
離婚調停は、夫婦双方が話し合いを通じて合意を形成する手続きですが、その過程での不適切な行為や軽率な発言は調停を突破するうえで大きな障害になります。ここでは離婚調停の流れとポイント、そして調停中に絶対に避けたい行動や不利になる発言への対処法を整理しました。冷静な対応と的確な準備で、より有利な結果を目指しましょう。
離婚が視野に入ると、不安や焦りから感情のコントロールが難しくなることもあります。しかし、調停中に軽率な行動をとると調停委員や相手側の心証を大きく損ない、合意に向けた話し合いが難航することがあります。
特に「離婚調停中 やってはいけないこと」は数多く存在し、知らずに違反すると後悔する結果になりかねません。正確な知識と冷静な判断が、円満な解決への重要な鍵となるのです。
この記事でわかること
・離婚調停中に絶対に避けるべき10の行為と調停に与える悪影響
・調停で不利になる発言パターンと、信頼を得るための効果的な対処法
・調停を有利に進めるための具体的な戦略と準備のポイント
佐々木 裕介/チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所(第二東京弁護士会所属)
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離婚調停の基礎知識と流れ
離婚調停の全体像を把握することは、落ち着いて手続きを進めるうえで欠かせません。調停の目的や調停委員の役割を理解し、スムーズに流れを把握しておきましょう。
離婚調停の目的と意義
離婚調停の大きな目的は、裁判によらず夫婦間で離婚条件を合意形成することにあります。裁判に持ち込むと、さらに時間と費用がかかるだけでなく、夫婦の対立が激しくなるリスクも生じます。
調停であれば、当事者同士が合意に向けて話し合う場をもち、協力できる余地を最大限に引き出すことが可能になります。その意味で、早期に話し合いをスタートさせ、適切な条件や落としどころを見つけ出すことが非常に意義深いのです。
調停委員の役割
調停委員は裁判所から選任された中立的な第三者で、夫婦双方の意見を整理し、合意形成に向けて調整を行います。個々の感情を踏まえながらも、事実関係を冷静に把握し、法的な観点と実際的な落としどころを提案してくれる存在です。
調停委員とのコミュニケーションで重要なのは、ありのままの事実を誠実に伝え、必要な資料などを適切に提出することです。その過程で軽率な発言や虚偽の主張をすると、調停委員からの心証を損ない逆効果となるため、注意が必要です。
申し立てから成立までの一般的なプロセス
離婚調停は、まず家庭裁判所への申し立てから始まります。その後、期日が決定され、数回にわたる話し合いが行われるのが一般的です。
実際には、夫婦が交互に調停委員と面談する形で進められ、他方当事者と直接対面しなくても済むことも多いです。話し合いがまとまると調停が成立し、合意内容が調停調書に記載されることで法的効力をもちます。一方で話し合いが決裂した場合は不成立となり、訴訟に移行するケースもあります。
離婚調停中にやってはいけないこと
調停中に避けなければならない行為は多岐にわたります。軽率な行動は印象を悪くして不利な結果を招く恐れがあるため、以下のポイントを確認して未然に防ぎましょう。

1.虚偽や誇張を含む発言をする
調停の場で嘘や誇張を行うと、調停委員や相手からの信用を失う結果につながります。仮に一時的な優位を狙った発言だったとしても、後で事実関係が明るみに出れば不信感だけが残り、結果的に自分の立場を悪化させる可能性が高いです。
事実に基づかない主張は、短期的な感情を満たすかもしれませんが、長期的には大きなマイナスになるでしょう。
2.相手の人格否定や誹謗中傷をする
感情的になりやすい場面ではつい相手を否定する言葉が出てしまいがちですが、誹謗中傷は建設的な話し合いを困難にします。
さらに、調停委員にも攻撃的な態度を警戒されるリスクが高まるため、余計に不利な立場となる場合があります。相手の言動を指摘する場合でも、感情に任せず冷静な言葉選びを心がけることが大切です。
3.無断欠席や遅刻を繰り返す
期日に無断で欠席したり、遅刻を繰り返す行為は、調停手続きを軽視しているとみなされがちです。調停委員や相手側も真剣に取り組んでいる中で、その対話の機会をないがしろにする行動は心証を悪くします。
