離婚理由として「性格の不一致」を挙げる夫婦は少なくありません。しかし、「我慢が足りないのでは」「わがままではないか」という声に悩む方もいるでしょう。性格の不一致による離婚は本当にわがままなのでしょうか。本記事では、性格の不一致で離婚することがわがままではない理由や、離婚を進める際の具体的な手順、後悔しないための判断基準について解説します。
この記事でわかること
・性格の不一致による離婚がわがままではない理由と法的な根拠
・性格の不一致で離婚を進める際の具体的な手順と注意点
・離婚調停や裁判で性格の不一致が認められるケースと必要な証拠
加藤 惇/東日本総合 法律会計事務所(第一東京弁護士会所属)
ホームページ:https://ejla.or.jp/
将来を考えた時「人を助けることができる存在になりたい」という自分の想いに気付き、経済学部から法科大学院に進学して弁護士に。
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離婚問題は、夫婦間で話し合ううちに感情的になり、争いが複雑になってしまうケースが多々あります。 迅速かつ円滑に離婚するためには、離婚や別居が頭をよぎったらすぐに弁護士へご相談ください。 弁護士に相談するタイミングが早ければ早いほど、選択肢の幅が広がり、スムーズに離婚を進めやすくなります。

性格の不一致で離婚するのはわがまま…?
結婚生活が続くにつれ、相手の価値観や生活習慣が見えてきます。「性格が違うのはお互い様」と受け入れられれば問題ありませんが、限界を感じて離婚を考える方は少なくありません。近年では、老後を自分らしく過ごしたいと熟年離婚を選択するケースも増えています。
性格の不一致を理由に離婚したいと考えても、「わがままではないか」という迷いや周囲からの批判が気になる方もいるでしょう。特に子どもがいる場合、「子どものために我慢すべき」という声に悩むこともあります。
性格の不一致による離婚は、離婚を申し出た方のワガママなのでしょうか?
結婚三年目、子供1人。マイホームあり。私は妻側です。
度重なる喧嘩、話の通じない話し合い、もう疲れてしまいました。
とはいえ家事はそこそこやってくれるし、子供の事も可愛がっています。
ですが、この先もずっとこの人と生きていく自信がありません。
引用元: https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14264415134
性格不一致の夫と離婚したいですが夫は拒否です。
理由は子供と離れたくないからです。
なので子供が巣立ってから離婚は応じると思います。
子供は今4歳と8歳です。
ただ私は、正直言いますと、恋人が欲しいのです。
あと20年近くも今のような、誰にも愛されない人生が辛いです。
こんなことを言ったら母親として最低な気がするのですが、子供を連れて、第二の人生を歩みたいです。
わがままでしょうか?
このような悩みを抱える方に向けて、性格の不一致による離婚が本当にわがままなのか、離婚を進める際のポイントを解説します。
性格の不一致とは?具体的にどんなケースがある?

性格の不一致とは、夫婦間の価値観や生活習慣、考え方の違いによって結婚生活の継続が困難になる状態を指します。結婚当初は気にならなかった些細な違いが、日常生活を共にする中で大きなストレスとなり、夫婦関係の破綻につながることも少なくありません。
性格の不一致は、単なる好みの違いではなく、日常生活における価値観の衝突が積み重なった状態といえるでしょう。具体的には、以下のようなケースがあります。
金銭感覚の違い
お金の使い方に対する考え方の違いは、性格の不一致の代表的な例です。一方が節約志向で将来のために貯蓄を重視するのに対し、もう一方が「今を楽しむ」ことを優先して浪費傾向にある場合、日々の買い物や家計管理で衝突が生まれます。住宅ローンや子どもの教育費など、大きな支出が必要な場面では特に対立が深刻化しやすくなります。

