に取り扱う。依頼者の意向を丁寧にくみ取り、常に依頼者の利益を最大化することを目標に活動している。離婚事件のほか、いじめなどの学校事件も多く扱っており、子供に関する問題にも詳しい。CSP法律会計事務所所属。