さらに、その後の交渉で不利に扱われる可能性が出てくるため、スケジュール管理は徹底して行い、何らかの事情がある場合は事前に連絡することが必要です。
4.調停委員を軽視する態度をとる
調停委員は、当事者同士の合意を後押しする重要な存在です。その調停委員を軽んじたり、横柄な態度を示したりすると、公平な調整を行うための信頼関係が損なわれてしまいます。特に、自分の主張ばかりを押し通そうとする姿勢は逆効果になるので、丁寧なコミュニケーションを意識することが円滑な話し合いのポイントです。
5.一方的な連絡や嫌がらせ行為
調停が進行中にも関わらず、相手に対して嫌がらせとも取れる連絡や、感情的に相手を追い詰めるような行動を取るのは極めて危険です。相手を刺激し、協議が決裂するだけでなく、精神的苦痛を与えたとして慰謝料の問題に発展するリスクも考えられます。どんなに腹が立つことがあっても、冷静な対処の姿勢を心がけるのが得策です。
6.不倫・浮気などの不貞行為を続ける
法律的には離婚成立まで婚姻関係は続いているため、その間に不倫や浮気が発覚すると相手から慰謝料請求を受ける可能性が高くなります。
離婚調停が進んでいる最中に不貞行為が続いていると、調停で相手の怒りを増幅するだけでなく、モラル面でも大きなマイナスとして捉えられます。一時的な気持ちで行動するのではなく、先を見据えた冷静な判断が重要です。
7.子どもを無断で連れ去ったり監護を阻害する
子どもの親権や監護権の問題は、離婚調停において最もデリケートなテーマの一つです。正当な理由なく子どもを連れ去ったり、一方の親から引き離そうとする行為は違法とみなされる可能性があり、最終的な親権の判断にも大きく影響します。子どもの幸せを最優先に考え、法的手続きに則った話し合いを進めることが大切です。
8.勝手に財産を処分・隠匿する
離婚の際には財産分与が行われますが、その前に一方的に財産を処分したり隠匿したりすると、調停委員や裁判所からの心証が非常に悪くなります。財産の扱いは夫婦双方が平等に監督するのが基本であり、疑わしい行動を取ると不当な利得を得ようとしているとみなされる恐れもあるため、慎重さが求められます。
9.無断で録音・録画を行う
相手が不利になる発言を録音や録画で押さえておきたいという気持ちは理解できますが、無断でそれを行う行為はプライバシー権などを侵害するリスクがあります。
また、違法に取得した録音・録画は証拠としての信頼性が疑われる場合もあり、かえって自身の立場を不利にする要因にもなりかねません。どうしても証拠を用意する必要があるときは、弁護士に相談し適法な手段をとることが望ましいでしょう。
10.不用意に感情的な発言ばかりする
離婚調停では、大きなプレッシャーやストレスがかかるため感情が高ぶる場面が多いのも事実です。
しかし、怒りや悲しみをぶつけるような発言を繰り返すと、肝心の交渉内容に集中できず、相手側・調停委員にも冷静さを欠く人という印象を与えてしまいます。結果として本来の主張が埋もれ、有利な条件獲得が遠のいてしまう危険があるのです。
チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所 佐々木 裕介離婚調停は「正しさ」ではなく「信頼」で進む手続きです。嘘や感情的な発言、独断的な行動は、法的立場よりも“人としての信用”を損ねます。調停委員は誠実さと一貫性を重視します。怒りをぶつけるより、記録と根拠で冷静に語ること。感情を制することが、最も強い交渉力となります。
離婚調停で不利になる発言と対処法
調停の場での何気ない一言が、相手方や調停委員の心証を大きく左右します。不用意な発言例や、発言時に注意すべきポイントを整理しましょう。
曖昧または一貫性のない主張は不利になる
前回の審理や事前の主張と大きく食い違う発言をすると、調停委員や相手方に矛盾を突かれ、信用を失う可能性が高いです。
うろ覚えで発言するよりは、事前に時系列や根拠を整理しておき、どのように状況が変化したのかを明確に説明できるように準備しておくとよいでしょう。主張の一貫性を保つことで、説得力は格段に増します。
感情的な否定ではなく具体的証拠を提示する
相手の主張が誇張や事実と異なると感じた場合でも、単に「それは違う」と感情的に否定するだけでは十分ではありません。