子育てに対する考え方の相違
子どもの教育方針や躾の方法について意見が合わないケースも多く見られます。厳しく育てたい親と、子どもの自主性を尊重したい親では、日々の接し方が異なります。習い事の選択、門限の設定、スマートフォンの使用ルールなど、具体的な場面で対立が繰り返されると、夫婦関係にも亀裂が入ります。

生活リズムや家事分担への不満
起床時間や就寝時間、食事のタイミングなど、生活リズムが大きく異なると、一緒に過ごす時間が減り、すれ違いが生じます。また、家事や育児の分担に対する認識の違いも、性格の不一致として表れます。「やって当然」と考える側と「手伝っている」と考える側では、感謝の気持ちや負担感に大きな差が生まれます。
コミュニケーションスタイルの違い
話し合いで解決したい人と、一人で考えたい人では、問題が起きたときの対処法が異なります。感情を素直に表現するタイプと、感情を内に秘めるタイプでは、相手の気持ちを理解することが難しくなります。このようなコミュニケーションの齟齬が積み重なると、「話が通じない」と感じるようになります。
趣味や休日の過ごし方
休日は家族で過ごしたい人と、一人の時間を大切にしたい人では、理想とする家庭像が異なります。また、趣味にかける時間やお金に対する理解が得られないと、「自分を尊重してくれない」という不満が募ります。
親族との関わり方
義理の親や親族との付き合い方も、性格の不一致が表れやすい部分です。頻繁に実家に帰りたい人と、距離を置きたい人では、帰省の頻度や親族行事への参加をめぐって対立します。特に同居や介護の問題が絡むと、深刻な夫婦間の溝となることがあります。

性格の不一致での離婚がわがままではない理由
「性格の不一致で離婚したい」と周囲に打ち明けると、「我慢が足りない」「わがままだ」と言われることがあります。しかし、性格の不一致を理由とした離婚は、決してわがままとは言い切れません。

愛情がなくなれば性格の違いは受け入れられない
「性格が違うのは当たり前」という意見は正論です。しかし、相手への愛情や尊敬があるからこそ、価値観の違いを受け入れ、歩み寄ることができます。
愛情が薄れてしまえば、相手の言動や価値観が許せなくなるのは自然なことです。「性格の不一致で離婚したい」という言葉の本質は、「相手への愛情がなくなった」という意味であり、単なる不満とは次元が異なります。
愛情を持てない相手と一生を共にすることは、自分にとっても相手にとっても不幸です。その意味で、性格の不一致を理由に離婚を考えることは、わがままではなく誠実な選択といえるでしょう。
我慢し続けることが必ずしも美徳ではない
「結婚したからには我慢すべき」という価値観もありますが、我慢を続けた結果、心身の健康を損なったり、子どもに悪影響を及ぼしたりすることもあります。
夫婦関係が冷え切った家庭では、子どもは両親の不仲を敏感に察知します。会話のない緊張した空気の中で育つことが、子どもにとって本当に幸せなのかは疑問です。また、我慢を重ねることで、うつ症状や体調不良などの健康問題が生じることもあります。
自分を犠牲にして結婚生活を続けることが、必ずしも正しい選択とは限りません。
裁判でも離婚理由として認められる可能性がある
性格の不一致だけでは裁判で離婚が認められにくいのは事実ですが、不可能ではありません。価値観の違いによって夫婦関係が破綻し、離婚が認められた判例も存在します。裁判所は、夫婦関係が破綻し修復不可能な状態にあるかを重視する破綻主義の傾向があります。
性格の不一致が原因で夫婦関係が実質的に破綻していると認められれば、離婚は正当な選択として扱われます。法的にも一定の理解がある以上、性格の不一致による離婚を「わがまま」と決めつけることはできません。
離婚原因で「性格の不一致」は男女ともに最も多い
「性格の不一致」を理由に離婚する夫婦は実際にどれくらいいるのでしょうか。離婚の理由は複雑で、表向きには「性格の不一致」としながらも、実際には他の理由を隠しているケースや、複数の不満が重なっているケースも少なくありません。
夫婦にはそれぞれ事情があり、すべてを説明するのは困難です。そのため、周囲には「性格の不一致」という言葉で片付けることもあるでしょう。また、離婚に至るまでには、通常さまざまな理由が積み重なっているものです。

