
配偶者から離婚調停を申し立てられ、「離婚したくない場合は拒否できるのか」と気になっている人もいるでしょう。反対に、自分が申し立てたものの相手が調停に応じず、このまま話し合いが進まないのではと不安に感じるケースもあります。
離婚調停で「拒否」といっても、何を拒否したいのかによって考え方や対応は変わります。また、調停で話し合いがまとまらなかったときに、どのような手続きへ進むのかも確認しておきたいところです。
本記事では、離婚調停を拒否できるのかを整理したうえで、相手が調停や離婚に応じない場合、自分が離婚したくない場合の対応について解説します。

竹内 裕美/弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所(愛知県弁護士会所属)
離婚事件を中心とした家事事件に25年間携わる。2016年アメリカ国務省IVLPプログラム参加。
愛知県弁護士会紛争解決センター副委員長・国際ADRあっせん仲裁人、公益社団法人日本仲裁人協会常務理事・中部支部長として、ADRの普及に尽力。
離婚調停は拒否できる?

離婚調停は、家庭裁判所で夫婦が話し合い、離婚やその条件について合意を目指す手続きです。
「離婚したくないので応じたくない」という人もいれば、「そもそも調停に出席したくない」と考えている人もいるでしょう。ここでは、離婚そのものを拒否する場合と、調停への出席を拒否する場合について、それぞれ確認していきます。
離婚に応じないことはできる
離婚調停を申し立てられても、必ず離婚に応じる必要はありません。離婚したくない場合は、調停の場でその意思を伝えられます。
夫婦関係を修復したい、現時点では離婚を受け入れられないと考えているなら、その理由も含めて伝えます。双方が離婚に合意しなければ、原則として調停離婚は成立しません。
離婚の拒否と調停への出席拒否は別
離婚したくない場合でも、調停には出席できます。その場で、離婚に応じるつもりがないことや、夫婦関係を修復したいという希望を伝えることが可能です。
調停を欠席した場合にどのような影響があるのかは、次章で確認していきましょう。
離婚調停への出席を拒否・欠席するとどうなる?

離婚したくない場合、調停への出席をためらうこともあるでしょう。
調停期日を欠席すると、その後の話し合いにも影響します。ここでは、出席しない場合に知っておきたい点を見ていきます。
欠席しただけで離婚が成立するわけではない
調停を欠席しただけで、相手の希望どおりに離婚が成立することはありません。
離婚調停は、裁判所が一方の主張だけを聞いて離婚を決める手続きではなく、夫婦双方の合意を目指して話し合う場です。
一方で、欠席を続ければ、自分の考えや離婚したくない理由を伝える機会を失うことがあります。
欠席が続くと調停が不成立になることがある
何度か期日を設けても話し合いができない場合は、これ以上調停を続けても合意が見込めないと判断され、手続きが終了することがあります。
調停が不成立になっても、その時点で離婚が成立するわけではありません。相手が引き続き離婚を希望していれば、離婚訴訟に進む可能性があります。
離婚調停が不成立になったあとの流れや選択肢については、こちらの記事で詳しく解説しています。
正当な理由なく呼出しに応じない場合は過料のおそれがある
家庭裁判所から呼出しを受けた場合は、何も連絡せず欠席するのは避けましょう。
家事事件手続法では、家庭裁判所から呼出しを受けた事件の関係人が、正当な理由なく出頭しない場合、5万円以下の過料に処することができると定められています。この規定は家事調停にも準用されます。
調停を1回欠席したからといって、必ず過料が科されるわけではありませんが、病気など、指定された期日に出席できない事情があるときは、そのままにせず、早めに家庭裁判所へ連絡しましょう。
相手が離婚を拒否している場合はどうする?

離婚調停を申し立てても、相手が離婚に応じないケースもあります。
ここでは、相手が離婚を拒否している場合の調停での対応について見ていきます。
調停で離婚を希望する意思を伝える
調停では、まず自分が離婚を希望していることや、その理由を調停委員に伝えます。相手と直接話すのが難しい状況でも、調停委員を介して自分の考えを伝えることが可能です。
調停での伝え方や避けたい発言については、こちらの記事も参考にしてください。
相手が離婚に応じない理由を踏まえて話し合う
相手が離婚に応じない背景には、夫婦関係を続けたいという希望がある場合もあれば、財産分与や養育費などの条件で折り合っていない場合もあります。
調停委員を介して相手の主張を確認し、離婚そのものに反対しているのか、条件面で意見が分かれているのかに応じて話し合います。
自分が離婚を拒否したい場合はどうする?