身近な例や客観的資料のコピー、経緯を示す日付や記録などを示すことで、調停委員も客観的な裏付けをもって評価しやすくなります。冷静かつ具体的な証拠を提示することで、単なる言い争いから一歩進んだ理性的な対話の場へと変わるでしょう。
陳述書や証拠書類の用意・提出をする
主張を確実に立証するためには、陳述書や証拠書類を事前に準備しておくことも大事です。自分の言葉だけでは伝わりにくい事実も、書面や客観的データがあれば信頼性が高まります。
タイムラインや金銭の出入りなどは、客観的な記録をもとにわかりやすくまとめておきましょう。調停委員にとっても整理しやすいため、話し合いがスムーズに進みやすくなります。
離婚調停を有利に進めるためのポイント
双方の主張が対立する場面でも、効果的な準備と戦略で調停を円満に導くことが可能です。


調停委員から好印象を得るための言動
調停委員は当事者の言動をよく観察しています。礼儀正しく、論点を整理したうえで簡潔かつ明確に発言することは、非常に好印象につながります。
相手方を批判するにしても冷静に根拠を示しながら淡々と話すほうが効果的で、感情的な激しい口調は逆効果になりがちです。第一印象から最後まで誠実な姿勢を保つことが、調停委員の信頼を得る近道だといえます。
離婚条件に優先順位をつけて主張する
離婚調停では、財産分与・慰謝料・親権など複数のテーマが同時に議論されるケースが多いです。それぞれの項目について譲れない基準と、ある程度譲歩できる範囲をあらかじめ整理し、優先順位をつけておくと交渉がスムーズに進みやすくなります。
すべてにおいて完全な勝利を求めると話し合いがまとまらず泥沼化する恐れもありますので、現実的な落としどころを意識することも重要です。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停は感情的負担が大きく、法的知識も求められる複雑な手続きです。弁護士のサポートを受けることで、より有利で円満な解決を目指すことができます。


法的知識と戦略的アドバイスが得られる
弁護士は離婚に関する法律や判例に精通しており、個々のケースに応じた最適な戦略を提案してくれます。財産分与の計算方法、慰謝料の相場、親権獲得のポイントなど、専門知識がなければ見落としがちな重要な要素を適切に把握できます。
また、相手方の主張に対する法的な反駁や、有利な条件を引き出すための交渉術も身につけることが可能です。
証拠収集と書類作成のサポート
調停を有利に進めるためには、説得力のある証拠と適切な書類の準備が不可欠です。弁護士は陳述書の効果的な書き方や、証拠として有効な資料の選別・整理を専門的な視点からサポートしてくれます。
また、相手方が提出した証拠に対する反証の準備や、法的に問題のない形での証拠収集方法についてもアドバイスを受けられるため、調停での主張により説得力を持たせることができます。
精神的負担の軽減と冷静な判断の維持
離婚調停は精神的に大きなストレスを伴う手続きですが、弁護士が代理人として参加することで、当事者は感情的にならずに冷静な判断を維持しやすくなります。
相手方の攻撃的な発言や理不尽な要求に対しても、弁護士が適切に対処してくれるため、本人が直接対峙する必要がありません。これにより、建設的な話し合いに集中でき、より良い解決策を見つけやすくなるでしょう。
調停不成立時の訴訟への備え
万が一調停が不成立となった場合、弁護士は訴訟手続きへのスムーズな移行をサポートし、調停での経験を活かした戦略を立てることができます。
調停段階から一貫して同じ弁護士に依頼していれば、事案の詳細を改めて説明する必要がなく、効率的に訴訟準備を進められます。また、調停での相手方の主張や態度を踏まえた上で、訴訟でより有効な論点を組み立てることも可能になります。






離婚調停中にカウンセリングを受けるメリット


離婚調停は精神的な負担が非常に大きく、一人で抱え込むとストレスで冷静な判断ができなくなる恐れがあります。夫婦問題専門のカウンセラーに相談することで、感情の整理と心の安定を図ることが可能です。
カウンセラーはあなたに寄り添いながら客観的なアドバイスを提供し、調停での適切な対応方法や相手との向き合い方について専門的な視点からサポートしてくれます。
また、調停のストレスから生じる不安や怒りなどの感情をコントロールする技術を身につけることで、調停の場でも冷静で建設的な態度を維持しやすくなり、結果として有利な条件での合意につながる可能性が高まります。