離婚調停申し立ての理由で「性格が合わない」が最多
最高裁判所が公表する「令和5年度司法統計年報(家事編)」によると、離婚調停を申し立てた人のうち約48%が「性格が合わない」を理由の一つとして挙げており、男女ともに最も多い離婚理由となっています。
具体的には、夫側では59.9%、妻側では38.0%が性格の不一致を申し立て理由としており、男性の方が性格の不一致を理由に挙げる傾向が強いことがわかります。
ただし、この調査は複数回答方式のため、「性格が合わない」という理由だけで離婚を求めたわけではありません。多くの場合、他の理由と組み合わさっています。
男女別にみると、男性の2位は「精神的虐待」(21.4%)、3位は「異性関係」(12.0%)となっています。一方、女性の2位は「生活費を渡さない」(28.9%)、3位は「精神的虐待」(26.1%)という結果でした。
このデータから、不倫や暴力といった重大な問題がなくても、性格の不一致を理由に離婚を考える夫婦が非常に多いことがわかります。
出典:最高裁判所「令和5年度司法統計年報(家事編)第19表 婚姻関係事件数-申立ての動機別」
(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-16604.pdf)

性格の不一致で離婚するときのポイント
性格の不一致だけでなく、配偶者の浮気や暴力など決定的な離婚の原因がある場合は、離婚の話し合いがうまく進まなくても、最終的には裁判で離婚できる可能性があります。しかし、性格の不一致以外に主な理由がない場合、離婚は可能なのでしょうか。性格の不一致で離婚するためのポイントを解説します。

基本的に協議離婚となる
性格の不一致のほかに、決定的な離婚の理由がない場合、裁判で離婚が認められる可能性は低くなります。できるだけ、話合いでの解決を目指すのがいいでしょう。話し合いで離婚に合意することを協議離婚と言います。協議離婚の場合、互いの合意さえあれば、離婚の理由や条件を問われることはありません。
相手が再構築を求めるなど、話し合いで離婚に合意できない場合、家庭裁判所に間に入ってもらう離婚調停という方法もあります。離婚調停では、裁判所の調停委員に双方の言い分を聞いてもらい、双方が合意できるよう意見の調整をしてもらいます。この場合は、離婚を求める十分な理由があると調停委員に納得してもらえる根拠を示すことが重要です。
調停委員が離婚に応じない配偶者側の言い分に納得してしまうと、逆に関係修復を勧められたり、相手に有利な形で話し合いが進められたりしてしまうかもしれません。離婚調停を申し立てるときは、自分の言い分に説得力があるのか、よく考えることも大切です。
解決金を支払うことも
離婚調停や離婚裁判になっても、離婚の理由に乏しく離婚できそうもないというときは、相手に解決金を支払って離婚するという方法もあります。いわば、手切れ金や、明確な理由がないのに離婚を申し入れた迷惑料のようなものです。ある程度の金額を提示すれば、相手も離婚協議に応じてくれる可能性があります。
ただし、解決金には法的根拠がなく、多額の金額を受け取ると税務署から「贈与」とみなされ、課税される可能性があります。慰謝料の場合は原則として非課税になるので、この違いには注意しておきましょう。
裁判で離婚が認められるケースとは
離婚裁判で離婚を認めてもらうには、民法で定められた離婚事由が必要です。裁判所は離婚事由があり、夫婦関係の修復が困難だと判断したときに離婚を認めます。離婚事由とは、次の5つの事情です。
・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の未払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある
「性格の不一致」を理由に離婚を求める場合は、一般的に、性格の不一致によって「婚姻を継続しがたい」状況に陥り、夫婦関係の修復が困難だと主張することになります。結婚生活を続けるのが困難であることを示す証拠も必要です。
裁判所は個別の事情で離婚を認めるかどうかを判断しますので、似たような状況であったとしても、夫婦間の事情や話し合いの経緯などによって判断が分かれることがあります。どのような状況であれば離婚が認められるのか、事前に弁護士に相談したほうがよいでしょう。
CSP法律会計事務所 加藤 惇法律上離婚事由がないからといって、離婚を諦める必要はありません。離婚事由がない場合でも離婚に向けて進めていくことは可能です。少しでも離婚をしたいと考えた場合には、弁護士に相談をすると良いでしょう。
性格の不一致で離婚するメリット・デメリット
性格の不一致を理由に離婚を決断する前に、離婚後の生活がどう変わるのか、メリットとデメリットの両面を理解しておくことが重要です。離婚は人生の大きな転機となるため、冷静に判断材料を整理しましょう。