配偶者から離婚調停を申し立てられても、自分は離婚したくないという場合もあるでしょう。ここでは、離婚に応じたくないときの調停での対応について解説します。
離婚を望んでいない場合は、調停でその意思や理由を調停委員にはっきり伝えます。
たとえば、夫婦関係を修復したいと考えているのであれば、その希望もあわせて伝えます。子どものことや生活面への不安など、離婚に踏み切れない事情がある場合も、自分がどのように考えているのかを説明しておくとよいでしょう。
相手が強く離婚を望んでいても、その場で無理に離婚に同意する必要はありません。調停委員を介して、相手の考えも確認しながら話し合いを進めます。
離婚を拒否するときに確認しておきたいこと

離婚を拒否する場合は、調停で自分の意思を伝えるだけでなく、生活面や手続きにも目を向けておきたいところです。
ここでは、離婚が成立するまでに関係する生活費や届出について解説します。
別居中は婚姻費用について確認する
離婚が成立するまでは婚姻関係が続くため、別居している場合は生活費をどのように負担するかも問題になります。
夫婦や未成熟の子どもの生活を維持するために必要な費用を「婚姻費用」といいます。別居中に夫婦の話し合いで金額を決められないときは、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることができます。
調停でも話がまとまらなければ審判手続に移り、裁判官が双方の収入や支出などの事情を考慮して判断します。
勝手に離婚届を出されるのが心配なら不受理申出を検討する
自分は離婚に同意していないのに、相手が勝手に離婚届を提出するのではないかと心配な場合は、不受理申出という制度があります。
不受理申出は、本人の意思に基づかない協議離婚届などが提出されることを防ぐための手続きです。あらかじめ申出をしておくと、申出人本人が窓口に出頭したことを確認できない限り、対象となる届出は受理されません。
ただし、不受理申出の対象となる離婚届は協議離婚によるものです。調停や審判、判決など裁判所の手続きによる離婚を拒否するための制度ではありません。
不受理申出は、原則として本人が市区町村の窓口で手続きを行います。申出を検討する場合は、本籍地や所在地の市区町村で必要書類などを確認しておくとよいでしょう。
離婚調停の拒否をめぐって対立している場合は弁護士への相談も検討する

相手が離婚を拒否している、自分は離婚に応じたくないなど、夫婦の考えが大きく分かれていると、調停をどのように進めればよいのか判断に迷うこともあるでしょう。
こうした場合は、弁護士に相談するのも一つの方法です。現在の状況を伝えることで、調停で確認しておきたい点や、今後どのような手続きが考えられるのかを整理しやすくなります。
特に、離婚条件をめぐる対立が大きいときや、調停が不成立になりそうなとき、離婚訴訟に進む可能性があるときは、早めに相談しておくと今後の見通しを立てやすくなるでしょう。
弁護士費用が気になる場合は、法テラスの法律相談を利用できることもあります。法テラスでは、一定の要件を満たす人を対象に無料法律相談を行っており、離婚や婚姻費用、養育費なども相談の対象です。相談後に弁護士へ依頼する場合、費用の立替制度を利用できるケースもあります。
まとめ|離婚調停を拒否・拒否された場合はその後の対応まで考えましょう

ここまで、離婚調停を拒否できるのか、調停を欠席した場合の扱いや、相手が離婚を拒否している場合の対応などについて解説しました。
この記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 離婚調停を申し立てられても、離婚に応じる義務はない
- 離婚に応じない場合でも、調停には出席して自分の意思を伝えられる
- 欠席が続き、話し合いができなければ調停が不成立となることがある
- 相手が離婚を拒否している場合は、調停委員を介して理由を確認しながら話し合う
- 自分が離婚したくない場合も、調停でその意思や理由を伝えることができる
離婚を拒否する側、拒否されている側のどちらであっても、まずは自分が希望することや相手と意見が分かれている点を整理することが大切です。夫婦だけでは話し合いが難しい場合や、今後の手続きに不安がある場合は、弁護士への相談も検討してみてください。
弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所/竹内 裕美弁護士離婚調停を申し立てられても、離婚に応じる義務はありません。ただ、離婚を拒否することと、調停を欠席することは分けて考える必要があります。欠席が続くと、ご自身の考えや事情を伝えないまま調停が終了し、その後に離婚訴訟へ進むこともあります。離婚したくない場合でも調停には出席し、その意思と理由を伝えることが大切です。相手との隔たりが大きく進め方に迷う場合は、弁護士にご相談ください。