【Q&A】離婚調停中のトラブル回避でよくある質問
Q. 調停中に相手と直接連絡を取ってしまった場合、どう対処すべきですか?
調停中の直接連絡は原則として避けるべき行為ですが、既に連絡を取ってしまった場合は、その内容と経緯を調停委員に正直に報告することが重要です。
隠蔽すると後で発覚した際により大きな不信を招く可能性があります。 今後は調停委員を通じたやり取りに徹底し、緊急時であっても事前に調停委員に相談するよう心がけましょう。
Q. 調停で感情的になってしまいそうな時の対処法はありますか?
感情的になりそうな場面では、深呼吸をして一度発言を止め、冷静になる時間を作ることが効果的です。「少し整理する時間をいただけますか」と調停委員に伝えることで、印象を悪くすることなく冷静さを取り戻せます。
また、事前に想定される質問への回答を準備しておくことで、突発的な感情の高ぶりを防ぐことも可能です。
Q. 相手が嘘をついていると確信している場合、どう対応すればよいですか?
相手の発言に疑問を感じても、感情的に「嘘だ」と断定するのは逆効果です。客観的な証拠や資料を提示しながら、事実関係を冷静に整理して調停委員に説明することが最も効果的です。
疑問点については「私の記憶や記録では異なるのですが」という表現で、建設的に議論を進めることを心がけましょう。
Q. 調停が長期化している場合、途中で諦めて取り下げても問題ありませんか?
調停の取り下げ自体は法的に可能ですが、一度取り下げると同じ条件での再申立てが困難になる場合があります。長期化の原因を分析し、弁護士と相談のうえで戦略を見直すことが先決です。
また、取り下げ後は協議離婚に戻るか調停離婚訴訟に移行することになるため、将来的な手続きも含めて慎重に判断する必要があります。
Q. 調停委員との相性が悪いと感じた場合、交代を求めることはできますか?
調停委員の交代申立ては制度上可能ですが、明確な理由が必要で、単に相性が悪いだけでは認められにくいのが現実です。
まずは調停委員とのコミュニケーション方法を見直し、丁寧で建設的な対話を心がけることが重要です。 どうしても改善が見込めない場合は、弁護士を通じて適切な手続きを検討することをお勧めします。
離婚調停中のリスク回避と冷静な対応の重要性
離婚調停の場は、感情的になりやすい一方で法的にも大きな判断が下される可能性があります。リスクを避け、冷静な姿勢を保つことが円満な合意への近道です。
離婚調停は、夫婦の新たなスタートへ向けた重要なプロセスでもあります。やってはいけないことを回避し、適切な証拠や主張を組み立てることで、調停委員や相手方の理解を得やすくなります。相手の主張に感情で対応してしまうと、調停を長引かせる原因となり、互いにとって望ましくない結末を招く恐れがあります。
冷静な態度を保ち、必要に応じて専門家の助言を受けながら最適な解決策を探ることが、離婚調停を成功へ導く要となるでしょう。