性格の不一致で離婚するメリット
精神的なストレスからの解放
価値観の合わない相手と無理に生活を続ける必要がなくなり、日常的なストレスが大幅に軽減されます。毎日の些細な衝突や、理解されないことへの孤独感から解放され、心の平穏を取り戻せる可能性があります。自分らしい生活リズムや価値観で暮らせるようになることで、心身の健康が改善されるケースも少なくありません。
自分の人生を取り戻せる
離婚によって、自分の意思で人生の選択ができるようになります。趣味や仕事、人間関係など、配偶者の価値観に縛られることなく、自由に時間を使えるようになります。特に長年我慢してきた方にとっては、第二の人生をスタートさせる大きなチャンスとなるでしょう。
子どもへの悪影響を防げる可能性
夫婦喧嘩が絶えない家庭環境は、子どもの心理的発達に悪影響を及ぼすことがあります。離婚することで、子どもが両親の対立を目にする機会が減り、安定した環境を提供できる場合もあります。ただし、これは離婚後の親子関係や養育環境によって結果が変わります。
新しい出会いのチャンス
離婚後は、自分と価値観の合うパートナーと出会う可能性が開けます。特に若い世代では、再婚によって幸せな家庭を築くケースも多く見られます。
性格の不一致で離婚するデメリット
経済的な負担の増加
離婚後は世帯が分かれるため、生活費や住居費などの経済的負担が大きくなります。特に専業主婦(主夫)だった場合、安定した収入を得るまでに時間がかかることもあります。財産分与や養育費の取り決めによっては、生活水準が大きく下がる可能性も考慮が必要です。
子どもへの影響と罪悪感
離婚は子どもにとっても大きな環境変化となります。片親との別居、転校、友人関係の変化など、子どもが抱える心理的負担は無視できません。また、親自身も「子どもに寂しい思いをさせている」という罪悪感を抱えることがあります。
社会的な偏見や孤独感
離婚に対する理解が進んでいるとはいえ、「性格の不一致」を理由に離婚した場合、地域や職場によっては偏見の目で見られることもあるかもしれません。また、既婚者の友人との関係が疎遠になったり、単身生活での孤独を感じたりするケースもあります。
離婚手続きの負担
協議離婚がスムーズに進まない場合、調停や裁判に発展することもあります。弁護士費用や時間的負担、精神的なストレスは想像以上に大きく、数年にわたって争いが続くこともあります。
後悔する可能性
離婚後に「もう少し努力すればよかった」「話し合いが足りなかった」と後悔する人も一定数います。特に感情的になって決断した場合、冷静になってから判断を見直したくなることもあります。
離婚を決断する前に考えるべきこと
メリットとデメリットを比較したうえで、以下の点も検討しましょう。
- 夫婦関係の修復に向けた努力を十分に尽くしたか
- 離婚後の具体的な生活設計ができているか
- 子どもがいる場合、養育環境をどう整えるか
- 経済的に自立できる見通しはあるか
性格の不一致による離婚は、決してわがままではありません。しかし、離婚は人生の重大な決断です。メリットとデメリットを冷静に見極め、後悔のない選択をすることが大切です。
性格の不一致で離婚するのは「わがままだ」と思ったら
配偶者から「性格の不一致で離婚したい」と言われたとき、「そんなのはわがままだ」と感じることもあるでしょう。しかし、相手の訴えを「わがまま」と切り捨てる前に、なぜそう感じるようになったのか、じっくり話を聞くことが大切です。性格の不一致という言葉の裏には、長年積み重なった不満や愛情の喪失といった深刻な問題が隠れているかもしれません。
もし離婚を避けたいのであれば、夫婦カウンセリングの利用を検討しましょう。専門のカウンセラーが第三者として介入することで、お互いの価値観の違いを客観的に理解し、関係改善のきっかけをつかめる可能性があります。コミュニケーションの取り方や具体的な改善策を学ぶことで、夫婦関係を立て直せるケースも少なくありません。
ただし、相手がすでに離婚の意思を固めている場合、関係修復は容易ではありません。一方的に否定するのではなく、相手の気持ちに耳を傾け、早めに行動を起こすことが重要です。
性格の不一致で離婚したい人がすべきこと
性格の不一致で離婚したい場合、配偶者とどのように話し合いを進めればよいのでしょうか。離婚の話し合いを進めるときのポイントを解説します。


相手とよく話し合う
性格の不一致だけを理由に離婚するには、離婚理由について相手に納得してもらうことが大切です。相手が再構築を望んでいる場合、調停や裁判になると、「性格の不一致」だけでは離婚の理由として調停委員や裁判官に納得してもらうことが難しく、離婚が認められる可能性は低くなります。
話し合いでは、感情的にならず冷静になることが大切です。その上で、自分の気持ちや離婚の意思、離婚の条件などを明確に伝えましょう。ただし、一方的に言い分を伝えるのではなく、相手の主張にもしっかり耳を傾け、最大限受け入れることも必要です。譲歩して相手に有利な離婚条件を提示することも検討しましょう。
夫婦関係が破綻していることを証明する
相手の拒絶で協議離婚できないことを考え、夫婦関係が破綻し、修復の見込みがないことを証明する証拠も収集しておきましょう。普段の夫婦の喧嘩の内容や話し合いの記録、日記なども証拠になります。家庭内別居の状態になっているときは、2人が別々に生活していることも証明できるようにしておくといいでしょう。
性格の不一致以外にも、浮気やDV、モラハラなどがあるときは、そうした行為を証明する証拠があると、調停や裁判を有利に進められます。特に浮気やDVは、離婚事由として認められるので、離婚できる可能性が高くなるでしょう。
別居を検討する
長期間別居をしていると、夫婦の実態が保たれていないとして裁判でも離婚が認められる可能性が高くなります。別居してすぐに離婚できるわけではありませんが、3年から5年くらいの別居期間があれば、夫婦関係が破綻していると判断されやすいといわれます。しかし、3年以上別居していても、離婚が認められなかったケースもあり、裁判所の判断次第です。
ただし、別居した場合、相手より収入が多いときは、相手に生活費を支払う必要がでてきます。経済的負担が大きくなりますので、弁護士とも相談して慎重に検討したほうがいいでしょう。
ADR(裁判外紛争解決手続)を検討する
調停や裁判に進む前に、ADR(裁判外紛争解決手続)という選択肢も検討する価値があります。ADRは、中立的な第三者が間に入って、夫婦間の話し合いをサポートする制度です。ADRのメリットは以下の通りです。
- 調停よりも柔軟で迅速な解決が期待できる
- 夫婦の実情に合わせた解決策を見つけやすい
- 費用が比較的抑えられる
特に性格の不一致のような、法律的な離婚事由としては弱いケースでも、ADRでは夫婦双方が納得できる形での解決を目指せます。調停よりも早期に解決できる可能性があるため、時間やコストを抑えたい方にも適しています。ただし、ADRで合意に至らなかった場合は、改めて調停や裁判を検討する必要があります。
弁護士に相談する
性格の不一致を理由とした離婚は、相手の合意が得られない場合、法的な判断が複雑になることがあります。弁護士に相談することで、自分のケースで離婚が可能かどうか、どのような証拠が必要か、どう進めるべきかについて専門的なアドバイスを受けられます。
特に以下のような場合は、早めに弁護士への相談を検討しましょう。
- 相手が離婚に応じない
- 財産分与や養育費でもめている
- 調停や裁判を検討している
- 相手から不利な条件を提示されている
弁護士は、交渉の代理人として相手と話し合ったり、調停や裁判での手続きをサポートしたりすることができます。離婚問題に詳しい弁護士であれば、過去の判例や経験から、より有利に話を進めるための戦略を立ててくれるでしょう。
【Q&A】性格の不一致による離婚でよくある質問
Q1. 性格の不一致で離婚したいと伝えたら、相手から慰謝料を請求されることはありますか?
性格の不一致は法律上の離婚事由(不貞行為やDVなど)に該当しないため、基本的には慰謝料を支払う義務は発生しません。ただし、性格の不一致以外に自分の不貞行為や暴力などの問題がある場合は、慰謝料請求される可能性があります。また、離婚をスムーズに進めるために、解決金として任意で金銭を支払うケースもあります。
Q2. 性格の不一致を理由に離婚したいのですが、子どもの親権はどちらが取れますか?
親権は離婚理由ではなく、「子どもの利益」を最優先に判断されます。裁判所は、子どもの年齢、これまでの養育状況、経済力、子どもの意思などを総合的に考慮して決定します。一般的に、乳幼児の場合は母親が親権者になるケースが多い傾向がありますが、父親の監護実績や環境によっては父親が親権を得ることもあります。
Q3. 性格の不一致で別居する場合、勝手に家を出ると「悪意の遺棄」になりますか?
生活費を適切に支払い、子どもの養育にも責任を持っていれば、別居それ自体が「悪意の遺棄」とみなされることは通常ありません。悪意の遺棄とは、正当な理由なく配偶者を見捨てて生活費も渡さない状態を指します。別居前に弁護士に相談し、婚姻費用の取り決めをしておくことをおすすめします。
Q4. 性格の不一致による離婚の場合、財産分与はどうなりますか?
財産分与は離婚理由に関係なく、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を原則として2分の1ずつ分けるのが基本です。性格の不一致が理由であっても、不貞行為やDVなどの有責行為がない限り、財産分与の割合には影響しません。ただし、どちらか一方が特別に財産形成に貢献した場合は、割合が調整されることもあります。
Q5. 性格の不一致で離婚調停を申し立てましたが、不成立になった場合はどうなりますか?
調停が不成立になった場合、次は離婚訴訟(裁判)を起こすことになります。ただし、裁判では民法で定められた離婚事由がないと離婚は認められません。性格の不一致だけでは離婚が認められにくいため、夫婦関係が破綻していることを示す証拠(長期間の別居、家庭内別居の記録、DVやモラハラの証拠など)を準備する必要があります。
性格の不一致で離婚したいときは専門家に相談を
性格の不一致といっても、夫婦の事情はさまざまです。本当の理由を隠すために「性格の不一致」と周囲に言っているだけのこともありますし、どちらかが一方的に「性格が合わないので離婚したい」と言っていることもあります。
もし、離婚調停や離婚裁判を考えているのなら、どのような点が不満で夫婦関係が破綻したのかをきちんと説明できるようにしておくことが大切です。どのように離婚話を進めればよいのかわからないときは、夫婦関係に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。

